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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
202/208

第197話「敵陣刺殺」

 ~渓谷・北~


 村より少し離れた場所に陣取るのはバンブーパンダである。


 渓谷の中腹に位置し、少し開けた場所がありそこに砦を構えていた。

 地形を表現をするならば、後ろは崖がそびえ立ち、西側は少し伸びた峠、東には往来できる道のりが川に沿って伸びている。


 この地形を活かし自然の要塞を築いていた。



「ふぁ~暇だな。勝ち戦ってのは……」


 門の前に待ち構えているバンブーパンダのギルメンは攻めてこない雲海ギルドを侮っていた。特に、門の前で周辺偵察をしているプレイヤーは愚痴すらこぼれていた。


「おいおいその辺にしとけよ?MIKADOに聞かれたら何言われるかわかんねーんだから!」


 ─じゃあこっちならいいっしょ?


 こめかみに指を当てて目線を送る。


「そういうことじゃねー!一々その仕草をしなきゃいけないから面倒だしなんかあった時、すぐに行動にうつせなくなるからやめろ」


 チィっと舌打ちをした後にもう1人は静かに燃え盛る村を見ていた。


「まぁあそこからリスタートしたところで下からここまで上がってくるのが見渡せるから()()()()だよな?」


「だからよぉあくびが出るくらいよゆーって事っしょ?」


 見張りの二人は完全に油断をしていた。


「あのなぁ……」


 すると黒い影が仲間を注意をしていたプレイヤーの後ろにすぅと立っていた。


「お、おい!後ろ!」

 あくびをしていた仲間が注意を促す頃には、スパン!っと切り落とされていた。


 ───な、なんだと!?敵襲?死に戻りしなくてはッ!


「こ、コノヤロー!」


 慌てて抜いた剣では黒い影にかすり傷ひとつつける事が出来ずにいた。


 二人を瞬殺した黒い影はゆっくりと周りを見渡す。


 そして、倒した二人の情報を聞きつけた門の中にいる仲間達に奇襲の報を与えた。


 ───これでいい。さて戻るか。


 黒い影はまた夜の闇へと消えていった。


 ~合流地点~


 合流地点に先に着いたのはクリスだった。

 先行するセイメイが待っているとばかり思っていたクリスは焦りの色を隠せないでいた。周りを見渡すがまだ来ていないようだった。


 イライラするクリスは我慢の限界だった。


 ───呼んどいていないってどういうことなのよ!大体ね!いっつも何考えているかわからないのに!さらにわからなくなって怒りすら覚えるわ!しかも……レディーを待たせるとか!!


 愚痴を言いそうになった瞬間、気配を感じた。


「!!」


 ドスン!


