第21話「七連盟(後編)」
~貿易商の港倉庫~
貿易船が定期的に横づけされ、貿易商のNPCがいる。
そこでプレイヤーは通常より良質なアイテムや武器防具を買い揃えることが可能だ。
まぁ一番強いのはレア素材を収集し、鍛冶屋で制作するのが一番強いが大体のプレイヤーはここで買いそろえて、冒険に出てる。
ソロモンが露店をみていう。
「おお!!マスター!!魔術師の杖が売っているぞ!」
「お、いいね!呪術師の宝玉もいいんじゃねーのか?」
「こっちは、悪魔神官の礼服がある!!これは買い時じゃあ!」
ソロモンが嬉しがって声を張り上げている。
俺はキャラクターの祖国の貿易商を探す。
「お、いたいた。」
鎧はどんなのがあるんだろう…まぁありきたりの鎧ばっかだなぁ。
俺の鎧は平安末期のデザインで少し味気がない。いわゆる五月人形にリアルさがあるデザインだ。
ファンタジーの世界なのでもう少し見栄えの良いものにしようと、少し考えた。
「あーあれかな。素材買って、製作依頼かけたほうがいいなぁ。」
とりあえず、俺はいくつかの鉱材を買い、既定のいくつかデザインされたものの中から選んで、作成することにした。ソロモンと話、鎧製作すると伝えて、ここで別れた。
鍛冶屋に足を運んだ。
もっといいものを作るには、ヒイイロカネやオリハルコンなどのファンタジーでありがちなレア素材で作ることがもっとも良いが、今は現実的な素材で製作することとした。
むろん、この世界はファンタジーのため、通気性や実用性は度外視、デザイン重視である。
現実の鎧においてのデザインはプレートアーマーが主流になるし、それこそ軍隊のように同じ装備同じ服装になってしまうわけだ。
まぁ同じ似通ったものでも多少デザインに富んでいることに不思議ではない。
とりあえず、その矛盾だらけの世界観は否めないけど、それを愉しめないとゲームはできない。なにはともあれ、通常の鉄製から合金セラミックスとグレードを上げておこう。
イーリアスの世界の硬度の順番は、以下の通りである。
現実的な鋼材<伝説上の鋼材<ドラゴンや神話の生物の素材
俺は現実の素材でいくしかない…。
さて、俺のはどういうのかというとセラミックという派生の強いものを選んだ。
いつも着ていた鎧兜にその素材を渡して、チーン!
編み込んでいた形からプレート状に変化したし、防御力もあがったね。
それとカラーリングもいつも赤基調も飽きたな。少し、悪役ぽいカラーリングにするか、黒と金、ラインは白でいこうか。まぁそのときどきでカラーリングは可能なので、今は黒を基調した色にして優しい色使いはやめておこう。
まったく色で判断してしまう、動物の性というのは脱ぎ捨てれないのだな。
とりあえず、新調した装備をし、アバターも特に指定なしでいこう。アバターってのは完全見た目重視で素の装備能力を反映しご都合主義である。まぁそれがファンタジー系の良いところだな。見栄えがいい!!
俺はソシャゲーにありそうな煌びやかなデザインでいくとしよう!!面頬は…やっぱ!つけよう!髭なしの赤いやつ!!着脱は自由だしそれでいこう!!
立物は…。定番の鍬形ではなくて、鬼にしようw
そうだ。毛羽滝つけてってあれ?信玄公じゃねーかww
毛をつけずに鹿の角にしよう!!
んん…!?!
これ天下無双の本多忠勝じゃんかwwww
俺、そこまで武勇ねーよ。
むう…。
ここは人気を取ろう!!!
