第40話「天王山(前編)」
パスガ陥落させる時のセイメイ率いる軍勢の流れを語ろう。
エウロパの猛攻が弱った瞬間を俺はギルドVCに切り替えて「今だ!全員で押し返せ!各方面健闘を祈る!!」と指示を出した。
それに呼応したギルメン達は各陣営で伝達をし、V字に広がっている陣形を閉じるように深く攻め込んだエウロパを討伐し、更になだれ込むようにパスガ城門へ一気に攻め上がっていった。
無論、本来であれば城門突破はどこも至難の業であるのだが、一方的な攻撃であれば難なくこれを破壊し、進入は容易である。
侵攻途中、各陣営に散らばった仲間と合流し、更に各ギルドが本陣営と合流すると勢いは更に増し、破竹の勢いでパスガへ雪崩れ込むように入場した。その際に、逃げ遅れたエウロパ勢を潰しパスガを平定させた。
俺は、コンスタン方面に敗走するギュスターヴの背中を、遠くで見る事だけはできた俺は少しほっとした。
~関所町パスガ~
ドリアスはボロボロの状態で俺に会いにきた。
「まっっっったくもって、ここまでイライラしながら待たされることは、中々ないものだぞ!!」
と笑いながら嫌味をいってきた。
「その節は大変申し訳ない。だが、ドリアスさん達が攻めてくれたことにより、エウロパの猛攻の被害を抑える事ができた。戦略で勝てた事が何よりもありがたい。」と俺は労った。
ドリアスは黙って俺の肩を叩き、レオナルド陣営に行き、陣列をまとめにいった。
「セイメイ殿」
振り向くとベルスが俺に声をかけてきた。
「此度の戦果、誠に有難い。元盟主として感謝致します。」
「ははは、何度もいいますが、私は好きで盟主を買って出たわけではありません。ベルスさんが調整役に回ってくれたからこそ、今日の勝利がある。私はただ、座ってた置物のようなものです。」
「…また傲慢でないところが、人を…いや、あなたの魅力ですよ。」
ベルスは言葉を詰まらせていた。
我々はこの勝利を喜ぶ時間を与えて貰えてない。なぜならもう半分の時間を消費しているからだ。
残りの時間で首都アーモロトを陥落させなくてはならないからだ。
俺は早々に各ギルマスを集めて、作戦をいう。
「ここまできたら、アーモロト陥落が最低で最大の目標である。このまま、コンスタンの湖を抜けてローレライ大運河に沿って侵攻していく。問題はそのあとだ。」
ここで第12話でアーモロトの城塞廻りを解説しているが、念のためもう一度説明しよう。
アーモロトは城塞を中心に円を描くように堀がいくつものできており、歩いていくには迂回しながらいく。まさに迷路といっていい、外堀を設けている。堀の水は川から水を引き、さらに城内に用水路も引いてある。
「アーモロトの迷宮堀が厄介といっていいだろう。この堀を抜けていくにはかなり至難の業だ。アイオリア、前回の説明をしてくれ。」
「御意、マスター!当時、ガルヴァレオン殿の時は、地下水路をうまく多用しました。内外からの攻撃を波状攻撃という要所要所を一気呵成していくというメリハリがありました。今回は一ギルドでの攻防戦ではなく、多国籍軍 対 壱国軍 でのイメージをして頂ければわかるであろう。 前回の経験と今回の状況を照らし合わせて大きな違いは勿論、VCの壁が存在するということです。情報戦でこちら側は一歩劣るということです。」
「説明ありがとう。さて、そういうことなんだが・・・。用水路は誰がいくかということだ。」
「俺がいこう。但し褒賞はがっつり頂くぜ?この際だ。きっちりもらうぞ。」とセルが意気込んでいる。
「一時撤退したのに強気だな。」とドリアスが皮肉をいう。
「ああ???てめー!!俺がいねーとパスガの強襲は成功しなかったんだぞ?!」
とドリアスとセルが喧嘩をし始めた。俺は急ぎ仲裁に入る。
「おいおい!!ここで喧嘩している時間はないぞ!!??二人とも頑張ってくれたし、結果は各々出しているのは俺が一番良く知っている。そもそも撤退しちゃいけないところで撤退してないのだから失敗も何もないだろ!」
「二人とも喧嘩したいなら、このアイオリアを倒してから喧嘩をしてくれ!」と二人にも睨みつけた。
「まぁお前も後方でやらかしているからあんま言えないけどな。」と俺は茶化した。
「ちょっと!!お兄ちゃんもセイメイさんもふざけている場合じゃあないですよ!!」クリスは俺らを叱責した。
「そうよね?クリスさんの言う通りよ。」とスカルドがクリスへ同調をした。
「あー悪かったよ。話を戻すが、セルさんまた汚れ仕事を頼む。」
「あいよ。」
「今回は、俺とベルス、ドリアスで正面を攻撃する。」
「うむ。」
「任せろ。」
「サイドの攻撃をミラ、パレンテにお願いしたい。」
「次も頑張るね!」「今度こそ!」
「地下用水路は先ほど言った通りセルさんね」
「ああ。」
「スカルドは遊撃に回ってもらう。」
「はい。お任せください。」
「詳しい面々の話は俺のところに派遣しているギルメンの耳に入るようにVCでの伝達を頼む。少しでも情報遅延を避けたい。以上だ。諸君らの健闘を祈る!!」
というと、各々の準備にかかり準備が整い次第、アーモロトへの進軍を行なった。
オケアノスもギルドミーティングを軽く行った。
「みんなも聞いての通り、ここが天王山、クライマックス、正念場だ。」
「セイメイさんそれ、全部同じ…」とクリスが恥ずかしそうにツッコミをいれた。
「まぁ、それくらい大事だってことよ。」
「アイオリアとファウストは俺と共に行動だ。クリスも。」といい、三人を見た。
「そして、ソロモン、ユーグ、カルディア、ピピンは同じグループで俺の前衛を頼む。」
「それ以外は俺の護衛で突っ込むぞ。」
『ええ??』と一同声を合わせて俺の発言に驚いていた。特段難しい事言ってないのだが、俺はクエスチョンが浮かんでいた。
「俺らそんな実力ないですよっっ!!」と戸惑いながらクロノが俺に言ってきた。
「実力じゃない指揮系統を忠実に守ってくれるというのと各ギルドの情報を俺にいち早く届ける役目を持っている。」
「ああ…そういうことですね。」
「それだけじゃ戦力外通告しているようなものだから、あえて俺はいう。君らも大事な戦力だ。共に戦おう。そして俺は前線に出るのが好きな方でな。頼むぞ。」というと、各メンバーは引き締まったように、『了解、死力を尽くします!』と返事がきた。
「いくぞ!我々の目的はすぐそこだ!続けぇ!!!!」というと、馬に跨り山を下り、コンスタンを抜け、一路アーモロトへ向かった。





