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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第190話「セレブ彼女は幼妻」

 数日が過ぎ、拠点戦の日まで残り2日となった頃、ようやく先方からの連絡が届く。


 それはセイメイ宛ではなく、なぜかクリス宛に届いたメッセージだった。


 それは、雫なりの心情を察するに容易なアクションだった。セイメイ宛では感情をぶつけてしまい、ギクシャクする。それは避けたい。しかし、クリスであれば、同性としての見えない安心感が拠り所となり、事はうまく運ぶであろうという心理の働きだったとセイメイは推測するのだった。


 クリスからその話を聞くのに時間はかからなかった。

 なぜなら、あれからクリスとは半同棲状態だったからであるッ!!


 無論、セイメイは手を出す事はなかった。ただ!!ゲームと仕事の往復の生活に女性が入ってきたという()()の事だからだ。


 だが、生活に()()が出てきた事に薄らとした気持ちの昂りはあった。一人暮らしが長いセイメイは、朝も夜も家に女性がいる。誰かがいるということはあまりにもなかったからである。


 朝はご飯と味噌汁、そして納豆と塩鮭が並ぶ。

 今までは、簡易食事的なモノを持ち出し自転車に跨るというルーティンが変化する。朝はきっちりと食べて出勤、帰宅後は、なんと唐揚げが食卓に並べられ、栄養バランスの取れたサラダまで並ぶ。



 考え込んでも仕方がない。そう思いながらも、少しこそばゆい感覚をするセイメイは、頭をポリポリとかきながら座り、照れくさそうにクリスに言う。


「あの……よぉ、スゲー嬉しいんだけどさ、いつまで居座るんだ?」

「え?一緒に住むんじゃないんですか?」

「はぁぁ??!!」

「だって、()()()()さんは、“ザ・男の一人暮らし”って感じで、汚かったり、無機質な箇所あったりと、まぁヒドイです」

「んだと!!?」


 図星を言われるセイメイはコタツに並ぶ夕飯をひっくり返しそうに立ち上がろうとするとクリスはセイメイを諌める。


「はい、暴れないで下さい!お味噌汁がこぼれます!」

「あぁ、いやぁ、ごめん!って、ちげー!そうじゃない!!」

「兄にはメールしてあります。それと、()()()のお部屋にするには部屋が狭すぎます。近々、駅前にあるマンションの分譲を押さえますからそこから勤務してください。なんなら……」

