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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第186話「つわものどもが夢の跡」

特殊イベントの会話が終わり、スカルドが文献から導き出す答えを言おうとしたが、アガレスが消えてしまいトールの猛攻が一行に再開する。


 幾度の攻防を行なっていたが、戦神ゆえの底なしの体力を反映させているのであろう。未だに決め手が無いまま、戦いが継続されていく。


「なんだってこんなに戦っているのに、ぶっ倒れないんだよ!」

「底なしの体力というのはなんとも……」


 カルディアは呆れ、ピピンの遠距離射撃をもろともせず、攻撃を跳ね返しトールは咆哮する。


《こんな攻撃で俺を倒せると思うなぁぁ!!!》


「クソアマ!!コイツを倒す方法ないのかよ?」

「あ、んンン!!あるんだったら特に戦略的に効率よく指示出してるわよ!」


 咳払いをしながら、スカルドは詰まる言葉は調べた文献の情報から導き出す解答が頭の中で混在している。


「そんなこといったって……」


 ドゴーンッッ!!


 神槌が地面に放たれ、一瞬の時を止める。次の瞬間には衝撃波が辺りを吹き飛ばしていく。


「こういうさ!!攻撃躱す、または受け流すくらいしかできねぇんだけど?!」


 皆が必死にスキルと体術、プレイヤースキルで軽傷で済んでいた。


「退路は既にないんだぜ?知ってたか?」


 セルはスカルドに向かって言い放った。だが、返事がない。いたはずの方向に視点をズラすと、スカルドは吹き飛んでいたソロモンを治癒魔法で補っていた。


 慌ててセルは二人に近づき、しゃがむ。


「オッサン!なんで防がなかったんだよ!」

「仕方ないじゃろ?こんな相手にMPが枯渇するなんて想像つかんて!」

「立てるか?」

「ああ、別にリアルで転んだわけじゃないんだからな。ただ、可動域の制限が発生して遅れるな。これだけ喰らうとやはり……」

「ちぃ!!とうとう“積木くずし”が始まったか!」

「元々、積木になってないじゃろ……ワシらは寄せ集め、ごった煮の即席ギルド連中じゃ。連携取れないのも無理はない」


「俺はそう思わねぇな」


「ほほう。さっきまでとは打って変わってポジティブな反論じゃな」


「チッ……いちいち揚げ足を刈り取りにくるなよ。俺だって抱えてる仲間以外、信用なんか出来るもんじゃねぇと思っていたよ。


 ……だがな、お前んとこの甘ちゃんが忘れていたワクワクとドキドキをもう一度、思い出させてくれるんじゃねぇかって……期待しちまったんだよ。だってそうだろ?今じゃ2つの国を実質統治している。こんな事、別ゲーでも滅多に遭遇しねぇ!しかも、その主力のメンバー入りしてる!!


 俺はお宅の大バカなギルマスに賭けたんだよ。


 連携が取れてなかったらその場で、各々修正すればいい。それが出来るメンバーだから、この短期間でココまで上り詰めたんだろうが。今じゃオケアノスは勝ち馬だ。この賭けを降りるバカはタダの馬鹿だ!同じ馬鹿なら、狂った大馬鹿野郎になって自ら勝ち取るしかねぇだろうが!!」


 そういい終わると小刀を握り、マントの下の暗器を全て出す。垂れ下がった暗器はどれも不気味な輝きを放っていた。


「指揮は俺が取る。スカルド、もう回復いいだろ。オッサンは詠唱に入れ。飛び切りデカい奴を頼む。デカブツとネズミはサイドから攻撃を指示する」


 ソロモンはニヤリと笑い返事をする。


「よかろう。お主にワシの魂をかけるッッ!!なんてなぁ!」

「大層なBETだな?」

「ワタシは……何も、何もかけるものがなくってよ??」


 我に返ったようにスカルドはお嬢様言葉を使うが、セルはあえてツッコまずに会話をする。


「それじゃあ、得意の霧を頼む。みんなの回避率を少しでも上げておきたい。ついでに毒系の妨害魔法をCT空ける事に打ってくれ」

「いいですわよ……ってツッコまないんですわね?」

「ああ、四の五の言う余裕は無くなったといっていい状況だ。最初から……そうすりゃ良かったんだ」

「ワシらに遠慮してたんじゃないのか?お前さんだけ別ギルド、ましてやギルマスだからな」

「まぁそれもある……これは戯言だが、俺は敵を作り過ぎた。これ以上増えても減っても大して変わらん。なら、今の仲間に主導権を握らせてもいいと思っていた。それに再認識したのが今だったってだけだ。しかし、ここは主導権を握るぞ!ジャジャ馬共!!」


