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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第199話「サイレント・ファイア」

 アイオリアは倒れているアイリーンへ近づいた。


「アイリーン大丈夫か?初めての事だから戸惑っているだろう。立てるk……」


 アイオリアはアイリーンの腕を掴んで立ち上がらせようとした瞬間!


 ドゴーン!!


 アイリーンの拳がアイオリアの顔面を捉えてアイオリアを吹っ飛ばした!アイオリアは木に叩きつけられて、気絶のCCが入っており、立ち上がっているものの身動きが取れなかった。


「お、おい!アイリーン!俺だ!レオだ!」

「え?う、うん。ていうか……」


 アイオリアは自分の身体をはたき、アイリーンを咎めた。


「まずは、PvPモードを切れ。それと……」


 アイオリアはアイリーンに説明をしていなかったチュートリアルをここで説明していた。


「……ざっくりいうとこんな感じだ。一昔前だったら難しかったな」

「日本のゲーム機をやっていたことがあるからそんなの気にしなくてOKよ?」

「そうか、今は次世代ハード機の先行プロトタイプで感覚だけで操作できるようになってはいる。少し前の半ダイブさせて両手にコントローラーという操作は必要ないからな」


 アイリーンは自分の姿を見渡した。


「一昔前では考えられないわ。こんなシステム」

「フルダイブ型なんてものは名ばかりだ。ユーザーから一定のクレームは出ており、そのオプションをオフにするユーザーが多かった。しかし、これは違う。反応速度がほぼリアルタイムで伝達される。ただ、プロトタイプなので多少の問題は残るが……。それに至ることはまずないがな?」


「まぁいいわ。とりあえず、セーフティにかけている分には大丈夫なのでしょ?」

「ん~ややこしい事はあるにはあるが、アイリーンはそのモードでいい!」


 アイオリアは馬を呼び出し馬に跨った。


「さぁいくぞ!我々の主が待っているッ!」

「OK~!あのサムライボーイのところね!」

「ん~あながち間違ってはいないが……まぁそれでいい!!」


 アイオリアは何事もなかったように馬を走らせた。


 ~林道~


 セイメイ達は丘を下って道に出た。しかし、何かを待つように身を潜めながら村に向かっていく。


 ―クリス、聞こえるか?


 セイメイはこめかみに指を当てて、会話をする。


 ―聞こえてますよ?どうしたんですか?


 クリスはセイメイの後ろを歩きながら答える。


 ―雲海の動きを知りたいのだが、この距離ではわからない。

 ―仕方ないですよ。現在、友軍達のライフゲージも表示されてませんからね。

 ―お前は見れるかもしれんが、今回、俺は()()参戦だ。

 ただの妨害ヤローでしかない。情報が出たら教えてくれ。

 ―了解です。でも、なんで隠れながら進んでるんですか?

 ―ここらで俺を狙う一部のバカがいるだろ?

 それを相手している時間なんざねーんだよ。一気にここで叩くッ!

 ―ヴェェェエ!!??マジですかッッ??

 ―マジだよ。少なくともこちらの主力を急遽呼んで……いや、今回は違うなぁ。

 成り行きかなぁ……。


 セイメイは()()()()モヤモヤしていた。


 そんなやりとりをしているときに後ろからものすごい勢いで馬が疾走してくる。


 白金の鎧、そして、背中にはもう一人乗っていた。


「間に合ったな……」


 思い当たる回線で話しかける。


 ―おーい、アイオリアァーー!ここだぁー!!


「むぅう??」


 アイオリアは馬を急停止させてこめかみに指を当てる。


 ―陛下ッッ!!ご無事でしたか!??

 ―あ、ああ……、てかッ!お前と臣下の礼を交わした覚えはないぞ?

 ―なにをおっしゃいますか!!この世界ではあなたは私の主ですぞッッ!!


