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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第195話「贖罪と復讐」

 

 イーリアス、それは数多のゲームプレイヤーがしのぎを削り、己が有するキャラクターを誰よりも強くし高みを目指している。また、未開のクエストを達成させていくごく有り触れたフルダイブ型MMORPG


 今や老若男女問わずライトユーザーでも知るタイトルだ。



 特に代わり映えのないログインの風景だ。

空に魔法陣のような文様が描かれ、足元からゆっくり召喚されていく。そして、トンと地上に降り立つ姿は神の代行者の設定を表現している。


 MMORPGは数多の出会いと別れを繰り返し、まるで人間社会の縮図とも言える世界をここでも営んでいる。


 そこに今舞い降りるプレイヤー、セイメイもその1人だ。


 出会いと別れを繰り返し、時には怒り、時には泣き、時には笑う。ごく当たり前の人間の行動や感情があり、ごくごく当たり前の感性で物事を捉えている。


 マントのような陣羽織を翻し、他人から名を知られていようともセイメイは相手の事をしらない。そして、やる事は変わらないのだ。


 普通に生活コンテンツをルーティンとして行い、普通に狩場へ赴きモンスターを狩る。時にPKをしかけてこようとも、何食わぬ顔で対戦相手にニヤリと笑いかけては対戦を受け、斬り倒していく。



 ただ、それだけだ。


 どのMMORPGでも存在する在り来たりな出来事を淡々とこなす、ごくごく普通のプレイヤーが水面下でのお尋ね者となっている。




 馬鹿げている嘘のような話だが、本当の話である。

 では、なぜ、その要因たるアカウント所持者に対して、運営側は削除したり、BANしないのかというとキーパーソンとしての役割が彼には残っているからである。


 以降、所持者(オーナー)と位置づけよう。


 オーナーである以上、セイメイは()()()()()()生かされている。

 それはオーナーである彼が所有権を保持してる限り、削除(デリート)が出来ない。なぜなら万が一、()()()()()が発生した場合、()()()(ほっ)すべき情報が永遠に失われてしまうからだ。


 そう、彼が生かされているのはそのカギの存在が大きくあり、またカギもその事実を知っているのかのように行動を共にしていく。その先の運命を知るかのように……。






 ────────────────


 時に、今宵は合戦である。


 とある小型ギルド同士の戦いは今や代理戦争へと変貌を遂げ、昨今見かけない大型の戦いへと変わりつつある。


 MIKADOを後ろ盾にしたバンプーパンダが破竹の勢いで、雲海ギルドの自砦における最終防衛ラインまで押し上げてきていた。

 とはいえ、雲海もセイメイ率いるオケアノスのバックアップ協力のもと、負けず劣らずの戦いをしていたが、なにぶんメインの雲海ギルドのメンバーが鳴かず飛ばずの成長過程のプレイヤーばかりでオケアノスのギルメンが応戦するも数の暴力と質の差で劣勢である。


「押し返せ!復帰タイムのカウントダウン!合わせ!」

「1人抜けたぞ!?黒のアサシンッッ!!」

「そっちにいったぞ!」

「ちぃぃ!」


 この時、雲海ギルドは砦に張り付かれて砦に大ダメージを受けることになる。そして、アサシン取り付き火の手を上げると一気に砦の耐久ゲージが減っていく。


「おい!?貼り付いたやつを剥がせ!」

「こんな勢いは俺らじゃ無理だぜ!?」

「諦めない!ここで気持ちで負けたら本当に負けるんだよ!?」


「ぬぉぉぉぉぉおおお!!」


 1人のジャイアントが砦に貼り付いたアサシンを強引に投げ飛ばす!


 一斉に攻撃を合わせて敵プレイヤーを串刺しにするとHPゲージを一瞬で溶かしていく


「はぁ!……はぁ!…っはぁ……」


「しずくッッ!後ろッッ!!」


 しずくが振り向くとすぐ後ろに大斧を振り下ろしていたストライカーがこちらをニヤリと笑いながら攻撃していた。


 ーーー間に合わない!!



