第154話「思い出」
~ アメリカ合衆国・サンフランシスコ ~
サンフランシスコ湾を一望できるホテルに車を停め、ホテルマンに車のキーをポンと投げる。
荷物をもったまま、ホテルのカウンターでルームキーを受け取るとその足でエレベーターホールまでいく。
途中、エレベーターが到着するまで待つ間にホテルマンが荷物を持とうと案内をすすめるが、それを断り、到着するエレベーター乗り最上階のボタンを押す。
最上階につき、部屋つくと荷物を部屋のクローゼットに置く。そして部屋を出て、またエレベーターに乗り込んでフロントに戻る。
アイオリアことレオは、フロントで予め用意していた車の手配を行いホテルを出る。先ほど乗った車とは別の車を待つ。少し待つと用意してあった車が届く。バレットサービスから車のキー返してもらうと、早速、車に乗り込んで公道へ出ていく。
そして軽快に車を走らせる。
レオが乗る車はシボレーのインパラスポーツ、セダンで1967年製のブラックだ。
なぜこんなクラシックカーを乗っているのかというと、昔に見たドラマの影響のようだ。
そして、主人公と自分を重ねていくように音楽も劇中の曲をかける。
AC/DC - Back In Black
まず、この曲をかけて、サングラスをダッシュボードから取り出し耳にかける。
レオはノリノリで車をリチャードの待つ日本食のレストランへと車を走らせていた。
この時代の曲はすごく好きみたいだ。この時代はベトナム戦争における反戦デモ、オイルショック、さらにはウォーターゲート事件など、アメリカにとっては暗いニュースばかりだったが、音楽などのエンターテインメントの世界は更なる躍進を遂げていた。
そして、日本食レストラン近くのパーキングに車を停めて、レストランに入った。
~ 日本食レストラン・小次郎 ~
ここは日本食レストラン小次郎
寿司をメインに日本食を提供する店だ。兼ねてからこの店は私と友人達と楽しく食事する贔屓にしている店だ。
ここで学友であったリチャードと落ち合う。
どうやらリチャードは先に入っていたらしく、店員に案内された。
~鶴ノ間~
「よぉ!!レオ!!久しぶりじゃないか!!元気そうだな!?」
二人は笑顔で握手して軽く抱き合った。
「まぁ席につけよ?ここの寿司ネタは最高にうまい!生魚なんて食べたことない俺を殺す気で勧めたよな?」
「ははは!リチャード!殺すならもっと楽に殺すさ!旨いものを食わせてな?」
「それがここの寿司か?ははは!!」
アメリカ人のブラックジョークを交えながら会話が始まった。
「それで、俺の日本酒はもってきたのか?」
レオはリチャードの言葉を聞くやいなやニヤリと笑い、テーブルにドン!と出す。
「こ、これは!?」
黒い箱に縦書きに“極上ノ斬”と書いてある『AKABU 赤武』を出していた。
ここで、AKABU 赤武の紹介をしよう!!
純米大吟醸部門にて、見事GOLDに輝いた純米大吟醸。
岩手の最高級酒米"結の香"を35%まで磨き、超低温発酵でゆっくり醸し、絶妙のタイミングにおいて-1度の氷温にて搾りを行い、一本一本丁寧に仕上げることにより心地良い旨味と極上のキレを生み出した最高傑作ともいえる逸品だ。
製造元は赤武酒造
三陸海岸沿いの岩手県大槌町で1983年創業の歴史をもつ。代表銘柄「浜娘」の醸造元として知られるが、蔵は読者の記憶にはまだ新しいであろう2011年の東日本大震災で津波にのまれ、流失。
被災蔵として、ゼロからの出発を余儀なくされる。蔵が再建されたのは、2年後の2013年。
大槌町から盛岡市内に移転した復活蔵で、次期蔵元の長男、古舘龍之介氏が立ち上げた新ブランドがこの「AKABU」だ。
定番の中心は、「結の香」「吟ぎんが」に代表される岩手県産米使用の特定名称酒。みずみずしい果実香、軟水仕込みならではの柔らかなタッチに誘われ、杯を開けてしまうほどの味わいだ。
こと、魚介類との抜群の相性は海の酒ならではである。
2014年のブランドデビューから間もない17年には、岩手県新酒鑑評会で最高賞受賞の快挙を達成。
これは本当においしい!!魚料理、特に寿司との相性はバツグンにうまい!!
