番外編01「代行者の宴 その1」
グレゴリオ暦で1年の第12の月(最後の月)に当たり、31日ある。
クリスマスは過ぎ、店に並ぶクリスマスケーキは半額以下になるなど世の中は大晦日そして元旦までの流れを走り抜ける。いわば12月は商戦期にあたる。玩具業界を始め、ジュエリー業界、食品業界、ありとあらゆる企業が便乗商売を行ない、12月と1月の初旬はどこもかしもどんちゃん騒ぎのお祭り状態である。
次々とバーゲンセールを打ち出し、ゲリラ的な安売りなど、各売り場はしのぎを削るいわば、戦場である。
全く違う戦場で勝利を収めた一部の人間がいる。
そんな街中の激戦を尻目に集まる仲間がいた。
本当は目黒駅にある、ユズキの知り合いの店に行く予定であったのが、店が予約で満席だったり、色々紆余曲折があったことにより、結局交通の関係で秋葉原に集まることになった。
秋葉原はちょいと昔はヲタクの街というレッテルが張られ、一時期“キモイ”という不名誉な烙印を押されてしまったが、その後の目覚ましいIT革命と発展へ更に、神アニメの連発と若者への浸透力が相まって一気に“聖地”へと変貌し、今では海外からも観光客が集まり秋葉原は一躍“日本を代表する街”という市民権を得ている。かくいうPCやゲーム機は勿論の事、全てのゲームプレイヤーが集まる場所でもある。
また食文化も多様化し、ケバブやカレーも販売するなど、他民族に受け入れられるような街づくりに様変わりしていった。しかし、未だ日本人に根強い支持をされているのが、ラーメンである。
特にラーメン激戦区でもある。
道を歩けば必ずラーメンの匂いがしてきて、食欲を煽りまくる。
海外からの観光客もラーメンを食べたいという客が一定数いるため、ラーメン巡りなど活発的に行われている。
交通に関して話を移すと、山手線・京浜東北線・総武線(各駅停車)、地下鉄は日比谷線、茨城空港に国際線の発着が行われているため、つくばエクスプレス線と直結という意味では、成田から行くより利便性に長けている。
少なくとも羽田や成田は秋葉原が目的ではないので、そこは東京駅や他のアクセスを使用するにも長けているが、こと秋葉原を中心に考えると、比較的安く地方民は東京への進出が夜間バス以外にも手段が取れ、一人でも多くの秋葉原を題材にした作品達に向けての聖地巡礼が可能となっていた。
特に電気街は最強である。
中でもラジオ会館は最強である。まずはここに並ぶ店を回ってほしい。説明は不要。観光客も一般客も立ち寄れば、ディープな世界を垣間見れる。多くは語らないが、今はお洒落なカフェまである。時代の流れを感じれるだろう。
そして通りを抜けると大通り437号秋葉原雑司ヶ谷線に差し掛かる。その反対車線側には大手家電量販店が目の前に大きく現れる。その大通りを右手にみれば、秋葉原の世界が広がっている。
大通り沿いを歩くもよし、通りを挟んだ平行して走る裏道を歩くもよし。
歩くだけでも胸を躍らせる世界の入口がたくさんある。
また、電気街とは反対側、昭和通り側に秋葉原最大の複合施設がある。外国人はここの建物を好むが、通な観光客はやはり裏通りを歩く。それは、日本の治安がすこぶるよく楽しそうに語らう姿をみているからだ。
この街は過去に悲しい事件や奇跡も起きた街だ。
だから決して風化してはいけない事もある。つらい事も悲しい事も。しかし、人はこの街を愛さずにはいられない。最先端の文化を発信するホームタウンである以上、この街は息づいていく。
その街に降り立つ若者がいた。ユズキである。
占領戦を終えてアイオリアと話すことがあり、二人は焼き肉屋を探すことになる。
すると、“おいしい店なら知っているから予約をしておく。料金ははらわなくていい”と言われ、後日ユズキのDMSのIDを交換しアイオリアのIDをもらった。
シュポ
ユズキ『今日でいいんですよね?なんか心配になってきた。』
アイオリア『四聖剣ユーグよ、うろたえるでない!私に任せろ!』
ユズキ『まじかよ!?勘ぐりますよ?』
アイオリア『まかせたまえ!!』
ユズキ『今日、顔を出すんですよね?』
アイオリア『仕事が終わり次第、いくぞ?マスターによろしく言ってくれたまえ!』
ユズキは無性に不安になり、セイメイにDMSを飛ばす
シュポ
ユズキ『今日マスターくるんですよね?』