「て、ていうか、なんでwisできるの?戦争中だよ?」


 クリスは少し怒り気味でつっかかってきた。


「あぁん?お前わかってねーな。俺らは()()()()だっつーの。だから出来るんだよ。しかも占領戦ではないからある程度の制限が緩和されているの!」

「ああ!だからか!納得しました!!」


 クリスはポンと手を叩き、納得した表情をした。


「よし、念のため、3人にはもう一度、本作戦を確認してもらおうか?こちらを見てくれ」


 意気揚々とセイメイは地図を開いた。


挿絵(By みてみん)


「ここから北に向かうと橋があるだろ?可能性として待ち伏せがあるところだ。無ければそのまま村にいく。そのため、そこをまず突破する。そして、村を制圧し、取り返される前に高火力、つまり全戦力をぶち込んで敵陣に乗り込む。至ってシンプルな全員突撃だ」

「Hey!SAMURAIーBOY!?こんなシンプルなミッションでうまくいくのかい?」

「お前さんの力も必要なんだよ。そうじゃなければ、この作戦は成功しない」

「I got it!BOSS!わかりやすくていいわ!ねぇレオ?」

「ここではアイオリア()といえ!」

「うわぁ……めんどくさい男ねぇ!でもいいわ!アイオリア!」

「だから様をつけろと……」

「まぁいいじゃねーか、アイオリア。ゲームではアイリーンみたいなヤツがいると士気が上がるんだ。文句はいうもんじゃないぜ?」

「流石ね?部下の扱いはお手の物ってわけね!」

「まぁなんとでもいえばいいさ。今回は付き合ってもらっている側だ。頼むぜ?」


 アイリーンはウィンクをして返事を返した。

 クリスは少し嫉妬気味で負けじという。


「わ、私だって役に立ってますぅ!」

「ああ、そうだな。クリス、君には壁役を頼む。なんせ、両軍から敵扱いだからね!」

「え?私達そうなの?オーマイガー!」

「ははは。それくらいがリアルで楽しいだろ?」

「クレイジーだわ。このBOSS」


 呆れたような顔でアイリーンはセイメイを見つめるが、セイメイはそれを笑顔で返した。


「俺みたいなファッ〇ンクレイジーじゃなきゃココでは生き抜けないし勝ち筋もみえない。だから、こうして呼んだんじゃないか。乗り掛かった舟だ。諦めろ」


 セイメイはニヤニヤしながら、アイリーンに親指を立てた。すると、アイリーンは手をあげて、大きくため息交じりにフーっといった。


「まずは橋周辺を調査しよう。そうでなければ、先には進めん。まぁ先行して雲海が動いてくれていればの話だがな」


「敵がいれば迷わず殺す。それで良いですかな?」


 アイオリアは鼻息を荒くして拳を叩いた。それを見たクリスは兄を制止するようにジーッと睨みつけながら、話に割り込んでくる。


「そ、それだと、雲海ギルドの皆様だったら意味がないですよ?」

「その心配は無用だと思いたい。ある意味、伝達済みだ。後は……()()()()って事かもね?」


「ん~?んん?」


 クリスはアタマの上にクエスチョンマークがいくつか出ては消えていった。


「まぁ、運が大きく関わるというのは場面もそうだが、人の心理をうまく扱えるはずの試算が誤算になるかも知れないという懸念だよ。とりあえず、ここにいても始まらない。むしろ、出遅れる可能性もある。さっさといこうか」


 4人は橋に向かって歩みを早めていくのであった。




 ~三叉路~


 セイメイと共に村離れた雫は、セイメイからある一つのお願いをされていた。それは、いきなりの別行動をさせられ尚且つ自砦に戻れとの事だった。そこでファウストとルカの合流もあり、一時の休息を得た。

