第145話「明暗」
――――セルは思い出したかのようにいう。
「あーそれとな。うち大ボス、総大将サマはひしめくランカー争いに名を連ねていたプレイヤーでな、セイメイとかいうスカした野郎だ。あいつは作戦会議でお前らに見向きもしなかったぜ?www」
セルはニヤニヤとニヤついているとテラルはおもむろに大剣を振りかざし突っ込んでくる。
「なめるんじゃねぇぇーーー!!」
テラルは動揺から怒りに変わっており、怒りに任せたその剣はセルの頭上めがけて振り下ろす。
「しねぇぇぇ!!ネズミがぁぁあああーーー!!」
「そりゃ残念だわ。」
セルは横一線にテラルの腹部を斬り、背面を弧を描くように刃を走らせた。
滅殺・朧月夜
「な、なんだと!?」
そのままテラルは地面に倒れていった。
「さぁて♪復活しろよ?その場でまた更に息の根を止める。」
そして、テラルは案の定、復活する。
「この私がぁぁあああーーー!!」
「はい、死んでねッッ♪と!」
起き上がりと同時に、セルの暗殺剣がテラルの全身を切り刻んだ。
暗殺剣・人喰
「はいっ。、お次の聖水で終わりか?大事に使えよ?占領戦の聖水は使いどころ間違えちゃうと、あとで響くんだから~!」
そういうと、絶命したテラルは粒子化し消えていった。
「……イイ子だ。次、起きてこられたらスキルのCTで瞬殺できんからな……。」
ファウストはセルに近づくと小言をいう。
「まったく、あんな戦法があるか?!だれに教わったんだよ!」
「おまえんとこの飼い主だよ!」
一方、ベルス達はオメガグリードのメンバーの復活を阻止するため、出鼻をくじいていった。
そして、あらかた片付くとベルスはセルに近づいてお礼をいった。
「セル!!助かった!」
「なぁに俺もぶっ殺されて死に戻りしたクチだ。偉そうな事は言えんぞ?」
「こんなところまできて良いのかい?向こうは大丈夫なのか?」
「まぁうちのボスがなんとかしてくれるだろ?」
「ははは、セイメイ殿の事か!」
「それより、この戦場でやり残したことないのか?」
上を睨みつける様にベルスは口を開いた。
「ああ、あるさ。あの男にはちゃんと勝ててない。」
すると、丘の上から見下ろすハーネストの姿があった。それを確認したセルとベルスはにやりと笑うと走り出した。
「おまえら……、フッ…昔と変わらないな……。」
ファウストは後続のプレイヤー達が突撃する中、全員にプロテクトノヴァをかけていく。
これにより南門主力の防衛軍の総攻撃が始まるのだった。
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~ロームレス城・東門城門前~
鉄扇がセイメイの腹部を狙う!
「ぐはぁぁ……!!」
セイメイはその場で蹲り、硬直させられる。
「はぁ……はぁ……お前如きに!!我が崇高なる思いを止められてたまるか!!」
頭を抑えながら、妲己はセイメイの顎に鉄扇を置く。
「これで、お前が死ねば!!まだ希望はあるッッ!!」
突きつけられたセイメイは不敵に笑い飛ばす。
「な、なにがおかしい!?気でも狂ったか!?」
「気が狂っているのはおまえだ。既に我が軍は押し返しており、まもなくここにたどり着く。お前の負けだ。さぁ殺せ!死に戻りしている時間くらい!!俺には仲間が残っている!!」
横を振り向くと城内に入り込んでいたクーロンのギルメン達を倒し、オケアノスとレオナルドは勢いを押し戻していた。
「クッ……!!」
妲己は鉄扇の力が一瞬弱まった時、鈍い音がセイメイの耳に入ってきた。
ドスッ……
その音の方へ目をやると、背面から蓬華がクリスの装備から奪った銀の剣で妲己を貫いていた。
「お、おお、おま、っまえ……!!」
「妲己、お前はやりすぎた……。我々は人間を従えて良いという命令はまだ出ていない!!貴様の逸った思考がこの事態を招いたッッ!!」
「愚か者が!!……このまま、成果を出せば……!にん…げんは……め、つ ぼ、うし……!わ、れわれが、世、界……の…頂、て、んに……!!」
「それは我々のクラスでやるレベルではないッ!!」
妲己は蓬華の握った剣を自ら抜き、蓬華から奪い取るとその剣を握り蓬華の腹部に突き刺し返す。
「ぐふぅぅ……。」
「私だけでは逝かぬッッ!!お前も……連れて…いく、ぞ……。」
「お、おい!!やめろ!!やめてくれぇぇぇ!!!」
セイメイは悲痛な叫びを出すと共に蓬華に手を伸ばそうとした。
すると、黒い影がセイメイの視界を横切る。見上げると、漆黒の鎧がセイメイの前で起きている惨劇を止めに入る。
ドレイン・ブレイクッッッ!!!!
