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第54話「神話と伝説」

 ~大学・講義室~


 ユーグは大学の講義室の一室で数名いる中で必死に問題を解いていた。付け焼き刃の記憶と過去の記憶のデータから必死に絞り出し設問を解いていった。ほとなくして紙を教壇の上に置き、講義室を退出する。建物を出て、ユーグは大学敷地内に警備室がある。そこを左に曲がると近くの駐輪場があり、その奥にマウンテンバイクが止めてあり、急いで鍵を外しサドルに跨ると思いっ切りペダルを踏み込むのであった。

 ペダルを扱ぎながら腕時計を覗き込む。


 時刻は夕方の17:20と表示されていた。走るマウンテンバイクは勢いをまし、街路樹を抜けた街並みは夜の顔をしていた。やがて走る道路は緩やかな坂なっている。そこを下り、ユーグが住んでいるアパートへタイヤは回っていた。


 急いでユーグはログインをする。


 ―――――――――――――――――――


 ~外壁要塞ポートウィル軍港~


 急いでログインした俺は、辺りを見渡すと誰もいなかった。時間はイーリアス時間でいうと、間もなく夜更けだ。仕方なく街を練り歩くことにし、それと並行してクエストの確認をしていた。


 ユリゼン王国、かつてアルビオンの地に立った神は創造主の名前であった。ユリゼンは混沌とした地上に光をもたらし、草木を芽生えさせ、セラフィムより人を作る方法を聞き、この地アルビオンへいざなう事を決めた。

 一方、アーソナはこの世の全ての元素(化学記号といっていい。)を持ち、森羅万象を操り、あらゆるものを作りだし生き物を北の地へ住まわせた。やがて、ユリゼンとアーソナは島の中央に位置する小高い丘に建設された石の祭壇で出会い、幾夜と朝を繰り返し二人は結ばれ人間達が生まれた。人間が増えてユリゼンの目的であるアルビオンへの人間の定住が果たされたとき、天を貫こうとする大きな大樹が生え、その枝に乗ったユリゼンとアーソナは天へと昇っていた。

 やがて、東のルヴァと西のサーマスは残された人間に愛と情熱を教え、本能と強さを教える。そして、ある言葉を残して天に帰るのだが、その言葉が意味深であった。


「人の子らよ、万事世界は天国と地獄の結婚で主らは生まれた。だから、神になろうなどと思うな。人は天使にも悪魔にもなれるのだ。ゆめゆめ忘れるでない。」


 俺はポートウィルに現存する大聖堂や、遺跡をみて回った。4人の神、いや四神は人類に何を伝えたかったのだろうか。知らず知らずのうちにクエストは完了していき、3人の王と一人の魔女と話をして、二つの選択肢があり、三人の王と話をした。次のクエストで剣の出自を解いたのち、剣をもらった。その後、ランスロットとの戦いになりこの戦いでひどい目にあって無くなく帰ってきた。これまでが前回のクエストだった。

 聖騎士ルートはどうやら、北の魔女との戦いになるらしい。ここの統治者、アルトリウス王より賜るのが、あのエクスカリバーである。その後、ランスロットと共同戦線を張りアーソナを強襲、そして北の魔女を討伐し制圧後、西のサーマスは無血開城で制圧。よってアルビオン帝国が誕生するというお話なのだが…。

 暗黒騎士ルートはメドラウトから剣を受け取る。それがレーヴァテインなのだ。ここで重要なのはランスロットを討伐することなのだ。ここで話は止まっている。


 また、暗黒騎士になりたがらないディープな騎士達は、手軽に昇格できるし強いし、バフにセラフィムの加護を受ける特典がついている。これが何よりうまい。自動HP回復と聖属性のエンカウントの一部省略(但し、オーラアタックは除く)だ。では、なぜ、セイメイがギュスターヴを倒せたかというとサムライは基本的に瞬間攻撃力が高い。その分盾などがないため、犠牲している部分が大きいためでもある。

