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第60話「晴れない靄」

一方、セイメイは不思議な話に耳を傾けていた。


~メディオラム共和国・ファサール国会議事堂~


セイメイはユーグの一報をまだ聞いてない。今はフォルツァのベルスと会議をしている。


「~~であったり、今後はこのように展開していこうと思っています。」

「なるほど。いやぁ流石セイメイ殿w秀悦な考えだ。」

「いえいえ。今後の展開は以上のように行えば、よほどの戦力が来ない限り、防衛は可能かと…。」

「記念に占領戦というギルドもいますから、そういうのも相手しないといけませんね。」

「それもまた楽しくやれればいいと思いますよ。それでも戦いの費用は莫大ですから、記念の占領戦でもマイナスの補填をするのは中々難しいですけどね…。」

「なるほど、では今後そのようにしましょう。」

「ええ、ベルスさんには助けられてばかりです。」

「そんなことはない。お互い様ですよ。頑張りましょう!」


というと、ベルスは一呼吸を置いてセイメイに話しかける。


「それより、最近、巷では噂の自立型AIの導入がベータ版の時期に投入されていたのをご存知ですか?」

「それは、NPCの事ですか?」

「ちょっと違います。」


ベルスはゆっくりと席を立ち、外を見ている。


「この世界には、モンスターまたは敵対象のキャラというCPU、中立のNPCがいる。NPCは基本、我々に不利益を被らず、ただ案内する・情報を提供するというモノだが、CPUという概念は、モンスターをCPU制御で動かしている。ユーグ君がこれから対峙するランスロットも、NPCからCPU制御下のENEMY表記に切り替わるので、何も考えず普通に戦っていくでしょう。」


「ああ、そうだな。まあ会話の流れでNPCは敵じゃない。CPUやモンスターや固有名詞を出す時は敵と認識していたわ。おう?そうだな。それとなにが関係しているんだ?」

「いえ、人間社会もそのような認識が敵味方の【ENEMY表記がされる】識別化できるといいななんて思ったことないですか?」


「そうだな…。」セイメイは営業マン時代を思い出していた。


「VRMMORPG、ありとあらゆるタイトルで数多の名もなきドラマがある。セイメイさん、あなたの立身出世もその一つでしかない。その「名もなきドラマ」を作り上げる事で自立型AIは、人間社会に溶け込ませようにとしている。これってどういうことかわかりますか?」

「人間と機械の共存…?」

「ええ、そういうことです。AIが入ることで意図的に人間社会に埋もれた人材を掘り起こして、あるべき立場へ押し上げる。なんてことは、今後あるかもしれません。」

「おい、それが俺だって言いたいのか?」

「そうだったら、セイメイさんのお話は面白くないですよ。人と人が出会って奇蹟を起こしたから、あなたのようなカリスマが生まれた。そうでしょ?」

「俺はカリスマになりたかったわけじゃない。ただ、気にくわないことや不条理な事はゲーム世界だけはしたくなかっただけだ。」

「あなたは優しい方だ。だから、ユーグ君や、ソロモン氏、そしてあのアイオリアが認めた方だ。私もあなたと知り合えたことで荒んだ気持ちを晴れやかにしてくれた。」

セイメイは少し照れ笑いしていた。

「俺は…少しぐらい良い思いはしたかったからな。」

「ええ、それも人間臭くて、完璧な聖人君主でないから好かれるんですよ。しかし、今回の話は少し恐ろしいけど面白い話ですね。」

「ホラー映画や怪談は勘弁だぜ?俺は苦手だ。」

「フフフ…まぁ、話を続けます。今まで人間社会は、その人の風貌や肩書きで“本質”をみていなかった。つまり、才能のないものは、どんな高学歴でも、どんなに美しくても、生産性のないものは排除するという方向にシフトしてきていくというのが、ある学者の一説だ。」

「おいおいおいw人権問題はどうなるんだ?」

「人権?ここ数年で隆起した名も無き権利にCPU…いや、自立型AIが保護すると思いますか?人類は愚かにも戦争や略奪、人体実験に大量殺戮、自然環境の破壊、ありとあらゆる過ちを犯してきている。それをAIがデータを算出し、我々人間をどう見る?地球という大きなゆりかごの中で、邪魔な害虫ではないのか?」

