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第77話「時を刻む者」

~関所町パスガ~

概要は割愛。第5話参照


―――ふと、思い出す。ここで逃げ続けなきゃいけなかった、ワシとマスター。

裏切り者のあの女がさらにマスターの心を追い詰めた。ワシならとっくに参っているのに、あやつは弱音を吐かずに仲間を守るため、必死に逃避行の旅をしていた。まったく凄まじい男よ…。ワシが女ならとっくに惚れ取るわい。おっと、現在進行形で惚れかかっとる…いや、惚れてる女の痴話喧嘩を見てみよう。



「……ですから!このままいくと!トイフェル峡谷の魔橋エリアに入ってまたサタンと戦わなきゃいけなくなるんですっ!!」

「だから、なんだっていうの?あそこはランダムポップですので、あたらなきゃいいのです。万が一、出くわしたところでわたくしの精霊魔法とマスターの攻撃力でイチコロですわ!!」


―――おいおい。そんなくだらねーことでもめるのか。ちょっと前までの事を思い返すと、こんな下らんことでモメれるだけ幸せというものか。マスターはどういう判断をするのやら?


ワシはマスターをみると上の空で景色を眺めていた。


―――こっちはこっちでのん気な感じかよ…。ワシの気苦労はどこへやら…。


『マスター!!どっちへいくんですか??』

「は?ぃえ?」

「ですから、トイフェル峡谷を越えるのか、ウルススにいくのか!?決めてください。」

「おおうwそういうことか。びっくりさせるなよw」

セイメイは少し考えていた。

「うん。ウルススに寄ろう。なぜなら、じっくり町を見たことがないというのもあるし、これといってあそこに用事がなかったから逆にいってみたいという意味でウルススにいこう!」

「ワーイ!やったぁー!」

クリスは無邪気に喜んでいた。

 つい先日はここが激戦区でだった。この道で悪戦苦闘をしていたことを踏みしめるように、道を歩きマスターとワシはウルススの町へ入ったのだ。


 ~自然要塞都市ウルスス~


大時計台をじっくり見るのは初めてだ。我々は観光がてら町を探索した。


「マスター。ワシのクエストなんじゃが…、ここでサイドクエストがある。こなしてよいか?」

「ああ、かまわんよ。どんなクエストだ?」

「“時の街の歴史”というのがある。これがどうやらサイドクエストになる。」

「ほほう。俺もやるかな?」

「はいはーい!私もやるぅ!」

「わたくしもコンプリートさせたいですね。」

「じゃあ、みんなでやろう。」


クエストの内容はこの街の情報収集のクエストだった。


大時計台にのぼり、仕組みを学んだ。


「この世界の時間を決めたのはここが“真のど真ん中”ということらしいわい。」


かつてイーリアスは神々の時代、東国を除く全てはココが中心として存在した。その中で、時の刻み方やや神々の司る役割を決めたそうだ。


「ここで何がサイドストーリーなんだかな?」

「占星術の知識を覚えた。とワシは出ている。」

「ほーん、他の人間は知識枠扱いなのだろうな。」

「まぁクエストをこなせば、名声度が上がるしまぁいいか。」


名声度…NPCへのプレイヤー認知度をあげるようなもの。その分、特殊クエストではこの部分が高くないと進めないものもある。


ふと、時計台より下を見ると、なにやら人だかりが出来ている。

「野次馬しにいこうぜ?」とマスターはいうと、みんなで降りていった。


~自然要塞都市ウルスス・大時計台下~


なにやらもめている。


「おい、てめー!なんで狩りPTなのに、何もしないんだ。」

「している。」

「は?ただ突っ立っているだけじゃないか。」

「そんなことはない。私が手を出すまでもないということだ。」


「おい、なんだあれ?」

「なんか狩りの事でもめているようだな?」

「もめるならPTパーティーVCヴォイスチャットでモメればいいのに、わざわざ一般にして晒しまがいをするなんて、下品ですわね。」


マスターが動こうとすると、ワシは腕を掴んだ。


「マスター、前のアンタなら止めはせん。今は一国の主だ。他のギルドから睨まれるのだけは極力避けたほうがいい。占領戦もあるんじゃから、ここは自重せよ。」

「くっ…。何も出来ないマスターなんて俺は…ごめんだ。」

さらに腕を掴んだ。

「マスター!もうあんただけのギルドじゃなくなってきている。マスターを担ぐことでアーモロトを手にした。これ以上の結果を今はみんな望んじゃいない。今は今いるギルメンを大事にしたほうがいい。」

