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負け組エリートのギルドマスター~VRMMORPGで復讐主人公は最強を目指し全一ギルドをざまぁする~  作者: 齊乃藤原
第伍章【青は藍より出でて藍より青し。氷は水これをなして、水より寒し】
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第181話「神が生まれた場所」

 アーカード率いる隊とソロモン一行は、妖精の谷に向けて歩いていた。馬で移動するのも悪くはないが、馬を使えるような足場づくりがされておらず、結果的に馬を引かざるを得ない高低差のある場所に位置する。


 アーカードはソロモン達にここの場所がどういった場所なのか問うと無論知っていると答えた。


 そう、ここは、初心者ルーキーがくるような土地ではないからだ。


 にやりと笑うアーカードは地図を広げ、中央に位置する見えないはずの街のアイコンを指さした。

 ここは訪れない限り、各プレイヤーには発見されない秘境中の秘境。ましてや、初心者が訪れる事のない場所、それが妖精の谷である。


挿絵(By みてみん)


 ここでユグドラシル王国についての神話と歴史について話をしよう。


 ユグドラシルは木に精霊が宿るとされており、樹齢と共に精霊は年を重ねている。

 その最高齢だったユグドラシルはこの世界を見守る存在となっていた。



 大きなユグドラシルの木は雲まで届きヴァルハラまで届いていたという。しかし、先人達により倒されてしまいケブネカイゼの上空に位置するヴァルハラ帝国には上がれなくなり、また降りることもままならないようになった。それは、エンジェルハイロゥという拠点がそこに生えていたユグドラシルの跡地でもある。


 それは過去の大戦、神々の戦いから歴史が始まる。

 いわゆる“ラグナロク”により神々との戦いは終わりを告げる。それはまさに北欧神話に出てくる神々を引用している。


 だが、ここからがオリジナル設定であり、シナリオライターの腕の見せ所でもある。


 ユグドラシルという地名は妖精王ユグドラシルの名を冠している。


 “ラグナロク”が終戦し人々は大地で安全に生きていけるようになった。妖精王ユグドラシルは、人々に知恵を与え、賢者の石を作るように教えた。しかし、知恵をつけた人間達は欲にまみれ、神々と同じように戦いを行うようになった。それを酷く悲しんだユグドラシルは人々の戦いの仲裁に入った。神々の戦いを終わらせる力を持つほどのユグドラシル。それは全てを天に返すことだった。魂はヴァルハラへと帰り、魂の抜け殻となった肉体は朽ち果てやがて土に還るのだった。


 それを見た人々は、恐れ慄き武器を捨て蜘蛛の子を散らすように去っていった。


 そして、それから数年が立つと、どこの誰が風潮したのかわからないが“ユグドラシルが宿る木から採取出来る樹液”を使うと武器にかければたちまち伝説の武器と同様の強度を誇り、名剣へと変貌するという噂が立った。

 それを我先に欲しがる人間達が集まり、木を切っては樹液を採取しを繰り返していた。だが、それに怒り苦しんだユグドラシルは、精霊魔法を駆使し自分が宿る木を燃やし樹液が出ないほどに燃やし尽くしてしまった。

 辛くも樹液を宿した武器はたちまち錆びついてしまった。それに逆上した人間達はその焼けた大木をなぎ倒し、また骨肉の争いを再開するのであった。


 それは賢者の石を巡る“聖石戦争”と言われている。


 その戦争はジークフリートが登場するまで実に200年間も争いが行われている。


 時は流れて、ジークフリートが登場する。それはファフニール討伐を行ったりとジークフリートに関する伝記の追体験が盛り込んだ話をイーリアスプレイヤー達はクエストで体験できる。クエストの中にはファフニールが復活し、ジークフリートの亡きこの時代に復活するという設定だが、プレイヤーがそれを阻止するというシナリオでありこの地方では人気のクエストだ。


 それに応じて魔剣グラムを手に入れる難関クエストも存在し、それをクリアした者は手に入れることが出来る。それを手にした者、それが一部いるというのは前章でベルスの前に立ちはだかるテラルという存在だ。


 話は反れたが、ユグドラシルは北欧神話が随所にちりばめられており、前述のクエストの内容はあくまで一部のもの。他にも神話に出てくる神器は初心者向きではなく、中堅から上級者、はたまた廃人クラスのエリアであることは言うまでもない。


 ユグドラシルの歴史はヴァルハラから舞い降りた神々が地上で暴れ争い、それを制止した妖精王ユグドラシルが終わりを告げ、新たな人種を設けたが神の複製コピーでしかないため、結局は争い、不毛な戦争まで行った。


 これを元に今は、ジークフリートが収めた後、伝記の通り、暗殺された。その後の話は玉座は空位となっており、そこの席を取ったのが占領戦での王となる。これが、イーリアスにおける拠点戦を経て、占領戦で勝ち取ったギルド、イザヴェル騎士団だ。そして、空位の玉座に鎮座するのが、あのヴォルフガングである。



 ―――とまぁ、こんな感じか?