 雫は思わず、目をつむり身構えてしまった。


 ゴンッッ!キーン!……ズバッ!


 鈍い音と甲高い金属音の交差が鳴りやむ。そして、うっすらと重い(まなこ)を開けると、見覚えのある忌々しいマントに青黒く光り輝く甲冑が返り血を浴びて立っていた。



「おう、間に合ったぜ??」

「セ、セイメイ……さん?!」


 ゆっくりと立ち上がった雫は、自分の刀を握り締めると、セイメイは慌てて身構えて言葉を発する。


「おっと!雫!俺を挟んで攻撃しないでくれよ?俺だけは第三者、第3勢力扱いの枠だ。お前の攻撃も受ける。()()()にフレンドリーファイアが可能だ。ん?まてよ?フレンドリーファイアというか、厳密には双方から見れば敵だからフレンドリーファイアにならねーのか?」


 セイメイはボソボソと、いや違うこの場合は……などと独り言を言っている。それを遮るかのように雫は怒鳴り出した。


「あんたッ!相変わらず馬鹿なの!?こんな状況なんだけど!この私達が勝てるわけないじゃない!?」

「ああ、大バカ野郎さ。このゲームに魅了された()()プレイヤーだからな?」


 セイメイはキメ顔でいっているのも束の間、会話を遮るようにバンプーパンダのギルメンがセイメイめがけて攻撃をしかけてくる。


「もらった!オケアノスのマスタァァァー!!」


 ズバンッ!!


 ものともせずに懐に入ると鳩尾に肘を入れ、硬直を取ると、すかさずくるんと相手の背後取りに回り相手の背中を取ると、一気に刀を振り下ろし一刀両断する。


 クルクル チンッ


 刀を納刀するとセイメイは悪態をつく


「ったく、邪魔なんだよなぁ!こっちはピッチピチのJKとイチャコラトーク中なんだからよッ!ハハハッッ!」

「な!!おま!せ、セクハラ発言だぞ!!」

「フン!安心しろ。どうせ、爺さんには聞こえてなんかいねーよ……。それより、ここからが本番だぜ!」


 雫の肩を叩いて少し歩き出す。そして、指をこめかみにあてて周囲を見渡しながら話をし出した。



ーファウスト!ログインしているよな?


 セイメイの耳には痛すぎるほどの怒りの声が聞こえてくる


ー全く!!遅いですよ?セイメイさん!

ーわりぃわりぃ!今ログインしたばかりだ。状況は?


ー見りゃわかるでしょ?劣勢に次ぐ劣勢、敗色濃厚。ここからの逆転勝ちの策があるなら伺いたいですね?


 ファウストの語尾が強く憤りを感じているのがヒシヒシと伝わってくる。


ーOK!状況は上々!俺らが負けるのはだいぶ先だ!まずは最終防衛ラインを取り返すぞ?!事前に伝えてある例の地点で落ち合おう!


ーりょーかい!んで、ルカが隣にいますが話しますか?

ーあぁ……ブチギレるんだろうなぁ……。冷静に。

ーそれはセイメイさん次第ですよ~?


 ファウストはセイメイとの回線を楽しそうに切る。

 そして、ルカからかかってきているwis取り、話し相手を切り替える。


ーよ、よう!聞こえて……るか?

ー聞こえています。現在までログアウト時間は1……


 ルカが時間から詰めよろうとすると、セイメイが遮るように謝る。


ーわー!わー!すまん!すまん!色々あったんだよ!ゴメン!許してぇ!!


ー……了解。戦後処理時に決済するということで合意致します。では、今後の展開を……無ければ、私が防ぎます。


 セイメイはアタマをかきながら眉間にシワを寄せる。


ーあー!まてまてまて!お前は奥の手なの!!

