番外編02「代行者の宴 その2」
ユーグことユズキは大学生である。
ここ、秋葉原まで得意のマウンテンバイクでくればよかったのだが、酒が入るという事だったので、電車でオフ会に臨んだ。
そして……
この衝撃の現実をつきつけられるのであるッッ!!
かくしてオケアノスは劇的勝利による圧倒的な勝利により、攻城戦の切符を手にした。その防衛戦前にアイオリアの奢りということで決定事項ではあったのだが、祝勝会も兼ねてのオフ会なのだ。
本来はセイメイとユーグのオフ会だったのだが、いつの間にかこのようなメンバーでのオフ会へと発展した。
ユズキは落ち着かない様子である。それを容赦なく衝撃の連続をユーグに降りかかる!!
スカルドと結華が入ってきた。
「よっ!」
ユーグの肩を叩くのは結華だった。
この時期にはよく通勤通学でみかける女性のまんまだった。
「あ、結華さんですね!」
「あれ?なんでわかったの?」
「声でわかりましたし、イメージ通りだった!」
チェスターコート腕にかけ、長めの丈のスカート中に黒タイツヒールも低め。上は桜色のセーターを着ていた。
―――あれ?この人こんな可愛いのに彼氏いないのかな?
ユズキはその隣にいる女性をみるとびっくりする。
「あら?セイメイ様は?」
「セイメイさんはまだですねwなんか遅れるみたいですね……」
スカルドは私服でデニムのジャケットにワンピース!?ふくよかな胸は相変わらずだ。
「ちょっとあんた!!合コンじゃないんだから!そうやって男の目線気にするような服着てこないでよ!」
「ゆみ……ゴホン、結華さんはそうやって落ち着き目で、癒し系装っておいて、必殺技の“お酒強いのに酔っちゃったぁ”っていうんでしょ?」
「あんたにだけは!!いわれたくないんだけど!?」
いきなりのいざこざに驚くユズキは二人を宥めた。
「え?あのお二人はお知り合いですか?」
「知り合いも何も、前のゲームからの付き合いですよ!」
「腐れ縁よまったく……」
「あは~。そ、そうでしたか……」
「それより私たちの席は?」
「正面右奥ですよ!上座はセイメイさんで、その横はアイオリアさんの予定です」
「え~~!?私セイメイ様にお酌したいのにぃ~!」
「はぁああ?あんたさ!!そういうところ見境ないよねぇ!?」
「おだまり、小娘……!」
睨みあって火花を飛ばしていた。
「ハイハイハイ!今日はオフ会ですよ」
そこには美丈夫なイケメンが降臨する。
「だれよ?あんた!」
「ファウストです。以後お見知りおきを」
『え!?』
一斉に声が揃ってしまった。
どこのイケメンキャラを引っ張ってきたのかわからないが、明らかに腐女子が瞬殺されるほどのイケメン!!
「ふぁ、ファウストさんなんですか!?」
「そうだよ。ユーグ君」
「なぜ自分が……!」
「え?声だよ。声!特徴あるからね君は」
「そうですか……」
「今日は楽しく食べようよ?ね?」
二人の女性は静かに席についていく
「ユーグ君大変だろうから一緒に手伝うよ」
「あ、でも一番年下なの自分なので……」
「じゃあ、これは僕の善意だから気にしないで」
それまで決まっていなかった席をうまくまとめてくれた。
そこにベルスとドリアス、そしてセルが続いてくる。
「やぁみんな!はじめまして」
そこにはユーグには見覚えのある50代前後の紳士が立っていた。
「えーーっと……」
「はじめまして。ベルスだよ。ベルス=マキアース」
「うえっえ??あのベルスさんですか?」
「そうだよ?どうした?」
「あーいえ高校の時の先生に雰囲気が似ていたもんで……」
「いい線!いくねぇ~!塾講師だよ?」
「あーやっぱり!雰囲気は先生だったもんでw」
「ハハハ!!今日はよろしく頼むよ?暗黒騎士殿!」
ソロモンは年が近い人がやっと現れたのか握手を交わしたのちに同世代にしかわからない話や、防衛戦での報告や戦略を語り合っていた。
続いて入ってきたのはドリアスだ。
イタリアンスーツ姿でそこそこのお洒落を容姿に落とし込む。
デキる男の外見だった。
「よう、おまえがユーグだな?よろしく」
「あ!はじめましてよろしくお願いします!」
「それより、席はどこだ?」
「ドリアスかい?はじめまして」
「お?おまえは?」
「ファウストですよ」
「お、おまえがファウスト!?」
―――男の俺らでも、イケメンオーラが限界突破しているのがわかるほどの男。だから、そりゃびびるわな?
