第45話「醍醐味(後編)」
一方、スカルドたちは二の門を抜けて、城内中庭に歩を進めていた。そこには死に戻りのエウロパ総戦力が集結しており、押し返されつつあった。また、正面突破を果たした、ベルス・ドリアス率いるギルドとユーグ一行は二の門にかかっていた。
「おい、ユーグ。ここ正面でまた膠着したら勝てない時間帯になってきたのわかるか?」
「ああ、たしかにもうきついですね。」
「へへへ…」
「なぁ~に企んでるんですか?」
「PROUDが裏門突破しているだろ?あっちにいって暴れてこないか?」
「ええ?マスターは正面攻めろっていってたよ?」
「相変わらず、機転の利かないおバカちゃんだな!!」
ピピンはムスッとしている。
「俺らがスカルドの方に援護にいくのは、俺らのようなスタープレイヤーがいないからだよ。」
「はぁああ????」とユーグはなにいってるんだ?という声を出す。
「正当な見解をすると、スカルド以外あんまり活躍出来てないのは、個人戦になりつつあるこの状況だよ。フィールドが広いときは数がモノをいうけど、狭いときは個人の能力が大いに活躍することがあるんだよ。俺らは、ここで戦うのもありだけど、裏門の方が一歩、歩みを進めている現状、こちらの方が若干遅い。ならば、裏に廻り加勢することにより、俺らがその突破口になろうってことだよ。」
「えええ…?」
「カルディアはやる気満々だぞ?」
カルディアはにぃっ!と笑いユーグも行くことを期待している。
「ええ、はい。はい!わかりました!!いきますよ!!!怒られる時俺は嫌だから二人ともいってよね??」
「はいはい。おら!いくぞ!」
カルディアとピピンは意気揚々と城下町を走り抜ける。それに釣られてユーグも走っていった。
二の門の正門はガシガシ殴られていてゲージが1/3ほどになっていた。
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二の門辺りまで押し返されているスカルド達は攻めあぐねていた。
「よう、スカちゃん。」とカルディアは軽く口にする。
「あなた達!なんでこんなとこにいるの??正門は??」
「ああ、正門は正門側の二の門まで来ているけど、突破しているかしないかは大きな差だ。時間も時間だしこっちにきて加勢するぜぇ!」
「ミラっちとパレンっちは??」
「ああ、二人ともあそこよ!」と指さすと、ギルメン達と前線維持で精一杯のようだ。
「おい、ユーグ。呼吸整ったか?」
「え?今普通ですけど…。」
「興奮すんなよ。クールに攻めれば、スタミナはギリギリ持つ。スタミナはうまく使えよ。」
「わかりました。」
「うっしゃあいくか。先にいくぜ。ビーストオン!!」カルディアは攻撃を上げて、最前線に飛び込み、複数のエウロパを薙ぎ払った。
「いまだ!ユーグ!!」
剣を抜いて走り込んで剣一回転させ、回転斬りを使い道を切り開く。
「おーい!道が開いたぞ!せめろ~~!」とピピンが味方を鼓舞しながら伝達をする。裏門にいた仲間たちは息を吹き返すように中庭まで攻め込み、大広間に向けて攻勢をしていく。
正門側の二の門の裏側にいたエウロパはミラ達のギルメンにやられて、正門側の二の門は陥落した。
七星連盟は大広間に向かって歩を進めるのであった。
「ベルスさん!」
「おお、スカルド!裏門突入のおかげでこちらも正面突破ができた。ありがとう!」
「それより、セイメイ様は?」
「ああ…、実は…。」
ベルスは説明がしどろもどろになるとスカルドは血の気を引いたような言い方をする。
「この大事な時に下にいるですって!!??」
「ああ、でも今はあそこにいるらしい。」
とベルスは玉座の間があるであろう場所を指し示した。
「ええ???どういうこと??」というと、伝達事項で入ってきた情報の中に、バフォメットと対峙した報告があがっている。そしてそのあとに俺とクリスが最後の通路を抜けたことが大きい。
「私がそばにいれば、精霊魔法で攻撃力増大させて、自動回復魔法を付与させられるのに…。」
「本当の一騎打ちになってしまっている。彼は全て背負ってしまったんだよ。」
「だれもこんなこと想像しなかったわね。」
「足並み揃えるのに苦労してた私としてはありがたい限りだ。」
「セルもドリアスも彼にかけているみたいだしね。」とドリアスが指示を出す後ろ姿をみていう。
「さぁ我々も大広間にいきましょうか。」
「そうね。」というと、ベルスとスカルドは大広間に続く階段へ足をかけた。
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~アーモロト城・地下用水路~
セイメイが玉座の間に入った頃。
バフォメットと対峙するアイオリアとソロモン、そしてセルがバフォメットと幾多の攻撃と反撃を繰り返しシーソーゲームを繰り広げていた。
「もうそろそろ我が主は玉座の間かな?」
「そんな心配するより、そこにいるドチビのウィッチを潰す算段に脳みそ回せ。」
「二人共自分の心配せい!」とソロモンは二人にツッコミをいれた。
「うるせー!!爺ィは俺らのブーストアップしてくれや!!あと回復も!!!」
「無駄口叩く余裕あるなら回復しないもんね~!!」
「ああ??爺ィこの戦い終わったらPKすんぞ!!ゴルァ!!」
「君達!!いい加減したまえ!!!」
『お前がいうな!!!』
バフォメットは三人の喧嘩を無視するように、攻撃を打ち込んでくる。
「これだから、デカブツは嫌いだよ!」とセルがいうと、早いステップでバフォメットの胸に逆手で斬り上げる。
「今週の、びっくりどっきり必殺技!!」
神拳奥義!!爆竜獄炎拳!!
