かわいい赤ちゃん
エルは、歩きながら、雪の中に、赤ちゃんを、産んでしまいました。
( エル ! おうちに入れるんだよ ! 赤ちゃんを、早く ! おうちに入れて ! )
最初に、生まれた、赤ちゃんは、動かなくなって、しまいました。
( お母さーん ! 早くー ! 早く帰ってきてー ! 赤ちゃんが、死んじゃうよーー )
ぼくは、ほえました。
一生けんめい、お母さんを、呼びました。
ついに、
ついに、お母さんが、帰って来ました。
「 ワンワン ! クンクンキューン ! クンクンキューン ! 」
( こんなに、長く、どこへ、行ってたの ? ぼく、ぼく ! )
お母さんは、雪の上にいる、赤ちゃんたちを、エルのおうちに、入れました。
エルは、お母さんの後に、ついて行って、自分のおうちに、入りました。
「 かわいそうに 」 お母さんは、ポツンと、言いました。
( エル ! よかったね ! やっと、安心できるね。 )
エルは、赤ちゃんに、お乳をあげながら、眠っているようです。
お母さんが、温かそうな毛布を、持ってきて、エルのおうちに、入れました。
おなかが、いっぱいになったし、あったまってきたし、赤ちゃんたちも、みんなで、かさなって、眠ってしまいました。
ひなちゃんと、ひゅうがは、帰るとすぐに、お母さんと一緒に、エルの赤ちゃんを見に、庭に出て来ました。
お母さんは、赤ちゃんを、いじっても、エルが、おこらないかどうか、確かめました。
それから、ひなちゃんと、ひゅうがを、エルのおうちの入り口に、すわらせて、
「 赤ちゃん、だっこしていいよ。 落とさないようにね。 」
ひなちゃんも、ひゅうがも、じょうずに、だっこしました。
「 エルは、10匹も、産んだのよ。 」
ひゅうがは、かぞえます。
「 いーち、 にーい、 さーん、・・・ 」
ひなちゃんが、「 お母さん、10匹、いないよ ! 」
「 そう、雪の上に、生まれちゃったから、5匹しか、生きられなかったの。 」
「 えー ! かわいそう ! 」
「 エルは、はじめて赤ちゃんを、産んだから、どうしていいか、わからなかったんだね。 」 お母さんは、言いました。
毎日、毎日、ひなちゃんと、ひゅうがは、赤ちゃんを、だっこしに、エルの、おうちに行きます。
5匹の赤ちゃんは、コロコロ太っています。
まっ黒と、まっ白が、います。
おうちから、ヨチヨチ出て来て、遊ぶようになりました。
けんかをして、エルにしかられます。
ぼくのしっぽに、かみついて、ぼくにも、しかられます。
ひなちゃんも、ひゅうがも、お母さんまで、ぼくの事、忘れちゃったみたい。
赤ちゃんばっかり、かわいがっています。
ひゅうがが、幼稚園の帰り道に、かれ草を取って来ると、
「 それ、ねこじゃらし ! だけど、わんちゃんじゃらしにも、なるね ! 」
と、ひなちゃん。
二人が、草をふると、短いしっぽを、ぴーんとたてて、前足を低くします。
おしりを、少し上げて、後足にいっぱい力を入れます。
草の動きが、止まったその時、とびついて、草を、おさえます。
草を、おさえられないように、ひゅうがも、がんばります。
赤ちゃんに、おさえられた草は、すぐ折れて、使えなくなって、しまいます。
ひゅうがは、どこかに行って、たくさん、かれ草を、取ってきました。
「 よーし ! こんどは、つかまらないよ、 こい ! 」
( うーん ! 勝負は、五分五分、 だね ! )
時々、お母さんは、 「 写真を、とろう ! 」 と、言って、四角い物を持ってきます。
エルの所に、赤ちゃんを、ぜんぶ、集めて、その四角い物を、むけます。
ぼくと、赤ちゃんが、遊んでいる所にも、むけます。
ひなちゃんと、赤ちゃん、ひゅうがと、赤ちゃんにも、向けます。
「 はい ! ポーズ ! 」
お母さんが、そう言うと、二人は、赤ちゃんを、だっこしたり、持ち上げたり、草をふったりします。
( ふしぎな事を、するんだなー ! )
雪が、とけて、しばふが、見えてきたころ、赤ちゃんたちは、自分で、ご飯を食べるように、なりました。
鼻に、ミルクが、付くと、クシュンとして,首をふります。
まだまだ、食べるのは、へたです。
「 そろそろ、飼いぬしを、さがさないとねー 。 」と、お母さんが、言いました。
「 えー ! あげちゃうのー ? いやー! 」 ひなちゃんは、悲しそう。
「 やだやだー みんな、うちで飼いたいよー !」 と、ひゅうが。
「 お母さんも、飼いたいけど、7匹飼うには、お庭が、せまいからねー。 」
「 赤ちゃんが、広い所で、のびのびと、暮らせたらいいと、思っているの。 」
お母さんは、二人に、言い聞かせるように、ゆっくり、話しています。
−−−14話につづく−−−