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第134話「剣と拳」

 ~ロームレス・東門~


 ソロモンとドリアスはギルドの垣根を越えて城門を開放してからの袋叩きをするという作戦で、一定の戦果を挙げていた。雲梯や投石車が存在しないのは、それが存在すると楽に攻城戦が終わってしまうからだ。


 その分、城門の役目は非常に大きく、攻めて占領すれば、そこからのリスタート・復活ポイントの中継地点として、補給所を構え拠点として機能する事が出来る。

これは防衛側としては落としてはならない重要な拠点であり、取られてしまえば、かなりのデメリットが存在する。


 以前は攻める側だったソロモン達だったが、防衛がこれほどまでにきつくタイトな動きをしなければならない事にストレスが溜まっていった。



「ソロモン!いつまでこの状態だと魔導士が疲弊するぞぉ!大丈夫なんか??」

「んなもん!わかっとるわぁ!!ワシのMPはほぼ底をつくんじゃぞ!!」

「悪魔召喚する前に!!効率良い悪魔呼び出せよ!!」



「おまえさんらこそ、おいしいとこ取りの()()()()しかしておらんじゃないか!」

「んだと!?取りこぼしを拾って何が悪いんだよ!?」



ソロモンとドリアスは火花を散らしていたが、互いのギルメンがどうどうと抑え回っていた。

お互いが目線を反らしながら、舌打ちをすると、ドリアスは憂さを晴らすように叫び出した。


「パーシィ!リーク!おまえらまだいけるのか!?」


『いけます!』


 二人は声を揃えていった。


「ほんじゃあ、今度は俺らが防衛すっから、オッサン!!MP回復を満タンにしてこい!!街に入って道具屋いって戻ってくる時間くらいあんだろ!?」

「お前もそのうちオッサンじゃ!!わかっとるんじゃろうな!!」

「わーったよ!!すまんな!!だからはよいってこい!!!」


 ソロモンは召喚した悪魔を指輪に戻すと、魔法職の一部を引き連れて一番近い道具屋へいった。



「敵影を確認!!」


 物見からの伝令が入ると、辺りは緊張が走った。その緊張を壊すのはドリアスの一声だった。

 ドリアスは大きく息を吸い込むと、息を吐き出すように叫ぶ。


「おっしゃあ!!魔法職いなくても防衛すんぞ!!」

『オオオオッッ!!』


 レオナルドを始め、近接職の多いプレイヤー達は唸り声をあげ自分達を鼓舞し合っていた。


「敵影30!大型召喚獣多数!」


「いいか?召喚獣が門をくぐれるのは、せいぜい3、4体だ。正面に攻撃を集中!ヴァルキリー隊は盾を構えながらヒールノヴァの準備!騎士、聖騎士も同じく盾を前に出せ!ジャイアント・アサシン・忍者・くノ一のメンバーは、門の壁に貼り付いておけ!!召喚している()()()()()()をぶっ殺せ!」


 ドリアスの激令が下るとギルメン達は慌ただしく隊列を組み、入口に向かっていた。


「高木柵を並べろ!通路を作れ!!それと一人分通れるだけにしておけよ?」

「マスター!来ます!!」

「ディフェンダー発動!!」


 盾持ち職はディフェンダーを唱えると、召喚された魑魅魍魎の攻撃を耐えていた。


「おぉし!初撃は耐えたな!!」

「依然!健在!!」

「んなもんみりゃわかんだよ!!右から1~3は右に!!4~6は左にいけぇ!!」


 レオナルドのギルメン達はオーラアタックなどの大技を出していた。

 すると、ロータスが口を挟む。


「マスターやばいな。オーラアタックの温存の指示だし忘れてる。」

「ちぃ!そんなもんはあとでどうにでもなる。アルカ・スラッシュや雷鳴剣だけが、騎士達の技ではない!!」

「とりあえず、うちの幹部達は雷鳴ライジング衝撃インパクトで、戦っていたので、大丈夫そうですね。ただ…。」

「どうした?」


 ロータスは焦りを見せていた。


「あの男…!!」


 レオナルドのギルメンが綺麗に左右に分かれた事により、正面に位置するドリアスへの道は最短距離になっているのをロータスは肌で感じた。その危険が迫りくる事を言葉にする前に事はおきてしまった。


 門の入口は拳を握りしめた男が立っていた。その男は見えない防衛線を破り、単騎特攻をしかけてきた。

駆ける男に気づいたギルメンはその男を斬ろうとしたり、刺そうとするがひらりひらりと躱し、近くの味方の召喚獣の背中へと駆けあがり、ドリアスの頭上へめがけて飛んでいく!



霹靂!雷鳴拳ッッ!!!



天上ヘブンズ之剣ソード


ドリアスはエクスカリバーを切り上げる様に対空スキルを放つ!!


