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第41話「天王山(後編)」

~首都アーモロト・外壁~


我々七星連盟は、アーモロトを包囲し各方面からの攻撃を行い、襲撃を行なっていた。

攻城戦は投石車を用いることができ、各ギルドは投石車を所持しているため、迷路のような外堀を迂回することなく、城門へ攻撃をしかけていく。


相手は投石車を破壊しなくてはならないため、現実世界のような食糧による籠城や衛生管理などはないため、ひたすら耐え抜くか撃破しまくるしか方法はないのだ。

ただ、城門越しに魔法職が大活躍するため、距離を取っての攻撃が主にあり、城門を守るため城壁から降りて魔法職を倒すという落下死を多少無視したやり方ができるのである。


またアーモロト城は地下用水路という内部侵入or外部への接触ができるため、そこでの攻防も面白い一つでもある。


さて、そんな中、城壁の一枚が破壊されるという情報が上がってきた。

「意外と早かったな。場所はどこだ?」

「PROUDです。」

「スカルド…躍起になっているな」

「しかし、良い報告ではあります。あそこに配置しているのは中々の布石ですよ。」

とベルスは好意的にとらえている。

「地下用水路の侵入はどうなっている?」

「用水路前で攻防が行われています。」

「とりあえず、スカルドのお手並み拝見といこうか。それとセルには伝達できるか?」

ローズはセルと交信をしていた。


「まだだ。

 馬鹿野郎。

 アポカリプスと交戦中だ。

 手練れがいて先に進めん。

とのことです。」

と箇条書きのようにいってて、少し笑いそうになったが、笑っている時間はない。


「アポカリプスとエウロパは共闘していやがるのは薄々わかっていたが、要所をキッチリ抑えているな。伊達に一角の占領ギルドであるプライドは壊せないか。」というと俺は歯がゆさがこみ上げてくる。


「ここにきて残り1時間とちょっと…」俺は悩みに悩んだ。というのは、ミラとパレンテの戦力をスカルドのとこに援軍に行かせれば兵力が上がるが両サイドの城壁が破られず、スカルドの一点と我々の正面のみになり、手数が減る。だが現状の兵力の分散は解消されるため、最低でも三点で攻めることが可能である。しかし、現実的な順で言うと、スカルドの城門突破が一番で、二番目に正面、三番目はセルのところである。


一番可能性の低いところが一番というのが妙に引っかかる。パスガの時も挟撃を食らうなど、小さいトラップより大きなトラップにかかることがある。

今回はその懸念が特に強い。根拠はないが、俺の勘が妙にマト得ているように感じてならない。

俺はっとした。これは、罠だ。しかも向かい入れて討つなんて、古典的にもほどがある。

俺はグランを呼び出した。

「おい!!!スカルドに城門の中に入るなとすぐ伝えろ!!」

「わかりました!…入りそうになった!といっています!!」

「そのまま城門に定期的に投石車を投げ入れて城門を再設置させないようにしろ。と伝えてほしい。」

「了解……伝達しました。」

「なぜ、突撃を中止させたのですか?」とグランは俺に問いかけた。

「あのまま一ヶ所だけ攻めていると常に死者を量産し、こちらの死に戻りカウントが伸びて、相手の死に戻りのカウントを伸ばせない。最後の攻めの30分間を、一々、2分間待たなきゃいけない。厳しいだろ。」

「自分はまだ即時復活できますね。」

「そうだ。皮肉にも俺の周りのやつらはそこまで死に戻りのカウントはそこまで遅くなってない。」

「自分は他の人よりは劣っているのになんか申し訳ないです。」

「こういった団体競技で、背丈もパラメータも違うやつらが色々なポジションで一つに向かって戦う球技あるんだぜ?」

「なんですか?それ?サッカー?」

「近いな…。ラグビーだ。」

「ラグビー??」

「そうだ。俺は高校の時、弱小チームだったけど色々教わった。適材適所に人を配置したり、一生懸命お互い戦った相手をノーサイドで終わり、お互いの健闘を祈るという紳士のスポーツだ。」

