第137話「価値観」
~連合軍・本陣営~
ここは、連合軍本陣営のキャンプ。
グラブレを始めとする黄竺を拠点とするギルドの集まりだ。
無論、オメガクリードもここにある。
そして、再突撃の打ち合わせをしていた。
全てのギルドのマスターが一同に会していた。
「おい、オメガのガキィ!どうなってんだよ?」
「うるさいな!僕らは僕らで頑張ってるじゃないか?」
「んの割には死者数が足らんなぁ?ええ?出し抜こうなんてかんがえてんじゃねーのか??ああ??」
「なにいってんの?アンタらが弱いからこっちの足を引っ張ってんだろ?責任転嫁って言葉、知ってる??」
オメガクリードのアークスとグラブレの幹部が言い争っている中、ハーネストが死に戻りしてくる。
「おい!ハーネスト!!なんで君がやられているんだ?」
「フン、貴様も人のこと言える口か?」
「な、なんだと?」
「お前さん、噂によれば、オケアノスの一味を襲撃して返り討ちにあったそうだな?」
「くっ…!どこでそんな話を…!?」
「無理強いして突っ込んだ挙句、全滅だってな?」
そこに割って入ってきたのはコウキとムギだった。アークスに加勢する。
「おいおいまちなよ!?精霊王の守護持ちが死に戻りぃ??クーロンの№2ギルドのマスター様も大したことないな??」
「量産型聖騎士が何をいっているんだ?w」
「てめー!?」
殴りかかろうとするコウキをムギが必死に抑えた。
「ちょ!ちょっと皆さん!!争っている場合ですか?」
「フン…。」
連合軍は険悪なムードが漂っていた。
「お主ら熱くなるのもいいが、この戦で勝たねば、クーロンに加入させられるそうだな?」
そこに現れたのは、セレクターギルドの魔導士、ラピスが現れた。
ラピス
セレクターギルドのマスター、中堅ギルドのマスターである。特にこの戦いに乗り気でないギルドの一つ
「おまえのとこは吸収されずに済むように裏で手でも回したのか?あぁん??」
コウキは怒りの矛先をラピスに向けた。
「なんとでもいうがいい。だが結局、私たちもあいつらに戦いを挑まずに従順している以上、同じ穴の狢ではないかな?」
ラピスは他のギルドマスターや幹部達に刺さる事をいった。
「……あいつに勝てるなら、こんなギルド資金が疲弊するとわかっている遠征に出るかよ?」
「そうだな。この俺ですら勝てん。それゆえ、今は臥薪嘗胆と思い、我慢しているのだ。」
「ふむ…。」
全員が口を噤む中、ムギが発言をした。
「このままクーロンに吸収されても、みんなこのゲームは続けるんでしょ?」
すると、なぜかみんな下を向いたままだった。
「クーロンは強い。だけど、俺らがやりたいギルドではないんだがな。」
「そうだね。僕らは仲間を集めて一緒に戦いを楽しみたいだけなんだがな…。」
「あのAI…。いや、まだ確定ではないが、あいつを倒せるならまだ他のやり方ができるしな。」
「あいつはAIを手にしやがった。しかも本物な。」
「ん?なんだそれは?聞いてないぞ?」
グラブルのハーネストはコウキに詰め寄った。
「あん?お前知らねーのかよ?あの妲己ってやつの横にいるやつは、ありゃAIだぜ?」
「な、なんだと??」
「一時期、アーモロトのギルドが抱えていたんだが、そのあと…なぜか知らんがいつの間にかクーロンにいた。そのおかげでうちのマスターは大量の資金を受け取って、喜んでクーロンに尻尾降りやがった。うちはどの道クーロンにお世話になるんだろうよ…。下請けみたいにな…。」
コウキは奥歯をぐっと噛みしめていた。
「AIか…。噂には聞いていたが、既に導入済とはな…。そもそもAIがどいつなのかわからない。どうやって判別するんだ?」
「簡単だぞ?今まで見たことない技や魔法を使ったら、そいつはAIじゃな?なぜならリリースされる予定の魔法やスキルを備えておるからの?」
ラピスは杖をカンカンと叩く。すると、妲己とルカの画像が出てきた。
「これは極秘なんだがの?見てみ?これが妲己でそこにいるチビがAIじゃの?」
画像を見ながらコウキがいう。
「あ~こいつだよハーネスト。」
「みたことあるぞ?」
「こいつがドル箱ってわけだ。どこのギルドも味方につければ、ほぼ連日連勝記録が約束されている。」
「つまりあそこは、そのうち連勝し続けると?」
「まぁそのとっかかりが、今回のロームレス攻略作戦ってとこだろうよ?」
拳をぐっと握りしめ、逆の手で殴りパンと音を出した。
「妲己め…。我々をダシにする気か…!!」
「まぁ少なくとも、恩恵はもらえる。割にはあっているからの?今回の参戦は。」
「ラピス、お前はいいだろうが俺は許せん!」
「でもね、僕はこのままでもいいと思っている。大量のお金が入れば、装備も強くなるし対人戦も強くなる。それにこれが続くなら悪くないなとすら思うよ?」