 兎にも角にもクエストはランスロットの討伐が最優先だ。CPUとはいえ、ずっとあそこで待っている。俺は色々みて回ったり、消化しているクエストの見直したりしていた。


 そんな中、VCが飛んできた。


「おい、ユーグ元気か?」

 昨日振りなのになぜか懐かしく聞こえてしまった。

「はい!元気です。」

「なんだ?その回答は?」

「あぁいえ。今日これからランスロット討伐です。」

「そうか。頑張れよ。あいつらのログインがないが、まだ帰ってきてないようだな。」

「そうですね。今、クエストを見直してました。」

「そうか。そういえば、今日テストじゃなかったか?」

「そうです。一応、なんとかなりましたけど…。」

「“可”ばっかだと就職活動で泣きをみるぞ?w」

「あ、はい。気を付けます。」

「俺の人生じゃないから別にいいけど、損するのはわかっているだろうからしっかりしろよ?」

「はい。」

「おう、じゃあまたな。」

「俺らも今、メディオラムに入っていて少し厄介な事に巻き込まれてなぁ。まぁなんとかなるから心配はすんなよ?」

「心配なんてしていませんよ。ご武運を。」

「おう、ユーグもクラスアップ頑張れよ。じゃあな。」


 というと、VCは切れた。



 しばらくすると、カルディア達がログインしてきた。



「よう、おまたせ!」

「いえいえ!大丈夫ですよ!」

「あ、おまえ今日テストどうだった??」

「ばっちりです!」

「本当かぁ??」

「まぁ単位は落ちないという点ではばっちりです!」

「…おまえ、それギリギリっていうんだぞ…。」

「ま、まぁいいじゃないですかw」

「まぁいいか。」


 唯華とファウストがきて俺のテストの事で少し話題になった。


 しかし、ピピンの姿が現れなかった。


「あれ?ピピンさん来ないですね?」


 唯華は不思議そうにいった。


「あいつはおいてこうぜ。どうせ嫌味しかいわねーんだからよ。」

「んーまぁそうねぇ。さっさとクエストをこなしましょう。」


 というと、4人で街を出てユリゼン王国に向かうこととした。


 ~ユリゼン王国~


 風景は先述の通り、ここはアルトリウス王が治めている。どこにでもあるような城下町を経由して石の祭壇に向かう。聖騎士ルートだとここで拝命を受け、北の魔女討伐を受けて、メドラウトと戦うことになるのだが、俺には用はない。今は中央に位置する石の祭壇まで足を運ぶこととなる。

 そして、ここから徒歩になるのだが、幾多のモンスターと戦って道を切り開いていた。木々の間から遠くに見える中央の丘が見えてきた。林道を歩く事数時間それは道中のことだった。



 “黒い影”が、俺に襲い掛かってきた。


「!!」


 思わず、剣を前に出して鍔迫り合いをした。


 俺の視界には光を覆うかのような体に覆い被される。


「我ト戦エ…」

「コイツ…!!」

 カルディアは大斧で黒い影を切り裂いた。しかしそこに姿はなかった。


 “黒い影”は一瞬でその場から消えていた。その場から離れる様に俺は距離を取った。


「カルディア!ユーグ君!気をつけて!!コイツはヤバイ!!」ファウストは詠唱し始めた。


 鎧は鈍く光っていた。全身黒ずくめの鎧を纏っていたのは、例の“黒き狂戦士バーサーカー”漆黒の騎士“JOKER”が立っていたのだった。


「この人!!ユーグ君!!JOKERよ!!この人が先の大戦で私たちを壊滅に追い込んだ人よ!!」

 唯華は天翔龍槍を取り出した。


 天翔龍槍…龍の刃を研ぎ澄ませた穂がついている武器


「タイマン大好き、元気先輩か!」ファウストはファイヤーピラーを発生させる。

 黒い霧でJOKERは避ける。

「だよね~。わかってはいたけど。」と苦笑いをした。

「ごめん、カルディア!ユーグ君!俺は役立たずだわ。そんな代わりに…」

 クイックアクセル! すると、俺とカルディアにかかる。

「二人がかりなら…!!」カルディアは大斧を振り投げる。


 ビースト・ブレイカー!


 大斧は大きな円盤のような回転を行い、JOKERへ真っすぐ飛んでいく。


 ―――もらったぁ!!!


