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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第202話「炎舞のワルツ」

セイメイ一行はしずく達より先に敵砦前まで来ていた。

しかし、眼前に広がるのは火箭による進行妨害の炎の壁だった。この壁を超えれば大通りによる侵攻が可能となるが、なにぶん何重にも重ねられているため、ひとたび飛び込めば大ダメージと鈍足効果が発動し、いずれは死に至り、自砦に逆戻りである。


しずく達にこの炎の海を行軍を進めたのは他ならぬセイメイである。


一見、自殺行為にも見える行軍をセイメイはどこまで見据えているのか現段階では誰も予期でなかった。



「さて、諸君、死ぬ時は一緒だ。参ろうか!」


意気揚々とセイメイは何も怖がることなく足を踏み入れようとするので、思わずアイリーンが止めに入る。


「Hey.Hey,Hey!!stop!!stop!!don't move!!don't!move!」


「んだよ?そんな両手広げて!俺の前に立ち塞がるなよ?」


「SAMURAI-BOY!あんたわかってるの?素人の私ですらここからどうなるかぐらいわかるのよ?」


「まぁみとけって。アイオリアがなんとかするんだって」



立ち塞がるアイリーンをよそに後ろにいたアイオリアがスタンバイしていた。


「マスター、これは私に燃えろというのですか?」

「そうだ」


セイメイはニヤリと笑いアイオリアに死ねと命じていた。


「Unbillly Babo!!Are you crazy?レオのキャラクターが死ぬじゃない?」

「そこだ。アイリーン。コイツは死なない!」

「What's?」

「理由は簡単だ。コイツの纏っているヨロイ...」

聖衣クロスです」

「んまぁ...()()がなんとかしてくれちゃうんだよ」


セイメイはクスクス笑いながら、アイオリアにGOサインを出す


アイオリアは走り込んで火の海へとダイブする。


「オーマイガー!おー!まいー!がっ!あなたは本当にクレイジーよ!」

「まぁみてろよ?アイツがそう簡単にゲームオーバーになると思うか?」


親指でクイクイと海を見ろと合図をしていると火の海が弱まり始めた。


「な、なにが起こっているの?」

「本来、被るはずのダメージを全ッ部ッ!被ってもらっているのさ!」

「クリス!兄ちゃんに回復飛ばしてやってくれ!回復作業が手間だろうからさ」


「わかりました!」


クリスは回復魔法を兄アイオリアにめがけて撃ち始めた。


「説明しよう。アイリーン」

「もちろんよ!」


「まぁアイリーンにはアイオリアの装備の説明をしなきゃならんな」


アイオリアの鎧には自動回復のアビリティが付与されている事を簡単に説明した。


「I got it!!そういうことね!」

「つまり、彼にしかこの炎は消せない」


「だからというわけでもないが、俺らも消す事はできる。ダメージ喰らうけどね」

「普通の世界ではありえないわ!」

「まぁそうだな。……そうだ。アイリーン。いい事を教えてあげよう!」

「なに?」

「日本には精神論を語る上で非常に面白い言葉がある。それは……」

「もったいぶらないでよ?」


セイメイは笑顔で答えた。


「"心頭滅却すれば火もまた涼し"という諺がある」


「シントウ……?」


アイリーンはクビを傾げて理解に苦しんでいた。


「心の持ち方によって、いかなる苦痛も感じなくなるっていう意味だ。実際、この言葉が生まれたのは、本当に焼かれた寺の中で僧侶が語った言葉とされている」


「オージーザス!そんな事あったの?」


アイリーンは口を抑えていう。


「なにキレイゴトをいってんだ?ヨーロッパもアメリカも世界ではもっと過激な事やってんだろ?」

「うっ……確かに……」


セイメイは過去の歴史に呆れつつも、アイリーンを見て手を差し伸べた。


「そんな事を議論する事では無い。さぁ踊ろう。メニュー画面を開け。そこにあるアクティビティを開いて……OKだ。さぁこい!」



アイリーンは腕を引っ張られてセイメイとワルツを踊り始めた。


「クリス!こちらにも回復を頼む!」

「え?ちょ!マスター!ええええ??」



セイメイはクリスをよそに火の中へアイリーンを誘った。


ーちょっと!ワタシまだ踊った事ないのに!!


クリスの気持ちなどお構い無しにセイメイはアイリーンと踊り始めた。


「やめろ!……アイオリア……レオが観ているだろ!?」

「大丈夫だ。アイツはそんな事で怒りはしない。それより……」


セイメイは耳打ちをする。


「それよりなぜ俺が選ばれたのか察しはついてるんだろ?貴様らは日本に来る用事など余程の事が無ければ来ないだろ?バカンスでもあるまいし。ましてや、民間人の俺を巻き込むって事は長官クラスでないと()()が合わない」