「うう…。たしかに…。」

「その前段階の試作機をこのイーリアスでテストプレイしていたらどうなる?技術の進歩でまだ人工筋肉や視認よるパワー調整もまだそこまで実践的な研究を行えてない。機械一体を完璧に動かすエネルギーの確保もまだままならない。しかし、()()()とシステムをリンクさせることで、我々と変わらないプレーイングを行えたら?あくまで我々人間ヒューマンは休むという事が必須だが、彼らは休むという“充電”というのを必要としない。これらがもたらす結果は?」

「廃人プレイよりひでぇな。“絶人プレイ”という表現が正しいのか?」

「いい表現ですね。もう“人”ではないですよね。」

武者震いをした。

「…この先、人類はどんな方向に舵を取るのか、己の意志とは正反対の方にいくのか、このゲーム限らずですが、既にその自立型試作AIがイーリアスには導入されているかもしれないというお話です。」

「おいおいおい、話の展開が壮大過ぎて読めねーぞ!!」

「まぁご安心ください。我々のこの世界に導入されているといっても、欠陥もある試作機でしょうから、むかーし映画でやってた未来から超科学技術を搭載した人類を絶滅させるロボットが来るわけじゃないですからね…。」

「ベルス…。おまえも版権ギリギリを攻めるのか…。」

「さぁ、その版権もAIからしたら、融合させられますよ。版権というのは製作者側の利権の保持ですからね。AIからしたら、『なにそれ?うまいの?』という返しになるんじゃないですかね…?」

「AI様様だな。」

「この自立型試作AIが我々と接触した場合、どういうことが行われるのでしょうかね…。少し…怖いですね…。」


ベルスは外の空を見上げて思いにふけていた。


―――――――――――――――――――


~放棄された灯台~

どっしりと構えた大きな灯台だ。

まさに中世の灯台、しかも大型の立派な灯台だ。


船は灯台近くの岸に接岸して、止めた。


≪お主、俺らが案内できるのはここまでだ。灯台に火を灯してきてくれ。ここの光が船乗りを導く道しるべになる。頼んだぞ~!!≫


ユーグは下船し、灯台の元へ


「なぁ、灯台ってさ、どうやって光ってたんだ?」カルディアが問いかけた。

「現代は電気ですけど、中世までは原始的でモノを燃やしていたと聞きます。その後、松やになど、油に移行していったという感じですね。」ファウストはカルディアに教えていた。

俺は灯台の門をゆっくり開く、中はガラーンとしていて、辺りは真っ暗だ。


唯華が火を起こしてランタンに火をくべた。


「え?唯華さんそんなものもっているの?」

「あんたねぇ、旅に出るということはダンジョンにも籠ることにもなるのよ?持ち歩かないなんてことするバカいるの?」

「ああいえ…そのファウストさんが光を放つなかなぁ~なんて…」

ファウストに目線を送るとやれやれという顔をした。

「いくら光を起こすにも一定時間しか出せない。それにMPを常時削るからあまりお勧めではないのだよ。」

「あ~なるほど…。」

松明は俺らの会話をそっちのけであたりを煌々と照らしていた。

奥に階段が見えた。


「あの石畳の螺旋階段を昇れば頂上の台座につくってわけか。簡単だな。」というとピピンは足軽に登っていった。


フロアーはなくただ、永遠と続く階段のように思えるぐらい長い階段だ。


やっとの思いで階段を上り切ると大広間があった。その先にまた階段があり、どうやらその上にあるようだ。


俺らは大広間を横切ろうとすると、何か大きなものが松明の炎を揺らす。


「おい!ピピンさん!まって!!」

ピピンが振り向くと、そこには大きな目玉がギョロっとこちらをみていた。

「うわぁああああ!!」とこけて指をさして、叫ぶ声を失っていた。それを見た唯華は恐る恐る指先の方向を見ると驚いた。

「ひぃいいぃいいいい!!おばけ!!!!!」というと唯華はしりもちをつき、動けないでいる。


俺は剣を抜き、モンスターと対峙する。


「ファウストさん!光!!」

「あいよ!ちょっちまってね~!」というと、手に光の玉を呼びだした。


レーヴァティンは目を閉じたままだ。


―――こいつ!やる気あるのかよ!?