みんな大好き伊達政宗公でいこう!!れっつぱ…。
ガラじゃねーことはするもんじゃねーな。。。。
鹿の角はつけよう。これに手を加えるから、偉人達に気後れするのだ。んで、うち家紋は下り藤だ。これにしよう!じっちゃんの刀とこれで守ってくれるはず!そんな願掛けをして決まった。
そして陣羽織を纏い、全体をみた。おお、リアルにこんなのに切りかかられたらこえーなwそう考えていたら、普段は兜と面頬はオフにしとくか。
おし、これでいこう。
設定をいじくってメイン画面に切り替わると目の前にクリスがいた。
「うわああぁああ。なんだよ!アップでいるなよ!!」
「セイメイさんの設定がおかしいんですよ!それよりどこに行ってたんですか??」
「ああ、ソロモンと買い物に行ってた。」
「あーずるい!!私もいきたかった!!!」
「俺はソロモンと約束してたからさ、すまんな。」
「ぷぅー!」
「今度一緒にいこうな!?な!?」
「今度とお化けは出てきませんっていいますよ!?」
「わーかったって!いきますよ!いきます!!」
「うむ、よかろう!」
と、クリスは何の真似なのかわからないけど、納得したようだ。
さて、そろそろ本会議の時間だ。
会議室にいくとしよう。
~ファサール国会議事堂~
ここで、俺は各ギルマスとの準備状況の確認と戦略の構想に入ることとなる。
少なくともグレイアン山脈を越えるのは行軍の足を遅くする。
また、早い段階で山脈を陣取れないと、アーモロトへの侵攻は難しいとされている。
俺らのルートだとまず、自然要塞都市ウルススを占領下に収めておかなくてはならない。
ここが本陣営最初の拠点だ。
その後、パスガへ侵攻し、コンスタンを経由、アーモロトという順番だ。これを4時間で行う。
相手はパスガでぶつかる計算になる。
パスガ攻略時間はおそらく1時間から2時間、その後攻城戦にいくという侵攻作戦だ。
占領戦は国力の総当たり戦といってもいい。他国の干渉はないにしろ、同盟ギルドもくるので
ややこしいっていえばややこしい。無論、傭兵もいれるけど、ここで内通者がいないことを祈るばかりだ。
さて、今回は先陣をだれが切るかなんだけど、俺はPROUDにお願いしたのをつたえた。
そうすると、BV名乗りを上げる。
俺は断りを入れて、内部のメンバー表を照らし合わせて話をした。BVは騎士が多いので、斥候には向かない。どちらかというとライン戦と防衛づくりをお願いした。開戦すれば、花形であるのは間違いないので難なく了承してもらった。ガガSPは魔法職が多いのでBVのフォローアップのお願いをした。
残りはフォルツァとレオナルド、DGだ。
ここが厄介だ。
「お二方、どうしたいかね?」と俺は尋ねてみる。
レオナルドのドリアス、士官としてはかなり優秀だが、ピピンの件で不服だ。
ドリアスが口を開いた。
「なんか、色々とロビー活動みたいなことをしていたみたいじゃないですか?あれは何なんですか?パフォーマンスですか?」
嫌味を言ってきた。俺は毅然とした態度で臨む。
「いや、パフォーマンスなら、出来試合を織り込みますね。パフォーマンスは失敗は許さないのですから。」
「ほう。では実力でといいたい?」
「ご期待に沿えず申し訳ないが、結果がすべてだ。あなたには、結果を見せても納得いかないという感じでお見受けするがだめでしょうかね?」
「いや結構。余談が過ぎた。私どもはアサシンが多いので、迂回ルートで魔橋を越えてパスガを挟撃する事を提案したい。」
「ふむ。良いご提案ですね。して、時間としていくつほど?」
「出発場所にもよるが、1時間もあれば、谷越えはいける。では本陣営がウルススに移り次第、作戦をお願いしたい。」
「よかろう。やるからには勝つ。あなたにかけよう。負けは許さん!覚悟を決めて頂こう。」
「もちろん。やるからには勝つ。勝つためのこの会議です。有効な話し合いをできて光栄です。」
と、社交辞令だが、感謝の言葉を述べた。
