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第29話「胸算用(後編)」

翌日、いつものようにチャリをこいで事務所に向かう。


事務所につくなり、社長が慌ててる。


「どうしたんすか?朝から騒がしいっすねぇ」


俺は騒がしい社長に話しかけると、すごい剣幕で俺に言い寄る。


「最近取引を始めた取引先の送ったはずの書類が金額足らずに戻ってきてしまった!!」と嘆いていた。


「取引先の担当者の名刺ありますか?」

「おお、あるぞ?」

「拝見しますね。」


名刺の隅にメールアドレスがあった。


―――これに送るとするか。書類のデータは日付別に保存してあるからそこから割り出せばいいか。


「社長、とりあえず俺がこの担当者に連絡とるので、ちょっと待っててください。」


と俺はいって、会社のPCの前に座る。


 そう、社長はニコニコ元気払いの宵越しの金はもたねーという江戸っ子タイプだ。それゆえ、どんぶり勘定も多々ある。まぁ今は、化石となろうとしている昭和の労働者気質なのは、間違いない。


 俺が入社してからは俺が見積書を見ているせいか、交遊費内で収まるようになったぐらい。

まぁそれでも、改善の余地は多々あるのだが今はこの書類データをメールを送ろう。


「はい、社長。これでOKです。メールで書類のデータを添付してありますから、連絡して向こうはプリントアウトすれば現物が届くのと同等です。」

「そうなのか?」

「まぁ大丈夫です。心配なら連絡してから打ち合わせしにいったらどうですか?」


「おう、わかった。」というと慣れない手つきでスマホを弄って電話をかけた。


 俺はそのまま、報告書の作成に着手していた。


 昼間は唯一の楽しみの昼飯だ。近くにスーパーがある。コンビニもある。牛丼屋もある。どれもチャリで2.3分で着くという最高の立地だ。大体、スーパーで事が済むのだ。

 今日は1.5ℓの清涼飲料水が¥138!これは買いだ!お弁当が¥398(サンキュッパ)スーパーは凄すぎ!

あとは気分で菓子パンでもかってもよし、最高の幸せだ!

 締めて、717円、飲み物は2.3日は困らない。実質ワンコイン前後だ!!たまに気分で牛丼屋でがっつりもいける。


 サラリーマンのメシというのはエンゲル係数を落とすことにも意外と真剣なのだ。


 午後は画像整理を行い、タイムカードを打刻し戸締りして帰る。


 今日も、中川に浮かぶ高速道路の車達と並走して帰る。太陽は昭和・平成・令和、そして今と変わらない夕日の顔をして沈んでいく。観光地で見る美しい夕日とは次元が違うが、この夕日はどこか懐かしく優しい夕日だ。

 この夕日が見れるのは会社帰りという制限でいうと、春と夏の終わりから10月中旬、涼しい季節のみ。ついでにいうなら富士山も見れる風景で、みんな知っている当たり前の風景。


 この帰り道の夕日が俺の背中を気持ちよく押してくれるのだ。


 俺は今日も元気よくペダルをこぐのであった。



――――――――――――――――――――――――――


 さて、昨日の続きだ。

 約束の時間に合わせてみんなきて合同練習をする。

 昨日より素早く出来ているので安心した。



 今組んでいる陣形はこれは横陣おうじんといって、部隊を横一列に並べる。もっとも基本的な陣形だ。


 大陸平野での横陣同士の会戦はもっとも遊軍が少ないが、縦隊で戦線突破されれば左右の伝令が分断され個別撃破されやすいという弱点がある。また局所に攻撃が集中すれば他の戦列すべてが遊軍に変わり、一般には馬防柵や塹壕、防塁などの地形を利用することが多い。


 また、陣形をまず馬が先行するパターンの鋒矢ほうしの陣をひく。

「↑」の形に兵を配し、強力な突破力を持つ反面、一度側面に回られ、包囲されると非常に脆い陣形である。横あらゆる偵察から兵を多く見せることができ、敵より寡兵である場合、正面突破に有効である。陣形全体が前方に突出し、前方を駆けてゆくため、柔軟な駆動にはまったく適さない。