「セイメイさん、お気持ちはわかります。私を拾ってくれたとき、実はうれしかったんです。私が動きます。待っててください。」

「おい!嬢ちゃん!まてって…。」


クリスが颯爽と現れ、喧嘩の仲裁に入った。


「あなたたち、ここでなにやっているの?」

「ああ?なんだ?てめーわ!?」

「オケアノス所属、親衛隊長クリスティーナ。あなたは?」


「あちゃー、名前だしおったわい…。」

「まぁみてやろうじゃないか?わけぇーのが、俺の意思を引き継いでいる。俺はうれしいぜ?」

マスターはニヤニヤと俺の困り顔をよそに笑いつけていた。


「おけあのす??」

もめている仲間の一人が血相を変える。

「う、まっ、まさか!エウロパを壊滅に追い込んだという…」

「み、みろ。あそこに城主がいるじゃねーか!?」


野次馬を含み、マスターをいっせいにみた。


野次馬はどよめきと、おお!という歓声が同時に沸いた。


「おいおいおい城主様、領地の見回りですか?ギルメン減って自分が治安維持しなきゃいけないなんて、マスターとして、情けないですね~!ハハハハハ!!」


マスターは挑発に乗ってしまった。

クリスを下がらせて得意げに話を始めた。


「ほう、貴殿は中々腕の立つ者のようだな?どれ、我がギルドでその力を発揮してみないか?給料は倍出すぞ?」

「けっ!誰がてめーんとこにいくかよ!ぽっと出の雑魚ギルドがたまたま仲間集めて倒しただけじゃねーか。」

「ははは!!君は面白い発想の持ち主のようだ。その想像の翼を俺にくれないか?そんなたまたまでエウロパに勝てるのなら、なぜ貴様のギルドは連合でつぶさなかった?強いんだろ?なぜやらなかったのか?出来ないから今までやらなかったのだろ?それともあれか。身一つで仲間を募る努力をするのがめんどくさいのか?それじゃあ俺のギルドに勝つことすらできんよ。ハハハハハ!!」

「んだと???」というと、武器を抜いた。

マスターは頂き!という顔をした。

「クリス、もう少し下がれ。俺がこの喧嘩勝ってやる…。」

こうなると、とまらないのがマスターだ。ギルドやギルメンを他人にバカにされると黙っていられない性分だ。仲間思いなのはわかるが、いい意味でも悪い意味でもこの性格だ。


マスターは青龍偃月刀を抜くと、相手はたじろいだ。


「ば、バカな!?神器だと??」

「ほう、知っているのか。神器を。ならばフェアではないな。刀で勝負するか?」

「ば、バカにしやがって!!」

「おーっと!まてよ?おまえまだクラスアップ前じゃないか?レベルは?武器は?それくらいの情報でやる前に勝敗が決まる。教えてもらおうか?武器を抜くからには“決闘”でいくんだよな?」


決闘モード、PKと違い倉庫金額を含めた1/3をかけて戦う。勝った方がそれを問答無用でもらっていく。


野次馬がどよめき、決闘コールがかかる。


引くに引けない相手は、仲間の一人が消えていった。


「くそ…!いつかこの屈辱かえしやるからな!」というと、蜘蛛の子を散らすようにログアウトしていった。


野次馬は、なんだよつまんねーといいながら解散していった。ある野次馬は俺は全額アンタにかけるつもりだったのに儲けがなくなっちまったよ~!といわれる始末。マスターは今度頼むわ~と笑顔で交わしていった。


なにはともあれ、ギルドの品位が失われることはなかったようだ。

セイメイはクリスに近づいて頭をなでた。


「よくいった!それでこそ、オケアノスのギルメンだ。弱気を助け、強気をくじく。俺は好きだぜ?」


―――せ、セイメイさんが“私のこと好き”だなんて!!??


目がうるうるして、()()()している。いつの時代も、恋する乙女の勘違いは、交通事故よりひどい。


―――お嬢~!ちげーぞ!!姿勢がよかった!って意味で…!


「ちょ、ちょっと!セイメイ様!!私はいつでもいこうと思ってましたのよ!?」

「あー知っているよ。ハイエルフが控えているんだ。俺が負けるわけないんだよな?背中を預けているんだぜ?頼りにしているよ?」


―――もお!私がいなければ、ダメな男なんだから~!


頭からハートマークが浮かんでは消え、浮かんでは消えてを繰り返していた。


―――おいぃいい!!この二人人選ミスってない??ミスってるよね??ワシこれ捌くの無理だよ?マスター!!???


マスターはワシの心配をよそにプレイヤーに声をかけた。さきほど、どつかれたプレイヤーだ。


「大丈夫かい?」

「おまえはだれだ?」

「なっ!?」


クリスは驚き、イライラしていたがマスターは何食わぬ顔で会話を続ける。


「紆余曲折あって、このあたりの納める領主ってことになっている、セイメイという者だ。ガラじゃないんだけど、仲裁させてもらった。君の名は?」

「ルカだ。」

「そうか。いいネーミングだね。うちにこないか?」

「うち?家ならないぞ?」

「そうじゃねーよwギルドにこないかという話だよw」

「はいったことないから体験でよければ…。」

「おし、決まりだ。…契約書を送った。見れるか?」

「…。これか…。」

「おう?俺からは見れない。そこの下にあるマークを押せば、契約成立。ギルドマークをどこにつけるかお好みで選べる。」

どうやらギルドに関してはまったくの新規と同じような躓きをしている。

「まぁうちはPKもなんでもありだから…あーこの前変わったか。んーまぁ自由だから!w」


―――おいぃぃぃぃぃ!!ざっくりすぎんか??マスター!??


こうしてわけわからん捨て猫を拾ってくる不良はよくいる。

まさにこの世界でやり続けるバカはうちのマスターだけで十分だ。

経過を見守ろうとしよう…。


かくして、新しいギルメンを加入させたセイメイは仲間を増やして、一路、ロームレスへ向かうのであった。



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