第128話「晦冥と冥暗」
激戦を極める南門もさることながら、東門前に位置する東の森はクーロンとの全面対決が発生する。
ドリアスを始め、同盟軍の中でもギルドイチ火力を保有するレオナルドはクーロン率いる百鬼夜行ならぬ、百鬼昼行を食い止めていた。
「おい!!まだその召喚獣を倒せねーのか!?」
「馬鹿野郎!!召喚獣相手にオーラアタックを乱発できるわけねーだろうが!!」
カルディアが大斧で召喚獣の攻撃を受け止めていた。
「マスター!攻め込んでいたはずの仲間が死に戻っていきます!!」
「なんだ??なにが起きていやがる!!?」
死に戻ってきた仲間がドリアスに報告をあげる
「おそらく相手のマスターらが現れました。」
「親衛隊のご登場ってか?」
死に戻ってきているギルメンはカルディアを助けて隊列を立て直す。
「クソ!!これだからネクロマンサーは面倒だ!自分では攻撃しないくせに!!」
「おまえ、それソロモンにいったら喧嘩になるぞww」
「あの人はいいんだよ。いいオッサンだから!」
「なんだ、その自己都合www」
森の奥から眩しい光が差し込んでくる。
「くっ…!」
光が止むと近接職の集団が突撃をしレオナルドへの攻撃が止まずにいた。
「こんどはなんだ??被害は??」
「わかりません!おい!パーシィ!リーク!ベル!応答しろ!!」
「ロータス!!あいつらがやられたってことは相当の手練れだぞ!?」
「マスター!!ダメです!!ここは引きましょう!!!」
「仲間の仇を俺が取らなかったら意味がねーだろうが!!」
「作戦は勢力温存です!!ソロモンさんの指示を仰ぐべきです!」
「…くそがぁ!!」
レオナルドは苦戦を強いられていた。時折、眩い光が発生しては、次々と音声が途絶える。
「ドリアス!!闇雲に戦っては相手の作戦に乗せられるだけだ!!死に戻ってくる仲間と合流しよう!」
「強気のお前が弱気でどうすんだよ!!」
「俺だって戦ってやり返したいんだよ!!わかんねーやつだな!!」
激昂するドリアスをクーロンのギルメンが背後から襲い掛かる。
すると、一本の矢が戦士の頭を貫く。ドリアスは慌てて振り向くと死体は粒子化をしていた。
「ドリアス、ここは下がるべきだ。アイオリアがいるならともかく、このエリアはやばい。この毛並みがそういっている。」
「後方支援の弓が何言ってやがる!!」
―――毛並み!?www
「後方支援だからこそ全体が見えてくる。お前がまず引け。レオナルドはここ一帯の担当なのだから。ここが抜ければ、ソロモンの爺様が危うい。ならば、メンバーを整えてからでも遅くはなかろう。」
「マスター。ピピンの言っている事はまちがってないです。ここは一旦引いて、仲間と合流しましょう。ソロモンさんもきっとこの状況を把握しているはず。メンバーを募っているところでしょう。」
ロータスに促されたドリアスは渋々了承する。
「クソ…!!あいつらのCTを聞かんといけないしな。一時撤退!!」
「信号弾打ちます。」
「ああ!!」
ドリアスは後ろを振り向かずに真っすぐとソロモンの陣営に走っていった。
~ロームレス・東門前~
ソロモンは不測の事態を考えていた。それは経営者のリスクマネジメントが身体に染みついていたからであろう。陣立てには、前の戦いにおいて一時的に預かったギルメン達を集めた。
のちにオケアノスに加入したというメンバーであった。そのメンバーは、イモリ、オムニア、カルカ、ローレン、ベンティの5名はソロモンの指揮下にいた者であり、ソロモンの指揮の下で自分達の可能性を最大に引き出してくれたという経緯がある。この恩があるため、今回も自分たちはここにいるべきであると名乗りを上げて、ソロモンの指揮下に入る。
「おいおい、敵の進軍スピードがわからんわい。」
「そうですね。目の前は森ですからねぇ~。」
「まぁ良い。ここが最終防衛ラインと認識をしとけば、ファウストの肩の荷も少しは軽くなるじゃろ。」
腕を組んで森を眺めていると、復活ポイントからレオナルドのギルメン達が転送されてくる。
「おいおい、レオナルドは調子が悪いんか?」
死に戻ってきたパーシィ達がソロモンに反論する。
「馬鹿を言うな!!少なくとも善戦していた!!しかし、いきなり眩しい光に包まれたら、目の前が真っ暗になったんだよ!」
「眩しい光…??」
「ああ、そうだ。我々は幾人もの敵を退けて前進していた。すると、いつも通り、木陰から強襲されて戦ってトドメを刺した後に、その光に包まれたんだ。」
「魔法か?」
「魔法なら、あの森でキランと光るだろ?一瞬でもさ。しかし、アレは違う。いきなりだ。いきなり攻撃判定を喰らったんだ。何を俺が言っているのか自分でもおかしいとは思うが、あれはいきなり車に突っ込まれたような感覚だった。」
―――まさか…ルカなのか!!?
