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第37話「怪気炎(後編)」

 セイメイは新設された陣幕の中にいた。


 各方面の情報処理に追われていた。


「南側ラインの戦線復帰完了!」

「同じく中央も制圧完了!!」


「残るは、北側戦線のみか……」


 ベルスが不審に疑う


「どうも……わが軍は誘われているようにも見えますね」

「“わざと”歩を進ませているというのかい?」

「ええ…私の思い違いであれば、いいんですけどね。危惧しているということです」


「まぁ…、現状はうまくいっているということでいいのですけどね」

「南側のDGの撤退も気になります」

「ああ、でも死んでないということは問題ないのでは?」

「ああそうですね」


 そうやりとりしていると、PROUDのスカルドが転移復活をしてきた。

 俺はかなり動揺したがスカルドを労わり話を聞いた。


「申し訳ありません。大砲の破壊に失敗しました」

「そんなことはどうでもいい。うまくいかないことはよくある。それでも前線への砲撃は止まっており、押し上がっている。上々の出来ではないのかい?」

「そうなのですが、一つ、厄介な相手と遭遇しまして……」


「あなたがやられるということは相当な手練れだったということだね?誰だい?」


 聞くと、スカルドは言葉を詰まらせた。


「え?だれなの?」


 俺は聞き返した。


「セイメイ様はご存じないと思います。少し前のプレイヤーさんです」

「なるほど、どういう人?」

JOKERジョーカーという方です」

「ジョーカー?」

「ええ、そうです」

「彼とはかつて仲間でした。私がPROUDを立ち上げる前に他のギルドで仲間だった方です」

「そいつらなら、私も知っている。PvPタイマンしかしない人でしょ?」


 ベルスも認識しているとのことだ。


「その人が強かった。だけど、ある日を境に人が変わったように力を追い求めていったんです」


 スカルドは表情に影を落としたように見えた。


 JOKER


 かつてスカルドとのギルド仲間だった。


 ある日、強豪のギルドに完膚なきまでに拠点戦に敗退したあと、人が変わったように戦いに明け暮れ、対人に熱を上げたプレイヤーである。その後、暗黒騎士という職を突き詰めたプレイヤーと言わしめた剣豪といっても過言ではない。一時期、無差別PKが横行した時、彼が犯人だということは、掲示板などで囁かれていた。それが原因でスカルドと共にいたギルドはもう解散されて存在しないが、当時一部のメンバーをJOKERがギルドを抜けてすぐにギルメンをPKし潰した。


 スカルドはそれに怒り、かつての仲間に手をかけた事が非常に残念だったという。いくらPK可能なゲームであっても、恨みがあるわけでもない仲間を手をかけた事が頭にきていた。


