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第36話「怪気炎(前編)」

~パスガとウルススを結ぶ山道~


ここの道はウルススは西側、パスガは東側である。

道幅は広く小川など膝までの深さだったので、かなり広い戦線に発展していた。

そのため、北から南へ縦に伸び、一部では山岳部で戦う者まで出てきていた。


ソロモンがユーグと別れて間もない頃、ソロモン一行は中央戦線に向かっていた。

イモリがソロモンに話しかける。


「隊長まもなくつきます」

「ミラさんを見つけないと!!」


ソロモンは馬を踵で蹴り、さらに奥へと向かった。

隆起している土の上に乗り、あたりを見渡すと遠くにミラの姿はあった。

ミラは複数の敵に囲まれており、中央戦線は壊滅状態。死に戻りのプレイヤー待ちとなっている。


セイメイ率いる本陣が前進しているため、補給所が近くに設営されていることを彼らは知らない。


ソロモンは先ほど詠唱していた呪文を読み直すとした。


「オムちゃんいる??」

「は、はい!!」


オムニアは慌てて返事し、ソロモンのところにいった。


「オムちゃん、あれ見える?」

「見えます!」

「あれ!こっちに少しもらおうか?」

「じ、自分が突っ込むんですか??」


「違う違う。あそこにオーラアタック打ち込んでくれ。」

「この距離でですか?」

「当たらんでいい。エフェクトと音を出せば、動物なら本能的にこちらを見ざるをえんだろ?」

「なるほど!!ではオーラアタック打ちます」


「はやるな。はやるなwwワシの合図で撃って頂戴な♪」

「はぁ、はい!!!」

「よし、次、カルちゃん!」


「はい!」


カルカが前に出た。


「ワシ守ってね♪」

「うっ…は、はい!!」

「安心しろ。男のケツに興味はないわい!!」


といいながらカルカに補助魔法をかけ、スキルブーストをかけるように促した。


「ほんじゃ残るはローレンとセルベンティちゃんね!」

「我々を守るカルちゃんに大量のバフをかけておこう♪」


『わかりました』


二人は重ね掛けができる補助魔法などを行った。


「ベンティちゃんはゴーレムだせる?」

「はい!」

「んじゃだして」


「ローレンは俺と一緒に詠唱をしてくれ」というと一つの本を手渡した。


「こ、これは…!!!」

「使い切りの切り札だよ♪ささっ!時間ないよ!!」


ローレンは唾を飲み詠唱を始めた。


「おっしゃ!オーラアタックいってみよう!!」

「はい、いきます!!」


精霊より受け継ぎし、大樹の光よ!我が闇を払え!!!



オムニアの手と弓、そして矢が光り輝く!


ホーリーなる雷光ライトニング衝撃インパクト!!



放たれた矢は大きな矢になり、轟音を響かせて戦場を駆け抜けた!



エウロパのプレイヤー達はこちらに気づき、矢を避けた。


「なんだ?あの距離から撃ったのか?素人もいいところだぜ!」

「おい、だれか殺してこいよ!あの雑魚共!」



エウロパの指揮官は指示を出し、数名がこちらにきた。

カルカがディフェンダーを纏い、防御姿勢で前に出る。


「飛んで火にいるなんとか虫って知っているか?」

ソロモンがいうと、呪文を読み終えていたソロモンの本から自動的に地面に魔法陣が現れて、梟のような頭を持ち体はオオカミの体、尻尾は蛇の尾を持つ姿の魔物が現れた。


“我ヲ呼ビ出シタノハ主カ…”


「さて、薙ぎ払ってもらおうか…!」


“ヨカロウ…”


その魔物は口から獄炎の如く、辺りを燃やし尽くしエウロパのプレイヤー達は炎に飲まれ散り散りになってしまった。


火を吐いた魔物は本に戻り、本は燃えて消えてしまった。


ローレンは続けてソロモンから渡された本の呪文を読み終えると、自動的に地面に魔法陣が現れた。

次に現れたのは、翼を持った犬の姿で、散り散りに逃げ出した敵を翼の羽で一気に打ち抜いた。

その魔物も“仕事”を終えると本に戻り、燃え尽きて消えた。


「召喚するのは精霊だけでも悪魔でもない。」

「初めて召喚しました。」とローレンは驚いていた。


カルカとベンティの出したゴーレムがミラ達の下に向かっていた。挟撃されては敵わないと思い、エウロパの指揮官と複数名は後退し、ミラ達を救出できたのだった。


ミラは近寄ってソロモンにお礼をいった。

「ありがとうございます!前線が崩れるのはわかっていたことですが、予想以上にやられてしまいまして…。」

「なぁに大したことじゃない。露払い程度じゃな!」

「パレンテの方が心配です。」

「お主はここにとどまり、前線を立て直してくれ。本陣は上がってきているから死に戻りが早くなると思うぞ?」

「セイメイさんがその判断を?」

「後方でぬくぬくするのはお好きじゃないみたいでなw」

「わかりました!すぐに陣を立て直して押していきます!!」

「マスターに伝えてくれぃ。ワシはパレンテ氏を助けにいってくるわい。」

「了解しました!」


というと、ソロモンは次の前線に移動するのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――


一方、ユーグの行方は意外なほど膠着していた。

何度か太刀を浴びせてはいるものの、レーバテインでの剣ダメージ+炎は聊かこれといったダメージにはなっていない。サラマンダーがユーグとマリアの間に入り、決定打を打てずにずっとあくせくしている。

