ギブス
ある日、ハピちゃんは、ペタペタと、歩いて、エルの方へ、行きました。
( だいじょうぶかなー ? エルは、ポインターだから、あぶないよ! )
しっぽを、ピーンと、立てています。
( あれは、赤ちゃんたちが、ひゅうがと、遊んでいた時の、飛びつくかまえ ! )
「 ワンワンワン ! 」
( それ以上、行ったらダメ ! ハピちゃん ! ダメだよ ! あぶない ! )
ぼくが、ほえるのも、気にしないで、ハピちゃんは、ペタペタ、歩いていきます。
エルは、息を止めて、ハピちゃんを、待っています。
ザッ!! と、音が、したかと思うと、ハピちゃんは、もう、エルの手に、おさえられて、しまいました。
ハピちゃんは、にげようとして、もがきます。
そして、エルが、手を、はなしたすきに、ハピちゃんは、にげだしました。
エルは、また、飛びついて、今度は、かみつきました。
羽を、かんで、ふり回しています。
( ウワー ! どうしよう ! とどかない ! )
すると、ハピちゃんは、エルの、口から飛ばされて、一生けんめい、ほえる、ぼくの前に、ドスン! と落ちました。
ぼくは、ハピちゃんを、いっぱい、なめました。
羽の付け根の所から、血の味が、少しします。
( けがは、大したことないな ! )
ぼくは、安心しました。
でも、なんか、形が、変です。 羽が、たれさがってます。
お母さんが、ひなちゃんとひゅうが、よっちゃんを、乗せて、帰って来ました。
ぼんやりしている、ハピちゃんを見て、お母さんは、
「 いけない ! ハピちゃんを、ゲージにいれるの、忘れて出かけちゃった !! 」
と、言いながら、走って来ました。
ぼくに、もたれかかっている、ハピちゃん。
お母さんが、よく見えるように、ぼくは、少しさがって、おすわりを、しました。
「 エルに、かまれちゃったのね ! おかあさんが、いけなかったねぇ。 」
お母さんは、ハピちゃんを、なでました。
「 羽が、折れて、ひっくり返っちゃったから、ギブスしないと・・・ 」
お母さんは、家から、色んな物を、持って来ました。
それを、使って、ハピちゃんの、羽を、もとどうりに、しようとしますが、ハピちゃんが、いやがって、じっとしていません。
「 ひなちゃん ! ひゅうが ! ハピちゃんを、おさえていてちょうだい。 」
心配そうに、見ていた二人は、何とか、ハピちゃんを、助けようと、おさえます。
3人で、がんばって、ついに、ギブスを、はめた、ハピちゃん。
ところが、ハピちゃんは、つついて、つついて、すぐに、はずして、しまいました。
ひなちゃんと、ひゅうがが、お母さんに、言い付けます。
また、3人がかりで、ギブスを、付けます。
さっきより、たくさん、巻いてあります。
ハピちゃんは、かたきのように、つついて、つついて、それを、はずして、しまいました。
またまた、3人がかりで、ギブスを、付けました。
しっかり、付きました。
ハピちゃんは、そればかり、気にして、ご飯も食べずに、つついています。
( ハピちゃん ! 取らないほうが、いいのに。 羽、ひっくり返ってるんだよ ! )
朝まで、かかって、とうとう、ハピちゃんは、ギブスを、はずしてしまいました。
お母さんは、それを見て、 「 しかたないね 。 」 と、言いました。
ハピちゃんの、左の羽は、ずっと、ひっくり返ったまま、治りませんでした。
だんだん寒くなって、木から、葉っぱが、みーんな落ちてきます。
くるくる回る葉っぱや、スーーッと、すべるように落ちる葉っぱ。
ぼくは、ジャンプして、つかまえたり、風で、飛ぶ、葉っぱを、おさえたりして、遊んでいました。
お母さんは、いつものように、テリーを、肩に乗せて、洗たく物を、干しに来ました。
お母さんは、肩に、テリーが、いることを、忘れているようです。
テリーが、ぼくの頭に、とまる前に、エルのお水を、かえに行きました。
( お母さん ! テリーが、肩にいるよ ! )
水道のねじを、まわして、水入れを、取ろうとした瞬間[しゅんかん] !
エルは、喜んで、お母さんに、飛びつきました。
テリーは、すごく、びっくりして、思いっきり、高く飛びました。
同時に、風が、ゴーーー ! と、音を、たてて、まるで、テリーを、追い払うように、さらっていきます。
( テリー ! テリー ! )
ぼくは、見えなくなった、テリーの方を、ずっと、見ていました。
−−−18話につづく−−−