第130話「一天四戦」
雷鳴衝撃ォォ!!
ベルスは静動の構えから受け流す行動をとるが、衝撃完全にうけながすことが出来ずにそのまま鍔迫り合いに持ち込まれる。
「今のは…ほんの挨拶変わりだぁ…!」
「そうかい?手荒な挨拶になれてなくてすまんなぁ!」
「減らず口の多い野郎だぁ!おらぁ!死ねやぁ!!!」
コウキは蹴りを入れ、ベルスを蹴り飛ばすとコケて尻もちをつく。コウキは走り込んで、すかさずトドメの一撃を突き立てようとすると
「ところがどっこいさぁ!!」
ベルスの鎧にコウキの刃が突き刺さろうとした時、横からの魔法攻撃に救われる。
「ぐはっ!こ、この野郎…!」
ベルスの後を追いかけてきたギルメン達に囲われて、一命を食い止めた。
「マスター!大丈夫ですか!?」
「いや、全然ダメ!w」
「なんで、何も策なしにいくんですか?」
「真似てみたかったんだよ…あのお人好しのね。」
「それにしたって、ダウン取られたらほぼ死んだも同然なんですよ??対人戦はっ!!」
「対人戦なら負けてたが、ここは戦場だ。仲間がいる!安心して突っ込めるじゃないか?」
「そういう問題じゃありません!」
心配しているウィッチは今にも涙を流しそうになっている。
「ああそうだったな…。悪かったよ。さぁいこうか。」
「なんだなんだぁ?ギャラリーが増えてきたな?こっちはとっくに肩ァ~あったまってきてんだぜェ!?」
コウキはぶっきらぼうに肩に剣を担ぎ、ベルス達を見下すように話しかけてきた。それと同時にコウキの後ろには続々と オメガグリードのギルメンらが集まってきていた。
―マスター!ここは徐々に後退しましょう。
―城門のギリギリまで下がろうか?
―ええ、ファウスト任せですが…。
―大丈夫だ。時間稼ぎは出来てた。敵の目線はこちらを向いている!
ベルスはギルメンを押し退けてコウキに話しかける。
「さぁこい。青二才!お前はアウェイなんだぞ?」
コウキに集まりつつある。
「おい?聞いたかよみんな!?ホームグランドのグラマスが、さっきまで追い詰められていたとは思えねー発言してるぞ??こいつぁとんだ笑い者だぜ?ぎゃはははー!!」
コウキは皮肉混じりにベルスをコケ下ろしていた。その瞬間、ベルスはフンと鼻で笑って言い返した。
「ごちゃごちゃうるせー野郎だな!!こいよ!?」
ニヤニヤしていたコウキは一瞬で眉間にシワを寄せる。
「あぁん?てんめーさっきまでやられそうになっていたじゃねーか?調子乗んなよ!!ぶっ殺してやるッッ!!」
コウキを始め、オメガグリードの面々はベルス達に突撃をしかけていった。
~東の森・中央部~
北上しすぎたアイオリアとユーグは不期遭遇戦にはいっており、互いの背中を守りながら前に進んでいった。
「くそ…!!死に戻りのプレイヤーが多い!中央は善戦しているようですね!?おまけでこっちがきつくなってきている。」
「そうか?相手にしている奴らはどいつも大したことのない相手ばかりだ。四聖剣としてもう少し修行した方がいいんじゃないのか?」
「ええ、そうしたいのは山々なんですけどね!!占領戦までの間にクラスアップしただけでも褒めてくれませんかね??」
「前に褒めたぞ?」
「出来れば今も…!!」
ユーグは突然出てきたアサシンの攻撃をレーヴァテインで受け止めていた!!
ドォン!!
激しい効果音と共にアイオリアの拳がユーグを襲うアサシンの左脇腹を打ち抜くとそのまま、死亡判定が出て粒子化して消えていった。
「あ、ありがとうございます!」
「一撃に魂を込めろ!!そんなのでマスターを守護できるのかッ!?」
「は、はい!!(俺…連撃型なんだけどなぁ…。)」
二人はまた走り始めた。
目の前をあの覚えのある光が目に入ってくる。
二人は以前、経験していたことを知っていた為、とっさに木の陰に隠れる。
―アイオリアさん!!近くにあいつらいますよ??
―意外に出てくるのが早かったな。後ろ取れるか?
―いえ、相手の位置がわからないので何ともいえません。
―む?おい、あそこをみろ。
アイオリアがユーグと目を合わせると、近くいたはずのプレイヤーが粒子化のエフェクトを放っていた。
―この辺にいるということはドリアス達はやられたのかもしれんな。
―うそでしょ?だってカルディアさんもピピンさんもいたんですよ?
ーおい見ろ。大将のおでましだ。
木陰から覗くと、ルカと妲己が悠々と歩いていた。
―仕掛けますか?
―いや、まだだ。
通り過ぎていくのを見過ごそうとしていたアイオリアにユーグが急かす。
―後ろとれますよ!?