「アークス、お前はズルいとか嫉妬のようなモンはないのか?」
「あるよ?でも、うまい汁は吸えるだけ吸った方がいいじゃん…!?ケッケッケ…!」
アークスは不敵な笑みをこぼし、ハーネストを嘲笑うかのような笑い声を出していた。
「…俺もそんな性格に切り替われればいいなとは思うが…。どうもしっくりこないんでな…。」
「なんにせよ、勝てば官軍だ。我々も総攻撃をかけようぞ?」
「バカの一つ覚えの一点集中攻撃、これが作戦と言えるのか?情けない…。」
「相手の兵力の分散も兼ねているのだ。まぁ嘆くでない。」
「なにか作戦があるというのか?」
「それはお前さんらが協調性を保つと約束するのであれば、提案がなくないわけでもない。」
「ほう、伊達に後方でのんびりと胡坐をかいていたわけではなさそうだな?」
連合軍の幹部らは作戦会議へと打ち合わせは進んでいった。
~クーロン陣営~
クーロン陣営は慌ただしく動いていた。それは総攻撃の指示が下っていた為である。
東門の突破は勝つための足掛かりとなるため、本陣が動くというのは本拠地との補給ラインを捨て死に戻りを黄竺にしていまうリスクがあった。そのリスクと引き換えにクーロンは仕掛けにいく。
移動する妲己はルカを従えて進む。
「先遣隊にパドスが交戦している!お前らも突撃を行い東門の攻略に参戦しろ!」
「次に!盾持ちは前に出てネクロマンサーの道を開け!」
騎士やヴァルキリーなどの盾持ち職は最前線に立つ。
隊列を組むと交戦しているパドスの部隊と合流する。
~東門・内側~
ドリアスはパドスのオーラアタックを受けていた。が、辛うじて生きていたのは、ギルメンとソロモンの基本魔法のヒールで保てていた。
焦げ臭い匂いを漂わせながらゆっくりと立ち上がる。
「無様だな、ドリアス。仲間の助けがなければ俺と対等にならんとはな…。」
「ああ、情けねぇ!情けねぇ!!情けねぇぇぇ!!!お前に言われんでも!この俺が一番よくわかっている事だッ!!」
「じゃあ、潔く死ねぇ!!」
パドスは瞬歩を使い、ドリアスの懐に入ろうとしていた。しかし、そこに大剣が前を塞いでいた。パドスの拳はバシィィーンと大剣の腹を殴ると目線は柄を見、顔を上げるとそこにはソロモンが召喚したサブナックが立ち塞がっていた。
≪我ガ名ハ、サブナック…序列、第43番ノ偉大ニシテ強大ナル侯爵ナリ…≫
「ドリアス!これは戦争じゃ!!一騎打ちなんぞ、やっている暇はないぞ!?」
ソロモンは指輪を前に出しながら叫んでいた。ドリアスはふざけるなと声をあげようとしたが、ドリアスの前にギルメンのヴァルキリーがドリアスを盾で守っていた。
「お、おい。」
「いい加減にしませんか?この戦い?うちだけならともかく、ソロモンさんや他のギルドも参戦しているんですよ?メンツより仲間を取ってください!!」
「ああ、わかったよ、ミリア…、すまん。俺も熱くなりすぎた。」
ドリアスはギルメンに諭される。
「ほう??ネクロマンサーがいたとはな!?」
「残念だが、お主らのネクロマンサーとは一味違うぞ?」
「ん?こいつぁ…!!!」
「グリモアの召喚書じゃないんじゃぞ?継続可能!!つまり、“ソロモンの指輪”の所有者なんじゃよ!?ガァハハハハハーー!!!」
「ちぃ!!」
パドスは下がり距離を取った。そして、ミリアの盾をドリアスは剣をパドスに向ける。
「パドス…、お前は強い。だが、それはタイマンでの話だ。俺はそれに固執していた。しかし、価値観を変えれば仲間がいるッ!!一人でゲームをし、喧嘩相手を探すよりも、俺の方がお前よりこのゲームを楽しんでいるッッ!!」
「な、なにをいってい…!!」
パドスが言い終わる前に大きな影を落とす。
サブナックがヒヒンと馬をクールベットをするとパドスの頭上へ大剣が振り下ろされる。
ドシーン…!!!
パドスは腕をクロスし、受け止めていた。
「ぐはっ…!!」
Guard break!!
「さらばだ!!パドスッッ!!」
エクスカリバーを天に掲げる!
神技:雷鳴剣!!!
動けないパドスを一刀両断し、パドスを倒した。
剣についた血を振り払い、鞘に納めると顔をあげた。ソロモンを探すと、図体のデカイ魔神とソロモンは東門へ走っていた。
「あんのksジジィに救われたと思うといい気分しねーな…。」
「マスター、ジンクスをご存知でしょうか?」
「なんだ?そのオカルトは?」
「マスターがパドスに勝つという事は我がギルドは決まって負けます。」
「残念だったな。ミリア!」
「はい?」
「今回はレオナルドとオケアノスの勝利だ。ジンクスにかからないぞ?」
「相変わらず、豪快な解釈ですね?」
「いってろ。」
ドリアスはフッと笑うと東門の方へ走り戻っていた。