お互いのスキルがぶつかり合うと衝撃波が走る。


ドリアスのエクスカリバーと男の拳が威力の均衡を保ちながら降下する。


「久しぶりだな!ドリアスッッ!!」

「おまえか…!!おまえが出てくるか!!バトス!!」


バトスは名前を呼ばれると不敵にニヤッと笑いながら着地すると距離を取った。するとドリアスは叫ぶ。


「いいかぁ!!おまえらぁ!!!指揮はロータスが取る!!俺はコイツとヤる!!ロータスッッ!!任せたぞ!!!」


「あっちゃー…。なんでここでやり合っちゃうのよー!ったくぅ!ソロモンさん!早く帰って来てくれぇー!!」


ロータスは呆れていた。


クーロンはバトスの特攻が成功したことにより、東門攻防戦という戦いにおいて、勢いを増す。




バトス、格闘家である。

クーロンで、5本の指に入る剛の者である。かつてバトスらはドリアス率いるレオナルドと拠点戦をやり合う規模だった。

しかし、ギルドの成長は妲己のおかげで日増しに増大していき、いつしか黄竺を占領した。ギルドとしては、大きく差を開いてしまい、中々戦う場面に至らならなかった。


拠点戦時代、まだドリアスも騎士の頃に戦っていたかつての好敵手ライバルであった。

拠点戦でかち合えば、必ずといっていいほど真剣勝負をしていた。原因はわからない。互いが意識し始めた頃には、数多の立ち合い数だけがカウントされていた。


ドリアスもバトスも勝敗という勝敗を決した事があまり無い。

理由はとても陳腐なものだった。


どちらかが勝てば、勝った方が拠点戦で負けるという結果だからだ。


勝負に勝って結果で負ける。なんとも情けない話なのだ。

しかし、当人同士は至って真剣だ。それはお互い、相手を認めているからこその真剣勝負が発生する。

その気迫は両ギルドのメンバーがドン引くほどの戦いを繰り広げてきたからだ。水を差すなんて野暮な事はしないというのが、いつしか“見えないルール”になっていったのだ。



雷鳴ライジング衝撃インパクトォォ!!


そう龍拳りゅうけんッッ!!



互いのスキルがぶつかり合いエネルギーが相殺されていく!


「まだ、この世界に足を突っ込んでたんだなぁ!バトス!!」

「お前もな!しかも聖騎士なんぞになりおって!そんなにしてまで俺に勝ちたいか??」

「そうじゃねー。限界を感じたからクラスアップしただけだ。」

「ほう。では、安売りの聖剣をもってるわけだな?」

「フン!神器を持たぬお前が何をいっても無駄だ!!」


「試してみるか?」


互いのスキルが出し切られるとその場で打ち合いが始まった!!


ドリアスの剣筋は全て躱されていた。

それはまるで剣とダンスしているかのような体術であった。



―――クソ!当たらない!前は数発はダメージを負わせられたのに……!!!


「さあ、どうした??こちらもいくぞッッ!」


ドリアスの突きを躱すと、その勢いで回転し裏拳を放つ!

すると、ドリアスの顔面に当たる!そして、その勢いで正拳を一発当て、同じ箇所を殴るとドリアスは吹っ飛んだ。


吹っ飛んだドリアスに走り込む!


「あっけねーな!!ドリアスッッ!」


視界デハフを受けているドリアスはボヤっとした視界でバトスの攻撃にカウンターを狙う。



セイバーエッジッッ!!



地面から刃が勢い良く穿つ!しかし、バトスはそれをものともしない跳躍力をみせる。


「喰らえ!!」


空中武術!


疾風迅雷脚!!


セイバーエッジの範囲を抜けると飛び蹴りを打ち、更にひねりを加え空中回し蹴り、ダメ押しの回転を入れて踵落としを打ち込んできた。


ドリアスはCCの関係上ダウンしてしまう。


「柔いな…。なぜだ!なぜこうもあっさりとやられる!?」


軽く吹っ飛んでいた。ドリアスに向けてやるせない気持ちと苛立ちが相まって怒りのやりどころを批難に集中した。



「この野郎!!サボっていやがったのか!?やめちまえ!ギルマスもゲームも!」


起き上がろうとするドリアスを待っていた。

本来ならば、既にトドメの一撃を喰らわされてもおかしくないのだ。


ドリアスは抉られたHPを取り戻すべくハイポーションを飲んだ。


「てめぇー!なんで、トドメを刺さねぇんだ!?」

「お前!今まで本気でやってなかったんか?」

「あぁん??本気に決まってんだろうが!ボケカス!」

「だったらもうちょっと張り合いのある攻撃展開出来んだろうが!」

「うるせー!たまたまだよ!!」


ドリアスは剣を握り返すと、過去にやり残した宿題を急いで終わらせるかのように、歯を食いしばって必死にバトスへ切り込むのであった。


イーリアスの空は赤く照らしていた。


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