―落ち着け。こりゃあ二人がかりでも勝算が見込めると思えん。
―あの光は災厄の審判…だろ?ありゃ敵味方無視の魔法だ。
―なのに、近くにいる妲己はやられない。
―そ、そういえば!
―前にマスターとベルスの会合に居合わせたベルスの予測だが、いよいよ信ぴょう性が増してきたな。
―え?え?ちょっとわかんない。
―まぁ、本体は妲己だということだよ。他の事は考えるな。
木陰に身を潜めていた二人は遠くに消えていく背中を追いかけそうになった。
「南にいくぞ??」
「え??正面の援護いくんじゃないんですか?」
「いや、こりゃセルにも役立ってもらう時がでてきた。セル達と合流する。こい!」
「また走るのかよ…ってちょっと!まってくださいよ!」
ユーグは肩を落としているとアイオリアはガサガサと音ともに森の中を駆けはじめた。
~東の森・???~
―――はぁ…はぁ…。
セルは手負いの傷を癒すため、身を潜めるように木の上に待機していた。
赤眼との戦いで油断したセルは自分を回復するために、必死にHPの減るダメージと戦っていた。
ハイポーションを飲んで回復はしたものの、度重なるCCを受けている為、出血と麻痺の現象がひきりなしにHPゲージを削っていった。
―――クソッ!なんでとまらない!!自然治癒になるまでには、まだ時間がかかるのか…!出血止めの薬でも買っとけばよかった。
そこにガサゴソと木々をわけて走る音が聞こえてきた。
―――こんな時にエクスポーズが使えれば…!!
東の森はアサシンのサーチスキルが無効化される不思議な森である。
そのため、近距離での確認が必須となってきている。つまり、肉眼の距離感でしか、遠くのものを確認できない。
息を殺して片目で下をみると、赤眼がセルの流血の匂いを嗅いできているように思えた。
―――こ、コイツ!!勘が強すぎる!!
もう駄目だと諦めかけた時、そこに迷える二匹の狼が現れた。
―――む?あ、あれはアイオリアじゃないか!バカ!赤眼がいるんだぞ!?
セルは思わず声をだしかけた。wisを放つ時間の余裕もなく、赤眼と対峙してしまった。
「ほう。こんなところをうろつくバカがいるとはな!!」
「アイオリアか…!!クックックッまあお前でもいいぞ?」
「お前に構っている暇ない。そういえば、この辺に敵はこないのか?」
アイオリアは赤眼にふと聞くと
「お前らの敵は俺だからな。俺以外は全員敵だ。戦場に身を置くことに生きている証になる。」
「相変わらず戦闘狂だな。そういえば、お前とサシで戦ったことないな。」
「まぁ所詮は格下狩りしかできないお前に俺を倒す事はできんよ。」
「この俺を怒らせない方がいい…。」
「戦場でしか生きられない可哀想なヤツよ…!こい!」
アイオリアは走り込んでくる赤眼の刃に立ち向かっていった。
~東の森・北部~
セイメイ達はアイオリア達が倒していった死に戻りのプレイヤーを倒していったため、遭遇することがなく逆に不安になっていった。
「もうすぐ中央に到達しそうだけど、敵に出会わないというのは逆に不気味ね?」
結華は木々の合間の揺れる葉に目を凝らしながら、敵影を探していた。
「ええ、このまま出会わないなら、中央にいきましょう。」
スカルドは、精霊魔法をチャージを行ないながら返事をしていた。
すると、スカルドがふと顔を上げるととある背中にぶつかった。
「いった!どこをみてらっしゃるの!?」
と不機嫌そうにいうが、異変に気づき、ゆっくりと2、3歩下がる。
するとそこには、以前救出作戦で戦った敵と遭遇してしまった。
「てめーらどこから入ってきた!!??」
「敵発見!!下がるぞ!!」
結華は焦るスカルドの肩を掴んで撤退しだす。
全体として撤退をする事になると、クリスとセイメイは隠れる場所を探す。
撤退行動の最中、必死に二人は逃げながら探す。
「セイメイさん、あそこ!あそこに隠れましょう。」
「ああ!」
近くにあった大きな倒木の下に滑り込むように隠れる。セイメイに扮した結華はスカルドと共に北西の方に撤退し、それを追いかける様にクーロンのギルメン達は追撃をしていった。
「ふう…やり過ごせたかな?」
「ま、マスター!…手をどこかしてもらえますか?」
セイメイの右手はクリスの胸の上に手をついていた。
「ん?あ!!!すまん!!ちがっ!これは!」
赤らめるクリスの顔に向かって手を合わせて謝る。
「ふ、不可抗力なんだ!こんな時にすまん!!」
「い、いえ大丈夫ですので…さぁ我々の作戦はこれからですから!!いきましょう!」
そそくさと倒木の下から抜け出すとセイメイも慌てて抜け出す。気まずそうにしているセイメイを心配させまいとクリスは気を取り直させた。
「セイメイさん、いきましょう。目的はルカちゃん救出ですからね!」
「ああ、すまん!ありがとう!いこうか!」
二人は中央部のルートへ走り始めた。