 鈍い音が耳元をよぎった。


 音のする方を背にしていたクリスはランサーを抜きながら戦闘態勢をとり、バックステップを踏んで盾を前にし様子を伺った。


「いやぁ~わりぃ!近道したら尻もちついちまった。この歳で無茶はよくねぇなぁ」


 と、動きが少し鈍い黒い影はクリスの方に向かって歩いてきた。


 それは紛れもなくセイメイだった。クリスの顔をチラッと見ると気まずそうな顔していたのだった。



「せ、セイメイさん!ビックリさせないでください!敵かと思ったじゃないですか!」

「わりぃわりぃ!まぁ攻撃されないだけましだな」

「何言ってるんですか?戦場とはいえ、ギルメン同士は決闘モードを両者が承諾しないと攻撃判定でないんですよ?フレンドリーファイアは出来ない仕様です」

「ほぉ……。そうなのか」


 感心するセイメイをみて呆れるクリスは話を続けた。


「で、これからどうするんです?勿論、秘策はお持ちでらっしゃいますよね?」


 ムスッとしたクリスの顔はセイメイを猜疑心の眼差しで見返していた。


()()()()よ、聞け。俺は敵陣視察をしてきたのだ。これは見事な奇襲だったぜ?あっという間に2キルだ。どうだ?すごいだろ?」


 セイメイはアイオリアの喋り方を真似てクリスに話をした。

 それを聞いたクリスは更に呆れた。


「単独行動な上に視察とは名ばかりの敵陣への攻撃、スタンドプレーにもほどがあります」

「南米サッカーのような個人プレーより欧州サッカーの方が好きなんでな?」

「へー、てか、サッカーなんかワタシ知りません」

「マジか」

「そんなことより、作戦は?」

「まぁ焦るなワトソンくん」

「あらそうですかシャーロックさん。続けてください」

「今、()()は敵陣を見てきた。まぁ格下相手が基本見張りをやるのが順当だからただそこをついた」

「それで?」

「つまり、この攻撃で相手の頭の中の片隅に奇襲もあるという選択肢を植え付けた。そこに意味がある」

「まさか!」

「そう、そのまさかだよ。ワトソンくん」


 クリスはセイメイの考えていた事を理解したのだった。


「まさかと思いますが、私も奇襲の手伝いを……」

「その通り。私の背中をお願いします」

「やっぱり……。ソロモンさんやユーグ君はこんなの付き合って来たんですね」


 クリスはセイメイの無茶ぶりにため息をこぼした。


「なぁに、我々はあくまでお膳立てだ。本筋は雲海ギルドにかかっている」

「しずくさんにそれを伝えてあるんですか?」

「あるわけないだろ?さっきもいったが俺らはお膳立てだ」

「セイメイさん!それじゃお膳立てにもならないじゃないですか?」


 クリスはセイメイに詰めよろうとした。


 セイメイは慌ててクリスを草むらに引っ張り何かから身を隠した。


 草むらから息を潜め、やり過ごす理由が次の瞬間にあった。


「ったく、雲海の奴らは囮を出すほどギルメンの数はいたのか?」

「知らねーよ。いきなり見張りが斬り殺されたんだぜ?めんどくせー事すんなぁ……」


 4、5人のバンブーパンダがセイメイ達の伏せている横を通り過ぎようとしていた。


 ─セイメイさん?

 ─ああ、間違いない。バンブーパンダの奴らだ。意外にも索敵範囲を広げてくるんだな?

 ─それよりも!サーチされたら終わりですよ?

 ─なぁに終わらんよ。俺よりも()()()()が束になったところでやられはせんよ


 そうこうしてるうちにバンブーパンダのギルメンは気づくことなく立ち去っていった。


 ─ふぅ。危なかったぜ?相手してもいいが時間を取られたくないからな

 ─セイメイさん。手を…どかしてください……

 ─なんだ?


 セイメイの手はたしかにコメカミに指を当てている。しかし、片方の手はクリス胸元を触っていた。


「ああ!すまん!すまん!わざとじゃないんだ!」

「意外に積極的にセクハラしてくるんですね?」

「そうじゃないんだって!」


 セイメイは誤解をとこうとしている最中だった。


 セイメイの背中に刃が突き刺さる。


「おいおいおい。俺の最中を取れるのは師匠ぐらいなもんだぜ?不意打ちするなら命中率上げておくんだな?」

「な、なに?」


 先程やり過ごしたはずのバンブーパンダのギルメンに見つかっていたのだ。

 しかし、セイメイはほぼ無傷の状態だった。


「いいか?斬るのはココだ」


 セイメイは自分の首をトントンと叩き、差し込んできた相手を教えてやった。


「お前だな?さっきの不意打ちは!!」

「ならばどうした?ここは戦場、切り捨て御免!」


 そう言うとセイメイは居合で相手の腹を真っ二つに斬り裂いた。


 チン


 剣聖神道流 “絶影”


「コノヤロウ!ぶっ殺してやるッ!」


 剣聖神道流 “蜈蚣”


 また一人セイメイの斬り殺される。


「そろそろ格の違いとやらを教えてやらなきゃいけないようだな?」


 刀を収めてはいつでも抜けるように鯉口を開けている。

 そして、一人のプレイヤーが気づく。


「お、お前は!せ、セイメイ!なんでお前がここに!?」


 バンブーパンダの1人がセイメイと断定した。


「まぁ俺にも目的がある。だからいる。ただそれだけだ」

「卑怯だぞ!」

「オマエらが言えたことか?バックにMIKADOがいることくらい情報回ってんだぞ?」


 セイメイはため息混じりに言い返した。


「さて、ここらで俺らも足止め食らう訳にはいかないんだ。無駄死にして復活のCTを増やしたいならかかってこい。まとめてかかってくるなら同時に襲え」


 3人は戸惑い動けない。


「じゃあ俺は消えるぞ?目的は俺を倒す事でない。勝利のはずだ。ギルマスや指揮官の指示に従え。負けるはずがないとあぐらをかいている奴の座布団をひっくり返してアタマに叩きつけるのが得意なんでな?雲海ギルドに勝ってくれ。……まぁ勝てればだがな?」


 そういうと、セイメイは眼光を光らせて不気味に笑いかけその場を後にした。三人は立ち尽くしたまま、セイメイ達を見逃してしまった。



 ~山道~



「セイメイさんあんな事よく出来ますね?」

「逆にお前が出来ないから不安でしかない。ここは戦場だ。殺られる前にやる。鉄則だぞ?」

「ですけど……」


 早歩きをするセイメイの追うように歩くクリスにセイメイはキツくいう。


「いいか?ゲームと言えどここはやられる方が悪いという世界だ。弱肉強食ってやつだ。誰もクリスの考えのやつなんていない。斬るか斬られるかの二つに一つ。防衛全てが正義じゃない。圧倒的な勝ちを積み重ねなきゃいけない。自然界はそれが日常的に行われている。それが今ここで行われていると思え。甘えを捨てろ」


 どこかで聞いた事あるような言い回しを聞いたクリスは少し落ち込んだ。


 しかし、セイメイの言っていることに間違いはない。


 戦場とはそういうところなのだ。


 無情に無秩序な場所というのは理不尽極まりない。それは社会でもそうなのだからだ。セイメイの考えをクリス無理やり飲み込んだ。


セイメイは次なる作戦へと歩を進めるのであった。



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