第75話「王都炎上」
~グラース港~
ようやく無事にグラース港に着くと、厩舎に預けていた馬を取り出しにいく。母艦エスメラルダはグラース港沖で停泊したままだった。どうやら滅殫さんの防衛がなんか影響しているのかもしれない。この町に滞在していると、他の冒険者がちらちらと見ている。エスメラルダでおきた内容を説明すると、カルディアが馬にさっそうと乗りこういった。
「さっさとこの町を出ようぜ!?」
唯華は馬の顔をなでて落ち着かせつつも、顔は険しい表情を隠せていない。
「そうね。私たちは占領ギルド、大手のギルドに目をつけられているという自覚を再認識したほうがよさそうね。」
「それは僕が一緒に同行したせいかもしれないし、無駄にギルドの名を売ってしまったからかもしれない。ユーグ君のクエストだって、PKK(返討)もそうだ。この旅は色々と目立つことが多かった。」
ファウストは周りを警戒しながらいう。ふとピピンをみると、馬を用意してない。
「ピピンさん、どうしたんですか?」
「おいユーグ、お前の後ろに乗せろ。何もなければいいんだけどな…。」
「いいですけど…。自分の馬はどうするんですか?」
「金払って移送させる。」
「わ、わかりました。乗ってください。」
馬をぐるりと回してここまで来た道を戻り、大風車地帯の大風車を目指し一斉に駆け出した。
~大風車地帯~
大風車の周りには以前のようなオオカブトガニの群れはいなく穏やかな海に月が綺麗に映し出していた。
「ここまでくれば、とりあえず安心だ。」少しスピードを落としながらアーモロトを目指していたが、そんな矢先に森のほうからざわめきが聞こえてくる。
ガサガサガサ…
「追っ手が??早すぎないか!?」
こちらは身構えて、馬を下げる。武器を抜いて相手の出方をみようとしたとき、黒い影が複数現れる!!
バサバサバサバサッ!!!
黒い衣、獣の羽織を纏っている。暗殺者が好む装備だ。回避・移動速度・CCの一部無効化といった代物。兜はモンスターが装備している髑髏の兜だ。こちらが、攻撃態勢をとろうとした時、黒ずくめの集団の中から顔を出してきた。
「よぉ!久しぶりだな。若僧!」
「セ、セルさん!?」
――――――――――――――――――
「まぁ立ち話もなんだ、移動しながら話をしよう。俺らも移動の最中なんだが、後ろから土煙が上がったから、俺らは身を潜めていただけだ。」
――――ことの成り行きと今回の旅を説明していた。ここでの出来事、アルビオン諸島のこと、暗黒騎士への昇格ができたこと、エスメラルダのこと、今までのことが起きたことを洗いざらい話をしていた。
「フハハハ!!災難だなw何が面白いって、捕まっちまうとこが笑える。」
「笑い事じゃないんだけど?めんどくさかったんだから!」
唯華はふくれながら文句ブーブーだ。
「おい、小僧。暗黒騎士おめでとうな。」
「あ、ありがとうございます。」
「そんなかしこまんな。」
「いやまぁ…。」
セルさんは、セイメイさんと対等に口が聞けて、セイメイさんからの信頼もある。あの戦い以降、別行動しているのは、この世界の情勢を調べるスパイ活動を裏で行っているためだ。表向きは貿易商として各地方の情報収集を行っている。無論、占領戦においては参加する友軍のギルドマスターだ。
「まぁむりしなくてもいいけどよ。それより、北の方でなにやらきな臭い話を耳にした。」
「え?」
「占領戦のにおいがする。」
「まさか、アーモロトへの進行が決定したのか?」
カルディアが顔をのぞかせた。
「いやその逆だ。」
「北の大地、ケブネカイゼを含む妖精の国へ、あの【マグナカルタ】が侵攻しようという話だ。」
『な、なんだって!?』一同は驚いた。
「こちらの情報だとケブネカイゼ近海付近での海獣討伐クエストを表に、裏では諜報員を送り、内部の調査に入っている。」
「あそこは、北欧伝説が題材になっている地方だぞ?」
カルディアは他人事ではないような言い方をしていた。
「主にマグナカルタは騎士・聖騎士をメインにしているギルドだ。俺らのようにごった煮の寄せ集めじゃなく王道をいく。そのギルメン達の底上げを図るには、いい武器が必要だ。ちなみにあそこは、魔剣グラムやオーディン、ロキやトール、騎士からストライカーなど近接戦闘の職業はこぞって行く地方だ。無論、エルフや弓取りも関連してくる地方でもある。あそこに関連してくる神器や宝具の研究がさらに進行してしまうということになるかな?」
「いまさら研究対象にする必要性が見当たらないんだが?」
ピピンは的を得た見解をした。たしかにこの世界も5年たっており、それなりの古参がいる。いまさらあそこを占領する価値は他にあるのだろうか?
