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第14話「急展開(前編)」

~ファサール国会議事堂~


 ここはローレムス中心街から少し外れたところにあり、近くにはコロシアムがある。

 そして、各ギルドのギルドハウスを設けており、行政(ゲーム上での)はここで行われている


「うわーでっけーーー!!」


ユーグが建物を見て口をあんぐりと開けている。


「さあ、ここからですよ?」


クリスが励ます。


「ソロモン、ここきたことあるか?」


俺が尋ねると


「観光とか暇つぶしに見たぐらいだが、はいったことはないなぁ。」


ソロモンはポカーンとしている。


「マスターよ、私が最初に話す。そのあと続いて話をしてくれ。」


アイオリアは息巻いて入っていった。


―――ん?と思ったけど、とりあえずその提案に委ねることにした。


 議事堂の中に入ると、円卓の周りに各ギルマスが席についており、円卓から外れた近くの席に俺は座った。ソロモンは№2扱いなので席に着いたが、他は立ったままだ。


 ふと、不審に思い、ソロモンに聞いた。


「おい……なんで、一同介してそろってるんだよ…」

「しらん。ワシも何も聞かされていない」


 アイオリアは円卓の手前の台に登壇し、演説を始めた。


「先日よりお話をさせていただいている件についてなのだが……」

「その前にそこいる()()()()が誰なのか教えてくれないか?」


 フォルツァのギルマス、ベルス=マキアースだ。

 エウロパから離反してから急速に伸びたギルドの一角。かなりの実力者だ。

 俺は少し戸惑いながら話す。


「あー、オケアノスのギルドマスターをやらせてもらっている。セイメイといいます。この度は……」


 割って入ってきたのは、DGのギルマスとレオナルドのギルマスの両名だ。

 ドリアスとセル・ツヴァイが声をあげた。


「セイメイさん、うちのギルメンを引き抜いたといううわさがあるがそれは本当か?」

「格下ギルドになんの魅力があるのだ?教えてもらおうか?」


 どうやらこのお二方はカルディアとピピンを引き抜いたことになっているらしい。

 結果的にそうだが、俺がやったんじゃねーんだけどなぁ。

 やれやれまためんどいことになりそうだ。


「俺が引き抜いた記憶はないが、何か不都合でもあるのか?」

「たかが英雄が入ったぐらいでイキってるんじゃねーぞ!コラァ!!」

「こちらとしては、戦争も辞さないが?それでもよろしいか?」

「はぁ??なにいってんだこいつらは!!話になってねー!!」


 アイオリアが、怒りをあらわにした。


「黙れ!!この三下風情が!!誰に断って口開いてやがるッッ!!??貴様らのようなお遊戯ギルドなんぞ落とすのは秒で済む話だ!!てめーら表に出ろ!ギルド潰ししてやるぞッッ!?」


 ベルスが口を開く。


「両名、落ち着こう。話をきこうではないか。もし対峙するのであれば、彼はここに姿はないだろ?」


 大変不愉快である。


 セッティングも誰がしたのか。そもそもなんでこんなに言われなきゃいけないのか皆目見当もつかない。


 俺ははっとした。


 まさか、アイオリアは俺の知らない間にあいつのシナリオに乗せられているのではないかと感じた。 そんな中、アイオリアが気を取り直して語る。


「改めていおう。このエウロパ戦役に終止符を打つ時がきたのだ!」

「このセイメイ殿は我が主君であり、亡き、ガリヴァレオンの意思を継ぐ器の者だ!」

「西のレグニオンやその先のエスドラードのドン・ポナパルドの騎馬隊に勝つには我々が一致団結しなくてはこの先、メディオラムの未来はない!」


―――んちょっと話大きくなってない??


「ソロモン、俺、帰っていい?」


俺は小声でソロモンに言う。


「なんつーか話がでかくなってるな。このインフレなんデスカ?」


ソロモンが訛り始めた。


「クリス、お兄ちゃんのバカ……」


妹のクリスは恥ずかしそうに下を向いた。


 アイオリアの演説は続く


「みなも知っておろう!かの戦において難攻不落の王都、アーモロト攻城戦を忘れたわけはあるまい!!あの神算鬼謀に長けた戦をこなしたのも!戦局をよんだガリヴァレオンの指示のもとであるッッ!!あの快進撃をもう一度味わいたくはないか!!??」


