第53話「明るい夜」
~グラース港・メイン通り~
俺は鍛冶屋に立ち寄った。
自分の騎士の鎧を渡し鋼鉄の部分を外し新しい外殻に当たる部分をオオカブトガニの抜け殻を加工してあてることになった。カラーリングは白地に黒でいこうかと思ったんだけど、暗黒騎士ってどんなだっけ?と考えてweb上のデザインなどを参考にした。
―――ふむふむ。黒地に赤、黄色を入れていくのか。レーバテインは赤紫の炎だから、赤の部分を赤紫に変えてこことここを黄色を配色すれば…。
「できたーー!」
騎士の鎧は輝くデザインが施されていたが、カラーリングにより、その色は闇の色へ変色していた。
「まあこんな感じかな?あはは…。」
俺は聖騎士を目指していたけど、暗黒騎士の剣を手にしてしまった以上、聖騎士の道は諦めて暗黒騎士の道へいざなわれた。
―――聖騎士は聖騎士で確かに強い。セイメイさんと打ち合ったギュスターヴっていう人は圧倒的に強かった。一撃もきっと重そうだ。俺はあのクラスの人と戦えるのだろうか。カルディアさんとピピンさんがバックアップしてくれたから、活躍できたんだよな。俺一人じゃ戦場でセイメイさんの足を引っ張っていたに違いない。強くなりたい。強くなって、マスターの背中を預かれるようになりたい…!
そして兜が出来たのでみてみた。
「……ぷっ!」
思わず笑ってしまった。角はベリアルのような角、面は禍々しい面構えだったw
「ハロウィンの仮装じゃねーぞ!!!」と一人でツッコミを入れてた。
と、とりあえず、オフに設定しよう。兜を被り設定を変えた。
「これで良し!」
俺は船着き場に走った。
~グラース港・船着き場~
港には色々なギルドの船が停泊していた。俺は定期船のところにいき、みんなをまっていた。
しばらくすると個々に散らばっていた仲間が集まりだした。
カルディアは俺を見るなり少し笑っていた。
「なんだそのカラーリングw」
「いや、ほら暗黒騎士になるんだったらカタチから入った方がいいかなって…。」
「おお、そうだなwユーグにしちゃあ似合わないなぁって思っちゃってさ。」
「ええ?だめですか?」
「だめじゃないけど、キャラちげーなっていうかさw」
「まぁいいじゃないですか。ユーグ君も意識高くなったということですよ?カルディア。」
ファウストはカルディアに話しかけた。
「いや悪かったな。あとはランスロットさえぶちのめせば、いいわけだ。騎士号を手にしたわけだし、この戦いが終われば問題なく帰れるわけだ。」
「はい。うまくいくかわかりませんけど…。」
「ランスロットと戦う人って相当強くないとてこずるって聞いたことありますよ。」
「なんてたって、レジェンダリーナイトですからね。」
ふとするとピピンと唯華があらわれた。
ピピンは俺に話しかけた。
「見かけだけは強そうに見えるな。悪くないんじゃないか?見た目だけはな。」
「そうね。見かけだけは、強そうね。剣技がどうかは別だけど?」
と二人は冷笑している。
「あ、あの!自分も皆さんと同じくらい強くなりたいんです。お手数ですけど、それまではおんぶにだっこに肩車させてもらいます!」
「なんだそりゃ!」とピピンは笑っていた。
「さぁ時間です。乗り込みましょうか。」とファウストがいうとぞろぞろと乗船していった。すると、どこらともなく声が聞こえる。
「おい、あれ!オケアノスじゃねーか?」
「なんで、あいつら定期船乗るんだ?ギルド船ないのかよ。」
「え?嘘だろ?あいつら今、アーモロト城の城主だろ?そんなわけないだろ!?」
と噂話をされていた。俺は頭にきて乗船中を振り切って駆け寄った。
「おい、なんだよ。文句あるのかよ。」
「あ?うるせーな。なんもいってねーよ。」
「俺のギルドバカにしただろ!?」
「はぁ?ていうか、ギルド船ないギルドが城主とか人足らねーのかよ?それともフォルツァとかに助けてもらったんじゃねーのか?セイメイも大したことねーな。」
「…おまえらフィールドにでろ。それだけ強いってんだったら俺を倒して退けるよな?」
「上等だよ!喧嘩売ってきて負けるなよ!!」
というと、ファウストが割って入ってきた。
「いやぁーすまんね。うちの若い衆がwwwお金がないギルドのマスターで参っちゃったよ~!あはは!なんなら~いつでも戦争受けるからいつでもおいで。相手するよ♪」
「なんだてめーは!?」
「僕の名はファウスト。しがない魔導士だよ。君は?」
「うっ…。おまえが??」
「え?そうだよ。ファウストだよ。どうかしたかい?」
「おまえが“死神ファウスト”かよ。チート野郎が!!」
「チートかどうかはやってみる価値あるんじゃない?」
「おい、関わるのやめようぜ?BANされるぞ!」
というと、二人はどっかにいってしまった。
「なんだぁ。意気地のない人達だな~。」
「“死神ファウスト”ってなんですか?」と俺は恐る恐る聞いた。
「あ~!エウロパ時代に言われた異名?死神って失礼だよね?悪魔ならカッコイイのに…。」
「死神もある意味カッコイイですけど…って違う!!そうじゃない!!」