次にDGのセル・ツヴァイだ。レオナルドのドリアス同様、ギルメンを引き抜いた件つまり、カルディアの件で不服だ。
セルは話をしない。
「セルさん、会議で黙るというのはどうなのでしょうかね?」
「……」
「今回不参加ということであれば、退席していただきたい。無論、警護が付きます。情報漏洩しないためにもね。」
「……まず、なぜ我々の前に現れた?」
「はい?」
「なぜ我々の前に現れたのかを聞いているッッ!!」
「そうですね。前回説明したのですが……」
「そうじゃない。俺はこのまま6ギルドで回していければそれもありだと思った。だが、貴様が現れてからいつの間にか開戦ムードとなった。今回の戦いはリスクマネジメントができていない。それにも関わらず、このような状態というのが、納得いかない!」
たしかに。わざわざリスクを背負って財力を削るほどのことなのかと思うとその考え方は間違ってない。
だが、この件にはそれにも勝る権利が圧倒している。打倒エウロパだということを。
「たしかに仰る通りだ。これはリスク0なんて生易しい戦いじゃあない。そもそも戦いにリスクはつきものだ。それに議決権の観点からあなたの意見は少数に入る。これが数の暴力という論争も生まれても不思議ではない。だが、それが民主主義というものだ。」
「気に食わないが正論だ。で、我々はどこを当たればいい?」
「本来であれば、首都防衛に当たってほしいところだが、押し返されなければ、DGと同じように、パスガを攻めてほしい。」
「なるほど。後方支援か。引き受けよう」
最後にフォルツァだ。
ベルス=マキアースこの盟主であり、本来であれば陣頭指揮を執るのはこの人だ。
「ベルスさん。アイオリアとどのような話があったのでしょうか?」
「セイメイさん、なにも聞いてはおらんのか?」
「こういうと嘘かと思うかもしれませんが、あの演説の時、私は何も聞かされてませんでした。ただ、あの重圧に押しつぶされないようにあの時から戦っています。今もここで戦っています」
「そうなのか。アイオリアは、自分に『私を超える英雄を見つけた』と言ってきていた。それを聞いた時にうそのような安堵感を味わった。自分の目で確かめたわけでもなく、ただ彼の言葉を待っていたのだと確信したのもその時だった。彼もまた苦労をしてきている。それが報われた事にほっと胸をなでおろす感覚でもあった」
「ご期待にまだ添えていません」
「いや、あなたはここにいない、各ギルメンに希望を光を照らした。ある者には仇討の機会を、あるものはこの不条理なやり方を。またある者は変革する担い手になる気持ちをおこさせた。それだけで地盤作りには成功したといっていいだろう」
「俺としては、ここにいるフォルツァのベルスさんに陣頭指揮をおねがいすべきだと思っています」
「それはだめだ。アイオリアが認めたセイメイさんがいるからこの空気はできた。自分にはその影響力はない。だから君がとるべきだ」
「………」
俺は口を閉ざしてしまった。ハイそうですかと言えるほど身の程を知らぬ人間ではない。
「“無言は肯定の証”だったよな?」
俺は思わず、たじろいだ。
「うちのギルメンが失礼をした。血の気の多いやつでな。俺が説教しておいた。無論、仲間に戻っている。その節は大変申し訳なかった」
「ああ……いえ。大丈夫です」
「では自分は、セイメイさんの横につき、幕僚として支えるポジションにつこう」
というと笑顔で返された。
「わかりました。この戦、絶対に勝ちましょう。王都奪還は我々が成し遂げましょう」
全員立ち上がり、拍手をして解散となった。
この会議により、7つ目の同盟ギルドとしてオケアノスが正式に加わったこととなり、同盟名を七星連盟と命名し、全サーバーに伝わった。
略称はナナレンメイ、ナナレンなどである。
―その頃、リフェラ、ルボランは、コンスタンの街を抜けて首都アーモロトに向かっていた。