「しかも15人だ。」

「15人もいるんですか?」

「だから、これくらいの人数の総指揮を取らせてもらっているけど、あまりテンパらないのは、その経験があるからかもしれない。」

セイメイは学生時代のきつかった練習を少し思い返していた。


セイメイは、スポーツ高と目される有数の高校、盛んな球技は毎年全国大会に出るような高校で、色々なスポーツが躍動していた。今はただの普通の中堅高校だが、当時は高校の名前を言えば誰もが知っている高校だった。

そんな中、ラグビー部は弱小で全国大会に出た事すらなかった。

そんな3年の頃の出来事である。同期の部員の喫煙を目撃し、それが大会予選まで間もないのに喫煙をしていたのだった。それに絶望したセイメイは淡い正義を振りかざし退部し、進学のため部活の時間を塾に切り替えて、大学受験をすることとなった。

ラグビー部はというと、いうまでもなく2回戦敗退、くじ運も悪かったが常勝高校に敗れ彼らの青春は終わった。

また、セイメイは部活に明け暮れていたため、勉強はそこまで出来なかったが、スタートが7月赤点ギリギリであったため、推薦なんてもらえるわけでもなかった。が、地頭がそこそこ良い方だったため、死に物狂いで受験勉強をしたが2年間も机を枕にした事が祟り、センターも一次も落ちて、2次の欠員募集で受かったのが奇跡だといわれた。その後、セイメイは奇跡的にその大学へ滑り込む事となる。

蓋を開けてみれば、学年で5位の結果。現役の有名私立大学へと進学し、推薦無しの一般で受かった。

セイメイは青春の2年間を無駄にしたやつらを見下すようになった。ラグビー部の面々は浪人、または専門学校という道を進み、ラグビーとは疎遠になる道を選んでいた。またそれに激しく怒りを覚えたが、セイメイはもう一度、大学でラグビーを始めようと思ったのだが、学費を考えるとアルバイトせざるを得なかった。そこでまた青春をするのだが、それはまた別の話である。


