第140話「ロームレス南門攻略作戦」
両陣営は城門を隔てて対峙していた。
最初に顔を出したのは聖騎士のコウキである。相方のヴァルキリーのムギを引き連れて城門へ向かった。
しかし、後発したハーネストに追いつかれる。
「てめぇ!!一番乗りは聖騎士が出るって、ファンタジー作品知らんのか??」
「さぁ、お前を聖騎士だと認めていねーよ。厨二病が……。」
「ちょ、ちょっと二人とも!なんで言い争いをここでもするのよ?」
「あーちょっと面貸せ。」
「てめーにだけは貸したくねぇな!!」
「じゃあ聞くが、このままお前らだけで馬の連突(連続突撃)を行なったところで、約80%も回復している敵城門を1小隊で壊せると思うのか?」
「……。」
「それに見ろ。城壁の上には、今回きっちりと飛び道具が並んでいやがる。それにどう対応しろと?」
南門の上をよくみると、弓持ちや、魔法職などの遠距離職がきっちりと配備されていた。
「たしかにそうね!馬のHPが消えたら今度は私たちのHPが溶かされていく。そのままだと戦力がジリ貧になるわね。死に戻るにしても、馬の復活も考慮すると、時間が足りなくなるわ…。」
ムギはう~んと考え込んでしまった。コウキはムギをみると、嫌々ハーネストの案を聞くことにした。
「じゃあ!なんか策でもあるのか?」
「あるさ。まず、お前らがドカドカ連突しなければな。」
「さっさといえよ!!」
「まず、お前らが1回突撃したら、下がって再度突撃しろ。その間、我々が追従して突撃を行う。そうすれば、馬のHPも多少は長く存命できるだろうよ?」
「なるほどな。そういうことか!!」
馬のスピードを上げて走り出す。
「じゃあハーネスト!!頼んだぜ!!」
そう言い残すと城門にまっしぐらに進んでいった。
「コウキ!!あ!ハーネストさん!首尾を宜しくお願いします!」
「ああ!!持ち味を生かしてこいッッ!!」
コウキ達は最初の城門突撃を試みていく。
~小高い丘・連合軍中枢~
「ほっほっほっ!若いのが突撃しよるか。わしらもいこうかの?」
「ラピスさん、大丈夫でしょうか?あいつらに任せて……。」
側近のテラルがいう。
「お前さんも暴れたいじゃろ?なんせ、うちの最強の暗黒騎士だからの…!」
「自分はそこまでと思っていません。JOKERに未だ勝てませんから…。」
「何をいっておる?戦場ではお前さんがピカイチじゃぞ?わしの目に狂いはない。」
「ありがとうございます。」
「さて、わしらもいこうかの?例の戦術を完成させねばならんからの!」
そういうと、ラピスは手を上げてゆっくりと降ろす。
セレクターの面々が一気に駆け降りる。それに呼応するかのように残りのオメガグリードも一気に駆け降りた。
ラピスの手はロームレス南門の城壁にいるベルスを押しつぶすかのように前に腕を伸ばしていた。
~ロームレス・南門~
「きたな!構え!!合図があるまで打つなよ??」
連合軍コウキ達の突撃が始まろうとしていた。馬に突撃のオーラのエフェクトが走り城門めがけて飛び込んでくる。
―――やはり連突攻撃か……!!にしては数が少ないじゃないか!?まさか…!?やばい!!
「魔法職!!ポイズンレイクを打て!!見切り発車で構わん!!!城門の真下に打て!!急げ!!!」
ベルスは焦りながら指示を下した。
魔法職は一斉にポイズンレイクを詠唱し、突撃に合わせる様に敷いていた。
「ちぃ!!ここまできちまったんだ!!後戻りは出来ねぇ!!ムギは待機!!リターン時にみんなの解毒頼んだぞ!!?」
「わ、わかったわ!!」
コウキ達は毒になっている地面を恐れることなく疾走する。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴン!!
城門にあたる馬の突撃音が響き渡る!!