「ジャジャ馬?ていうかさ!さっきのデカブツとかネズミって俺らの事か??」


 カルディアとピピンはセルの語尾のジャジャ馬しか聞こえていなかった。


「なんだっていいだろ?クレームは後で聞く!デカ女とチビ助はサイド攻撃、センターは俺らだ!スカルドの霧が出る。それと同時に俺は正面から攻撃!エフェクト音やスキル発動の光が見えたらそこに向けてオーラアタックを叩き込め!」


「あいよ!」

「わかったぜ!」


 2人はトールを挟んで向き合うように位置についた。


「よし!霧を出せ!オッサンと俺は前に出て仕掛ける!その後の後方支援はお前の十八番オハコだろ?指揮権もお前に返す!」

「わ、わかりましたわ!存分に戦ってくださいまし!」


 霧が辺りに立ち込めて味方の位置をトールから隠す。その最中、セルはスカルドとソロモンへ伝言した。


「そうやって、素直な方が可愛げあるぜ?」

「なッ!?」

「オッサン、あとは頼んだ!いくぜッッ!!」

「まかせろぃ!!」



 セルはトールに向かって単騎で突っ込んでいく。


 トールは迫り来るセルに神槌を当てにくる!!


 ドガシーンッッ!!


 セルの身体が柱に当たると、ホログラムが壊れたように消えていった。


「こっちだ!馬鹿力の神様よぉ!典型的なデコイにかかるんだな!!俺はココにいるぞッッ!!」


 ズババババッッ!!


 マントの裏から垂れ出した暗器が回転と同時にトールに突き刺さるッッ!!


「まだまだ終わらねぇ!!」


 暗器の全弾ヒットを確認する間も惜しむように次の攻撃へ移る。


 霧の中に光るエフェクトを確認したカルディアとピピンはオーラアタックを撃ち放つッッ!!


 大きな矢と大きな斧がトールの左右から同時にヒットするッッ!また、スカルドの毒霧がトールの動きを遅め一瞬、攻撃が止まる。


「神殺しとは、何とも厨二病臭くてこそばゆい!!」


 大きく息を吸い、肺に溜めた声は叫びと変わる!!


「死ねぇ!!トール!!俺らの勝ちだッッ!!」


 背後をとったセルはオーラアタックを決める。


 我が刃、永久とこしえ宵闇よいやみより黒く染め上げた刃先は我が力へと昇華する……


 喰らえ……疾風誅殺……!



 裏菩薩、斬月ッッ!!


 トールの背後からまるで追い抜くように一瞬にして切り抜けていった。


 そして、セルは膝をつく。


「チィッ!このオーラアタック……他職より強いけど、デメリットのこの硬直がデカ過ぎる……」


 キメ技のあるあるの事で、開発者が忍者・アサシンの融合を図ったとされる。デメリットの結果がこれなのは、致し方がない。それを引いても全職のオーラアタックの分類では三本の指に入るほどである。だが、集団戦には向いていない。なぜなら、この硬直時は余りにも無防備すぎるためである。

 拠点戦・占領戦においては、忍者やアサシンは裏方であるという位置を徹底させた設定をしていると思われる。ゆえに、少数またはタイマンに関しては随一の強さを誇る。それは表舞台から去った影に生きる者。キャラクター設定に揺るぎがない。


「セル!!!」


 スカルドがセルの名を叫ぶと、何かを勘づいたセルは後ろを振り向く。



 ───ま、まさか!?


 トールは血だらけの状態で自動回復をしながらセルの頭上へ神槌を振り下ろしていた!!


 セルはここまでの旅の走馬燈が頭によぎりながら、目をつぶった!




 バシーン!



