ハピちゃん
「 ちょっと、お願いが、あって来たんです。 」 と、せがお兄ちゃんは、言いました。
箱を、持って来て、 「 これなんですが・・・・ 」
( 何だろう ! ) 鼻を高くして、においを、かぐと、
( なまあたたかい、このにおい ! チュン太の時と、にている。 何かのヒナだ ! )
お母さんが、箱を、のぞきました。
「 あら、何のヒナかしら ? 黒い鳥ねー 。 」
「 これは、バリケンといって、フランスがもの、仲間なんです。
つとめ先の、動物園で、生まれたんですが、
いっぱい、生まれるもんですから、肉食獣のえさに、されるんです。
こいつも、えさになると思うと、どうしても、かわいそうで。
こいつだけは、助けたいと、思って。
考えていたら、お兄さんの、家で、飼ってもらえるんじゃないかと・・・」
[せがお兄ちゃんは、お父さんを、「お兄さん」、お母さんを、「お姉さん」と呼んでいます。]
お母さんは、お父さんの、顔を、見ます。
「 このバリケンとやらは、どの位、大きくなるのかね ? 」 お父さんは、聞きます。
「 はい、この位です。 」 せがお兄ちゃんは、両手を広げました。
「 70cm位かねー ? 」 お母さんが、口を、はさみます。
「 そんなもんですね。 」 と、せがお兄ちゃん。
「 かってもいいかしら ? 」 と、お母さん。
「 見たら、飼いたいだろう ? 」 と、お父さん。
「 お願いします。 」 と、せがお兄ちゃんが、お父さんに、頭を、さげます。
「 あー、おいていったらいいよ。 うちのが、飼いたいようだから。 」
( お母さん、うれしそう ! )
さっそく、お母さんは、どこかから、ゲージを出してきて、組み立て始めました。
せがお兄ちゃんも、手伝います。
広くて、りっぱなゲージが、できました。お母さんは、箱の中から、ヒナを出しました。
( まっ黒な、ヒナ ! )
「 クロ ! 小さい子だから、仲良くしてね。 」
ぼくは、小さな、新しい家族を、見つめました。
ペタペタ、と、歩きます。
( 声は、ないのかな ?? ) ぜんぜん鳴きません。
「 そうね、 ひなちゃんと、ひゅうがが、使った、ベビーバスを、おきましょう ! 」
かわいい絵が、書いてある、ベビーバスを、持って来て、ゲージの中に、入れました。
まいてあるホースを、引っぱると、カランカランと、音がします。
ホースの先を、ベビーバスに入れて、水道のねじを、回すと、勢いよく、水が、たまりました。
お母さんが、黒いヒナを、そーーっと、少しずつ、水に入れました。
びっくりしないように、静かに、手を、はなすと、黒いヒナは、水に浮いています。
「 おー ! いっちょ前に、泳ぐじゃん ! ! 」
せがお兄さんは、大喜び !
お母さんは、手を、たたいて、パチパチパチッ ! 「 まぁ ! じょうず ! 」
ぼくも、近くに行って、よく見ると、足を、ゆっくり、動かして、泳いでいます。
頭を、水に入れたりして、ごきげんです。
( アハッ ! かわいい ! )
お母さんは、自動車に乗って、ひなちゃんたちを、迎えに行きました。
一緒に、帰ってきた、よっちゃんも、ひなちゃんと,ひゅうがも,ゲージにつかまって、
めずらしそうに見ます。
「 お名前を、つけようよ ! お母さん、 何てつける ? 」
ひなちゃんが、お母さんの方を、ふり返って、言いました。
「 そうねー、この子は、せがお兄ちゃんが、幸せになってほしいと、願って、助けたから、
ハッピー が、いいんじゃない ? 」
「 ハピちゃんだね ! 」 と、ひゅうが。
「 ハピちゃん ! 大きくなるんだよ ! 」 ひなちゃんは、うれしそうに、言いました。
せがお兄ちゃんも、うれしそう。
( おチビの、ハピちゃん、ぼくが、遊んであげるね ! )
お空が澄んで、秋になると、ハピちゃんは、ずいぶん大きくなりました。
ゲージから、出してもらって、遊びます。
ぼくの鼻を、つついたり、おなかのあたりを、かみついて、ねじります。
すごく痛いから、時々、ぼくは、「 キャイン ! 」 と、声が、出てしまいます。
お母さんは、「 あら、また、やられちゃったの ? やり返さないから、強いわねー。
本当は、クロの方が、ずっと強いのに、えらいねー、えらいねー ! 」
お母さんは、ぼくの事を、ほめてくれます。
ぼくは、ハピちゃんが、何をしても、かみついたり、しません。
だって、ぼくが、一回、かみついただけで、ハピちゃんは、死んでしまうから。
ある日、ハピちゃんは、ペタペタと、歩いて、エルの方へ、行きました。
( だいじょうぶかなー ? エルは、ポインター。
かもや、キジを取る、猟犬[りょうけん]だから、あぶないよ! )
エルは、自分の方に、歩いて来る、ハピちゃんを見て、かまえます。
しっぽを、ピーンと、立てています。
( あれは、赤ちゃんたちが、ひゅうがと、遊んでいた時の、飛びつくかまえ ! )
「 ワンワンワン ! 」 ぼくは、ほえました。
( それ以上、行ったらダメ ! ハピちゃん ! ダメだよ ! あぶない ! )
ぼくが、ほえるのも、気にしないで、ハピちゃんは、ペタペタ、歩いていきます。
−−−17話につづく−−-