 また、陣の前方が重厚な敵部隊陣形により阻止されれば後方の部隊は遊兵となり、前方部隊の壊滅による兵の逃走が同士討ちなどの混乱をもたらす危険もある。先頭は非常に危険であり勇猛かつ冷静な部隊長が必須であるとされる。


 実践向きであるが、現代でこの戦法が有効なのは、圧倒的戦力のみに限ると思われる。


 この基礎中の基礎をやることで、慣れない連携の中でこれだけはやっておきたい。

また、鶴翼をやりたかったのだが、これで耐えるというのは伝令の足を急がせることとなり、今回の戦場では耐えれる戦にするつもりはない。また山岳を有する戦場でもあるので、魚鱗の陣も捨て難い。

魚鱗は中心が前方に張り出し両翼が後退した陣形。「△」の形に兵を配する。


 鶴翼は両翼を前方に張り出し、「V」の形を取る陣形。魚鱗の陣と並んで非常によく使われた陣形である。


 伏兵を今回有するという意味では一番適しているのは方円の陣からの車掛くるまかりがベターなのだが、これは大きく回りながら攻撃をすることになるので、プレイヤーの一糸乱れぬ、攻撃を是とするため、正直なところ、これを練習するとなると、スタミナがモノをいう陣形であり、大分きつい。


 何度かやっておさらいをし、しっかりと打ち合わせをして当日のルート確認を最終日にもう一度打ち合わせをして、意識確認だ。


 こうして合同練習も終わり残り2日だ。


指令室に戻るとユーグとカルディアとピピンがいた。


「マスターみてくださいよ!この剣!!!」


 ユーグはレーヴァテインを俺に見せてきた。


 美しい刃先と黒い刀身、そして熱い炎がまだかまだかと燻るような揺らめきがある。


「おいおいおい!!かっこよすぎじゃねーか?俺、サムライから転職しようかな!!??」

「だめです!!ただでさえ、ちょいキャラなのに!!今回から準レギュラーでお願いします!!」

「何言ってんだ??おまえ、元々レギュラーじゃねーか!」


「強い人入ってきて俺の立場が端っこに追いやられて影薄くなっちゃってるんですよ!!」

「あーまぁ、アイオリアとかアイオリアとかアイオリアとかな」

「そうです!!アイオリアさんが加入してから俺のポジションが危ういんです!!」


「そ、そうだなぁ↑?ま、これで魔剣持ったわけだから、ユーグもこれで負けんということで!」

「とうとうオヤジギャグ言うようになってきましたね?俺はそんな大人にならんですよ!」

「安心しろ。俺も言わないと思っていたけど、お前も言うようになる…!」


「ならないっていったらならんのですよ!!」

「ハイハイわかったよ!しかし、よくやったな」

「カルディアさんとピピンさんのおかげですよ!」


「まあ俺らがPTにいれば、余裕だったよな?」とカルディアがユーグに肩を組んでくる。


「カルディアが大体モンスターのダメージ持ってたよね?」とピピンがユーグに嫌味をちくりという。


「それ、いっちゃいますぅ?」とユーグが困り声でいう


「あとは聖騎士の道を捨てるしかないよな?騎士にクラス昇格して魔剣を奥義化させてこようぜ!」

「騎士クラスにしたら、何人か聖人クラスの天使とか聖人ぶっ殺して闇化させて暗黒騎士だな!」

「ひええ!!まじっすか!!??」


「ったりめーだろ??盾捨てて、全て剣一本で戦い抜くんだよ。だから暗黒騎士は難しいけど、強いんだよ?」ピピンが鼻息を荒らしていう。


「俺の盾ちゃんがぁ…」


「そもそも攻防一体なんて土台無理なんだよ。刀とかなら全て出来るけど、盾と剣を両方もって器用に戦うという方がきつい。だったら、闇属性と炎属性をつけて、暗黒騎士のパッシブで力と攻撃力で押し切った方が早い。同格のヴァルキリークラスなら聖属性持ちでもぶっ殺せるから、イケイケGOGOウェイウェイウォウウォウだぜ!」


