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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第196話「ミーティングプレス」

 セイメイ達はファウスト達との集結場所への移動を開始していた。遅れて、レオことアイオリア達は別の場所にログインしていた。


「こんの!!バカ男ォォー!!」


 ログイン早々、アイリーンは中段回し蹴りを打ち込むとアイオリアはさらりと交わしていく。


「お前の攻撃は全て見切っているッッ!!」


 アイオリアはキメ顔でアイリーンを指さしていた。


「あんた、それカッコイイと思ってるの?」


 アイリーンはキメキメのアイオリアを見て、先程までの怒りを通り越して呆れてしまっていた。


「ふふふ……やはり、この私のイケてる姿に惚れ直したな!?そうだろ!そうだろ!フハハハーー!!」


「あんた、この世界だとその性格(キャラ)でやってるわけ?」

「正義のヒーローってのはこういう感じの喋り方だろ?アメコミも漫画も!!」

「ホントッ!アンタは幸せモンだわ。少しMr.Chibaに同情するわ」

「失礼な!この世界ではセイメイ様と呼べ!我らの主様あるじさまだぞ!!」

「あーマスターね。オーケーマイボース!んで、その私達のマイボスはどこにいるの?」

「我が御大は東の国、あーお前の感覚でいうなら日本だな?」

「ツッコミどころとネタバレしていて冷めるんだけど??」

「なんだ?貴様に合わせたらこの言い草!万死に値するッッ!!」

「なんでもいいわ。で、どうやっていくの?」

「本来であればこの世界で移動はだいぶかかるのだが、我が名馬、黒王号は……!!」

「早いのね」

「うっ……そ、そうだ!」

「んじゃそれ早く用意して」


 指を少し加えて口笛を吹くと、どこからともなく黒馬が走り寄ってきた。


「へぇーマジで馬じゃん」


 ひょいとアイオリアが跨ぐとアイリーンに手を差し伸べる。


「急ぐぞ?どうも胸騒ぎがする……」

「この馬、リアルにどれくらいで走れるの?バテない?」

「そこはご都合主義ファンタジーの世界なんでな」

「はーん!なるほどね!オーケィ!レッツライドオォン!」


「振り落とされるなよ?行くぞ!黒王!」


 ヒヒーンというと、一気に加速し最高速度に達する。それはまるで影を消すように町という町を駆け抜けていった。


 ───────────



 一方、セイメイと時を同じくしてログインをしたクリスはまだ村にいた。


「セイメイさんったら!私をココで待ってろだなんて!」


 こちらもこちらでやきもきしている。


 セイメイの考えは合流地点と村の間にある。

 セイメイが理想とするライン戦にある間に位置するココは、実質、敵味方が共有される拠点となる。村・街の中では敵味方関係なく戦闘ができない。


 そのため、この村を制圧もしくは※()()()()の管理が出来れば勝敗は決する。だが、戦場に隣接する街や村は厄介だ。ラインを押し上げたらその反対にリスタートの復活組にバックアタックを受け前線が崩される。


※リスポーン地点で待ち受け、即座にキルを取ること


 雲海とバンブーパンダの雌雄が決するのが難しいのはこの隣接する村のせいであり、システム上の問題であった。

 それらをサービス開始当時から察知していたMIKADOは、このエリアの制圧、そして占領戦への切符を手にした。以後、不戦勝を繰り返しサービス開始から君臨し続けている。