 その後、仲間を集いスカルドを中心にPROUDを立ち上げた経緯がある。


 また、JOKERはとある拠点戦でスカルドと出会い、スカルドを潰した言わば、ライバル関係になっていったということだ。

 その後はスカルドはハイエルフに、JOKERは暗黒騎士へとクラスチェンジしていったのだった。また、そのあとは所在もわからず、引退したという噂もあったそうだ。


 しかし、彼は今回エウロパ陣営に参戦し、スカルドと戦い、そして敗れた。


「そんな彼は何かを守りたかったのではないかな?」

「ではなぜ無差別にPKをし、ましてやかつての仲間に攻撃を仕掛けるのですか?」

「おそらく、何かあったんじゃないかな?」


「そんな!!仲間うちでは楽しくやっていましたよ!」

「んー彼の行動や言動はどうだった?」

「ただ、悔しいっていってましたけど……」


 きっと彼には何かあると悟っていたが、俺はそれ以上スカルドに詰め寄る言葉が見つからなかった。


「報告!!北側!!BV全滅!!死に戻り来ます!」


「なに!!??」


 一同唖然とした。


「BVが全滅だと!??」


 ベルスが驚いた。


「ライン戦で負けたというのか?」

「どこのプレイヤー中心でした?」


 俺が聞き返す


「黒い鎧を着ていたので、おそらく暗黒騎士だということです」


 報告が入るとスカルドは取り乱していった。


「JOKERだわ!!!私を倒してそのまま前進して、一人ずつ倒していったんだわ!!」


 スカルドは怒りと悲しみの声色を見せていた。


「パレンテが戻ってくる。その時に色々聞こう」


 俺は冷静にこの北側の処理をすることにした。


 パレンテが戻ると一部始終を報告してきた。

 どうやら、暗黒騎士JOKERさんの無双プレイらしい。




 と、ほとなくして本陣営の前で騒ぎが起きる。




 うわーと仲間がやられる声の方へと移動し、見てみるとそこには暗黒騎士がこちらをみていた。


「こいつ……単独できたのか……?」


 俺は生唾を呑み込んでしまった。

 ヤツは俺を見るや否や、懐に飛び込んできた。

 その瞬間、アイオリアが俺の前に立ち、暗黒騎士の大剣を蹴りではじいた。


「我が御大に傷一つつけさせんぞ!!!」


 暗黒騎士はゆっくりと大剣を背中に担ぎ、アイオリアに突貫した。

 アイオリアはしめたと思い、相手を投げるがキャッチ無視のため、スキルがはじかれる。

 その瞬間、アイオリアの横っ腹に大剣がめり込み、アイオリアは地面に倒れこんでしまった。


 ―――あのアイオリアを一撃で??


 その後、俺を見つけて踏み出そうとした瞬間、アイオリアの正拳突きが彼の背中を叩くのであった。


「よそ見してんじゃねーぞ!!まっくろくろすけッッ!!!」


 暗黒騎士は振り向きざまに回転斬りをしたが、アイオリアは宙に舞っており、落下と同時に蹴りを顔面に食らわした。


 暗黒騎士は吹き飛び、木々にめり込んだ。


 アイオリアはすぐに飛び込むと暗黒騎士は姿を消したのであった。


「くそっ!!どこにいった!!??」

「無駄ですわ・・・」

「転送されており、もうここのエリアにはいません。」


スカルドがいい、スカルドは転送の痕跡をみて我々に教えてくれた。


「あいつは何がしたかったんだ?」

「セイメイ様へ一太刀浴びせたかったのでしょう。」

「な、なんのために?」

「おそらく、私と繋がりが出来たからだと思います。強い人への()()は効くようですから」


「それより前線を戻しましょう!セイメイさん!」


ベルスが慌てて陣容をまとめるように促した。



 微妙な不完全燃焼さはあったが、彼に構っている場合でないことはわかっていたのだが、JOKERというプレイヤーと話してみたいとも思った。


 その後、ソロモンが到着すると、残存兵力が当たりを侵攻していたが、中央・南側と制圧されていたことと、死に戻りが少なくなんなく北側も制圧出来たとのことだった。


 以後、我々はパスガ城壁の見える位置へ進軍することとなった。


 大砲はというと、進軍中にスカルドとパレンテが合同で見つけ出し破壊に成功した。


 ようやくパスガの目の前にきた。ここまでいくつかの作戦の失敗やピンチはあったのだが、ようやくパスガを見ることとなった。




 ~関所町パスガ・天然外壁~


 四方に険しい山々があるおかげて急勾配からの攻めはこの大軍ではただの足かせにしかならず、なんの意味もない。おとなしく弓矢などの遠距離攻撃と城門突破ということとなる。


「さぁいきますか!」というと、ふと後ろの方から地響きが聞こえてきた。


 俺は振り返ると、どうやら伏兵にあってしまったようだ!

 DGが下山したあと我々が通り過ぎるのを待っていたように城側と我々を挟み込むように仕掛けてきたのだ!城門は開き、絶好の機会であるのにも関わらず我々はこの挟撃を防がなくてはならなくなった。


 アイオリア、とファウストが後ろを任せていると、ベルスが俺に頼んできた。


「そろそろ私の出番ですね。背中は任せてください」


アイオリアとファウストが応戦するなか、剣を抜いて敵陣へ切り込んでいった。



 それに続け!!というとフォルツァが雪崩れ込むように伏兵を潰していくのであった。


 ファウストが戻ってきて俺にいう。


「マスター、前線は大丈夫だと思います。今は後ろを警戒してください」

「わ、わかった。どうしたらいい?何か策でもあるのか?」

「いえ、これにはありませんが、どうか、ドリアス率いるレオナルドへの合図をお忘れなく!」


「ああ、そうだな。俺も後ろの援護いこうか?」


ファウストはううんといい、こう俺にいった。


「あなたは動かず大局的作戦を練り上げてください。細かい戦術は私がやります。今は前線との距離が短い今、号令をお掛けいただければ、城門突破の道筋が見えてくるはずです」


「わかった!なんとかしてみよう!」

「では、また!!」というとファウストはまた後ろの前線に上がっていった。


 こうして、七星連盟は挟撃を食らい、足止めと兵力の分散をさせられてしまった。

 俺は思いつく限りの戦略を考えていたが、まだ善策を思いつくまでには至らなかった。


 時計を見て、まもなく半分が終わろうとしていた。

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