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第61話「神の圧政」

~ガレオン船~


ユーグは、灯台に火を灯しアルビオン島を迂回し、汚染された港に向かっていた。

汚染された港、これもアーソナ国の呪いによって荒廃させられた港町だ。ユーグは地図をみて気づいた事があった。


―――あれ?おかしいMAP上に澱んだ海がただの海に変わってきている。おそらくクエストの影響だろう。灯台の明かりが回復し、徐々に魔女の魔力が弱まってきているのがわかる。このまま、アーソナ国へ総攻撃をかければ終わりなのだが、ユリゼン王国が手薄になる。そうなると第三勢力のサーマスがどう動くのか、虎視眈々と狙っているという懸念は脱ぎされない。その保険をかけるためのシナリオのクエストであった。


「サーマリック島か、初めて渡るなぁ。気にはなっていたけど…。」


~サーマリック島~


四神の一人、サーマスが移り住んだことに由来し、サーマリックと名付けられた。

北は寒冷地、南は比較的穏やかな気候となっており、サーマス共和国のすぐとなりには高原地帯がある。ここでの牧畜業が盛んで酪農による牛などが放牧されている。そのため、牛乳から生成されるチーズやバターなど大量にできる。牛やヤギなどの動物は比較的寒いところの方が快適である。イメージするとしたら、北海道の酪農やアルプスでの生活が近い。


~汚染された港町(旧:ファーベル)~


かつては漁師町として栄えていた町なのだが、北の魔女の魔力により、周辺の海は荒れ果てモンスターすら近づくことのない海に変貌してしまった。このことにより漁業は壊滅的ダメージとなり、廃業。元々牧草地帯が多かったため、牧畜業に拍車がかかり、今では防寒具の素材はここサーマリック島で獲得することが多くなる。


「サーマスはいけば、なんとなくわかるけど、気になるのは北の教会だよね?」唯華が話しかけてきた。

「そうですね。まずは、サーマス共和国に入って三賢者と謁見しなくちゃいけませんけどね…。」

「三賢者?」

「はい、なんでも教皇を支える重役だと語られているそうですよ。ここの国では…。」

「へーそうなんだ。」


ー三賢者、キリスト教の『東方の三賢者』が有名だな。


タブを開いて調べてみると…


黄金と乳香にゅうこう、そして没薬もつやくを渡した人達だそうだ。もっと調べてみるか…。


黄金は…王権の象徴?

乳香は…神性の象徴

没薬は…将来の受難である死の象徴






黄金は…おそらく、今後の生活費の足しにすることなんだろうな、子育て大変だしね。


乳香が…わからない!!くそ!よくわからん。


ユーグは更に調べてみた。


【ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂のこと。乳香の名は、その乳白色の色に由来する。漢方にも用いられ、鎮痛、止血、筋肉の攣縮攣急の緩和といった効能があるとされる。また、多く流通している南アラビア地域では、唾液分泌の促進やリラクゼーションのために乳香樹脂をガムのように噛むことがある。】


なるほど!要は薬だな。


でも薬があるということは、没薬はなんぞや??


あーあった。


【ムクロジ目カンラン科コンミフォラ属(ミルラノキ属)の各種樹木から分泌される、赤褐色の植物性ゴム樹脂のことである。古くから香として焚いて使用されていた記録が残されている。 また殺菌作用を持つことが知られており、鎮静薬、鎮痛薬としても使用されていた。 】


ふむ。こりゃ塗り薬か。そうすると…


黄金は…生活費

乳香は…服用薬

没薬は…塗り薬


どれも、何かあった時には欠かせないものばかりだな。



しかし、象徴という点が気になる。


これはなんだ?この筋での推理であっているのか?

