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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第184話「雷帝神殿」

 ドゥゥゥーーン……


 祠のゲートより開かれた移送されたソロモン達は妖精の谷とは違った風景に驚かされる。


「な、なんだぁ?」

「雲?の上なんだろうけど、足場は石畳と同じなんだが?」

「どこにいやがるんだ?トールっていう神様は?!」


 ~雷帝神殿~


 雲の上に位置するヴァルハラは特定のルートでなければ、到達出来ない場所に位置する。

 目の前に広がる雲の上の空には青い空だけがどこまでも続いている。

 少し歩ける距離の先には大きな神殿が佇んでいる。



「さて、あそこでトールとの戦いじゃな?」

「いきなり戦闘かよ?」

「まぁ、各武器によって難易度も変わってくるんじゃろーが、今回あっさりボス戦といったところじゃの?」

「なんだか知らねーがいきなりボス戦か!カミナリ様とご対面とは粋な計らいだぜ!」

「そう言ってられるのも今のうちだけよ?みて見なさい。自分のアイテムの使用制限を」


 全員がアイテムボックスを開き、一覧検索をかけていると使用制限が幾つもかかってきている。


「おいおい、ステータス上昇系のバフアイテムの使用不可、デバフアイテムも使えないだと?」

「そうよ?神器を得る戦いなんだから想定内ですわね?」

「おいおいおい!!スカルド!こっちはただでさえ、予定変更のそのまた変更が重なっているのに、対応出来るわけ……」


 キレ気味のカルディアにスカルドは畳みかける。


「だったら戻って帰ります?私は『ごめん遊ばせ!うちのギルメンは戦う前に逃げる臆病風に吹かれてしまったようですわ!申し訳ありませんの!』っていえば、私は!傷つきませんが、あなたは傷つくのでは?普段、勢いのある態度でいらっしゃったのに、いざ蓋を開けてみれば張子の虎というのでは、なんとも情けないストライカーだと笑われるでしょうね。私は結構ですわよ?他人事ですしね。アドリブに弱いプレイヤーとして、今後ぐうの音もでないでしょうけどね!」


「落ち着け!スカルド。そこまでいうこたぁねぇーだろ?俺らはあくまで護衛で……」


 セルは怒り立ちそうなカルディアを抑えながら、反論する。


「いいえ!ここで一気に底上げを図ります!貴方達、何か誤解してませんこと?誰が1人で行けと言いましたか?このPTで入れた事になんの疑問や不思議に気づかないなんて!!」


 スカルドはどうやら痺れを切らしていたようだ。パーティで()()()入れた事ということは、アイテム制限がかかっていても複数人で雷帝に戦いを望むことが可能。ということの裏返しである事を始めから知っていたようだ。