 ガガSPもPROUDもBVも拍手が起きた。


「おい、マスター。あいつらはレグニオンやエスドラードからの流れ者の集団だ。談合決め込んで、占領国を回しているのが気に食わない連中だ。」


カルディアはいった。


「さっすがアイオリアだぜ!鼓舞するのがうめーなww」


ピピンはいう。


 このイーリアスには9のエリアが存在する。そのうちの特に大きい大部分の3つを落とす気でいっている。

 常軌を逸しているとしか思えない。


「今、ここに新しい王の誕生を目指し連合から単一国家ひとつのギルドへと変貌をとげるのだ!!」



 ぽかーん



「アイオリアは何をいっているんだ?」


 俺は壮大な話にしては漫画よりひどいと思っている。


「さぁこの英雄アイオリアが認めた我らの王を紹介しよう!!セイメイ殿だ!!」


 拍手がおこり、アイオリアから俺が登壇するよう促される。

 アイオリアは下壇する際にいった。


「我がマスターセイメイ殿、何度でも言おう。あなたは王になるべき人だ、資質をもってして才覚を投げ捨てるのは罪だと人はいう。それに習い、私はあなたの英雄譚は切って落とした。さぁ上るんだ。あなたのやりたいギルド運営を!」


―――なんだよそれ。俺にできるわけないじゃないか!!


「さぁ登って。」


登壇を促され、俺は立った。


 議事堂にはいつの間にか各ギルドのギルメン達が傍聴席に連ねていた。


―――俺は君主政治、独裁政治は良しと思っていない。その為どうしようか。考えながら一段、一段と登っていた。ゲームだから君主政治は成立する。いや違う違う。そうじゃない!!たしかにリーダーは大事だ。しかし、それが長期政権を握ると歪んでくる。これは世界の歴史が証明しているじゃあないか!天下統一をあいつはしたいのか?それとも談合し、占領した国々の蜜を啜ってるギルドが嫌いなのか?それでシビリアンコントロール…?こいつは英雄という肩書きを使い、操作していやがるのか!?


 クソッ……。明確に断定できる答えを出すのには、情報が足らなすぎる。


 こうなりゃ演じるきってやる!!


 登り切ったときに俺は少し咳払いをし、しゃべり始めた。



「俺は……このゲーム関しては、正直まったりやっていきたかった。だが、エウロパは一方的に俺らのような弱小ギルドすら敵に回した。しかし、それは誤解をとければそれでいいのだ。アイオリアはなぜか俺に王になれといっているのか、俺にはわからない。俺にはそんなガラじゃないといったんだが、ひかない。これも時代の潮流の流れなのだろうか?俺は今は王になる気はない。」


 場内がどよめく。そりゃそうだ。王になる気満々だったと思われているんだからな。


 俺は続けた。


「この期に及んでなにいってるんだと思うかもしれないが、まずはエウロパを倒すにしても、俺が逃げてきた道のりを戻ることとなる。ましてや、約二週間後の占領戦に間に合わせなければならないわけだ。俺が仮の指揮官だとしてもこの戦は長期戦になることは間違いない。」


 この時、三バカを思い出した。あいつらの情報が使えるものを得ていれば……!?

 俺は賭けにでた。お前らの言葉……信じるぞ!!踏ん切りがついたといってもいいだろう。


「だがこの戦局が変わるかもしれない理由として俺の勘と経験と知識で君たちの望む、エウロパ討伐の力になれるのであれば、私はそれを皮切りに先陣を切って戦場へ赴く!!立て!!イーリアスの民達よ!!俺についてこい!!おまえらの欲しがっていた英雄譚は俺とお前らで綴る1ページとなろう!!!」


 拍手喝采を受けた。俺はなんちゅー道化だ。


「俺に力を貸してくれ。利子はつかぬが、勝利への渇望を潤す水ぐらいは出せると思う。これより2週間の間に各々の装備強化とADの上昇に励んでくれ!!以上だ!!」


 わーっと歓声のやまない議会から身を引き休憩室に案内された。


 アイオリアが近づく。俺は駆け寄って胸倉を掴んだ


「てんめぇ!!ハメやがったな!!!」


俺は目を血走っていう。


「素晴らしい演説でしたね。あれは計算外でした♪」


胸倉掴まれてもなお笑顔で言っている。こいつ……!!


「私は資質のある人間を活かすことを探していて見つかったからやっているだけだ。マスターにとって無理ではない範囲でのギルメンとしての職務を全うしただけのことだよ?」

「おまえ、俺を何だと思ってやがる!!」


「希代の名君だ」


 惜しげもなくコイツは平然と言ってのけた。

 こいつは正真正銘の馬鹿野郎だ。いや大馬鹿野郎だ!俺は言葉を失った。

 アイオリアは俺の手をゆっくり払い、俺やみんないう。


「もう、時の歯車は回ってしまったのだ。あなたはまず、3国を跨ぐ皇帝になってもらう」

「おい、ジェノヴァにお住いの“あのお方”と同じ具合になるんじゃあねーのか??」

「ご安心を。彼は単一でやってはいたが、のちに分裂をわざとさせて三国を管理している。裏の方である。談合を決め込んでいるのは“あのお方”発信のこと。ジェノヴァもいずれ飲み込みます。」