※ 左手に燃える炎で円を描き、引き手の右の拳で円の中心を打ち抜くという必殺技
ハーゲンティは静かに魔法弾を無数に発射し、バフォメットに当てていた。
「チャーーーンス!!」アイオリアはウィッチに向かって走る。
ウィッチはよろけてバフォメットが方向転換しようとしている。
「おい、おまえ…!いい加減に落ちろ!」とセルがウィッチの耳側でいうと、ウィッチの首筋をかっ斬りその場で倒れていった。ローブを剥がすと顔を見ると亜人の女の子だった。粒子化して消えていった。
「こいつは…。」
バフォメットは咆哮しながら、闇に飲まれようとしていると、ハーゲンティはバフォメットの頭を掴み手の中に吸い込んでいった。
バフォメットの悍ましい断末魔が広場に響き渡った。
「契約ハ完了シタ。サラバダ…。」
ハーゲンティは魔法陣の中へ消えていった。
「さぁいこう!我が主の元へ!!」
「ちょっとまて。あの今週のびっくりどっきりって、まぁたおまえ!!」
「別にいいではないか!?」
「アイオリアは、バカ。以上。」
「そうじゃな。よぉし!!ワシらも先に急ぐぞぃ!」というと、セイメイのあと追うように地下用水路を走っていった。
セルは少し思うところがあったがその場を後にした。
「なんでだめなん??俺に名言やらせろぉ!!!」というとアイオリアは二人を追いかける様に走っていった。
~アーモロト城・大広間~
周りは火の海に飲まれている。
アイオリアとソロモンとセルは、隠し通路ということも念頭にあり、ゆっくりと大広間の様子を伺った。
裏側からみると、バリケードが張ってあり、エウロパのギルドは壊滅状態にも関わらず、数十名がドアを塞ぐように剣や盾、槍を掲げ張っている。また、玉座の間には見張りが二名立っている。
「おい、マスターは中にはいれたんじゃろうか?」
「この状態になる前に突入しているはず。もしやられているなら声がかかるはずだ。」
「あいつここでやられて死に戻りしている時間ないぞ?」
ドアをドンドンと押し叩く音が聞こえてくる。
するとドアを破る音がけたたましく響き、エウロパと混戦となった。
最終防衛ラインがここであるがの如く、エウロパの奮戦がはじまる。
見張り役のプレイヤーも加わり、必死の抵抗が繰り広げられている。
そのすきに三人は玉座の間に入った。
~アーモロト城・玉座の間~
中に入るとセイメイとギュスターヴの一騎討ちが行われている。
俺はふと横を見ると、三人が入ってきた。
「おまえら…!!」
「よそ見する余裕なんぞないだろうが!!!」
ギュスターヴは打ち込んでくる。
旗の近くにはディアナが弓を引いてこちらを伺う。
「おまえら下がれ!!!」
「ほう、この裏切り者が我が主君に勝てると思っているのか?」というとアイオリアは白い拳を強く握り、光を込めている。
「この人がセイメイさんの傷つけた人!!許さない!!!」
「ディアナ…。」
「このksエルフは俺に任せろ。一瞬で殺す!!」
俺はギュスターヴと鍔迫り合いをしている間に蹴り入れて突き放すと、「やめろ!!!この一騎打ちですべてかたがつく。おまえらはそこにいろ!!!!」と叫びながら、ギュスターヴに斬りかかる。
ギュスターヴと俺は走っては斬り合い、離れれば飛びスキル放ち、互いの鎧の耐久値は既にボロボロになっている。
「そ、そんな…バカな!!この人数で倒せば勝利は確実だ!!!この期に及んで一騎打ちなんて!!」
「おい!!セイメイ!!かっこつけるならまともなイケてるセリフ吐け!!今すぐギュスターヴを殺れ!負けたら承知せんぞぉ!!!!!」
「セイメイさん…。」
「マスター…。」
アイギスの付与ステータスの恩恵で俺の攻撃が躱される。
「お前の今の命中力では俺には当たらん。神器を二つ持つ俺には到底勝てまい!俺の勝ちだ!!」
「さあどうかな?」というと弓を取り出し即打ちをする。
「この期に及んで補助武器に頼って何をしようというのだ!!いい加減負けを認めろ!!!」
ギュスターヴはまた打ち込んでくる。
セイメイは刀をとっさに出してしまい、攻撃を刀で受けてしまう。
―――やべ、膝を着いちまう!!
聖騎士の力に押され、膝をつけてしまう。
「さぁこれで“しまい”だ!!落ちろ!!セイメイ!!!」
神技:雷鳴剣!!!
―――バ、この零距離で!!
雷光により周り眩い光で辺りを照らした。
セイメイさぁぁぁあああああああーーーーーーん!!!!!!
クリスの声が玉座の間に響き渡った。
玉座は二人の戦いの行く末をただ静かに見守るだけだった。