第22話「貧交行(前編)」
リフェラ、ルボランは、コンスタンの街を抜けて着々と任務を遂行するために首都アーモロトに向かっていた。
~王都が見える丘~
リフェラがいう
「ルボラン、セイメイさんを信用できてないの?」
「そうじゃない。演説は本物かどうかわからないけど、高揚はさせられた」
「それって心打たれているっていうんじゃないの?」
「……」
「まぁいいわ。先を急ぎましょう」
二人は馬を走らせて目標の王都へ向かい山道を抜けて、手薄な検問所を探していた。
~総司令官室~
俺は装備を整えつつ、窓の外をみて二人のことを考えていた。
普段は色々なギルドが街を行き来しているため、別に敵対ギルドがいても主要メンバーでなければ、無名なギルメンは基本的にスルーだ。特に名前が売れている二人でもないというのとアイオリアの信頼のお墨付きであるから、差し向けている。
理由はそう俺が何気なく撒いた種の刈り取りだ。ホルス、マノ、グラニ、この三名を探し出し参列つかせること。
そういう意味でいったつもりなんだがちゃんと伝わっているのだろうか?
まぁ待つしかないな。
~王都アーモロト~
アーモロトは城塞を中心に円を描くように堀がいくつものできており、歩いていくには迂回しながらいく。まさに迷路といっていい、外堀を設けている。堀の水は川から水を引き、さらに城内に用水路も引いてある。
水の都×城塞という夢のような街。桃源郷の都市。それがアーモロトだ。
解放時は大きな橋がかかり、さきほど言ったような迂回を必要としなくてよい。検問所は橋のところで陣を張り行っているのだ。東側が若干手薄なのでなんなく城内に入り、情報収集するため掲示板やオケアノスのギルドハウスを訪ねた。
「こりゃひでぇ……」
ルボランはギルドハウスを見上げていう。
オケアノスのギルドハウスは指し止めされており、一時凍結をされていた。
「早く三名を探さなくては…。」
リフェラ達はここをあとにした。
アーモロトはサービス最初の街で追加の追加で入り組んでできている。
裏路地もかなりの数があり、城下町からアーモロト城にいくまでの主道以外はかなり入り組んでいる。
スラム街の設定もあり、そこはPKゾーンだったりと、かなりカオスな部分が多い。
そこにまず向かった。
~アーモロト・スラム街~
ここは、ただの殺人狂もいれば、自分の力を確かめるために名うての凄腕がいたり、また狭いフィールドでどう戦うかということも考慮しながらやりあうやつらが集う場所だ。
「…ここにはいないと思いたいな。」と言いながら、とりあえず先にすすんだ。
するとルボランはスラム街の通りの出口をみたとき、赤い二つの光が横切った。
ルボランは背中にかけてた盾を前に出した。
「リフェラ、俺が囮になる。お前は先にいけ!」
「カッコつけてる場合か相手はアサシンだぞ。分が悪いだろ?」
屋根の上に赤い光がこちらを刺し照らす。
はっとみあげると、赤い光の下にあるマントの裾から皆既日食のマークに十字架のマークをあしらった紋章…
アポカリプス!!
赤い目が白い歯をむき出していった。
「狩りの時間だ……」
というと瞬く間に黒い影がルボランの盾をすり抜けて後ろをとった。
振り向く前にルボランの額に血しぶきがあがる。ルボランは膝をつき、POTに手を当てる。
「リフェラ、にげろ。こいつは……やばいッッ!!」
「馬鹿野郎!!おいて逃げれるか!!」
「セイメイさんの指示が先だ。任務を果たせ!」
一般回線で赤い目が語り掛ける。
「雑魚すぎるぞ。貴様ら…しかもその紋章…、フォルツァの人間だろ。偵察か?」
「答えんとそこの騎士様は、もれなくお亡くなりになるぞ」
曲刀がルボランに向けられた。
リフェラ、マントの下に手を伸ばした時、怒号が響く。
「おい!!聞こえてないのか?お前も死にたいらしいな?」
左手でリフェラの右肩にナイフが刺さる。
「早く答えんと毒が回って死ぬぞ?」
リフェラは口を開こうとした瞬間、ルボランは剣を抜き、赤い目に切りかかった。
その瞬間、ルボランは地面に倒れた。ルボランの死体の上に足をのせてさらにいう。
「この死体はそのうち復活して教会スタートだ。次はおまえだ!」
リフェラの目の前に距離を詰めた。リフェラは思わず、煙玉を使い、その場を去った。
屋根伝いに走り、その道中リフェラは何とか解毒薬を飲み、解毒をする。
まだだ…。セイメイさんの約束を果たせてない。と苦渋を飲み、スラム街を走り回った。
「くそ…どこにいけばいい…!!??」
屋根をつたって移動をする。赤い目はリフェラは追う。
逃げ切るのもつかの間、二の手三の手で背中にナイフが刺さる…!