ファウストの手から放たれる光はゆっくりと大きな目玉の全体像を照らし出した。


「こいつは、イビル・ゲイザーじゃないか!!面倒な敵に出くわしたな!!」

ファウストは左手に光を持ち帰ると右手ですかさず詠唱を始めた。


クイック・アクセル!


俺は魔法弾を背中で受ける。


「よっしゃあ!!いくぜ!!」と声と同時に走り込み斬りかかる。


ずふぁーん


と、間の抜けた音が大広間に響き渡った。



―――あれ??切れない!!??そんなバカな!!


≪我が主よ。この“魔守り人”は切れぬ…≫


「おい、モンスターが話かけてきたぞ!?」とカルディアは動揺していた。


≪この影は我が魂の幻影、我に誓いを立てた主に我を切れぬ…≫


「おい、どういうことだよ!ファウスト!教えてくれ!」カルディアは焦っている。

「僕にもわからないよ。物理攻撃が聞かないってことかな?」


俺は剣の元を掴み、鍔の目玉に話しかけた。


「おい、どういうことだよ!目を開けろ!!」

そういうと、眠たそうな眼はゆっくりと瞼を開き、イビルゲイザーの方をみた。


≪おお、やはり主ではないか…。悠久の眠りから覚ましてくれた…礼をいうぞ…≫


というとイビルゲイザーの姿は徐々に薄くなり、消えてしまった。


【邪海を見渡す眼】を手に入れた。


俺は慌ててシステムにあるクエストのシナリオの情報ページを読み返した。


なになに…

【放棄された灯台の魔物を倒せ。】注釈の部分を読む

※暗黒騎士は灯台の悪夢を覚ませというクエストに切り替わる。


―――は?


「ユーグ君、どうした?」ファウストが近づいて俺に質問を投げかけてきた。

俺はクエスト概要の注釈を添えて説明をした。

「ふむ…。聖騎士ルートであれば、ここは戦闘シーンなわけだ。通りで拍子抜けしてまうわけだ。」

「えええーーん??なんだよ!ユーグ!どういう事だよ!ここにきてMOB狩りだけしかしてねーぞ!」

「そんなこと言われても…。」


カルディアは不完全燃焼のようで、イライラしていた。


イビルゲイザーが消えると大広間は、ほのかに明るく全体が把握できるようになっていた。もう一度、クエスト内容を確認していた。おもむろに足を階段の方に向けて歩き出し床に転がっている仲間を無視しして、クエストを読みながら階段を上ることにした。


~放棄された灯台・最上部・灯室~



かがり火を焚く台座ではなく、ただ中央に何かを嵌め込むような形の置場になっている。

【邪海を見渡す眼】を使うと、黒くくすんでいた玉が輝き、眩しいほどの光を放っていた。


おもわず俺は下に降りて、みんなに声をかけた。


「灯台に光を灯したぞ!!」

俺は急いで螺旋階段を転がる様に降り、一階の大きい門へ向かい、門にぶつかりながら開ききり外に出て見上げた。


見上げると、よどんだ海を照らすように遠くまで灯台の光は飛ばしていた。


俺を追ってきたファウストが肩を叩いた。


「どうやらこのクエストの参考文献は見当たらない。これはあくまで憶測で私感が入ってしまうのだが…」


「悪魔側と天使側という子供でもわかるような敵味方でわけると、イビルゲイザーは、悪魔だ。つまりは暗黒騎士の味方だ。聖騎士は天使側になるわけだよ。イビルゲイザーは自分の役目を終えたということで、君のレーヴァティンを見て浄化したという感じだ。また聖騎士ルートだった場合、恐らく、戦って勧善懲悪の構図であったと思う。」

「フンなんか、俺は霊媒師みたいなもんなのか?w」と俺は拗ねた。

「ははは。そうかもねw悪魔とか悪霊とか霊媒師かもねwこりゃいい。騎士なのに霊媒師かw」


ファウストが珍しく笑いこけている。


俺もカルディアと同じ不完全燃焼のクエストだった。


荒れた海に一閃に輝く光は、クエストをこなした俺のモヤモヤに光を刺す事はなかった。

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