俺は、途中からノリノリなのだけはわかった。


「ほんじゃとりあえず、聖メシアの法王の直轄領のとこで騎士号受けてくるよ。またね!マスター!」といって、ユーグたちは部屋を出て行った。


入れ違いにホルスがくる。


「お疲れ様です。マスター」

「どうした?」

「あの実は言わなければならない事があります。」

「どうした急に?」


「実は、ディアナさんの事で……」


「あーディアナか!元気だったかい?」というと俺は心が締め付けられる気持ちだった。

「ええ、まぁ元気ですけど別のギルドに入ってました」

「まぁそうだな。あいつならどこでも拾ってくれるだろうよ。で、どこだったんだ?」


ホルスは黙ってしまった。


俺が、ん?としたら言いづらそうに語った。






「……エウロパです」



「え?嘘だろ?」


俺は耳を疑った。


「本当です。今、彼は幕僚クラスに昇格し何十人か従えています」

「まじか……」


 俺の運命はそういう運命なのかと漠然とした感じを受けてしまった。


「マスター、落ち着いてください。ただ今回の前線にいるとは限りません。いるとしても後方の大本営だと思います。直接マスターがぶつかるわけじゃあありませんし……」


「そんなのぶつかるに決まってるじゃないか。最後の攻城戦は、総当たり戦、混戦なんだぞ。戦場で会えば、刃を交えるしかないだろ…。」


「だったら、押し切るしかありませんね。我々の連盟の力で……」

「そうか、これも“戦場の習わし”か……」


 歴史を振り返れば、昨日の友が今日の敵、昨日の敵が今日の友というのは、全世界どこでもあったことだ。


 わかっていた。わかっていたのにこの流れだ。


 俺は動揺してしまった。


 かつての友の事を思い返してみると目があつくなっていしまう。


 すると、クリスとソロモンがログインしてきた。


 この話をするとソロモンはなるべくしてなったかとため息交じりに話した。クリスはずっと黙って俺のそばにいた。


 クリスは重い口をあけた。


「こうなったら、やるしかないんでしょ?マスター?」

「ん?ああ、そうだな」

「マスター、あなたはここで悩んでちゃいけないんですよ。もうそういうの許されない立場なんですよ」

「わかっている。クリス、お前らしくないセリフいうのを言わせて済まない」


「私は…別に……」と顔を曇らせた。


「クリス、俺を鼓舞しようとしたんだよな?俺の事を思って言ってくれているんだよな?それが俺にはひしひしと伝わってくる。つらい思いをお前がする必要なんてないんだぜ?」


「わかってます。でも、お友達だったんですよね?私、つらいのすごくわかるんです!私もお友達と喧嘩別れしてしまったこととか悔やんでたりしますから。でも……」


「しゃべんな!」


クリスは驚いてしまった。俺はすぐさまフォローした。


「すまん。クリス、ありがとうな。俺もショックは受けたけど、そんなどん底に落ちるほどでもない。こういうのは割り切るしかないんだよ。大丈夫。俺はそこまで弱くはないさ」


 俺はクリスの頭を撫でた。


 かつての仲間と戦うのは少し寂しいけれど、これも戦場にたつものとして、正々堂々と戦うことがいいのであろう。


 過去の偉人達もそうしてきたのだ。俺もそれに倣うとしよう。


 ユーグは魔剣を手に入れた。全体的な部分も出来てきた。


 あとは作戦を遂行させるのみ。


 あとは出たとこ勝負な要素が多々あるが、士気を上げてことに当たれば、なんとなるという気持ちでいこう。自分を今追い込むところじゃない。


 今回、自分を追い込むのは現場でやればいい。


 少ない時間で無理くりやった部分、付け焼き刃の部分も点々とあるが、そこは仕方がない。

何度も練兵出来る時間は各プレイヤーの許す時間が限られている。その中でここまでこぎつけたのはよしとしよう。向こうだって一枚岩ではないだろう。



 俺はまもなく行われる最終会議に顔を出すことにしよう。



 俺は一歩一歩かみしめて会議室へ向かうのであった。

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