「城門耐久度60%!なおも低下中!」
「私に言われんでも、修復作業急げよ!??」
「やつらは捨て身か!?」
「いや、あいつらは!!こんなゲームに……!!とんでもない戦術を持ち込んできやがった!!」
「え?」
「ラピスめぇぇ!!あの戦術をここでやるのかッッ!?」
城壁の壁をぎゅうと握るようにしがみついていた。
「ちょっと?ベルスさぁ~ん?僕、置いてかれているんですけど??」
「ああ、すまない。私としたことが、熱くなってしまった!」
「ところで、彼らの戦術とはなんですか?」
ベルスは焦りの色だしながら答えた。
「“車懸り”だッッ!!」
「んな!!まさか!!私も知っているが、あれは……!!江戸時代に作られた創作物ですよ!?」
「諸説言われているが、大体そうだ。だが、奴はここでそれを実戦しようとしている。言葉だけを見れば、回転しながら攻撃に当たり、最初に当たった部隊が一旦引くとすぐに次の新手が攻撃してくる。これを繰り返すことによって、我々は応戦していかなければならない!!」
「だけど……あれには欠陥がある。渦巻き状に陣を張らなければならない!!」
「だがな、敵大将はどこにいる?ラピスだけじゃない。3人が大将だ……!!」
「し、しかし!!あれは練兵力も求められるはずッッ!」
「フフフ、そこなんだがな。車輪の中心、車軸に本来敷く大将がいない。そして、この陣形が嘲笑されてしまう理由として、日本は平地の少ない土地柄。移動地帯には大抵、丘などの起伏があったり林などの障害物がある。つまり、実戦的な戦術ではないからなのだよッッ!!」
「しかし…、ここは……!!」
ファウストが戦場を見渡すと広がる平地だった。
「“障害物が存在しない”じゃないかッッ!!!」
コウキ達の馬は、止まることなく一撃のみ突撃すると一旦引く。続いて途切れることなくハーネスト達が突撃する。無論、フォルツァとオケアノスの迎撃が止む事はない。応戦するも、徐々に城門が変化していくことに両陣営は気づいている。それを引いているコウキ達は驚いていた。
「フハハハハハハ!!やつらめ!!慌てて回復してやがるのが、目に見えてるわぁ!!」
ゆっくりと待機場所にきたのはラピスだ。
「おうおう、元気そうで何よりじゃの?」
「ジジィ!!やるじゃねーか!この戦法ッ!!」
「フォフォフォフォフォ!!まだまだこれからじゃよ?」
「よぉし!俺らもまた突撃してくるわ!!」
そういうと、コウキは絶え間なく続く馬の突撃の列に加わりにいった。
「ラピス、礼はいわんぞ?」
「なにがじゃ?」
「負け戦はしたくないのでな。」
「それはそれは……」
「さて、そろそろ相手も黙ってはいないはずだぞ?」
ハーネストは門の上をみながらファウストとベルスを睨んでいた。
「門が開けば下がるのみ。なぁに、難しい事はいっとらんぞ?」
「フン、どこまでも雲を掴むような動きばかりだな。」
「それをやることが、本来、我々の仕事だろうにぃ~。クックックッ……。」
「食えぬ爺さんだ。」
「ピッチピチのギャルなら、お話聞いてくれたかの?」
ふざけた顔をしてるラピスをみて、煽られていると悟ったハーネストは嫌悪感を抱いた。
「気持ち悪い事をいうな…!」
そう言い残すと、ハーネストは突撃の列に加わった。
「おい、テラル。」
「なんでしょうか?」
「ワシは詠唱時間に入る。お前はうまく誘導しろ。」
「はい、わかりました。時間はどれくらいで?」
「カップラーメンと同じくらいじゃな☆」
テラルへラピスがウィンクをすると、テラルは黙って城門へ向かっていった。
~ロームレス・南門城門上~
「どうするんですか?ベルスさん!!」
慌てるファウストは静かに階段を降りていく。
そして、門の前に待機する近接職達に声をかける。
「我が誇り高いフォルツァのギルメン!!並びに私が敬愛するオケアノスの諸君ッッ!!出陣の時がきた!!己が磨いた武勇と兼備!そして、鳴りやまぬ鼓動!!今だ止まぬこの突撃音を私達が!!黙らせるのだ!!」
『オー!!!!』
足踏みをして地面を鳴らしたり、武器で防具をカチャカチャと鳴らしそれらが轟音となり城門前に待機するギルメンの士気は絶頂に至る。
「ファウスト、我々は出る。あとは任せたぞ?君の知恵が最後の切り札だ。」
そういうと、ベルスは自分の馬に跨り、聖剣デュランダルを抜き、剣をかざす。
そして、ファウストは異世界にいるかのような錯覚を起こす。それはベルスがあるべき姿のような城主を模し、ギルメンなる兵士を鼓舞する様に号令を下す!
「開門ッッ!!!敵前方を蹴散らせ!!門から距離さえ取れればいい!!深追いはするなよ!!?」
朝焼けに輝く鎧は白く光り、白く輝いたキャンパスに吸い込まれるように進んでいった。