「竜伝説…、だ。たしか知っていると思うが、皆既月食・皆既日食だかで開く冥界の門?にでてくる敵を討伐すると、巨大な竜をゲットすることが出来るという超難関クエストだ。あそこのエリアに湧くといのは知っていたか?それを手にして、さらに強大な兵力が加わるとどうなる?」
「統一が夢で…なくなる!?」
「そうだ。アイオリアはまず三国を手にするといった。すでにメディオラム地方と中央首都アーモロトはこちら側に存在するが、あくまでこれらの地方は伝説も何も目立ったものがない。中央地方の一端に過ぎない。あるのは、あのでっかい山から竜がとんでくるやつぐらいだ。」
ヴァファールズドラベルグ、アーモロトの方角を見ると必ず目にする高い山だ。
「マグナカルタはアルビオン諸島という島国を拠点にしている。つまり、攻める方は上陸作戦から始まり、陣営を立ててから事を構えるのだが、あそこは母艦エスメラルダがある。水際で陸に上がる前に海上戦でつぶされてしまう。万が一それを抜けて地上戦にもっていっても、あの堅固な防衛を突破しなきゃならない。その分、端っこにあるんだけどなwまぁそんなわけで、お前んとこのBOSSに味方している以上、外の情報を引っ張ってくることで、情報戦だけは優勢かイーブンにしときたいからな。」
国境はアーモロトの国境に入っていた。
「さて長話もなんだ、この辺で別れて行動しようか。10数人が国内の敷地内でた屯っていると暇していると思われて何か企んでいると思われかねない。まぁ達者でな。またどこかで会おう。」
「はい、ありがとうございます!」
ピッと崩した敬礼のような感じで暗闇に消えていった。
「さぁもどろう。アーモロトはもうすぐだ。」
カルディアは先を急いだ。
―――あー俺の旅もこれで終わりだ。また、マスターと旅が出来る。ソロモンさん、元気にしているかな?あーー!早くみんなに会いたいな。
林道を抜けて、アーモロトが見えかかると、夜空は赤く染まっていた。
「お、おいなんだあれは!!」
馬を走らせて小高い丘にいき、アーモロトを見るとドラゴンが火を噴き街を燃やしている。
「ありえない!!通常時にドラゴンが発生するなんてイベントは盛り込まれてないぞ!?ステルスUPデートか?」
カルディアが驚いている。
「あーなんか、町システムで防災システムがUPデートするとかしないとかあったけど、ドラゴンの襲来は聞いてないぞ!!??」
ピピンがメインサイトのUPデート情報を確認している。
「まて!それって…!?」
ファウストがメガネの望遠で覗く
アイオリアが飛び跳ねてドラゴンの攻撃をかわしつつ、攻撃を加えている。またムジカとパレンテの姿も見えた。
「あ、アイオリアが戦っている!!」
「い、急ぐぞ!!」
「了解!」
一行は急いでアーモロト城内に入り、ドラゴンの場所までたどり着いた。
~アーモロト城・北城門手前~
ドラゴンの近くまで行くと大きさと威圧に驚かされる。アイオリアが降りて様子を伺っている。そこに急行した俺らはアイオリアに声をかけた。
「アイオリアどうなっているんだよ!!!おい!!」
カルディアがぶち切れている。
「おーお前ら帰ってきたのかー。ちょうどいい。こいつ倒すの手伝ってくれ。」
ケロッとした表情で俺らの問いに答えている。