セイメイ『いきたくない』
ユズキ『は?え~~!?いやいやいや!!あなた来ないと始まんないから!!なにいってるの??』
セイメイ『いくのがめんどくさい』
ユズキ『それ、マスターがいう?ねぇ?待ってますからお願いしますよ!』
セイメイ『……わかった。(たばこ)一本吸ったら着替える』
ユズキ『え?いぃまから??待ってますから!!時間厳守ですよ??』
セイメイ『ったく、幹事はくるのかよ!?』
ユズキ『幹事は僕ですよ!!アイオリアさんは出資者ですっ!』
そうユズキはセイメイに送ると“いくからまってろ”と返信が来ただけだった。
そうこうしていると店の前につく。
中に入ると、既に誰かいたようだ。
スッー
「おう!お前誰だ?」
「え?ていうかどなた?」
「ピピンだよ!」
「は??男とか言ってたじゃん!!」
「あーあれはな。女だとイチイチ出会い求めてくる奴らいるからな。アタシゃそういう勘弁なんだよ」
「はぁあああーーー????ていうか、そこにいるお嬢様だれだよ!!??」
そこにはしおらしく咲く一凛の花が座っていた。
「おん、カルディアだよ?」
「カルディアさ…えええええええええええええ?????」
ユーグはあまりにも衝撃的なことに驚いてしまった。
「うるせー男だな~。カルディアも女っていうのが気に食わんのか?女性蔑視だぞ??」
「いやいやいや!!あの男勝りの声を聴いたらそうなるじゃない??」
「はぁーお前はどこまでも頭の中はピュアなんだかお花畑なんかわからんやつだな!」
「す、すいません」
「あの……。」
ずっと黙っていた女性がユズキに話しかける
「どうもはじめまして……。」
「え?」
あっけにとられたユズキは、ユーグであることを話していない。
「あの~ゆ、ユーグです。いつもお世話になっております」
「あ~ユーグ?あの、ユーグ?」
「はい、そうです。色々と迷惑かけてしまって……」
と、照れながらユズキはいうと、ピピンから衝撃の真実を知る。
「あ~カルディアはゲーム始まると人格変わるから気をつけろよ?」
「ま、まじかよ!?」
「よくある話じゃん?クルマのハンドル握ると人格変わるヤツ、それだよ?」
「あ、はい…。」
頭の中がこんがらがってしまっている自分をなんとか正常に戻そうと必死に平常心に戻そうと心の動揺と脳みそが自分の中で合戦をしていた。
すると、また新たな激震が走る。それはソロモンの登場だった。
「おう!?な、なんだ??この女子会は!?」
「えーとソロモンさんですよね?ソロモンさぁん!!」
ユズキはソロモンに縋る思いで近づいていった。
「なんじゃ?ワシゃ女の子にすり寄られたいんじゃ!!?」
「いやそりゃそうですけど!!だって!だって!!」
「おん??おまえらなんじゃ?」
ピピンとカルディアをみて、目を丸くしてマジマジとみる。
「んだ?このエロジジィ!?人のツラとか容姿を変な目でみてくんじゃねーよ!」
「ん?おー!なんだ!あのチビか!あんま変わっとらんで面白くないのぅ~。」
「はぁ!!???」
ソロモンはピピンの怒りをほっといて、隣のおしとやかなカルディアをみる。すると、
「おまえさんが、あのカルディあ……」
カルディアを指さしながら顎をあんぐりとあけながらユズキを見る。
ユズキはコクリと頷きソロモンはしばし無言だった。
「ソロモンさん、事実を受け入れましょう。こればっかりは……。」
「まてまて、いやわかる。わかるんだけど、男だっていってたじゃないか!」
「だ~か~ら~!女だとイチイチ出会い求めてくる奴らいるからってこれ何度も説明しなきゃいけないのかよ!?」
「おおう。悪い悪い…」
ソロモンは苦笑いを浮かべ下を向いてしまった。
「ま、まぁソロモンさんも悪気はないんだしさぁ。そんな怒らないでよ!?ね?」
「フン、まぁアタシらがそういう部分を晒してないからしょうがないけども。そんな漫画みたいなリアクションしなくてもいいじゃんか?」
とはいえ、人格と容姿が想像を超えていると人は驚きをかくせないものなのだ。こればかりは仕方ない。
今回はギルドの首脳陣でという話になり、他の出席者は……
スカルド、結華、セル、ドリアス、ベルス、クリス、アイオリア、そしてセイメイである。
この時点でさえ、驚きを隠せないユズキは全員集まった時に何が起こるのか想像もつかなかった。