「くっ……」


 こいつはどうも何かとんでもない。私怨・憎悪が見え隠れしている。


 こんなドロドロしたのは大手に勤めていた頃とおんなじだ。



 アイオリアは単一ギルドにすべく手続きをとるために6名のギルドマスターたちと会議を開きにいった。


「た、大変なことになっちゃいましたね……」


ユーグがソロモンにこっそりという。


「ふむ…。なぜアイオリアは我がマスターに心酔しているのかわからん」


ソロモンは腕を組みながら悩んでいた。


「お兄ちゃん、なんか楽しそうにドアを開けていったよ?」


クリスは驚きを隠せないでいた。


 俺は少し唖然としていて、何も考えられなくなっていた。

 カルディアが俺に話しかける。


「アイオリアがあそこまでみんなの前で宣言したということがどういうことかわかるかい?」

「わかるわけねーじゃん。わかるわけねーからキレたんだよ。俺は!」


 ふんといい、ピピンがいう。


「アイオリアが描いていたギルドはもうなくなってしまったんだよ。だから、セイメイ、君が選ばれたんだよ」


ピピンは少し悲しげな顔をした。


「アイオリアは、ギルドを去ってから相当流浪したって聞いている。いろいろなギルマスと話したりして、引退も考えたらしい。それでも、自分と元ギルマスの思っていたギルドを考えていたんだよ。そしたら、昔のギルマスとの思い出が君と重なったんだと思う」


 ピピンが俺に初めて真剣にいってきた。


「だから、俺もカルディアもアイオリアを信じているから……。俺もあんたをマスターと認めてついていくよ。期待を裏切るなよ。俺らもあの頃に戻りたいんだ。みんなで冒険に出たあの頃に……」


 カルディアが斧を出していう。


「この大斧は、ガルヴァレオンさんからの譲り受けたものなんだ。豪傑名声を取得したときに初めて褒めてくれて…。そしたら、このタイタンの斧を俺に譲ったんだ。まさかと思ったよ。いちギルメンの俺にだぞ?あんたもそんな風に仲間に気にかけてくれるマスターだと思って俺もあんたについていくよ。


 強さだけじゃない。真のマスターは信念と強い精神の下に存在してなきゃいけないんだよ。アンタを少し見てきて思ったけど、ガルヴァレオンと同じ雰囲気だ。似ているわけではないがね。アイオリアが熱を上げるのも無理はない。俺もあんたに力を貸す。どうか俺らの楽しかった日々をもう一度俺らにくれないか?」


 俺は見えない期待を背負うことになってきた。

 俺も人に頼ることはたくさんある。

 だが…。


 ―その信念、貫けるといいな。―


 俺は、ディアナの言葉を思い出していた。


 あいつ、俺がこうなることを知っていたのか?

 いやそれは勘繰りすぎだ。ありえない。でも、その兆しはあいつには見えていたのかもしれない。

 可能性の一つとして。



 ディアナとの出会いはギルドを立ち上げたきっかけだといっても過言でもない。

 最初のギルドで仲良くなった俺らは、趣味も合ってかすぐに打ち解けた。

 しかし、とあることでギルドを脱退することとなった。


 それは、駆け出しの冒険者だった頃においしい狩場で先に陣取ってたときに、同じギルドの先発が横狩りをしてきたのだ。そして狩場を譲れといってきたのだ。


 俺が逆なら弱いギルメンを育てたいと思うほうが先行するので、ひくのが普通だと思っていたのだが、そいつは俺のほうが狩り速度が速いということだけで「どけ」という。

 これに俺は腹を立ててギルドにいった。しかし対応してくれることもなく俺は追放をされたのだった。


 それから暫くして、ディアナもそのギルドを抜けたのだった。そこで二人はとりあえず、ギルドを立ち上げて気心知れた仲間を募ってやっていこうとなり、立ち上げてすぐにソロモンやユーグが入り、仲良くなっていった。その後、マリアが入り現在ギルドの崩壊の手前までに至るのだった。



 ディアナどうしてるかな?

 あいつ、口悪いからいらぬ敵を作ってないだろうかとお節介な心配をしていた。


 会議が終わったのか、アイオリアが戻ってきた。

 あいつは俺の精神状態をぐっちゃぐっちゃにしといてよくもぬけぬけと笑っていやがる。


「やぁ一同、元気かい。話がついた。数名が内の直参になることになった」


 各ギルドから数名派遣されるとのことで今回は終結したらしい。


 レンタル移籍ってやつだ。サッカーじゃねーんだぞ……。



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