 祠の制圧をし続けているバンブーパンダは、雲海が所有する村が欲しいのだ。それはMIKADOと同盟、提携を結ぶ事による収入増を狙っている。

 二つのギルドが手を組む事で、この地の恒久的な征服は成就する。その勢力に対抗できるのは、サンライズ地方の真北、セントラルより北東にあるギルドしかいなくなる。

 セントラルを制圧したオケアノス、ベルス率いるフォルツァが力を合わせたとて制圧が完了しても維持が出来ない。


 それにはもう1つのギルドを立てるしかない。


 そのギルドが玄庵の孫、雫が率いる“新生”雲海ギルドだ。


 セイメイはそれを画策していたが、いまいちピンと来ていない。おそらくそれは玄庵と共に戦いたかった思いが燻っているのだと思い込もうとしていた。


 セイメイ自身がなによりもそれを痛感している。

 しかし、時が戻る事はないのだ。ならば、今やれる事をひたすら考えてそれを実行する行動以外ないのだ。

 凹んでいられない。セイメイは自分に課されている問題が山積みである。センチメンタルに浸る余裕も許されない。己の精神を律しただ前進あるのみである。

 巻き込まれたこの運命を受け入れつつも、どこかしらで切り開く何かを模索しているようでもあった。


 セイメイはクリスとの合流を急いでいた。


「だぁーもう!いつもこんな感じ!セイメイさんはどこなのー!?」


 クリスは地団駄を踏んで村の入り口をみていた。

村は焼かれているエフェクトが発生し、火の粉が舞い、家の屋根から火が出ていたりと戦争の雰囲気を漂わせている。


 するとバンブーパンダの紋章をつけたプレイヤー達とMIKADOのギルドメンバーが合流しているところを目にした。クリスは慌てて身を隠し、動向を観察していた。


「おい、お前らさっさと死に戻れ」

「そっちこそ足並み揃えて突っ込んでくれないじゃないか?」

「俺たちは前に出ているよ?現に相手の砦に貼り付けたじゃん?」

「それは我々が壁役をやっているからじゃないか!」


 どうやらバンブーパンダとMIKADOが揉めているようだ。


 クリスは隠れた場所から離れようとした瞬間



「みぃつけたぁ~♪」



 ニタニタとクリスの背中から笑いかけたのはマダラだった。


「かわいこちゃん♪盗み聞きは良くないなぁ☆何やってんの?こんなとこでさぁ??」


 マダラがクリスの胸元を見るとオケアノスの紋章がある事を確認した。

 

「ははぁ~ん♪セイメイんとこの()()()()()ねぇ☆」


「あ、あなたは!だ、誰ですか?」

「俺かい♪マダラって言うんだぜ?マダラxxxx(フォーエックス)。マダラって名前多いからエックスを適当にポポン押しただけなんだけどねぇ~☆」



 マダラは普段の調子で話しかけていたが、逆にクリスはその様子が薄ら不気味な感じを受け、異様な雰囲気を醸し出していた。そして、クリスの調子に合わせることなく、マダラ自身は話を続けた。


「君がいるということはッ!アイツがいるってことかな??」

「あ、アイツって誰ですか?」


クリスは苦々しく返答すると、マダラはクリスの顔に覆い被さるように言う


「セイメイだよ!」


「!!」


「いませんよ!今回のオケアノスは後方支援のみ!マスターはいません!」

クリスは言葉には出さずに気丈に振舞っていたが、ほんのわずかな焦りの動きをマダラは逃さなかった。


「フハハハハハ!!なるほどな!()()()()()()()()()()()()()()()()よし!よし!よぉし!!」


マダラは興奮を抑えきれずに握り拳を両手につくり、天に向かって突き上げると大声で叫んだ。


「何を言っているんですか!」

「お前は前回の占領戦を動画にした外部動画にいたメンツだ」

「な…ん!?」

「知らんのかぁ?お前はチラッと動画で映り込んでいたし、セイメイのそばを離れなかった。つまり!()()()のモンだろ?」


クリスは少したじろいだ。まさか、外部動画に映る人々から予測してくるとは思っても見なかったからだ。


「まぁお前は殺さんよ。フハハハ……」

「ば、バカにしないでよ!」


クリスは盾とランスを呼び出して手に取るとずいっと間合いを詰めて刀を抜いてくる


「ハイ死んだ♪」

「!!」


街中とはいえ、アクションを起こしたマダラの刀はクリスの体をすり抜けていた。そして、マダラの顔が耳横にきていた事に驚いた。


「くっ!!」

「おいおいそんなに距離取るなよ~♪話しづらいじゃないか!?」


後退りしたクリスの方に向かって、マダラはゆっくりと歩きだした。


「マダラ!!!何してんだ??」


マダラの後ろからムスッとしたナタネが声をかけてゆっくりと近づく。そして、クリスに気づいた。


「てめーは……!!」

()()()にマスターの居場所を教える訳には行かないッッ!!」



クリスは武器を出して戦闘態勢に入る。


「おいおい!さっきまでいないと言っていたのに、()()()()()()()()()()っていったら……。いるってことじゃねーかぁ!!」


マダラはすぐさま抜刀し、刀をクルクル回転させてクリスに刃を向けた。


「ナタネェェ!!今回は俺の()()だぞ?手ぇ出すんじゃあねぇ!!だからこいつぁテメェにやるよ!」


ナタネに向かってアゴでクイッとクリスを指した。


そして、バンブーパンダのギルメン達に向かって大声を出す。


「セイメイとかいう、()()()()()()()()()を見つけたら、俺の獲物だぁ!!てめぇらが唾つけようモンなら同盟の話は無しだからなァ!さっさと気合い入れて探せよ!?」


そういうとマダラ達は街をさっさっと出ていき、森の中へ消えていった。


残されたのはナタネとクリスの2人っきりとなる。

周りは飛び火したかのような炎が家を巻き込む。そして、火の粉が舞う村にパチパチと木が燻る音も聞こえてくる。


「さぁて、アンタの相手をしてもいいんだけど、()()()()になりたくはないんでな。今は見過ごしてやる」


「とは言われてもね。後をつけられたら意味が無いのよ。だから、私はココに残るわ」


「あっそ。好きにするといいわ。私は別のとこで稼がせてもらうわ?敵を倒すのに手軽さが越したことはないからね。あと、背中を襲いたきゃ襲ってきな?返り討ちにしてやる!!」



ナタネはそういうと、余裕の笑みを浮かべた。クリスにはその笑顔が不気味に見えていた。ナタネはその笑みを浮かべながら別の出入り口から森へ消えて言った。


クリスはただただ、その背中を見つめるだけだった。


村を焼いている炎のエフェクトが、より勢いよく燃えている気がしたクリスだった。




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