一方マリアはグラビティヘイズや、クイックタイムなどをかけて詠唱速度を上げて次々と魔法を繰り出しユーグを徐々に追い詰める形となっていた。

なお、ユーグは暗黒騎士の正式クラスチェンジをまだおこなっていないため、バーサクモードしか発動できない。ダークネスモードが出来るのは、暗黒騎士の称号を経てから本領発揮なのだ。つまり、まだ黒い霧もしっかりしたものでないので、遠距離攻撃による魔法ダメージを食らう事になりじり貧なのである。




「これやばくないか?」


カルディアがセルに向かって言う。


「これで負けるなら、暗黒騎士を薦めるなってことだな」


厳しい姿勢を見せた。


「バーサクモードでやれてたじゃないか?」

「バーカ!あれはクイックタイムや自動回復補助魔法が付与されていたおかげだ。みてみろ。スタミナ切れになっている」


カルディアがユーグをみると、ユーグは肩で息するようになっていた。

明らかなスタミナと持久力切れのモーションだ。


「おい!自分のメーター管理ぐらいしろよ!!」


カルディアが思わず叫んだ。


ユーグには聞こえているのだが、返事を返す余裕など本人はなかった。


―――くっそ!どうすればいいんだよ!

   黒い霧は軽減のみ、盾なんかもうない。

   幾ばくかの爆砕スキルとオーラアタックしかないか…。


マリアは余裕の笑みを浮かべる。


「あらあら、威勢が良かったのは最初だけなのかい?」


サラマンダーは火を噴きあたりを燃やしていた。


「さて、お遊びはここまでだ!!」


サラマンダーを体をくねらせてユーグに攻撃をしかけた!


ガシィィン!!


ユーグは攻撃を剣で受け流し、体制を崩した。


「くっ…!」

「さぁさぁさぁ!おひらきにするわっ!!!!!」


マリアは杖を前に出し、詠唱した魔法陣を前に出し、稲妻を発した。


稲妻ライトニングストーム


「ぐはぁああああああ!!!」


ユーグはもろにダメージが入り、体から煙がプスプスと湧いて膝をついた。



「あらぁ?まだ死なないの?これだから脳筋職はタフで嫌い」

「さぁあいつの下にお帰り!!」


というと、手から魔法陣を出し、ファイアボルトを唱えた。

ユーグは硬直している最中、体に黒い闇が覆った。


「な?なによそれ!!」


マリアは詠唱をやめ、バックステップで下がる。

ユーグは起き上がり、闇がはれると体中に黒いオーラを纏っていた。


「おいおいおい、なんじゃありゃあ!!」


カルディアが声を上げた。


「うまく言えないが、暗黒騎士のHPが1/10になると、覚醒するというのを聞いたことがある」

「でも、あいつはまだ闇属性のポイントはそこまで溜まってないぞ?」

「馬鹿か。あいつはレーバテインを所持しているだろ?あれで人やモンスターを倒せば倍々で増えていく。聖属性と違い、あいつの属性ポイントはゆうに暗黒騎士への条件は満たされている」


「クラスチェンジはしなくていいのか?」

「あれは、闇属性ポイントの恩恵だ。聖騎士でもあれをやることできるんだぞ?だから騎士というのは壁役で俺らを守る“盾役”が出来るんだろ?」


「厄介な職業だなー」

「その分、不器用な職でもあるがな」


ユーグの持つレーバテインは、太く大剣に変化し、マリアへ詰め寄った。


―――早い!


マリアはサラマンダーを盾に後ずさりした。


―――俺はもう逃げたりはしない!!


ユーグは大剣を振り回しスキルラッシュをけしかける。

大剣を突き刺し、次に振り上げて叩きつけ、その剣を回転斬りをした。マリアはなんとか致命傷なダメージを追わなかったが、後退を余儀なくされ辛くもサラマンダーの炎で応戦をした。

ユーグはサラマンダーの炎を大剣の()()でガードと同時に受け流しマリアに懐に入り、刃を突き刺した。



「ば、バ…か…な……」



ユーグの剣はマリアの腹部を刺し、マリアが粒子化していくのを見届けた。


『おおおお!!』


カルディアやセル、DGのメンバーは一同に声をあげた。


その場に立ち尽くすユーグに抱き着いたのはカルディアだった。


「おまえやったな!!」


ユーグに抱き着いた。


「もうだめかとおもいましたよぉ~~」


ユーグは泣きそうな声で返事を返した。

ユーグは剣に滴る血を振り払うと、剣は普段の剣の大きさに戻り鞘に収まった。


「いい仕合するじゃあねーか!いいねボタンあったら連打してたわww」


一同は爆笑していた。


「笑ったところで、俺らはこちら側、右ウィングって感じですすめるしかねーな。」


セルがいうと、ユーグはソロモンを心配した。


「ソロモンさん、うまくいっているかな?」

「ダメだったらこっちに残党狩りって感じで兵がくるだろ?」

「ユーグ、ピピンと連絡が取れない。」

「ああそうだ!!どこいったんだ?あの人!!」


周りを見渡すと瓦礫の下で動けなくなっていたピピンがいた。


「なんだよ。なに笑いこらえてるんだよ!くそ!!」

「いいから引っ張ってくれ。決闘をこの位置で静観していたんだ。邪魔しないようにな!」

「いやいやいや、それ、その姿を笑われたくないからでしょ?」


ユーグが思わずツッコんだ。


「おまえ、生意気なんだよ!!俺の支援がなければ、あんなキル数出せないんだぞ!!」


起き上がると詰め寄ってユーグにつっかかったが、また一同爆笑をしていた。


「今度こそ前進だ。目指すはパスガだ!!」


『おおう!!!』


声を上げて死に戻りのメンバーや陣形を整えるのであった。

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