「ちょっとまてぇぇい!!」

「はい??」

「お、お前!話が三段跳びしてるんだが??」

「お前じゃありません。クリスティーナです。橘クリスティーナ。私の本名です」

「え?本名で、ゲームのプレイヤーネームやってるの?」

「どこにでもありそうな名前でプレイヤーネームでしょ?本名だとは思わないわ」

「いやいやいや!!そういう問題??」

「混血の日本人にありがちなアスカとかレイとかも、日本名に多いでしょう?ナオミもそうね……!!」

「んなこたぁどうでもいいんだ!それだとしてもだ!んまぁぁ!!話が拗れて脱線して、本題がキリモミして吹っ飛んでいってる!」

「どこがですか?私は訂正と質問にきちんと答えております」

「あーそうだね!間違ってないし、事実偽りのない回答だ!って!そうじゃなく!!その前の話がおかしい!!」

「えーと?」

「マンション云々の()()()だ」

「ああ、そこでしたか!最早、了承済かと思いましたので、今更かと……」

「いまさらぁーーー??」


 セイメイは呆れてしまい、無言になってしまった。


 固まったセイメイを揺り動かしていう。


「セイメイ……さんの、ほ、本名を聞いてません……」


 照れくさそうに頬を赤らめて服を引っ張っていた。


 セイメイの理性が吹っ飛び、そして、吹っ飛んだ理性を音速で回収する。


「クリス、いや、クリスティーナ。俺の名前は……」


 言いかけた時にケータイがなる。


「おう。どうした?」


 電話の向こうは、クリスティーナの兄、レオだった。


「殿!ご無事でござるか??」

「俺はお前を召し抱えたつもりはない」

「元気そうでなにより。クリスは元気にやってますか?」

「ああ、元気だとも。ぶっちぎりでな」

「ぶっちぎり?」

「そもそもお前ら兄妹揃ってぶっ飛んでるんだよ!どういうことだ??」

「そんな事より、御身の心配を。私は明日、日本時間の夜に帰ります。その後は私の管轄下で当面の生活をお願いします」

「おうおうおう!俺に隠居生活しろってか?お小遣いは100万請求すんぞ?このブルジョワ兄妹が!」

「ん?えー…それで、生活が足りるのであれば、私のカードを渡します。上限解除したものを後日渡しますので、お受け取りを……」

「こんの世間知らずの恥知らずが!!」

「は、はい??」

「そんなことよりさっさと妹を引取りにこい!!居座って帰らんのだ!」

「な、なんですと!?クリスティーナに代わってください!!」


 セイメイは、ケータイを渡すとクリスティーナは血相を変える。


「クリス!マスターに粗相をしていないだろうな!?」

「私は大丈夫ですから!!もうしばらくそちらにいてどうぞ!!」


 レオは次に言いかけた言葉を出した時にはピッと電話を切っていた。


「お前らゎぁ~……ったく、ど~して、こんなッ!テンプレみたいな流れをつくるのが神がかってんッ!だよッ!!」


「これで!心置きなくセイメイさんとお食事出来ますね!」

「いや、そういう事じゃねー!!」

「だって、セイメイさん。私を……女性として見てくれてないんですもん!!」

「いやあのね、見てる。見てるし、目のやり場に困るんだよ!」

「なんでですか?」

「風呂上がりに……素っ裸で歩くからだよ!」

「え?!わ、私とした事が!」

「普段からあんなのなんか?」

「ええ、兄と住んでますけど、直接話すのはディナーの時ぐらいですからね?それ以外は好き勝手自由です」

「お前らはどんだけ自由なんだよ……」

「私は……いえ、私の兄は橘コンツェルンのCEOです」

「橘コンツェルン?」

「え?あ、あの橘ファンドグループの?」

「はい」

「うそだろ……オイ!!俺は橘製作所に発注書を書いてるぞ!」

「はい、ウチの傘下ですね」

「はー……」


 セイメイは吐き出す息しかなく言葉を失った。


「おまえらは……庶民の敵だ」


最初に怒りがこみあげてきたが、その怒りは一気に峠を越えて呆れてしまっていた。まさかここまでの大物の兄妹だと予想だにしていない。



―――余談ではあるが、橘コンツェルンについて説明しよう。


 橘コンツェルンは、橘製鐵から始まる。旧世紀時代から伝わる日本屈指の製鐵企業である。母体も大きく多岐にわたる事業を展開している。その中でも海底調査を行っており独自の研究機関も存在していた。この研究により日本は世界から注目される事となる。


その海底調査により地下資源を掘り当てた事より端を発する。


 新たな鉱材と()()()()を絡めた団体の大株主が、第三次高度成長期を日本に齎し、不況の煽りを受けていた経済に潤いを取り戻した。大元締めである橘製鐵は一気に世界から脚光を浴びる。それと同時に開発者が所属していた有名なアメリカ企業と日本企業の株買収劇による世界有数のグループにのし上がった企業である。


 元はアメリカ企業との資本提携から始まるが、とある事件により破談。資本提携する予定だった話が白紙に戻ったため株価が急降下。そこに橘製鐵がうまく株を買い占めてに実質支配に成功する。

 アメリカ企業側は煮え湯を飲まされたと思い当時、筆頭株主であったEU諸国に点在する財閥の当主の分家、末端にいた御落胤に助けを求める。

 その御落胤が逆買収し取り返すというプランを持ち出し本家と資本提携を嘆願しにいったのだが、袖にされる。しかし、ここが一番謎だという人もいるのが、このタイミングでの結婚だ。突如、日本企業側のある令嬢と婚姻をする事により、斜め上の結論が出て株式市場はあっけにとられる。


 ここで騒がれたのが財閥による吸収を目的とした政略結婚であったのではないかと囁かれたが、ともあれ円満合意で橘製鐵の創業者の血縁にあたる橘姓を冠して決着がつく。市場は両国共にお祭り騒ぎとなり、相乗効果を得て各分野においてはかなりの経済効果を世界に波及し富を齎したとされている。


 巷では日米鉱物戦争マテリアルウォーと呼ばれた。それからしばらくして、その後数年は特に目立ったことも無かったが、突如、CEOの座を辞任。


 世代交代を理由にその御落胤は一部の部署と人員を引き連れて別会社を起業。同時に橘コンツェルンからの離脱。

 橘コンツェルンは離反した経営者達の尻拭いをするように、世代交代を余儀なくされた子息が若きリーダーとして座につく。


 離脱した御落胤は別会社は瞬く間に関連会社を飲み込み、また元々取引のあった各方面の企業と業務提携を結ぶ。この事により“対”橘コンツェルンのグループとして独立した企業、ギャラルホルングループを設立。そして、M&Aを繰り返した中に出来上がったのが合弁会社としてリンクオデッセイ社が誕生。また、ギャラルホルンは軍事産業の一躍を担うほどの大企業グループへと急成長し、アメリ政財界に名を連ね世界企業として君臨する事となる。


 その一部のIT部門の子会社がイーリアスの運営を行なっている。


 また、肝心な親子の関係は最悪であり、皮肉にもとある一族、有名な本家の代理戦争と言われている。 互いの動向によっては、次の世界覇権を担うとされて、オカルト番組のネタにまでされている。



 しかし、現実的にあまり変わらない。



 つまるところ、所詮、庶民の我々には無縁であり、到底わからない世界の出来事である。どっちが勝ってもこの世界の大半は日常的に過ごし変わらない世の中が続いていく。


 人というのはあまりにも大きすぎるとどっちも変わらないと判断せざるを得ない。なぜなら、その差が分からないからだ。勝った方が官軍であり、その勝った方が敷いたレールの上を走りざるを得ないと悟り順応していくのだ。


 なぜ順応するのか?


 その方が断然、楽であり、一定の安全が担保されるのであれば生活を脅かされる事がないからだ。


 反対派はこれを思考の停止というが、そうじゃない。守るべきものが担保されるのであれば、順応の方が遥かに利口であるからだ。民衆というのは愚か見えがちだが、かといってそこまで賢くはない。したたかなのである。時の指導者はしたたかな民衆を従える事が出来るのであれば、実質の支配が可能なのだ。それがわかっているか否かで単調な表現でまとめてしまうのであれば、名君と暗君の違いはそこにある。


 余談が脱線したので、話を戻すがクリスはその御曹司系の大令嬢セレブである。しかし、セイメイはこのセレブという事が大嫌いだ。なにせ、無駄遣いの集団だからだ。自分達の娯楽や快楽の為に無駄遣いの遊びをする。それを真似する一部の若者……バカ者が問題を起こすからなのである。


 生きている世界が違う者が上の世界の住人と同じ事して成立するわけがない。そう思っているセイメイはクリス達に嫌悪感を抱くのであった。





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