あの無駄と思っていた苦しかった練習や部員に憎しみしかなかったが、今はそれがセイメイの精神を落ち着かせる心の余裕のかさに昇華されていた。


この思いに更けているとき、正面の城門があと少しで破壊出来るとの報告が上がった。

正面は道幅が大きいが城壁からの弓と魔法の雨が止まない即死出来るゾーンでもある。


「セイメイ!これは厳しいぞ!」とドリアスは剣を抜いて俺の前に立つ。

「あなたが俺の前に立つなんて驚いたよ。」

「腐っても今はおまえさんが盟主だ。職業としては基本の立ち回りだ。」

「くぅ~~。嬉しい事おっしゃるじゃないですか。俺も血が滾るってもんだわ。」

「アイオリア!!!!」

「ははっ!!」というと俺の横に立つ。

「あの城門突破…。いけるか?」と聞くと意気揚々に弁が立つ。

「この私に不可能な壁などないですぞ!して、如何程までに破壊すればよろしいか?」

「そうだな…3秒で壊して!!」

「おふざけが過ぎますぞ!!」

「ふざけてんのはてめーだろうが!!俺をこんなとこまで付き合わせて!!いい加減しろ!!そんなんだから不意打ちでバックアタック喰らってぶっ倒れるんだよ!」

「NOoooooooo!!!!」と嘆いていた。

「…おまえらいつもそんな漫才みたいなことやっているのか?アイオリア、おまえ意外にアホだったんだな…!!」とドリアスは飽きれていた。

「真実をいっているのに、ふざけてるのはコイツだ。俺じゃねーぞw」

「まぁどうでもいいが、先にいくぞ!!レオナルド!前進、盾を前に出せ!」

一列に城門に向かっていった。アーモロトの城壁上では魔法使い達が詠唱や精霊獣がわんさかと溜まっている。

「ソロモン!!ファウスト!!今だ!補助魔法!!」というと待機していた他のメンバーも多重にかけていった。

ファウストが指示を出す。

「プロテクションフィールドを残カウント1右から順にかけあっていって!」


プロテクションフィールドはダメがほぼ0に近い防御力を纏えるがCTが3分という大技だ。無論、MP消費も尋常じゃないほど使用する。

ベルスが焦りをみせる。

「まずいこれで全員死んだら、死に戻りまでの間、残存兵力を轢き殺しにエウロパが開門して侵攻してくる…!」

「まぁそのときはスカルドにつっついてもらいましょうかね?」

グランを呼び、伝達事項を伝えて、合図は失敗した時に伝えるようにとクギを刺した。

「とぉつげぇきぃ!!!!!!」とドリアスは号令をかけると、ウォーー!!という怒号の中、ヴァルキリーや騎士達が壁にオーラアタックを放ち、城門への総攻撃をかける。

俺は後ろで、グランへ声をかける。

「グラン、失敗じゃないが、()()からもしかけていいぞ??」

グランはスカルドへ伝達し、スカルドは破壊された城門を突破する。

ベルスは裏門から聞こえてくる声に驚いた。

「おい、どうなってるんだ?」と俺にいう。

「この突撃に乗じて裏門の兵も油断している。裏門からも攻めれば正門の方も手が緩む。」

「なんと無謀な…。」

「そうかい?」

というと、裏門の制圧が完了したと報告が上がった。

「よし、正門は現状を維持!!そして破壊!!ミラとパレンテと連絡がつくか??」

と、俺がアニマルとセルベンティにいう。

「伝達しました!早急に移動し、合流するそうです!」とセルベンティがいう。

シュラもコクっと頷いた。


城門が瓦解していく中、地下用水路において異変が起きていることに俺はまだ気づくことはなかった。


―――――――――――――――――――


~アーモロト城・地下用水路~


赤眼の狂人が侵入者であるセル率いるDGの侵攻を防いでいた。

アスリアもそこにおり、アポカリプスのギルメンがそこに全員集結していた。

「地下用水路にはいってきて圧倒的有利の状況でなぜおまえらはこのルートにこだわる??」

赤眼の狂人がセルに話しかける。

「ったく、一般回線でおしゃべりとは随分と余裕だな・・・クソが!」

お互いアサシンという職業である以上、PSプレイヤースキルと装備と立ち回りでしか決まらないという不毛な戦いを強いることになっている。

「俺らはなぁ、おまえらと同じ汚れ仕事なんだよ。」

「ああ??なにいってんだ?雑魚!」

「しかも切り捨てられることは俺らにはねーんだよ。」

彼らは黙っている。

「臭い物に蓋をするという言葉があるよな?お前らと俺らの決定的な違いは、指揮官からの信頼が圧倒的に違う。お前らは所詮、エウロパいや!ギュスターヴの犬だ。」

「てめー!!この野郎!!!」といい、斬りかかってくる。

「本当の事を言われると人って頭にくるらしいな?図星か??ああ???」

「無駄口叩く暇なんぞ、もう与えん。さっさと死に戻ってこいやぁ!!!」

というと、赤眼の狂人は影縫いを行い、姿を消すとセルの右側から斬撃を与える。

セルは変わり身の術を使い、姿を消すとアスリアの後ろに現れ、アスリアの首を斬り、出血ダメを発生させ、アスリアを粒子に変えた。

「ほう、小賢しい。」と赤眼の狂人は目を細めセルを見つめた。

これは好機と思い、セルのメンバーは赤眼に攻撃を仕掛けるが、影走りを使い、複数のDGのギルメン達の裏をとり、完全なバックアタックのポジションを取られてしまう。その間にDGの面々の足を止めダウンを取ると、オーラアタックを使う。


秘技:火遁の術!真・獄炎龍!!


足元から火龍を呼び出し赤眼の周りを燃やし尽くすとセルへめがけて火龍は大きな口を開き、DGのギルメンを喰らいつくし、セルへ迫ってくる。


「やべ!!」というと、セルはバックステップで距離を取るが間に合わない!

ガードをし、少しでもダメージを抑えるが、膝をついてしまった。


―――やっべーーー!


「これで終わりだ!死ね!!」といい、赤眼が飛び掛かる。



セルはこれまでかと諦めかけたがあるモノを思い出した。

絶体絶命のピンチにセルはこれを掻い潜ろうとしている。





地下用水路での死闘はまだ始まったばかりだった。

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