 俺は距離を詰めて、一気に剣を下から振り上げた。JOKERはひょいと大斧を避けて、俺の下段からの剣筋を読んでいた。無残にも俺の剣を受け止めて蹴り飛ばされた。JOKERはカルディアをみて突進してくる。カルディアはにやりと笑い、突っ込んでくるJOKERに丸腰のカルディアは組み手を狙いに動いた。そして、JOKERの鎧の首元を掴んだ。



 おっしゃ!このまま投げれば…いける!


 勢いを使い、先ほど投げた戻ってくる大斧にバックアタックを取れると算段し、体を腰に入れて投げた。

 JOKERはすぐさま受け身を取り、迫りくる大斧を黒い霧で身を躱す。大斧はカルディアに触れると納刀する状態に戻ってしまった。JOKERはそれを逃さない。躱した勢いで抜刀をしてカルディアに回転斬りを行う。


 ブォン!ぐはッ!カルディアガードをする間もなく、左わき腹に重い一撃が入る。


 炎舞:千朱雀!


 唯華は思いっ切り槍を前に突き出し、槍から火の鳥が複数飛んでいく!JOKERはそれを大剣で防ぐしかなかった。鎧に炎が飛び散っている。


「唯華さん、ナイスです!」


 喰らえ!!燃盛ブレイジング厄災ディサスター!!!!


 ファウストの手に宿した魔法陣からどす黒い炎が放出される。足を止めたJOKERの周りに厄焔やくえんが辺りを燃やし尽くしている。


「これなら、仕留めただろ。」とファウストは額に汗をかいていた。


 JOKERはぼーっと立っていた。だが、一向に膝をつく様子や断末魔のような叫びも聞こえない。なぜだ?JOKERは、燃え盛る炎の中で、すっとハイポーションを数本一気飲み干していた。厄焔やくえんは燃やし尽くすと炎は弱まりJOKERは大剣で燻る炎を一振りで消し飛ばした。


「はぁ…はぁ…。こ、こいつは化け物か!」カルディアはわき腹を抑えながらハイポーションを飲んでいる。


 一瞬、心理的凍り付いて恐怖を感じ動けなかった。その空気をぶち壊した一筋の剣が走る。


 フンッ!!


 と、一刀両断をしようと剣を振り下ろした剣は、燃え盛るレーヴァテイン、ユーグの一振りだった。JOKERは振り向き様に大剣を構えたのだが、肩にのしかかるように剣が刺さる。さらに黒紫こくしの炎を燃え上がらせる。JOKERはユーグを跳ね除けて2.3歩下がった。


 JOKERは剣を見て、少し動揺していたようにみえた。


 JOKERはそのまま、剣を構えたまま転送アイテムを使った。


 粒子化の光が見えた。脱出される!!


「逃すか!!!」俺はJOKERにもう一太刀浴びせる様に振り下ろしたが、しかし、無常にもJOKERの残滓が無情にも剣を地に着かせた。


「くそっ!逃げられた!!」俺は叫んだ。辺りを見渡したわけだが、だれもいない。

「逃げ足の速い人だなぁ。」頭をかきながらファウストも後ろなどを確認していた。

「カルディアさん、大丈夫ですか?」唯華はカルディアの周りを警護し始めた。

「転送アイテムを使用したんだったら、もういないだろ…。くそ、いてーな…。」と唯華の肩を借りながら起き上がった。


 ―――たった一人で4人を手玉にとっている。俺の一撃がなければ、PTは全滅してただろう。それにしてもカルディアさんを手玉に取るなんてかなりの場数を踏んでいたに違いない。セイメイさんも手こずるほどのカルディアさんをここまで追い込むなんて、アイオリアさん以上の実力の持ち主なのか?


 クラスUPというのは非常に重要であるが、プレイヤースキルも非常に大事だということがよくわかった。



 4人は周囲を警戒していたが、安全を確保しながら林を抜けて草原にでた。そして少し歩いていくと目的地の丘のふもとまで到着した。


 夜は開けて、朝露に輝きを放つ光がユーグ達の目を刺していた。

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