「あのね、ユーグ君。喧嘩をするのは同等の人間がすることなのだよ。よく言うだろ?金持ち喧嘩せずって。我々はそういう感じにならなければいけないって思うんだよね?そう思うだろ?」
「ええ…、まぁそうでしょうけど。」
「君もそのようにいずれなるさ。君にはセイメイさんと肩を並べるだけの実力を持っているよ?」
「いえ、セイメイさん…マスターは俺の事を弟のように接してくれています。俺も兄のようにマスターを接していて…。超えられないというか、尊敬しています。」
「うむ。それもまたいいが、超えるというのはそういう事じゃない。信頼をおけるプレイヤーになれるっていったんだよ。」
「ああ…なるほど。」
「そう。それと君の“なるほど”というのは裏返しで“なんだかわかってないけど、納得しとく”というときの言葉だって覚えておくといいぞ?」
「ええ?そうなんですか?」
「いいね。その反応の方が目上には嬉しいリアクションなんだよ。覚えておくといいよ。」
「はい、わかりました。覚えておきます。」
「じゃあ乗船しよう。」
俺はファウストに促されるように乗船した。
~ガレオン船~
定時になると陸を離れ、定期船はアルビオン諸島へと航路を取った。
カルディアがファウストに声をかけた。
「ファウスト、なんであいつらボコらなかったんだよ、つまんねーな。」ファウストは微笑んでいた。
「時間もないし、そんな余裕はうちにないだろ?」
「そうだけどな。」
「まぁカルディアもいるから圧倒的に我々が勝つんだけどね。そんな弱い者いじめしてもつまらんだろ。」
「そうだな。剣を抜いたならわかるけど、抜かずに吠えているだけだからなぁ。」
「まぁもめた所で時間の無駄ってことさ。」
俺はファウストとカルディアに近づく。
「自分らも船持てますかね?」
「まあ…城主を維持できれば、船の予算だって簡単にクリアできるさ。」
「そうですね。維持することがまずは目標ですね。」
「そういうことだね。」
「大丈夫だよ。俺もファウストもいる。アイオリアもいるしなw」
「アイオリアさん、この前の戦いで活躍したんですか?」
「あれ…マスター活躍してたんか?」
「まあ、程よくしていたと思いますよw」
三人はう~んと考えていた。
そんな三人を見かねた唯華は「は~っ」とため息交じりに話しかけた。
「みえないところで頑張っているギルメンは結構いるよ?」
「そうですね。」
「でも、あいつセイメイさんの横いただけじゃね?」
「バックアタックの攻防と、あと地下にいってソロモンさんと戦ってたって聞いたけど…。」
「ああ、そうなの?」
「あーたしか情報回ってきてたなぁ。マスターの地下行きに付き添ったって話。」
「まぁアイオリアに限らず、色々活躍した人はたくさんいるよ。」
「アイオリアの場合は過度の期待が乗っかりますからわからなくもないですけどね…。」
「僕らもそう言われるような期待を持たれるように頑張ろうね。」
ファウストはみんなに諭すようにかたりかけていた。
白い崖が見えてきた。これは白亜層による白さで名付けられたというアルビオン諸島。
この地で数多の戦争が行われている。俺はそこに身を投じることになりそうだ。
―――そういえば、北の魔女となんで戦ったんだっけ?カルディアさんとピピンさんに急かされるように、クエストこなしていた気がする。もう一度見直す必要がありそうだな。
深海の黒さは夜の影響もあり、より深く暗闇が覆っていた。
~外壁要塞ポートウィル軍港~
ユリゼン王国からほと近いここは、ユリゼン王国の支配下にあり、ここには軍艦といわれる護衛艦から母艦エスメラルダまで就航している。母艦エスメラルダは攻城戦時において他国への侵攻時に用いる事が出来るのだが、今は静かに眠っている。
定期船が乗り場に到着すると、ポートウィルはまだ夜の静けさと酒場の明かりが灯っている。
すると、唯華がいった。
「あたし、そろそろ落ちるね。明日また会いましょう!ユーグ君、明日も学校でしょ?早く寝なさいよ?おやすみー!」
―――あーそうだった。この前のテストの再試があるのをすっかり忘れていた!!
「あーやべ!!答え丸暗記しないと!!」
「あ~あ、そんなんだと単位落とすぞ?」カルディアが遠い目をした。
「ユーグ君、ゲームも大事なのはわかるけどそこそこにね。」
「明日終わったらすぐinしますから!!」
「僕らの事は気にしなくていいよ。テスト頑張ってきな。」
「はい!では、おやすみなさい!寝れないけど…w」
と、いいながら俺はゲームをいったん終わらせた。
机に向かい、教科書を出して範囲を復習することになった。
―――やっべー!!とりあえず、再試だから同じ問題でるからなんとかなるだろ!出るところにアンダーライン引いて直前まで見とけばギリギリだな…。
教科書を開きノートをみるため、パラパラとページをめくった。
窓から月がみえる。机にあるライトをつけなくてもノートの文字が読めるほど、月は明るく照らしていたのだった。





