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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第188話「意志」

 雲海のメンバー、そしてセイメイ達は今回の戦場を見る。


 セイメイは作戦会議を開くと共に、現メンバーと後釜のギルドマスター選出を行っていた。


 拠点戦は占領戦とは違い、各砦を守りつつ、相手の砦を破壊する事が勝利条件となっている。


 拠点戦はフラッグとなる相手の砦を破壊する事に意味がある。だが、それを守るようにバリケードや施設を配置する事で侵入を塞ぐ事が可能である。


 また、使用制限がかかっているのも条件の一つである。


 ステータスの差が生まれないように一定の攻撃力ならびに防御面も上限が付くこととなっており、ほぼ、横ばいの状態で戦闘がスタートされる。

 占領戦は上限がないため、生き死にが物凄く左右されるが、拠点戦はその左右される事があまりないため、生死においてはゾンビアタックと言われるほど復帰の速度も早い。それは2時間という制限と装備のステータス差を無くした簡易的なものであるからである。


 また、それら使用制限内でもやれる事はどのタイミングで復活するのを合わせて押し戻したり、トドメを刺す復活をやるかを事前に打ち合わせする必要もあった。


 現在、雲海のギルドマスターは事実上、空位になる。それについては雫から報告が来ると思うのだが、果たしてここに来れるのか不安であった。

 来れないのが普通だが、来るなら暖かく迎えようと思っていたからだ。


 会議も終わろうとしていた頃、雫のログインが確認された。


 すると、ログインするやいなやセイメイを見つけると雫はセイメイに向かって一気に詰め寄った!


「アンタがぁ!うちのッッ!!おじいちゃんをぉぉ!!」

「まてまてまて!な、なにが??どうしてそうなる!?」

「死ぬ間際に!!アンタに託したって言い残していったのよ!そんな事!出来るのアンタぐらいしかいないでしょ!!」

「アンタ……病院まで来ておじいちゃんに問い詰めたわけ??それで、病体が悪化して……!!」


 雫はセイメイの足元に泣き崩れた。


 セイメイは周りを見渡すと敵視された眼差しを痛いほど受けていた。


「俺はちが……」



 ───違う!俺はそんな事をしにいったんじゃない!俺をそんな目で見るなッッ!!


 その時、ドアを勢いよく入ってくる二人がいた。



「それは違うわ!雫さん!」


 白銀の甲冑を纏い、雫に向かって膝をおり手を差し伸べていた。


「セイメイさんは言伝を受けております。まずは落ち着いて。私もその場にいましたから」


「その娘の言う通り、容態が急変したのはセイメイの引き金ではない安心しなされ」


 ひょこっと現れたのはルカだった。


「全く、うちのマスターは破天荒が過ぎる。誤解しか生んでいない。しっかし、よもやここにいたとはねぇ」


 銀縁の眼鏡を輝かせ杖をトントンと地面を鳴らす者までセイメイのそばにきていた。



「おま!!えら……なんでここが??」


 セイメイのそばまで歩み寄ってきたのは、家にいて別の事をしていたはずのクリスとセントラルの管理を行なっていたファウストが立っていた。


「マスター?来ちゃった!」


 クリスは舌を出してセイメイを覗き込むように見てくる。


 ファウストはコホンと咳払いをして、事情を耳打ちしてくる。wisのようだ。


 ─話は聞いております。

 ─誰が?話したというのだ?

 ─()()()()()ですよ?


 そういうと、ルカをちょいと指していた。


 ─どうやってきた??距離だってかなりある!

 ─まぁワープした。とでもいっておきますかね


 セイメイはキッと睨み、ルカを見つめた。しかし、ルカは素知らぬ顔してそっぽを向いた。


 ─コイツゥゥゥ!!またチート使いやがってッッ!!


 ─チートではない。エンドコンテンツ【冒険紀行の地図】を使ったに過ぎん。


 ─な、なんだと?!


 ※冒険紀行の地図……イーリアスを旅した者が書き上げた地図。地図の欠片を集めて調合する事でどこの都市にもワープが可能。再使用時間は6時間かかる。


 ─チートは使っとらんだろ?

 ─手に入れた方法がチートだろうが!!

 ─かたいことを言うな。セイメイ、お主の為に使ったに過ぎん

 ─このやろうぉ~!やりたい事やってから理由をとってつけてくんなよ!


「さて、雫……さん。話を再開しましょう」


 ルカはセイメイとの会話を遮るように雫へ話しかけ本題に入っていた。


「今回の作戦は、我々のギルドからの参戦者も含めて、大幅な戦力増となっている。今回に限りだが、マスターの先生とやらの弔い合戦という形を取らせてもらう」

「アンタ達に助けてもらう義理はないわ」

「あなたになくてもマスターにはある。それが手向けというものだ」

「……うちのおじいちゃ…マスターは!そんなのを望んでいないわ!!」

「直接聞くことは出来なくて尚且つ、死者は何を望んでいるか不明だ。そんなものは生者である我々も変わらんだろ?」


 雫はぐっと唇を嚙みしめる。


「とはいえ、生きている我々がこれから何をするかで、()()を終えた者への()()が問われ、そして、()()というものを継続させるのに()()が問われる。違うか?」