ソロモンは背中に氷を入れられたような感覚を味わった。
話をしているうちに、ドリアス達がもどってくる。
「どうやら全滅はさけられたようじゃな。」
「冗談じゃない!!あいつらぁ!!ぶっ殺してやるッッ!!!」
「落ち着けドリアス。相手はチート使いかもしれん。」
「チート使い??」
「ああ、うちのマスターの獲物といってもいいだろうな。」
「ちぃ!!またあの野郎の出番かよ。」
「いや、今回の作戦はセル君の考案じゃよ?信号弾打ったんじゃろ?」
「打ちたくもねー信号弾な。“俺らは負けました。敵いませんでした”のアピールだろ!あれ!!」
「そんな腐んなやw引くのも作戦のうちじゃぞ?だれもレオナルドを笑うものはおらんぞ?」
「気休めありがとさん。」
「そろそろ、動きます。マスターとセルさん達の挟撃が始まる頃です。」
「おし。ワシらも動くでの。ドリアス、指揮を頼むぞぃ。」
「わーったよ!!ちょっとまてって。ロータス!全員揃ったか??」
「はい!全員、復活しました!!」
「だとさ?指揮官殿?」
「だからお主だといっただろうに…。わしらの方が人数少ないんじゃぞ?まったく…。」
「俺は前線で戦ってた方が楽しいんでな。いざ、戦闘が始まれば、死ぬまで戦かっちまうからなぁ~俺らは。」
「やれやれ、まったく。若いというのも使い様じゃな。」
「いいからオッサンの指示待ちだ。」
「ったく減らず口を…。全体!!進め!!」
ソロモンは出揃ったレオナルドと共に東の森へと入っていったのだ。
~東の森・南部~
「おかしらぁ!!信号弾あがりやした!!」
「そうか。とうとう出番だな。」
「ぐはぁ!!!」
「どうした???」
セルが振り向くとそこには深紅の光が二つどす黒く光っていた。
「おいおいおい!!こんな時までご登場かよ…!!」
そこには白い歯をむき出しにした赤眼が立ち塞がっていた。
「DCのセルだな?刃を抜け。それとも、前回のように集団で俺をやるか?一人じゃ何もできないギルマスよ!ククク…。」
「このやろう~!!俺を挑発してんのかぁコルァ!!!!」
「良い良い、さぁ死合うぞ…!!!」
バシュィン…
セルが腰にさしてある小刀を二本抜くと一気に距離を詰める。
詰め寄られた赤眼はセルの攻撃を紙一重で阻む。それは一瞬で暗器を取り出し攻撃の軸を反らしていた。
鍔迫り合いをしている。
「お、おかしらぁ!!」
「おめーらは!先に行け!!俺はコイツを片付けてから合流する!!」
「で、でも!!」
「いいからいけ!!セイメイと合流しろ!!少なくともそのあとはセイメイが作戦を考えるさ!!」
「わ、わかりました!!」
双方が一旦引くと、DCのメンバーはサササと森の奥へと消えていった。
「さぁこい!このクレイジー野郎!」
「戦いの混乱というのは、なんとも楽しいパーティーだな。カッカッカッ!」
「人の邪魔ばっかしやがってかまってちゃんかよ!!」
「安心しろ。今日はうちのメンバーはいない。正真正銘の一騎打ちだ。」
「そりゃ応援する観客がいなくて寂しいな!まあ、それはウチも同じだがなッ!!」
言い終わる前にセルは赤眼に仕掛けていく。
「いいね!感じるぞ!!お前の怒りが俺を生かしている・くれている証拠が!!生きている実感を感じるぞッ!!」
「そうかい!!無差別PK野郎と時間を費やすのは、俺は好きじゃないんでな!!」
森の暗闇に金属音が響きわたる。
二つの黒い影は生い茂った樹木から木漏れ日を頼りに、感情がぶつかり合っていた。