体勢を崩したリフェラはそのまま地面に叩き落される。
リフェラが起き上がろうとしたときには、赤い目は太陽の光を隠すほどの場所にいた。
「さて、ここで俺の質問タイムだ。死ぬか生きるかの選択だぞ?心して聞け」
赤い目は語り掛ける
「なぜおまえらはここにいる?」
「人を探している」
「それは誰だ?」
「三人組のPTだ」
「名前を言え」
「……いったところで知らないはずだ」
曲刀がリフェラの肩を刺している。
「…俺は優しいぞ??これで済ませている時点でとどめを刺していない。クククッ……」
「受け取れ!」
回復魔法がリフェラを包む。
赤い目が振り返る。
そこには倒れていたはずのルボランと、かつての仲間だった魔導士ファウストがいた。
リフェラは一瞬のスキをついて、合流した。
ファウストは赤い目にいう。
「やあ朱眼の狂人」
「また、おまえか…俺の獲物を返せ」
「それはできない相談だ。元ギルメンがやられてるのをみてしまったからなぁ」
「さてと、安全な場所に移動しよう。ではまたな。朱眼」
光が三人を包んだ瞬間、跡形もなく消えた。
赤い目は歯ぎしりをし、姿を消した。
~ファウスト研究所・所内~
ここはファウストの家だ。特に可もなく不可もなくただどこにでもありそうな家だ。ただ部屋には夥しいほどの研究素材と機械がたくさん設置されている。
少なくともスラム街とは真逆にある。
「リフェラ、ルボラン、久しぶり」
ファウストは椅子に座りゆっくり腰掛ける。
「助けてくれてありがとう。エウロパには入ってないのか?」
ギルドの紋章を伺った。
「僕はもう世捨て人だよ。このゲームはまったりお金を貯めて装備を更新することとか、レア素材集めをするくらいしかやってないよ?」
「リフェラは調子どうだい?」
ファウストが聞くと
「今は任務についていて人探しをしている」
フォルツァはなんか裏で動いているのかと聞かれたので、リフェラは元ギルメンというのもあり、ことの事態を説明した。
ファウストは何か考えていた。その後、口を開いた。
「その…セイメイという人物はアイオリアによって発掘されたってことだよね?」
「そうですね。最初は頼りなさそうでしたけど、任命されてからは徐々に頭角を現しているらしいですけど……」
「ふむ……」
ファウストは少し真剣な面持ちで口を開いた。
「アイオリアから連絡が来ていたのだが、会えなかったのはこういうことか……」
リフェラは「ん?」とした表情でファウストをみる。
「これは僕の想像なんだけど、アイオリアがアーモロトにきた理由は、僕に会うためであった。セイメイはアイオリアの焦りの憤りの事件にたまたま巻き込まれた」
「それで?」
リフェラは首をかしげていた。
「彼……アイオリアのシナリオでは、アイオリアは僕に会ってセイメイと接触するように伝えて、その間にメディオラムに赴き説得したのちに、僕とセイメイを引き合わせたところでアーモロトからメディオラムまで連れてくる計画の予定だった」
「つまり?」
「つまり、アイオリアは最初から戦争を起こす気で戦うことを選んでいたんだ。その為の放浪生活、そして器を見つけた。そして今、エウロパの奪還に向けて……!」
「そんなわけないじゃないですか。だって出会う確率だって……正直天文学的数字ですよ??無謀すぎません?」
「それをやるのとやらないのとでは、全然違う。数値化すると1に対して、0.000…1をかけ、さらにかけ続けていくのと0を足し続けるのでは数学的な考え方をいうとでは全然違うことに至る。素数の……」
「ちょっとまって。頭痛くなるから、わかりやすく……」
「つまり、1+1+1…をやるのと1+0+0…をやるのでは、時間の経過と共に大きくなるのはどっち?てこと」
「あーそれはやったほうがいいね……」
「それを引き当てた、または見つけた。運もあるだろうし、タイミングもある」
ルボランは焦りをみせた。
「まさか、アイオリアは…たったそれだけのために世界を渡り歩いてきたのか?」
「そう…。無謀だろ?無謀にもほどがある。それをやれてしまうのは、グスタフ以外にアイツしかおらん」
「グスタフって“ワンギルドワン”の??」
「その異名は造語に過ぎない。だがそういうことだ。彼はこの腐った体制の元凶を知りえた。なんらかの方法でね」
「まさかとは思うが、敵が強大すぎないか?アニメの見過ぎか?俺は……」
「今までアイオリアの下にいて、不可能な作戦を強行し、突き進んでこれたのは彼のおかげでもあったな。同じ幕僚だった頃に俺は反対意見を伝えていたんだが、やり抜くということで信用をしていた。そしてそれが突破口になり、我々は勝ち抜いてきたわけだ」
リフェラとルボランは固唾をのんでいた。
「戦が終われば、俺に毎回いってきた。あの意見があるから俺は自分に覚悟ができる。感謝していると。それゆえ、彼を嫌うことができなかった。必ず相談してくるのもきっと彼の中で僕を信用していたからだ。僕はそこまで彼を信じてやれてなかった……」
「そうでしたね。彼は…。自分たちが挫けそうなとき、みんなを鼓舞し、現場での士気を落とすことなく、ラインの押し上げとかしてましたね」
「僕らは自然と彼に対して信頼をしていたんだ。彼ならなんとかしてくれるという思いがね」
ファウストは立ち上がり、窓の外を眺めていう。
「……こんなこというのは、ガラじゃないんだけど……」
「時期がきたのかもしれない」
この言葉を言い終わった時、オケアノスのギルドが連盟に属したアナウンスが流れた。
運命の歯車は刻々と回り始めていたのである。