黒騎士は妲己の顔面を片手で持ち上げてエナジーを吸い取っていった。
「ぐああああああああああーーーー!!!!」
一方、蓬華は地面に倒れ剣が抜けていく。
「蓬華ちゃん!!蓬華ちゃん!!」
泣き叫び駆け寄ったクリスは、崩れるように蓬華に駆け寄り抱きかかえていた。
それと同時刻に防衛ラインを押し上げ、クーロンのギルメンの殲滅を終えたソロモン達は城外に出ると、クリスを見つけ妲己をみるやいなや攻撃態勢を取る。しかし、ソロモンが状況を読めないのでいったん攻撃の指示は止まる。
「な、なにが起こっているんじゃ?」
「嬢ちゃん……?蓬華?!る、ルカは!?」
空に浮いているルカを見つけると、ソロモンは魔神を呼び出しルカを連れてくるように指示すると、ソロモンの元へ抱きかかえる様に連れて帰ってきた。
「ルカッッ!!なにがあったんじゃあああーー!!!」
ルカがボロボロになった状態を見ながら、ソロモンは安堵と同時にルカを抱きしめていた。ルカはゆっくりと目をあけると何事もなかったようにソロモンに話しかける。
「な、なにを取り乱しておる?私は……“夢”を見ていた。遠い遠い懐かしい時間をずっとループしていた。」
ルカはなぜか懐かしい想いに浸っていた。そう言い終わるとソロモンが自分の父親であるかのような安堵した顔で眠りについていた。
「さぁて!!ここでおいしい場面は頂くよッッ!!!」
バイザーを下している黒騎士、それは紛れもないユーグの姿である。
「さてと、HPフル満タン!さぁ我が剣の闇へと消えろッッ!!」
といいながら、レーヴァテインを振りかざすとセイメイの手がレーヴァテインを持つユーグの腕に手をかけた。
「ユーグ、こいつは俺の敵だ。」
「えー!?俺にもやらせてくださいよぉ!ねぇ?アイオリアさん??」
どこからともなくアイオリアは現れており佇んでいた。そして、声を張り上げてセイメイにトドメを刺す様に促す。
「マスタァァーー!!ソイツの息の根を止めろッッ!!我々人類の敵だッ!!」
アイオリアはずっと冗談をいうのを我慢しているように見えたが、そんなことはなかった。
ツカツカとセイメイに近づき、胸倉を掴む。そして、妲己を指さす。
「ここでアンタが成敗するんだ!!ここで!我々人類の威厳を知らしめるのだ!!」
「な、なぁに!熱くなっているんだよwwトドメは今やるところだろ!?」
「そんなことはないッッ!!あんたはそこで慈悲深いッ!ここは私がヤりたいくらいだ!」
「はぁ?因縁深い方を優先させろ。しこりが残っちまう……。」
セイメイと見つめ合うとアイオリアは黙って頷く。
この時、“俺”は喧嘩したときのアイオリアとは違った血走ったなにか狂気じみた憎しみの目をみた。
そして、セイメイは虫の息の妲己に告げる。
「妲己、グラマスの俺が介錯してやる。成仏しろよ!!」
ほぼ抜け殻になっていた妲己をセイメイは一振りで絶命させた。すると、妲己は粒子化するではなく、大きな光の柱が立ち上り数秒で消えてしまった。
「これでいいのか?アイオリア?」
「これで、驚異の一つは消えた。」
「は?何言ってんの?占領戦はまだ少しあるんだぞ?気引き締めていかねーと。」
と、アイオリアに注意を促そうとすると蓬華に異変が起きていた。
怨嗟を切り裂き前に進もうとする中、セイメイの運命を大きく変える事件となりセイメイの心に影を落とすことになる。