「ふむ、そうじゃな。まずはそこじゃ。なぜそこに気づかず、ソロで戦うという前提で話を進めていたのだという事じゃ」

「ほーん。じゃあ俺らも参戦していいってことか!!」


 セルは意気揚々と神殿の方へ歩みを進めようとするとスカルドが制止する。


「あと条件がありますの!」

「おいおい、ここまできてまだ制約があるのかよ?こんな簡単な神器クエストねぇーぞ?」

「なんじゃな?その制約というのは?」

「簡単な事ですわ。異教徒のプレイヤーの攻撃は半減致しますの」

「はぁぁ???ってことは……」

「そうです。私とカルディア、ピピン以外の御二方はもれなく半減ですのよ?」

「あちゃ~!参ったのぅ!」

「それを早く言えってんだ!」


 ソロモンやセルは異教徒の民という扱いだ。無論、セイメイやルカなどの異国人も同様である。

 制限がかからないのはヴァルキリーや、騎士などの神に忠誠を誓った物のみに与えられるのである。


「普通、逆じゃあねぇのか?」

「そこまでは知らないですわよ?あくまで仕様の問題ですからねぇ」

「ったく、どっちにしろ、ぶっ倒せばノープロブレムだ」

「まぁそういう事ですわね」

「ほんじゃいくかの。カルディア?」

「お、おう!腕がなるぜ!」

「大丈夫かよ?足、震えてるぞ?」

「ば、馬鹿野郎!武者震いだ!」

「サムライでも無いのになぁ……」

「御託はいいんだよ!やればいいんだろ?やれば!」

「まぁそういうことだな。俺ら、やれるのかなぁ……」


 セルはいつもの皮肉を言っているが、ピピンは半信半疑になっていた。


「なぁ?万が一取れても、俺の方の弓はキツイだろ?」

「それはそれで、また取りにくればいいだろ?俺もココを取れるとは思っていないがな?やれるだけのことをやるだけだ。……心配すんな。元エウロパだろ?自信持てって」

「う、うん……」


 いつになく、自信をうしなっていたピピンは疑いを拭いきれてなかった。しかし、なんだかんだいいながら前に進む仲間を信じて神殿に向かうのだった。


 ~雷帝神殿・玉座~


 大きな石畳の先には、宮殿がそびえ立つ。階段を登ると玉座まで真っ直ぐ見通せる。両端には均等に幾つもの柱がある。お約束の形ではあるが、後にも先にも建造物というのは人を魅了する。

 神殿のデザインがミニマリズムでありながら、細部まで美しくあること。即ち、細部にこそ神が宿るというのは、こういった一見わからないところにある。これが建築における極意だと、どっかのお偉いさんは語っていた。


 余談が過ぎたが、肝心な玉座は空座である。


 無機質の神殿は不気味さを漂わせていた。


「おいおいおい。肝心なカミナリ様がいらっしゃらないんだが?」


 セルは口を引き攣らせながら、喋っている。


「まさかと思うが、前提クエストが存在するなんていうなよ?」

「いえ、前提クエストなんて存在しないはずよ?クエストのミッション内容を確認して下さるかしら?」


 カルディアがシステムを開きクエストの確認をする。が、特に何も無いと伝えると一行は口を噤んでしまった。


 ふと、ピピンが再度玉座の辺りを見渡すとあるものに気づく。


「全く関係ないんだけどさ……」

「タダでさえ眠いのに、ボケのお題は勘弁してくれよ?」

「そ、そんな事言わないってば!!」

「では、発言をどうぞ」

「あそこ!ほら!見えないか?」

「んん??」


 一同は柱に止まっている黄金のクワガタを見つめた。


「おい、まさかと思うが……あれが雷神トールとは言わないでくれよ?」

「まてまて。伝記を読んだことあるんじゃが……クワガタはトールの使いと言われていたという諸説を知っておるぞ!?」


 届くはずのないクワガタに向かってすっと手をかざすと、反応はないが何かのアクションは起こせるようになっていた。


「ふむ。やはり、これはクエストを受注した者でないと反応せぬな。カルディアよ、触ってみるが良い」

「え?俺、昆虫はちょっと……」

「リアルで触れるわけじゃあないんだし、害虫と言われるモノを触るわけでもない。いいから手をかざすだけでもいいからやってみろよ」


 セルがカルディアの背中を押し前に出させるとイヤイヤながらも、ゆっくりとかざす。

 すると、クワガタは羽を広げて、一行の頭上を飛び回る。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!だから!!だからイヤなんだよ!!虫は!!何考えているかわかんないじゃん!!!」


 カルディアは頭を抱えながらしゃがみ込んで、肩を震わせてビクビクしていた。


 クワガタはそんなカルディアを嘲笑うかのように頭上を飛び回り続け、やがて神殿の天井へ消えていった。


 その時である。


 地鳴りが始まり、神殿が揺れる。大きな轟音が鳴り響き、大きな光が一行を包んだ。


 ドーーーーン!!


 まばゆい光と共に大きな雷鳴が神殿に響き渡ると、一行はゆっくりと瞼を開き、轟音の鳴っていた方へ体を向けると、そこには雷神トールが座っていた。


 外見は燃えるような瞳、赤髭の大男。髪は燃え盛る炎のような髪型。神話に出てくる雷神トールがふてぶてしく鎮座している。感動と共に固唾を飲まざるをえない。



≪ロキのバカが俺を起こしに来たんだな?≫

≪俺はもうお前とは遊ばんぞ?人をコケにする事しか脳がないお前につき合いきれん≫


 一行は身構えた。どうやら、自分たちはロキだと勘違いされているというていなのだ。


≪ん?どうやらロキではないようだな?≫

≪再びラグナロクも起きておらんようだが、我に何のようだ?≫


 身構えた一行は、この後の戦闘を予測していた。


≪なるほど、力試しにきたというのだな?どこの誰かは知らんが、雷神とまで謳われたこのトールに挑むとは……命を捨てる覚悟があっての事だな?≫


 トールは立ち上がると手にミョルニルを呼び出し、グゥと握り締めた。


≪さぁ、我が雷槌を喰らうがいい!!≫


 大きな一振りが一行の踏み込んだ神殿で激震するッッ!!




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