第39話「鉄火場(後編)」
~現在の戦況~
前線の状況は……
北はソロモン・パレンテ・スカルド
中央はミラ
南はセル・ユーグ・カルディア・ピピン
偶然にも鶴翼の陣形でエウロパの猛攻を防いでいた。
これは、セイメイが事前の模擬演習で伝えた陣形の一つであった。
ベルスはミラと会い、作戦の内容を伝えた。伝令を放ち尚且つセル達には信号弾を打つように指示を飛ばした。
まずは北側が退く、合わせて南側も退き、最後に中央が下がる。
それを見計らってセル達はドリアス達に青の信号弾を打つのだが、セルは少しでもドリアス達に届くように、閃光弾に切り替えて天高く打ち放つのであった。
撤退中に、ユーグがセルに質問する。
「ドリアスさん達は気づきますかね?」
「これで気付かなかったらドリアスは間抜けだ。こっちは大きな釣り針で、エウロパは引っかかってくれているんだ。これで突撃できんのなら、戦犯はアイツになる。」
「え?!」
「まぁいずれわかるさ。」
そして閃光弾は3発、乾いた音でなったのだった。
セイメイは程なくしてそれを聞きつけて、ミラ達と合流を図る。
その間にもエウロパの怒涛の猛攻は続く、次々と仲間が死に戻りをしてきて、戦況を逐一報告してくれている。
魔導士も魔術師、ヴァルキリー達も必死にバフのかけ直しをして前線に送り込んでいる。
オケアノスをはじめ、全員で声を掛け合い、必死で猛攻食い止めることとなり、前線はパスガからは少し遠のいた。そこにパスガとエウロパの道に穴ができ、パスガが1個小隊ほどの守りになってきていた。
その瞬間をドリアス達は一気に攻め込んだのだ。
この時、エウロパの猛攻が一瞬弱まった。
俺はすかさず、号令をかけ巻き返しを図るように攻め立てた。
一気にパスガ城門までたどり着いた俺らは、魔法・精霊魔法・武器スキル全てを賭して破壊を行った。
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照明弾がなったころドリアス率いるレオナルドでは歓声があがった。
「マスター!!3発なりました!!色は青の閃光弾です!!」
「ようやくか…。」
ドリアスは一呼吸入れた。
「よし!!この今までヒソヒソと隠れているのはやめだ!!一気にパスガを強襲する!!オーラアタック、惜しむんじゃねーぞ!!今回ばかりは全力全開、すべてをぶつけろ!!!」
『オーーー!!!!!』とレオナルドのメンバーは雄たけびをあげ、山を下り、パスガ城門へ一気に攻め上げたのだ。
パスガは手薄であり、一気に城門を破り、町に入ると陣幕があった。
陣幕を破ると、アーモロト城主のギュスターヴがそこにはいた。
ギュスターヴ
かつてのエウロパのギルドマスター、ネオシスをこの短期間で引きずりおろしてなり替わった、3代目のギルドマスター。
ガリヴァレオンの後を継いだ、ネオシスをこの短期間でギルドマスターの地位から引きずりおろした張本人。また、アイオリアや旧ガリヴァレオン派を一掃したのこの男の仕業である。そしてキングメーカーのポジションでネオシスを担いだ。
しかし、どうも折り合いがつかなかったようで、先日クーデターを起こし、二代目のネオシスを廃し自分がTOPになったという頭の切れる男だ。
無論、ギルドの方針は変わらず、効率かつ日給計算における狩り試算から生活試算までギルメン管理を行う徹底したガチ勢の長、それゆえ装備もレベルも格段に違う。取り巻きも同様であった。
ドリアスがギュスターヴに直接会うのは久しく長かった。
「ギュスターヴ!!久しぶりだな!!お前の担いだネオシスはどうした??仲間割れでもしたのか??まぁどっちにしろ、ここでお前らの統治は終わらせてやる!!」
「ふぅ・・・何かと思えば、そんな戯けた内容をおしゃべりにきたのか!?」
ギュスターヴは剣を抜き、ドリアスに斬りかかる。
ドリアスはなんとかガードをしたものの、ガードゲージは一気に7割も持っていかれる。
「弱い、こうやって会話が出来てしまうほど俺は余裕だ。貴様ごときに俺が倒せるわけなかろう!!!」
というと、剣を横に胸元に持ってくる。ドリアスを目掛けて突き刺すような構えをし、剣に稲妻が走る。
雷鳴衝撃!!!!
ドリアスはガードはじかれる
一気に距離を縮め、ドリアスに剣を突き立てた。
ギュスターヴはスルスルと剣を突き立てた剣を抜くとドリアスはぐはぁと血を吐き、その場に膝をついた。
「マスター!!」と仲間が近づいてくる。
ギュスターヴは剣技でドリアスのギルメンを切り捨てる。
「所詮、この程度よ。貴様らが俺に歯向かったところで古参の俺らには勝てないのだよ!」と突き刺した体を蹴り飛ばした。
ドリアスは必死に立ち上がる。
「ほう、まだそんな元気があったのか?」
「おまえ・・・ハイポーションって知っているか???」
「相変わらず舐めた事を言いやがる。」
ギュスターヴはドリアスに向かって剣を振り上げ、そして振り下ろす。
ドリアスはギュスターヴの剣を払いのけ、距離を取る。
「まだやられるわけにはいかんのでな!」
「こうるさいハエが!」というと、ドリアスとギュスターヴは幾重にも剣を交えている。
ドリアスは押されつつ、ある。ドリアスはそれなりの歴戦の騎士だが、ギュスターヴは聖騎士号を取得している。聖騎士号はレベル、戦果、そして条件を満たすと聖メシアにおける熾天使セラフィムからの依頼を完了させることでなれる。
暗黒騎士はその真逆だ。聖メシアの教えに背き、悪魔王ルシファーの使徒となることとなる。
聖騎士も暗黒騎士もどちらも騎士であるが故に皮肉にもクエストさえ完了すれば、クラスチェンジを行うことができる。
光も闇も使い手一つだ。
剣技で押されつつあるドリアスは、致命傷には至らないもの、相手の太刀筋はドリアスのような一介の騎士クラスでは切り返すだけで精一杯だった。
―――くっ・・・。このままだと本当にやられる。
そうこうしているうちにドリアスは剣がボロボロになってきているのがわかった。
ガードゲージもクラッシュしていたため、ドリアスのウェポンブレイクまで数合で終わる。
「ドリアス…またな!」といい、ドリアスを転倒させ、ギュスターヴは剣を垂直かざし、ドリアスに首元に突き刺さそうとしたとき、ギュスターヴの配下が入ってきた。
「グラマス!!」
「なんだ??急ぎが??」
※ グランドマスター…統治者を指す。グラマスは略称
「現在、パスガに連盟が雪崩れ込んできています!!」
「馬鹿な!挟撃をしかけていたじゃないか!!」
「それが…どうやら、失敗に終わったようで…一旦城にお戻り、体制を整えましょう!」
「まったく、どうなっていやがる!!」
と、言い終わる頃にはセイメイ側の城門は破壊しており、連盟の軍勢は目の前まできていた。
「ドリアス、命拾いしたな。アーモロトで会おう!」と言い残すと、馬に跨り、足早にアーモロトへ敗走していくのであった。
ドリアスはなんとか立ち上がり、セイメイ達と合流を図った。
こうして、セイメイ達はパスガ攻略作戦を成功に収め、首都アーモロトへ準備を急ぐのであった。