ファウストと年齢も近いということであとで一緒に話そうというと自分の荷物をおいてある席の隣へ促した。
そしてセルだ。
ロングコートにノーネクタイのYシャツ、デニムを履いて少し尖っている黒い革靴。そして、極めつけはゴリゴリのいかつい、いかにもお高い時計をキラッキラさせていた。
わかりやすくいうと、不良のいで立ちだった。
「おい小僧。おまえがユーグだな?」
「その声は!?」
「そうだ。セルだ。今日は旨い上質な肉が食えるという事できたんだぜ?」
「うわー。反社の方はお断りします」
ユズキが深々と頭を下げるとセルが軽く怒る
「おいおいおいwこの俺が反社のわけねーだろ?こちとらコンサルティング会社の経営者だぞ?」
「どえぇぇ??」
「人はみかけによらんちゅーことだ。よく覚えとけ」
というと、ユズキの肩を二回ポンポンと叩きソロモン達の輪に入っていった。
そしてここであの兄妹が入ってくる
しかし、ユズキは違和感を覚えたが、その時は気にならなかった。
「あ!ユーグ君だ!おはよ!」
「え?まさか?クリスさん?」
「そうだよ!?わからないよね?やっぱり……」
「いや、まぁ声でわかりましたよ……」
「そうなんだ!もうすぐお兄ちゃんくるからさ!一緒にここにいてもいいでしょ?」
「それは構わないけど?」
クリスは少し欧米の血が入っているように思えた。その透き通った瞳にユズキは時を飲み込まれてしまった。
「ユーグ君も……やっぱり気になる?私の目」
少し青みがかった目に惹かれていたユズキは、見透かされたように言われた。
「いや、そうじゃなくて……」
「みんな私を日本人だと思わないんだよね、カラコンだとか言われたりしてね……」
「そんなことないよ。俺はカラコンでもなんでもその子がなりたいファッションをすればいいと思う。よほど奇抜な感じじゃなければ、問題ないよ」
ユズキは精一杯の言い訳をしてしまったが、クリスは聞き流していた。
「私と兄は“ワンエイス”なの」
聞きなれない言葉にユズキは動揺した。
「わ、ワンエイス?」
「1/8なの。父がイギリス系アメリカ人で母は日本人なの。私と兄はその兄妹なんだ」
「うん……それがどうしたの?」
「変じゃない?」
「変じゃないよ?どうして?」
「ああ、偏見とかもってないの?」
「逆にどうして偏見を持つんだよ!?」
「そっか……」
入口を背にしていたユズキは、後ろで飲み物のオーダーが入り、俺ら二人にも飲み物を聞かれてウーロン茶をお願いした。
「俺個人の意見だけど……その前に国籍は日本人なんでしょ?」
「そうだよ!?」
「じゃあ日本人として振る舞っていいじゃん」
「なんでそう言い切れるの?」
「だってさ、外国人のプロ選手とか帰化したりしているんだぜ?そんなプロの人達が日本のためにチームを優勝に!とかザラじゃん?それって日本が好きだからなるんじゃないの?お金のためだけに、自分の住んでいる国を捨てたり壊したり出来るのかい?」
「ううん。できないと思う」
「それと一緒だよ。日本を好きすぎて日本人になって、日本人以上に日本人な元外国人の人って尊敬するなぁ」
「そうだね……」
「んまぁ俺がそういうこといえるギリじゃないんだけど、少なくとも俺はそう思っているし、やりたいことをやればいいと思う。普通の日本人としてね」
俯くクリスをユズキは泣かしてしまったのだと誤解しながら慰めた
「ご、ごめん!なんか気を悪くすることいったかな?」
「ううん……。やっぱりセイメイさんのとこにいる人ってあったかいね?」
「べ、別に!」
潤んだ瞳を拭うクリスを見てユズキは下を向いてしまった
「俺はね。あの時、セイメイさんに拾われて俺はよかったと思っている。だからこそ、今の俺がいるとおもうんだ。あの人の器のでかさにはみんな吸い込まれてしまうんだよ」
ユズキはセイメイと出会った頃を思い返していた。
そこにソロモンがやってくる。
「なぁに若い二人がいちゃついとるんじゃ?……おお???」
ソロモンはクリスをみると目をまんまるくする
「お主がクリス……嬢ちゃんなのか?」
「あ!ソロモンさんでしょ!?すぐわかった!イメージ通りだ!」
「ん?どうした?」
みんなが入口に気を取られていくと、クリスの可愛さに度肝を抜かされる。
「なん…だと……!?」
「ちっ……」
「あわわわ……////」
「可愛い!!だれー??」
入口がぎゅうぎゅうになりそうなところにあの男が舞い降りる
パーポン
エレベーターのドアと共に降り立つその男は、黒いコートに体のラインを考えられたオーダーメイドスーツそして、映画俳優のような凛々しい顔立ち。この妹にして、兄といわれれば、誰しもが納得する。
真のイケメンが降臨する。
「やぁ、出迎えご苦労。顔や声を聞かなくとも大体察しがつく。我が妹の隣にいるのは、四聖剣ユーグだな?その後ろにいるのが、我がギルド№2にして名参謀のソロモン殿だな?」
「え?なんで……」
「おおっと!なんでなんて野暮な質問はナンセンスだぞ?私には何でも見通せる力があるのだからなッッ!」
―――このハッキリと鼻につく喋り方は、紛れもないアイオリアさんだ!ウソだろ?こんな可愛い妹を持ちしかもハリウッド映画に出てくるような超絶イケメンッ!トムクルーズのような甘いマスクを持ち、ファウストさんの爽やかささえ!食ってしまうようなオーラッッ!!やはり只者ではないッッ!!アイオリアさんってやっぱすげーんだ!!
他の人達は、喋り方は想像通りにしても、外見とある意味一致してしまい、クスクス笑いが聞こえて来ていた。
「やっぱアイオリアだ!!ぎゃははは!!!」
一番最初に笑ったのはピピンだった。それに釣られてカルディアは一緒にクスクス笑っている。
「フフン!!ピピンだな?隣にいるのは……!だれだ?」
モジモジしているカルディアをみてユズキはささっと紹介する。
「アイオリアさんでもわかりませんでしたね!?カルディアさんですっ」
カルディアの代わりにユーグが紹介した。すると、アイオリアは目を丸くして驚く
「嘘だろオイ!!レディだったのか!?私としたことが!!!これは……数々の無礼を詫びなければならないようだね」
アイオリアは膝まづくとカルディアの手を握り瞳を見つめて口説き落とすかのような眼差しをしていた。
その時である!!!
問答無用にアイオリアの頭を、新聞で丸めたような棒で頭をパコーンと叩く
その腕の先を見ると我らがギルドマスター、セイメイの御到着であったッッ!!!