いいか?防衛に徹して追い払え!ラインを引けるようにしてくれ。あとファウストと離れるなよ?あとで合流しよう!


ー了解……



 セイメイはルカの嫌味が忌々しくも少し安心感を与えてくれている事にホッとしてwisを切る。


 そして、後ろからついてくる雫にセイメイは話しかける。


「雫、今回の目的は我々も暫し強引の選択だ。お前らには弔い合戦だの()()()をかけたが、俺らは俺らの……いや、俺個人のやり残した過去への復讐、贖罪のケジメだ」


「ふん、そんなことだろうと思っていたわ!わかりやすい男ね。みみっちぃ恨みね?」

「ああ、そうだな。お前も、死んだ爺さんの要因が俺だと言うなら……お前はなぜ俺を殺さん?ゲームとはいえ、憂さは多少晴らせるだろ?みみっちぃダサ男への嫌がらせにはな?」


「この状況で憂さを晴らしても楽しくないわ」


「そうか。ならば雫に対しては贖罪といこうか?」

「はぁ?勝手に贖罪していれば?私の気持ちは変わらないわ!」

「そうか?ならば、勝手にさせてもらおうか?」


 炎の明かりに照らされる2人はニヤリと笑いあっていた。そして、セイメイは落ち合う指定の場所へ踵を返した。


 2人の侍は燃え盛る砦を仲間に託し、森へと足を運ぶのであった。



──────────────


~某所・地下~


「さて、俺らもいこうか?」

「レオ!なんで私はアーチャーなの!?レオと同じ格闘家がいいのに!!あ、このセクシーな子がいい!」


 予めいくつかアカウントを作成してあったモノを選んでいた。


「え?別にいいけど……」

「てか、レオの使っているキャラで、この女バージョンないの?」

「あるよ?でも、女だと勝手が微妙に違うから……」

「おし!じゃあこの子にするわ!」

「まじかよ。俺はお前の射撃能力を活かしたかったんだけど……」

「アンタバカ?武器が銃でないし、気温、湿度、風、弾道もわからない世界で、ましてや矢じりを使えって……素人なの?あなたも銃の使い方は学んだでしょ?」

「知ってるからといって、君と同じ射撃能力を有するとは決まっていないだろ?」

「御託はいらねぇ!行くぜぇ!」


 アイリーンはノリノリでイーリアスへDIVEする準備を整えていった。


「ったく、どこであんな言葉を覚えたんだ?櫻井、あとは頼んだぞ?この戦、負けられんのだ」

「わかっております。坊っちゃん……」

「やめろ、俺は今は坊っちゃんじゃあない……」

「すいません社長……」

「苦労をかけてすまん……監視を頼むぞ!」

「仰せのままに」


 バイザーをつけて、アイリーンの隣の席につくとアイリーンは遅いとプンスカと文句をいって不機嫌になっていた。



 別室で待機をする櫻井は、モニターを見ながら二人のスタンバイを急がす。


「御二方、御準備を」

『了解!!』


 準備を整えた二人にDIVEをさせる。


「あそこに横たわっている男と一緒のボイスアナウンスはイヤよ?」

「そうか?じゃあなおのこと【タイプ5】にするといいぞ?」


 アイリーンはタイプ5へ画面上にあるドラムダイヤルを縦に回す


 奇しくもセイメイと同じカスタマイズされたアナウンスであった。



「ファ“ピー”!!」


 アイリーンはレオに()()()()()激怒している。


「おい!やめろ!コードにかかって緊急停止を喰らいたいのか?!」

「アンタが!これをッ!!絶対許さない!向こうでぶん殴ってやる!」

「はいはい!それは戦い終わってからな?フフフ」


『まもなくDIVE接続です!再接続にはWaitTimeが存在します!お気をつけて下さい!』


「あーもう!気持ちよくFULL-DIVEさせてくれないのぉ!」



 揉め合いながら2人はイーリアスにDIVEしていった。

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