「あなた……意外と詳しいのね?」

「そちらのドラマを見すぎたせいだよ。色々やりながら冷静に考えたらおかしな事をしていると俺は思うぞ?」

「なら、話は早いわ。FBIとCIAがもめてるわ」

「だから……俺はドラマの見すぎなのか?」

「いいえ、有り得ることをいつも通りよ?」



アイリーンは微笑み先ほどまでの恥ずかしがった表情とは打って変わって余裕の笑みすら浮かべていた。


ひと踏みで消えていく炎のダメージを受けつつも2人は踊りつづける。


チラリと横を見るとアイオリアは()のような演舞をしていた。特にこちらを気にする様子もなく独りの世界に入っているようだった。


アイリーンは話を続けた。


「簡単な話よ、あなたは選ばれた。仮の選ばれし者でもね」

「フン!ここまで来ると腹を据えざるをえまい。しかし、俺は何をすればいい?」

「簡単な話、世界を救えばいいのよ」

「おい、俺は映画やドラマの見過ぎらしい。これからは控えるようにしよう」

「バカね。ここぞとばかり奮起するのがHEROでしょ?」

「生憎、俺はHEROというのは嫌いでね。一方的な正義というのはただの押し付けでしかない。ましてや、AIに世界の覇権が変わるのならそれは人間の傲慢さが招いた事だ。俺は受け入れるよ」

「そんな事を我が国USA(ステイツ)が望むはずがないわ」

「諦めが悪いんだな?世界のリーダー国というのは……」

「違うわ。手篭めにしようとしているのよ」

「本当に言っているのか?人知を超えた知能を愚かな人間の知能の下で機能するわけがない!あの有名なSF映画の世界はそれが原因だぞ??」

「ええ、もしかしたら本当にあの世界が訪れてしまう可能性はあるわね」

「正気の沙汰とは思えん!それこそクレイジーだぞ?」

「所詮、私も駒の一つ。与えられた任務を全うするだけなのよ」

「日本は同盟国になっているとはいえ、このような愚行を知らずに今日も永田町は足の引っ張り合いに夢中なんだから……」


セイメイは天を仰ぎながら、ステップを踏み続けている。


「あなたの選択はどっちに転んでも良い結果は生まないわ。せめてマシな選択をお願いしたい」


「それが上からの本音だな?」

「まぁそう捉えても致し方ないわね」

「御苦労なこったな。俗にいう"最後の審判"までには猶予あるのか?」

「ええ、多少はね。あくまでこのテストが上手く行けばAI化に本腰が入るわ」

「そもそも、核のボタンや兵器にAIに委ねるとかどうかしているんだよ!」

「いわゆるセミオートという点に関しては、だいぶ優秀よ?」

「そりゃそうだ。だが!AIによるプログラミングは結果的にAIがAIを上書きするんだからな!」

「鋼のHEARTにSoulを定着させる。これが真の狙いよ」

「人間サマは既に備わっているのに過ちを繰り返す。AIにその選択を委ね、過ちを過ちと判断しなかった場合、世界は真の最後の審判が下るな」

「“シンギュラリティ”著名な学者達は批判的ではあるが、それと同時に裏では好奇心が大きく上回っているわ。そんなものよ。学者も普通の人間も……」

「それは、あなたにかかっているのよ?ち……」


アイリーンが本名をいいそうになるとセイメイは口を塞ぐアクションを取る。


「ここではセイメイだ。それ以上でもそれ以下でもない。最後の最後までセイメイでいさせてくれ。これでもこの世界では、自分の信じた正義を貫けているのだから。しかし、その()()()()()()()()は俺にもよくわからん」


「シンギュラティ!この覇権を握ると、世界経済を牛耳れるわ。経済は勿論ね。但し、我々の人類の死滅もある。食糧問題そうだし、なにより雇用問題が出てくるわ。直近の問題はこの雇用問題なの。私たちの国では失業率は支持率に直結するし、犯罪率も上昇するわ。そこにロシアや中国など敵対国はここぞとばかりに手広く攻めてくるわ」


「まぁそこまでは俺にはわからんが、ただ人間とAIは良き友であるべきだと思っている。それを今までのような主従関係にするというのは、明らかな自殺行為だ。いずれ人間が動物達に行ってきた家畜と化すか、害虫となるかしか選択はなさそうだからな」

「私はあくまで選択肢を狭めたくないだけ。人類の繁栄をここで止めては未来に何も残せないもの」

「そう言われると、なんか切ないな」



アイリーンはフフフと笑い、踊りを終劇した。


当たりは消炎と化していた。


「アイオリア、助かったぜ!」

「いえ、このような簡単な事で謝意を述べないで頂きたい」

「んまぁそう言うなよ……さっきは言いすぎたわ」

「いえ、大丈夫です。マスターが私を思って言ってくださった事ですから」

「俺の気が済まないから謝った。それで手打ちにしてくれないか?」


アイオリアは少しうな垂れているように見えたが、顔を上げて小さく頷いた。


「クリスもありがとうな?」

「あ、あの!ワタシといつ踊ってくださるんですか?」


クリス詰め寄りにセイメイはタジタジだった。


「あ、あー!あれはこの世界しか出来ないからなぁ……」


セイメイが困り果てていると詰め寄ってクリスは提案してくる。


「では、()()()()()()()()()練習をしましょうね!」


何を言っているのか理解出来なかったので、その場しのぎでセイメイはわかったと答えてしまった。


「さて、まぁ俺らはここらで退散しとくか」

「御意。では次の指示を!」

「あとは何もないんだよなぁ。様子見するしか……」


セイメイはうーんと唸っていると、するとアイリーンが口を開いた。


「戦局をみて私達が撃って出るまで時間はあるの?」

「ああ。バックアタックを阻止しておきたいしなぁ……」

「OK!ならさっき通った橋まで戻って川を登りましょ?」


「まぁそれがいいか。対岸なら、存在を隠せるしな!」


そういうとセイメイ一行は次の行動まで時間を持て余してしまうのであった。






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