 しかし、雫はこの作戦に納得はしていなかった。


 現在は村を迂回しながら小走りに移動をしていた。


 ファウストが雫の背中から声をかける。


「雫さん、まもなくボーダーラインを越えます。更に警戒してください。遭遇戦になります」

「わ、わかってますよ!ファウストさん!」

「おい、ファウスト……。私の出番はまだか?」

「ルカさんは……まだかな?アハハ……」


 ―――おい!なんで俺がこの子の()()()をさせられてんだよぉ……トホホ……


 三叉路を越えて火の手の上がる村を見ながら走っている。するとバンブーパンダの砦に繋がる橋を遠目に見つける。


「橋だ。橋が見えたぞ!」

「ここまで敵に遭遇していません。怪しいですね」

「まさか!村でリスポーンされて追撃が!??」

「だとしたら、システムから自動で通知されますし、おそらくセイメイさんがなんか仕掛けたのかもしれません。あの人はああいうことが得意ですからね……」

「あのオッサンはホント信用できない!!」

「その割には言われた通りに()()を進めてますよ?」


 ファウストは雫にチクリと嫌味を言いつつ、ほくそ笑みを浮かべていた。


「オケアノスの人達ってみんな性格が悪いのね!」

「いえいえ。私は一緒にしないでほしいですね?ただ……少なくとも悪い人ではないですよ」


 雫がファウストの顔を見るとニッコリと雫へ笑い返した。だが、納得していない者が一人いた。


「しずく……おまえは周りを見えてない。成長しろ」

「ちょっ!ルカさん!?そんな言い方しなくても!?」

「ダメだ。セイメイは私の主だ。主の悪口をいうやつは敵だ」

「な!なによ!このッ!ちっこい魔法使いは!!」

「ちっこくない。魔法使い?まぁそれでもいいだろう。私の名はルカだ。貴様より数段強い。言葉を選べ」

「ああ!!もう!!ここで喧嘩しないでよぉ!俺が後で怒られるんだからさぁッ!!」

「なんなのよ!アンタなにも知らないくせに!」

「知っている全て。だから言っているのだ」

「はぁ??」


 三人が前列で揉めているのを雲海ギルドは不思議そうに見ていた。すると、その三人の先に見えた敵影を雫達に伝える。


 敵襲!!10時から11時方向!!


 どうやら、敵が死に戻りから復活してきたバンブーパンダのギルメンが山から下ってきたようだ。


「まったく……これだからいきますよぉ!!」


 ファウストが無詠唱の魔法を唱えようとすると、ルカがファウストの前に出た。


「バカと狂人、見ておれ。このルカのチカラ、まがい物でない事を証明してやろうッッ……!!」


 ルカは杖を取り出しいきなり火炎の魔球を詠み出すと、ルカはマルチロックオンをかけていく。

 火炎の魔球はルカの手の上に乗り、そして天にかざしはじめた。


「私の力が貴様より強い意味を教えてやろう!」


 ―――おい嘘だろ!?あの詠唱魔法は!!高位魔法!大量のMPを消費するんだぞッッ!??


 ファウストはルカの背中を見ながら生唾を飲んだ。


「本来であれば、魔法名など言わないのだが……あえて言わせてもらうッ!!」


 レイン・オブ・フレイムッッ!!


 火炎の魔球は天に一気に昇り、爆発をする。爆発音に気づくバンブーパンダのギルメンはルカを目視した。


「むぅ?雲海のやつらだ!死に晒せぇ!!」


 雫達に気づいたバンブーパンダのギルメンが、一気に距離を縮めてくる!しかし!次の瞬間、火の粉と化した欠片がバンブーパンダのギルメン達に襲い掛かるッ!


『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 knockdown!!

 knockdown!!

 knockdown!!

 knockdown!!

 knockdown!!


 ダメージを負った敵は強制ダウンと共に炎のダメージを負いながら転がっていた。


「さぁファウスト、後はお前の指揮に戻る。トドメを刺せ」

「お、おう!雫さん!!突撃の号令を!!」

「うぅ……!!」

「何を戸惑っている?実力を見せたに過ぎん。さっさとやれ」


 戸惑いと驚きと恐怖が入り混じった感情を整理できていない雫が足をすごませていた。


「これだから、人間の女は……」


 ルカがヒョロヒョロと宙に浮き、雫の耳元で囁く。


「……爺さんなら、どうしてたかな?」


 その言葉に雫は全身に雷が打たれたかのように気づかされる。


「全軍……突撃ィィ!!」


 ルカはそのあと、フワフワと近くにあった石の上にちょこんと座り、川向うにある対岸の村が燃え盛る炎をじっと見ていた。


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