読者の諸君らが成人しているのであれば、人生に一度はこの酒を手に取って一献飲んで頂きたい。
話を戻そう。
「AKABUだ。寿司を食うならコイツを飲まなきゃいけねー!と思ってな?余ったら持って帰れ。こいつ意外に高いんだぞ?ww」
リチャードは驚きながら黒い箱をジロジロと嘗め回すかのようにみている。
レオはお店の人にお猪口を用意してもらうと二人は、コンと杯を交わし飲む。
舌でさらっと味わい、喉を伝わり胃袋に流し込んだ。
「わぉ!なんだ?うわ!なんなんだ!?この“SAKE”は!?」
「キリッとした味わいがたまらんだろ!?」
「こんなのが日本にあるのか?うまい!!!」
すると、寿司がのっかった木の皿、“寿司下駄”が届く。
「相変わらずこの店は素晴らしい!」
そういうと、リチャードはアナゴに手を出した。
もぐもぐと舌で味わうと、リチャードは感動をする。
「あ~、ここのアナゴは本当にうまい。我々の舌をよく知っている!」
「大げさだな~。寿司は全部うまいんだよ?」
「あー!そうだな!この~赤いヤツはツナだったよな?」
「そうだ。炙りを入れてあるから、リチャードには抵抗あるまい?」
「なめるなよ?俺は生の寿司、特にここの寿司以外は口にしないって決めているんだ!」
「まじ?」
「ああ、おおまじさ!メアリーにもここの寿司を食べさせたら感動していたよ?他の寿司はなんだったの?といわせるほどにな!」
「そうか!?ならよかった!!メアリーとはうまくいっているのか?」
「もちろんさ!今度、式に来てくれるんだよな?」
「ああ!もちろんさ!お祝いさせてくれよ!」
リチャードとメアリー、そしてレオは、大学時代に知り合った友達だった。とりわけ、レオにちょっかいを出していたのはメアリーなのだが、兼ねてから横恋慕じみた事をしていたリチャードと恋仲になり、今度6月には式を挙げることになっている。
「なぁ……レオ、本当は、レオはメアリーの事が好きだったじゃないか?」
リチャードは少し悲しげな顔をしていた。
「なぁにいってんだよ!おまえがそんなこというなんて、珍しいじゃないか!?昼間に変なのでも食ったのか?」
「いや、そうじゃないんだ。最近、よく昔の記憶が夢になって出てきてさぁ……」
「そりゃ“マリッジブルー”ってやつだな?男にもかかることあるんだな?ははは……」
レオはくいっとAKABUをまた飲む。
「俺は……お前を信じていいんだよな?レオ!?」
ガタッと椅子を倒すほどの勢いで立ち上がると、レオの目をみていた。
レオはフッと笑い、座れと促す。
「かりに……万が一だ、俺がメアリーを好きならば、とっくに奪っている。そもそも、俺があの頃に日本人のようなツラしたやつが、このあたりの大学に来ること自体、珍しいだろ?」
「いや、アジア系はたしかにいたし、アラブ系もいた。でも、メアリーは日本人であるお前のところにいっていた……俺は、すこぶる嫉妬をした……」
「多少、アメリカ人の血も入っているんだがな?」
「いや、お前は日本人のような顔をしているのに流暢な英語を話す、また、他の学生にはない魅力的なオーラを放っていた。そう、スターのようなやつだよ?」
「俺はそんなオーラは纏っちゃいないさ……」
「Come on~!つれない事をいうなよ?レオ!俺がいじめているようじゃないか!?」
「いいや!?俺は事実を述べているだけだよ。君が気に病むことではない。さぁ?今日はひさしぶりにあったんだ。ゆっくりと酒を飲みかわそう」
そういうと、レオはAKABUのビンをレオは持ち上げて、リチャードのお猪口にくべるのであった。
ひさしぶりに降り立った、アメリカの大地。
レオの第二の故郷は、旅の疲れをゆっくりと休めていった。