「アイオリア、これはどういう状況なのかね?」
ファウストはカルディアと違い、冷静に質問した。
「あー、暇なんでUPデートの情報を見ていたら、占領ギルド主催で拠点を共有する所属するギルドにイベントを行うことが可能なんだ。報酬はなんと総額10億シルバーだぜ?やるしかねーだろ?ってなって今、君たちの帰還があったということだ。アーモロトはヴァファールズドラベルグの竜が襲来してくるとかなんとかのイベントで?ドラゴン討伐をしようというイベントらしい。各地方でそういうのできるんだぜ?城主として、こういうのやるギルドだってアピールしなきゃ防衛の時、義勇軍募れないでしょ?」
アイオリアは俺らの心配をよそに得意げな顔をしていた。
ファウストはメガネを輝かせていった。
「無論、セイメイさんの断りはいれてあるんだろうね?」
「いや…とってない。つい…やりたくなっちゃって…ハハハ!」
「まったく君って人は…。」
ファウストは頭を抱えていた。そんなファウストを横目にアイオリアはユーグを見つけるとにやりと笑った。ファウストを押しのけて俺の前に立つ。
「とうとう、選ばれし勇者の風格を手に入れたな?」
「え?あー暗黒騎士だからですか?」
「よかろう!!我が同志!勇者よ!!今宵は存分に暴れたまえ!!」
そういうと、飛び跳ねてドラゴンにドラゴンフレイムを与えていた。
ムジカとパレンテが俺らの背中を押す。
「もう皆さん!!早くしてください!!アイオリアさん、自分が攻撃力高いからいいことにめちゃくちゃですよ~。『君は大魔導士として活躍する場を与えよう』とかひどい…。」
「昔からアイオリアさんってあんな感じなんですか?ついていくのに必死ですよ…。皆さんが遅いからアイオリアさんがイベント勝手に進めて…。いいから皆さんもこのイベントを終わらせてくださいぃ~~!」
「やれやれ…」
「こんなんばっか…。」
「フフフ!!」
「おらいけ!後方支援はこのピピン様が全力でやってやる!」
「よし!!みんな、アイオリアに続け!!」
「っしゃあー!!」
いっせいにドラゴンに向かって走りだした。
―――これで俺の暗黒騎士への旅は終わりを迎えた。せっかく帰ってきたのに、とんでもない出向かいだ。それより何よりうれしかったのは、笑顔で迎え入れてくれて何気ない会話をしてくれた事だ。
なんだかんだいってみんなこのギルドの雰囲気が大好きだってことだ。俺も大好きだ。こんなギルドを作ったマスターに感謝しよう。
ありがとう。
そして、まだ見ぬ仲間に、全プレイヤーに、幸あれ。
――――― 第弐章 完 ―――――
はい、ということでいまさらですが、トライ・オブ・スパーダの意味をご理解いただけましたでしょうか?ええ、そうです。お荷物だったユーグを大富豪で遊ぶスペードの3に見立てて、(スペード=スパーダ、3=トライ)タイトルを書きました。JOKERを倒したときにこのネタ晴らしをしました。どんな人にも輝く瞬間はある。それを伝えたくて、願いを込めてタイトルと素材を選びました。
今後のユーグの活躍をご期待ください。次章はお休みですw
次に、第參章ですが、活動報告に記載があります。次回、Wキャストです!!
御期待ください。