 ルカは話を続ける。


「死者を弔う事は人類史おいて、ごく普通の事だと思う。それを蔑ろに内輪揉めのような事を繰り返す。それもまた人類史おける不毛な事だと思うわないか?」


 ルカの説法は正に哲学のように話を進めていく。


「かと言って、お主の感情もまた人それぞれの一種、怒りの矛先が違うだけの事、真実を見失い感情に飲まれるな。これが第三者的見解の筋というものだ」


 俯き何も言い返せない雫にトドメを刺すかのようにルカは続ける。


「若いから感情的になってもよいなんてものはない。さらに年老いてなお感情的になるのは愚行の極み。お主はそのような大人の仲間に入りたいのか?入りたいのであれば続けるが良い」


「まてまて、ルカ。言い過ぎだ。俺は…確かに面会にいった。だが、師匠……いや、君のお爺様に危害や精神的苦痛の類のモノを与えた覚えはない。むしろ、俺のケツを叩ききたぐらいだ」


「表現が適切かは置いといて……。セイメイさんの言っている事に間違いはないわ。とはいっても、私も同席していたとはいえ、擁護になって身内びいきに聞こえてしまうかもしれないけど、あなたが思っているようなヒドイ事はこの人はしませんよ」


 クリスがセイメイの擁護に回る。


「じゃあなんで特定できたの?顔も知らない、名前も知らないのに!!」


「それは私から話そう」


 ルカがセイメイの脇から前に出る。


「以前に、もしもの事があるときは、私宛にメールが届くように仕向けておいた。無論、君のお爺様の件でな。本人も先が長くない事を知っていた。それゆえ、マスターの知らぬとこでの話。私に責任があるのであれば、私を責めなさい。実際に記録もある。これでも疑うのであれば、それは被害者の理屈から外れる」


 実際の記録とは言い難い捏造した記録を雫に見せる。


 ―てめー!!偽装してまで!!

 ―ここまでやれば収拾がつく。この話を長引かせるつもりはない。

 ―クッソ……。悔しいがお前の言う通りなのが、腹が立つ!!


「わかったわ……。それで、セイメイ…さんのやりたいことはなんですか?もうよくわからない」


 雫は項垂れて、ギルメン達に心配される。


「俺のやりたいことは……MIKADOを倒す事だ。それには、雫。君の力が必要なんだ。無論、雲海のメンバーも。誰一人かけることなく、ここを治めるのは若き力とその仲間達でなくてはならない」


「それだって、私達ができることじゃない!!そんな、簡単に占領ギルドのように強くなれるわけでもない!」


「だから、俺らが協力するんだろ?このまま、MIKADOに()()を任せるわけにはいかない!あんな……思い、俺は……これから始める新規の冒険者達に味合わせる気は毛頭ない!!」


「そんな無茶……言わないでよ!!」


「所詮、小娘にすぎん。という事でいいか?」


 また余計な事をルカが口走る。


「なによ!他人事だと思って!私達を利用しようとしているだけじゃない!!」

「じゃあ、このままギルドを廃れされていくのが、死んだあなたの祖父への手向けなのか?」


「そうじゃない…わ……」


「―――これは、先ほどマスターの意見をわかりやすくいうと、()()を雲海が占める。その際に我々の協力ギルド、同盟ギルドとして治めてもらおうという計画なんだが、雲海としての回答を求める」


「そんな無茶苦茶な……!!」


 雲海のメンバーが一同にざわつく。


「無茶ではない。この戦いの後、我々は占領ギルドとして、ライジングを攻める。そうですよね?マスター?」

 ルカはセイメイに話を丸投げする。セイメイは一瞬動揺するが、口裏を合わすかのようにいう。


「あ、ああ、そうだ。ゴホン。つまり、ここを君達が支えて俺らが協力体制を作る。メディオラムもセントラルもそんな感じだよ」


 ―――三つもギルドが同盟くんだらエウロパとやっていることと、変わらんじゃないかッッ!!


 自暴自棄になりそうなセイメイは迷いを晴らすかのように、喋り出す。


「いいか!俺は…俺らはココがスタートだったんだ!!いい思い出も悪い思い出もある。だけど、それ以上に影でコソコソとニタニタ笑われているのはだいぶウザイんでな。ここらで交代してもらおうと思っている。それには我々のギルドで落とし、雲海が治め玄庵さんが一度は味わってみたかったグラマスの座を奪取するのが、俺が出来る最大の手向けであると俺は思う!」


「わかりました。少しメンバーと話し合いをもっていいですか?」


 雫は神妙な面持ちで、セイメイを見る。


「ああ、構わない。少なくとも、この戦いが始まりであり、終わる事の無い戦いは既に起きているという事だけは理解してほしい。そのために俺らは全面的に協力する。裏表なしの正直な意見だ」


「じゃ明日、お答えを出します」

「ああ、いい返事をくれ。俺もグラマスなんてできないと思っていた瞬間はある。だけど、仲間がいたからここまで来れている。それが今の俺で、証拠でもあるよ」


 雲海メンバーの一人一人の目をみて、納得をさせていく。


「俺は……俺らはこの辺で失礼するよ。ログアウトはセントラルで行うとしよう」


 ルカの背中をツンツンと突き促す。


「雫さん、あなたなら立派に出来るわ。あなたは玄庵さんの意志をもう既に継いでいるですもの」


 クリスは雫の目をみてほほ笑んだ。


 突かれたルカは渋々冒険紀行の地図を開き、ワープするのであった。


 一瞬で、セイメイ達はセントラルへ帰っていった。

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