おそらく、これに似せたゲーム上の何かが存在すると思われる。


このまま進んでいくしかないかと思うと少し不安ではあるが、おそらく簡単なクエストだろうと思っている。



この軽い気持ちが後々仇となった。



~汚染された港町(旧:ファーベル)~


ダグラスは桟橋につけると待っているということだ。


荒廃した町は、NPCはいるものの、どれも他のNPCとは違い、荒んだ格好をしている。

町を抜けた俺らは南のサーマス共和国を目指す。


しばらくすると、川をまたいだ橋に差し掛かる。

すると、物見小屋からNPCが降りてきて行く手を阻んできた。

≪これより先は、教皇様がおられる神聖な国、どこから入ってきた!≫

すっと【ステュアート公の推薦状】を見せる。

≪こ、これは!≫

驚くリアクションのあとに冷静な答えが返ってくる。

≪間もなく交代の時間だ。その時に同行してもらう。≫


「ほーん、時間かかるのか?」

「いやわからないですけど…。」


とりあえず、待っていると反対側からNPCが歩いてきて交代作業を行い、俺らは同行してサーマス共和国に入国することになった。


~サーマス共和国~


城門が開くとそこは閉鎖的な街並みが広がる。人々はローブを被り一律同じ服装だ。完全に宗教国家の異質な雰囲気を漂わせている。

「おいおいおいおい。なんだよこの町…」カルディアが辛気臭い街並みを目を細めて見て言う。

「なんで、こんな風になっているの?」唯華は少し引いている。

「鎖国的な国であるが、ここまで宗教で統一されているのも不思議な国だ。不気味な街だな。」

町にいる人々、NPCはこちらを見て怯えている表情をみせる。


少し様子がおかしいと思いながら、進んでいくと大きな大聖堂がそびえ立っていた。


~聖サーマス大聖堂~


煌びやかな支柱が立ち並び、奥にはステンドグラスの窓が敷き詰められており、天井にはユリゼン・アーソナ・ルヴァ、そして、中央にはサーマスがいた。サーマスは強さを顕著に表す躍動的な動きをしていた。


奥の壇上に三賢者らしきものが立っており、その下の広場まで案内された。

周りは衛兵に囲まれている。三賢者が俺に話しかけてきた。


―――メルキオール、バルダザール、カスパール これらが該当する三賢者はどいつだ?


バルダザールに当たる壮年から話し始める。

≪異国、スチュアート公の推薦状をお持ちの勇者殿よ。我がサーマスになんの御用か?≫

「我々はこのアルビオン諸島を統一すべく使者として伺っている。」

≪ほう、それは我が国への宣戦布告か?≫メルキオールに当たる青年が口調が強めにいってくる。

「違う!!」

≪我々は静かに過ごしている…。それを脅かすのか?≫

「脅かすつもりはないです!!」


―――くそ、3:1では舌戦に勝てる気がしない。というか、なんだこのクエストの会話は!!

   このままだと堂々巡り、もしくはクエストが進まずに壁にぶち当たる…!


ふと、壇上の奥から、神々しい服装を纏った司教が現れた。



≪ルヴァの使者よ、お引き取り願おう。≫

「この国を統一しようと思わないか!?」

≪…。≫

司教はすっと手を挙げて衛兵に合図を送る。

衛兵は持っている槍や剣の刃を向けてくる。


≪取り押さえろ!!≫

わーっと一気に囲まれ、なすすべもなく捕縛されてしまった。


―――体が動かない。こんなことあるのか…!?


そのまま、街はずれの牢獄に閉じ込められてしまった。


~サーマス共和国・牢獄~


薄暗い地下に連れていかれ投獄される。

その中で脱出を図るように動き回っていた。


「クソ!!ほどけねー!!」ピピンが縄をほどこうとする。

「なんで俺らまで捕縛されるんだよ。」カルディアが思いっ切り腕を広げようとしてもプロテクトがかかっているようで、縄はほどけるどころか、閉まる様になっていた。

「なにこのクエスト!!信じらんなーい!!」唯華は半ベソをかいていた。

「ん~なにかおかしい…。」ファウストは真剣な顔をしていた。

「おい、真剣な顔してても、縄で縛られているせいで、間抜けだぞ…!!」とピピンは嫌味をいっている。


「くそぉ…ほどけない。」

「ん!どこかに仕掛けがあるはずだ。このままログアウトもできないっていうのは、おかしいどこかにあるはずだ。」


壁を見渡すが、特にそれらしき仕掛けがない。


その時、レーヴァティンが鈍く光りだした。


剣が背中から抜けて俺の前に現れた。

うっすらと目を開き、語りかける。

≪主ヨ…、真実ヲ見ツケロ…。≫

というと、俺に括られていた縄がほどけた。


「仲間の縄も頼む!!」


必死に縄の結び目をほどこうとするが、プロテクトがかかっている。


「おい!!なんとかしろ!」


≪主ノミ…我ガ魔力ハ通ジヌ…≫


―――持ち主以外、このギミックは崩せないのか…。


「仕方ない。ユーグ君、君はここから脱出してクエストを進めてくれ。」

「暇だなー。」ピピンはごろんと寝ころんだ。

「まぁ仕方ないな。ログアウトは…あーやっぱできないらしい。」

ファウストはなんとかシステムを開こうとするが出来なかったようだ。


俺は牢獄を抜けるため、鍵のところに向かう。

レーヴァティンは目を開いており、鍵を魔力で開錠する。


「とりあえず、みんなここから出ましょう!」

「いや、一人減る分には誤魔化せるけど全員はまずい。君一人で調査してこのクエストを終わらせるんだ。」

「ファウストさん…。」

「いいからいけって。待つのめんどくさいからさっさと終わらせてこい!」

カルディアが肩で俺の背中を押し出した。

俺の

「…くそっ!待っててください!!すぐ戻ります!」


そういうと、レーヴァティンを背中に納めて衛兵の目を盗んで階段の場所までたどり着く。


ユーグは地下牢に漂う暗闇の海から這い出るように足音を立てることなく一気に駆け上がる。出入口にたったユーグは月明かりを避け、闇を縫うように城門に向かって走り抜けた。


今は木々の陰が身を潜めるにはもってこいの隠れ蓑だった。


イーリアスの夜は今日も綺麗な満月だった。





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