メッ !!!
お母さんが、あわ玉を、あげようとするのに、すずめのヒナは、口をあけません。
お母さんは、口をとがらせて、すずめの、鳴き声を、まねします。
ひなちゃんと、ひゅうがも、同じように口をとがらせて、鳴いて見せます。
「 チュビジュビチュビジュビ 」
それでも、口を、あけないので、また、むりやり、口をあけて、あわ玉を入れました。
「 5回位、入ったね。 」
ひなちゃんが、言いました。
すずめのヒナを、ピンクの箱に入れながら、「 これで、大じょうぶ、と思う。 」
お母さんが、そう言うと、
ひなちゃんと、ひゅうがは、静かに、ピンクの箱を、のぞき込んでいました。
山のかげが、ぼくを、すっぽりと、おおう頃、お母さんは、窓を、閉めました。
朝になると、部屋の方から、元気に、 「チチチッ 」 と、なく声が、聞こえます。
( すずめのヒナ )
「 チュビジュビってすると、口をあけるよー。お母さん ! 」 と、ひなちゃんの声。
「 チュン太に、あわ玉、あげてから、幼稚園に、行こうか。 」 と、お母さん。
ひゅうがの、「 チュビジュビ 」
すずめのヒナが、「チチチッ」 にぎやかな、一日の始まりです。
何日か過ぎると、すずめのヒナが、部屋の中を、飛び回っているのが、あみ戸ごしに、見えるようになりました。
( 少し、大きくなったかな。 外に出て、ぼくと、遊べるように、なるかな ? )
ぼくは、楽しみに待ちました。
お母さんが、洗たく物を、干している時、
少し、あいていた、あみ戸から、すずめのヒナが、ぼくの方に、飛んで来ました。
お母さんは、「 あーっ! チュン太 ! 」 と、叫びました。
それよりも早く、ぼくは、とくいのジャンプで、「 パクッ 」
お母さんは、 「 クロ ! 出しなさい!!! 早く! 」
こわい顔です。
ぼくは、びっくりして、口を、あきました。
すずめのヒナは、ぼくの口から、飛び出して、気を失いそうに、まいおりました。
お母さんは、「 チュン太 ! 」 と言いながら、かけよって、そっと、手の中に入れると、
ぼくの方に来ます。
すごく、こわい顔。
そして、 「 ほら ! チュン太よ !
この間の、すずめのヒナよ ! 忘れたの ?
小さい子を、いじめたら、 メッ でしょう ! 」
お母さんは、目を、大きくして、怒っています。
ぼくは、耳も、頭も、ぜんぶ低くしました。
( ぼく、いじめてないよ。
チュン太が、飛んで来たから、つかまえただけなのに。
けがしないように、そっと、くわえたよ。
お母さん、そんなに、怒らないで。 お願い。)
お母さんは、もう一度、ぼくに向かって、 「 メッ !! 」 と、言ってから、
「 チュン太、よしよし、こわかったねー ! 」 と言いながら、家に入っていきました。
ぼくは、悲しくなりました。
ひなちゃんと、ひゅうがが、保育園から帰って来ると、おやつの時間です。
お母さんは、ぼくを、見ながら、今日のことを、話しています。
ひなちゃんが、 「 クロを、ほめてあげた ? 」 と、聞きます。
「 なぜほめるの ? クロは、くわえたのよ。小さなチュン太を ! 」 と、お母さんは、言います。
「 クロが、つかまえなかったら、どこかに、行っちゃったかもしれないでしょう ?」
「 そうねぇ、 じゃあ、クロに、ありがとうを、言わなければ、いけないね。 」
「うん ! チュン太は、けが、しなかったんでしょう ? クロ、おりこう ! 」
ひなちゃんは、ぼくの頭を、なでました。
( ひなちゃん、ありがとう ! )
夜になりました。
お母さんが、家から出てきました。
ぼくは、 [おすわり] をしました。
お母さんも、ぼくの、前まで来て、すわりました。
「 クロ、ごめんね。 クロの気持ち、分からなくって、おこっちゃって、ごめん。 」
お母さんは、ぼくを、だきしめました。
ぼくは、少ししっぽを、ふりました。
しっぽが、しばふの上を、なでる音が、します。
「 ありがとねー、クロ ! よしよし。 よしよし。 ほんとに悪かったねぇ。 」
こんどは、からだを、さすって、くれました。
ぼくは、うれしくなって、お母さんの、ほっぺを、なめました。
なみだの、あじが、しました。
−−−11話につづく---