プロパンのお兄さん
「 えー ! あげちゃうのー ? いやー! 」 と、ひなちゃん。
「 やだやだー みんな、うちで飼いたいよー !」 と、ひゅうが。
「 お母さんも、飼いたいけど、7匹飼うには、お庭が、せまいから、赤ちゃんが、広い所で、のびのびと、暮らせたらいいと、思っているの。 」
お母さんは、二人に、言い聞かせるように、ゆっくり、話しています。
何日か、すると、カンカン、音がする、大きな物を、運んでくる、いつもの、お兄さんが、来ました。
お兄さんは、ぼくの、お友達です。
おうちに、だれも、いない時、 「 よいしょ ! よいしょ ! 」 と、 言いながら、
カンカンの怪物を運びます。
そして、うちにある、カンカンを、トラックに、乗せます。
「 フー ! 終わったぞ ! クロ ! よしよし ! 」
力強い手で、ぼくを、なでます。
ぼくは、ひっくり返らないように、足をふんばります。
「 クロ、お前、子どもいるじゃんか ! にー、しー、ご 。 」
「 五匹も。 かわいいな ! クロ ! お前も、かわいいだろ ? 」
いっぱい、なでてもらって、ぼくは、お兄さんの、ほっぺを、ペロンと、なめます。
お兄さんは、「 よしよし ! 」 そう言って、立ち上がります。
( もっと遊んでよー ! )
ぼくは、外に向かって、歩き出した、お兄さんのひざに、飛びつきます。
お兄さんは、 「 ごめんな、クロ ! まだ、仕事があるんだ。 バイバイだよ ! 」
また、頭を、少しなでて、トラックに乗って、帰ってしまいます。
( またねー ! またねー ! ) ぼくは、体じゅう、力を入れて、しっぽをふります。
でも、今日は、いつもと、少しちがいました。
お兄さんが、トラックに、乗ろうとした時、お母さんが、帰ってきたのです。
「 こんにちわー 、 ごくろうさまー ! プロパン、重くて、大変ねー ! 」
「 こんちわー 、 ありがとうございます 。 子犬、生まれたんですねー 。 」
「 そうなの、 かわいいでしょ? そろそろ、飼いぬしを、さがさないと、と、思っているの。 」
「 そすかー、じゃあ、かわいがってくれそうな、お客さんに、声、かけてみるっす 。 」
「 あら ! うれしいわー ! 優しい方に、お預けしたいの 。 お願いねー 。」
ぼくは、もう一度、入って来た、お兄さんに、飛びつきました。
お兄さんは、ぼくを、なでながら、お母さんと、話します。
「 それじゃー 、 また、連絡しまーす ! クロ ! バイバイ ! 」
お兄さんは、トラックに、飛び乗って、帰りました。
( 大好きな、 プロパンの、お兄さん 、 バイバーイ ! バイバーイ ! )
ぼくは、トラックが、見えなくなるまで、しっぽを、ふりました。
−−−15話につづく−−−