 大きな音ともにつぶった瞼をゆっくりと開くと、大きな影がセルの頭上を覆っていた。



 《我ガ名八、バエル。頂点ニシテ王……》


 しかし、大きな影は球体であった。


「なんで玉が浮いてて喋ってんだよ!!今、シリアスパートだろ?」


 ソロモンが手を前に出して球体を動かしている。


「わしゃ知らん!!ただ、今回は大当たり引いとるんじゃ!!」

「ここに来て、悪魔じゃなくて球体って……!!」


 《サァ……汝ノ願イヲイエ……!!》


「おっしゃあ!そう来なくてゎのぅ!」


 ソロモンがニヤリと不敵に笑う


「神殺しをしたい!!力を与えよッッ!!」


 《汝ノ願イ……我ガ野望ト重複セリ!!》


 球体はトールの攻撃を防ぎながら、形を変えていく


「あれは……!?」


 球体は姿かたちを変えて大蛇へと変貌していった。


「おいおい!!ここに来て神話の再現かよ!?」


「さっきの答え合わせはこれよ。私の毒系の霧では回復を相殺するだけなの。猛毒はセルの職か魔導士でないと覚えないわ!」


「し、しかしだなぁ!これはあくまでも神話であって……」

「他の方法が見つからない」

「……だがこれでいいのか?」

「物事は時にはシンプル、手本通りという事もあるわよ?」


バエルはヨルムンガンド、トールの天敵に化けて出るのであった。


ヨルムンガンドは大きな牙を剥き出し、身体をくねらせてトールに巻き付く!


《今度こそ!貴様を殺す!!》


トールのミョルニルが雷鳴を響かせてヨルムンガンドの口へ叩きつける。


だが、両者は死せず戦いは継続している。


猛毒を浴びたトールは神話ではヨルムンガンドを倒し、その際に浴びた猛毒で命を落とすのだが、ここでは決着がつかない!!

拮抗するチカラの前に全員が固唾を飲み、奇しくも悪魔を応援している。全員が全てを出し切っているのだと誰もが疑わなかった。


「ここで、ワシのオーラアタックじゃあ!!」



指輪を与えし天よ、我が怒りをチカラに変えよ!!



喰らえ!!ゼバオトォォッッ!!


ソロモンは拳を突き出した。指輪が輝き、太いビームが飛び出た。


トールとヨルムンガンドもろとも光の中に包まれ、で終わった時には静寂をだけが残った。


「勝った……のか?」


セルが立ち上がってトールのいたところまで歩み寄る。


「危な……」

「いや、それはない。みろ、光のオーラが輝いている」

「カルディア、お前のだぞ?受け取れ」

「いや、今回俺、何もしてないんだけど??」

「あったりまえだろ??同職相手にお前が活躍出来るんだったら、チート職でナーフはよ!ってたたかれて、下手すれば暗黒時代にぶち込まれるとこだぞ?」

「まぁ……そりゃそうだけどよぉ……実感湧かねぇというか……なぁ??」

「そりゃ今回、俺らの為のもんだしなぁ?」


嫌味ったらしく、ピピンが横目でスカルドに言う。


「とりあえずはクリアじゃて。よかったじゃないか?」

「結果が全て。だろ?ピピン?」

「んじゃオイラのも頼むぜ?セルサマ~!」

「スカルド、お前のせいで煽られてるんだが?」

「今回に限り私が謝ります。ピピン、もうやめなさい」


頭を掴んで強制的に頭を下げさせると悪いと思ったのか最後は自分で下げていた。


「まぁ……強くなるのは嬉しいけどさ、実感が湧かねぇつーの……こういうの」

「神器は特殊過ぎるからなぁ。こればっかりは何とも言えないクエストだよな」

「わしゃ楽しかったぞ?神様を倒したんじゃからの!」


「オッサン、変なところ無邪気な少年の心を出すなよ!」

「それが好きだからコレ、やってんじゃろ?お主も、お主もお主もな??」


全員に指を指して最後に親指で自分を指してウィンクをした。すると全員がテンションを落としヤレヤレといって解散していった。


「お主らも素直に慣れないツンデレ共じゃて。な☆」


指輪をかざしてウィンクをもう一度する。


かくして、雷帝は倒された。


カルディアは玉座にオーラを備えて雷神の神槌を手にする。

トールの片手で使う槌とは違い、柄が長く両手武器のようだった。


一行は神殿を後にし、アーカードの元へ帰っていくのだった。

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