 アーカードは自慢げに鼻息を荒くし、ソロモン達をみていた。


「うげげ、俺こういうやつってどこにでもいんだな…まるでアイオリアみたいじゃん……」


 ピピンがカルディアにボソッというとカルディアはガハハ!と笑い飛ばしていた。


「それで!?尾行していた理由はいずこにあるんじゃ?」

「ちっ……()()()()()()()()()()()()()!」


 カルディアがすかさずツッコミを入れる。


「あれ???それどっかの漫画で聞いたことあるセリフだぞ?おい!!」

「フン、貴様らにはちょうどいいネタだろうが!」

「おい、おちょくるならもうちょいオリジナリティ満載のネタを用意してくんねーか??パクリ疑惑でこのストーリーがBANされかねないだろうが!!」


 セルが割って入ってくる。


「ああ??死にぞこないになりそうだったお前がそれいうんか??おぉん??」

「てんめー!!どこからみていたんだ!!クソ野郎が!!」

「うるせーー!!雑魚は雑魚なりに死に戻りして現場まで走ってこいや!!」

「てめーを今から城に送り返してやっても構わないんだぜ?」



 セルが武器を取り出すとPKマークを発動させようとしていた。そこにスカルドが険悪な空気をぶち壊しヘイトを叩き買いする。


「あの、ここで揉めたら相手の思うつぼだと思えないは、やはり、“バァカ”なのでしょうかね?あーそうでしたわね?お二方とも脳みそがゼリーみたいにつるんつるんでしたわね~!オーホッホッホッ!!」


『こんのぉ~クソアマがぁ!!』


 二人はスカルドにムカついていたが、スカルドはそんな男共をあしらう。


 それは、妖精の谷の入り口に差し掛かったからだ。


「そんな戯言ざれごとより、つきましたわよ?妖精の谷、そして……別名『神が生まれし故郷』」


 多い茂った木々の葉を押しのけて覗き込むと断崖絶壁の谷が見えた。


「うわぁああああ!!!」


 ピピンは足を滑らせそうになって、慌てて崖っぷちから逃げる。


「ついたな。この谷底に精霊王の故郷、精霊の谷の集落が存在する。この先にいるプレイヤーは知っていると思うが、全て廃人クラスだ。どこのギルドに属しているかは見えなくなってしまう仕様だ。その肩や腕、マントにすらマークは一時的にみえなくなる。また、外界との連絡も一切取れない。それはこの世界におけるユグドラシルがかけた魔法の影響だ」



「世界平和を望んだユグドラシルの願い、それが所属を消す呪い……」

「おいおい、ゲーム上の仕様だろ?びびるこたぁねぇんじゃねーのか?」


「……そんなこといっていると、死ぬわよ?城に戻ってまたここまで来たいなら別だけど、ここでの精霊は竜やモンスターすら寄せ付けない言わば、聖域。ハイエルフの試練もここで行なったのを私は忘れていませんことよ?」


「そういえばエルフの集落って、無くなったんじゃなかったっけ?」


「そう……エルフの集落は()()()()達に滅ぼされたという設定よ?ケブネカイゼの最北端にある集落、それがエルフの出自よ?設定上は数が少なく、ダークエルフと化していている種族に落ちたという説もある。エルフはその生き残りという設定よ。ハイエルフになるには精霊の加護を受ける試練が存在するの。それが、ここ。妖精の谷……」


 ゲームのグラフィックとはいえ、あまりにもリアルすぎる。ここへ降りるにはどのようにしておりていくのか見当もつかない。その時、アーカードは道具袋からあるものを取り出す。それは“何かの種”であった。


「おまえらはここにくるのに必要な“許可証”がいる。ここに向かってくる間に取り忘れてきたろ?」


 ソロモン達は一瞬何のことがわからないでいた。


「わかってないようだからいうが、エルフ以外は世界樹の木の根元に落ちている種を持ってこなきゃいけないんだよ」

「何言ってんだコイツ??」


 ピピンはアーカードをバカにした。


「わかってないのはお前だよ。“猫耳”この種、見たことないか?」


 ピピンの目の前に“何かの種”を持ってくる。


「ど、ドングリだと??」

「ああ、そうだ。コイツがここでは“許可証”となっている。みてろよ?」


 アーカードはドングリを谷底へと放り投げると辺りを一瞬眩い光が包み込む。


 一行はその光に目を瞑ってしまう。そして、次の瞬間には優しく光るオーブ達が集落のあちらこちらにフワフワと漂っている風景が目の前に広がっていた。


 彼らは“幻の秘境”『妖精の谷』へいざなわれてきたのだった。

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