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第31話「運鈍根(後編)」

 セイメイがログアウトした後、二人の男は会議室に残った。


 そこにはアイオリアとファウストが話し込んでいた。


「アイオリア、君はどこまで本気なのかね?」

「全部だよ」

「セイメイさんにそこまでの器…いや、指揮能力は存在しないと思うんだけど」

「ははは、それは今だけだよ。逆に君が出来るのかい?」


「俺にはそういう能力はない」


「それじゃあ最初にここに在席していた他のギルマスと変わらないぜ?」

「では、今回の展開をどう収集つけるのかね?」


「俺が突破口を開く。そのためには君の魔法が必要だと思ったからだよ。大筋の作戦はみんな妥当だと思ってる。ただ、伏兵は正直考えてなかったけどね」

「たしかにあの地形で伏兵は奇策中の奇策。戦力を割いてまでやる必要があるのかと思う」


「そこがガルヴァレオンの片鱗だろ?」


「誰も思いつかないような作戦を立てるところか?」

「3小隊+1の伏兵を戦場の南に位置する山岳に忍ばせて、さらにその後ろに忍ばせておく完全な伏兵は面白いでしょ!?」


「まぁ醍醐味はあるな。ただ二正面作戦にならないか?」

「窮鼠猫を嚙むという諺を知っているだろ?」

「追い詰められたネズミですら牙をむくのだよ。戦場でしかも攻めのシーンでw」


「二正面作戦になりかねない部分は捨てきれない」

「そもそも二正面作戦になるかならないかは、こちらの伏兵に気づいているかいないかによるしな。それに……」

「それに?」


「強襲後、相手がラインを下げるような事があれば、後退中に後ろから刺すことが出来る。そうなれば、パスガの壁ぐらいならこの戦力であれば十分すぎるぐらいだ」

「ほう。そこまで読んでいるのか」


「セイメイ殿がそこまで考えているかはわからないが、通常の山からの伏兵の心配は我々にはないのだから、安心して戦線を伸ばすことが出来る」

「なるほどな」


 ファウストは納得した、その横でアイオリアはふっと笑顔を溢した。




 ――決戦前夜――


 俺はいつもの通りログインしたが、少し山を見にでかけた。

 馬を走らせて、グレイアン山脈の少し低い山に登り山々を見ながら俺はぼーっとしていた。

 霧がでたり、消えたり、霧なのか、雲なのかわからないけど。


 ―――本当に俺に出来るのだろうか・・・。


 ものすごく不安になった。経営者と同じ心理になっていることに気づかされた。

 社長ってこんな感じなんだろうな。裏切られ騙されそれでも折れずに前に進まなければならないのか。人に裏切られることは現実リアルで腐るほどやられてきた。騙しあいも化かしあいも。

 俺はそれに疲れて、逃げる様に社会からドロップアウトしてそういったいざこざのない会社にきたのだ。まさか、ここで大きな団体を動かすことになるなんて思っていもいなかった。自由にギルド、今回は連盟を動かせる代わりにその責任の重さは重責を担うということだ。ガムシャラに色々思考をめぐらしていてもそれは結局、所属している相手には伝わらないのだ。そこで無駄に行動しても、下手を打つだけである。かと言って、動かないと結局どうにもならない。このジレンマにさい悩まれされるてしまう。


 では、答えはなにか?


 正解の行動をとる事が全てでそれ以外は全てハズレなのだと思う。所属している人間は失敗してもごめんで済むけれど、TOPはごめんで済まない事が多々ある。それによる経営者の退陣劇を見ることはワイドショーで嫌というほど見てきている。


 俺はそうなりたくない。でもなるような階段を一歩一歩上がっているように感じる。この焦りと不安が俺に絡みつき離れない。やりがいはあってもこの際限のないリスクを常に行わなければならないのだ。



 色々思考をめぐらしていると、遠くから人影が見えた。

 ふと、立ち上がるとそこに立っていたのは……








 ディアナだった。







 ディアナは俺をみるとおもむろに口を開いた。


「お久しぶりです。セイメイ()()


 俺はああといっただけだった。

 ディアナは俺に物怖じすることなく話をつづけた。


「自分がいなくなってからいつの間にか偉くなりましたね」

「俺の意思はあまり反映されていない。だが、俺を慕ってくれる仲間は増えた気がする」

「……まぁ、明日の戦い。楽しみですよ」


「俺もだ。しっかりと戦わせてもらうよ」

「まぁ、頑張ってください。これで失礼します」

「そういえば、何しにここまで来たんだ?」


「あなたの陣営を偵察ですよ」

「へーそうかい」

「まぁ()()()()()()()()()で十分ですよ」


「そうか?」

「ええ、十分です。では戦場で」

「わかった」


 『ディアナ!』


 俺は叫んで足を止めさせた。振り向き俺を見た。


「お前は、今……楽しいのか?」


 ()()()は俺に何も言わず、微笑んだだけだった。そうするとディアナは霧の中へ消えていった。



 俺も行こう。


 俺は馬に跨り、下山することにした。


 ディアナに会えたが、肝心な事を聞けなかった。心残りであるが、過去を振り返っても何も生まない。割り切っている自分への再確認をし、馬を走らせた。


 クリスからメッセージが飛んできている。


 なになに?


『オケアノスのメンバーでセイメイさんの親衛隊長を決めるので連絡来てください』だと?


 俺に親衛隊なんて設けるほどギルドの規模は大きくないだろ!?


 くすりと笑い、指令室へ向かった。


 メディオラムの今日の天気は快晴だった。

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