第116話「闇よりの使者」
セイメイが振り向くと、そこにはセルが立っていた。
「ただいま帰ったぜ。BOSSッ!」
~闇市・路地裏~
亜人の首根っこを掴んで路地裏にいくと、セルの配下達が出入口を封鎖し我々のセーフティゾーンを疑似的に作り上げた。
「久しぶりだな、セイメイ。」
「おまえこそ、逃げ回ってたんじゃないかと思ったぜ?」
「よくいうぜ。今回はソイツがキーになるんじゃねーのかと思ってな。コイツをずっと探し回っていたんだよ。そうしたら、コイツは街のあちこちに呪印を置いていきやがった。」
「呪印??そんなものこの世界には存在しないぞ!?」
「当たり前だ。コイツは…AIだからな。」
「こいつもか??」
「なんだ?他にもこんな類のモンがはびこっているのか?世も末だな。」
「まぁ世も末なのはいつものことなんだが…、コイツはなにもんだ??」
「ああ、コイツぁテロリストみたいなのスキルを持っていやがる。」
「は??なにいってんだ?おまえ!」
「セルも大概じゃな。」
「お前らの脳みそは小学生以下か?よく人の話を聞いていたか?」
「あ?聞いてたよ。呪印のことか?」
「そうだ。その事を俺らは調べていたんだ。こいつの足取りを調べに俺らは北の精霊王の国、フルヘイムに入っている事がわかった。」
「あの国にか?」
「まぁ聞けよ。フルヘイムにプレミアの軍勢が潜伏している事を知ることにもなるんだが、俺らの当初の目的はコイツの足取りだ。おかしくないか?魔法職でのキャラ設定が出来るのはヒューマンのみ。それにも関わらず、亜人だぞ?どう考えても初期設定のバグを扱っているか別物扱いだ。こりゃ様子がおかしいと思うのが必然だ。それに気づいた俺はコイツを追いにおった。すると、フルヘイムに謎の呪印がある事に気づいた。それを解除するのに一苦労したぜ。」
「ほう?その犯人がこの亜人のウィッチか…。」
「ああ、それでいつものようにPKをしかけるとうちのメンバーが不甲斐なさも相まって全てPKKされるという始末だ。」
「おいマジかよ…!」
「大マジだ。それで俺らは一旦PKを諦めて交渉することに決めた。俺らはそういうのはご都合主義なんでな。」
「それでコイツが呪印を施している合間を狙って話しかけた。いくらなんでも後ろからではこいつらの職業的に不利なのはよく知っている。その上での圧倒的な優位な立場での交渉を進めた。そしたら、こいつなんていったと思う?」
「さぁ?わからん。」
「“世界を壊すなら仲間になる”と言いのけたんだぜ?」
「世界を壊す??」
「ああ、俺は悪くない話だな。だからこいよといったら、素直に従った。しかし、俺とお前が繋がっているという情報を聞きつけるといきなり走り出して逃げだしたんだよ。」
「なるほどな。そうしたら、ココにたどり着いたということか?」
「まぁそんなところだな。」
「じゃが、なんでこいつは今でも大人しくここにおるんじゃ?PKすればいいじゃないのかのぅ?」
「ああ、そこだ。こいつのPKKもしくはPK対象は呪印の邪魔をする事や、一定の制限を突破出来るときに発動するらしい。まぁお利口さんなオツムをもっているということにもなるな。」
「ああ、俺とソロモン、そしてセルがいるからか?」
「しかも、ここで何かあれば、援軍もくるだろうからな。まぁ俺んとこのギルメンが数名いれば、いくらなんでも倒されることは間違いないからな。」
「ほう?褒めたり貶したり忙しいんだな。セルw」
セイメイはセルを見ると、セルは睨み返してきた。
「フン、それでもここまでの情報を掴んでもってきてやったんだ。報酬くらいよこせよな。」
「まぁそうだな。それよりコイツに聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「ああ、いいぜ。金が入るのは確約取れたわけだから、好きにしろ。」
するとセイメイは刀を抜き、首に刀を当てた。
「お前はどこからきた?」
「…。」
「ほう?口は堅いようだな。では質問を変えよう。ルカを知っているか?」
「知っている。私の妹だ。」
「ほほう?では妲己は知っているか?」
「知らない。だが、名前を変えているのだろう。」
「おいおい、何人いるんじゃ?」
ソロモンはため息交じりにいう。
「全部で…、お前らの感覚でいうのであれば、七人兄妹だ…。」
「ほう?」
「私たちは封印が解かれたのだ。4人の英雄達によって…。」
「おいおい、なんだそれは…。」
「イーリアスに4人の英雄…?何かのなぞなぞなのか??」
「それで、破壊をしようという魂胆か?」
「お前らは…邪魔をするのか?」
亜人のウィッチはこちらを睨みつける様に見上げていた。
「そうだなぁ…。邪魔と言えば、邪魔者だが?ゲームが出来なくなるのは困る。」
「お!そうじゃ!」
ソロモンが何かを思いつくように声を上げる。
「わしらは破壊者じゃ。現にこの世界のルールを壊したことがある。悪名高いギルドじゃぞ?」
「なんだと??」
「知らんのか?AIのくせにぃ~。ギュスターヴを倒したのはここにおられる我がマスター、セイメイ様だぞぃ?」
ソロモンは自慢げに亜人のウィッチに語りかけた。
「お前が、まさかな…。」
「たしか、お前はアポカリプスにおったな?あれはなんでじゃ?」
「あれは名前に惹かれたのだ。私たちと同じの破壊者の御印…。」
「ほう?ではより強い破壊者につくのは至極当然。じゃな?」
「そうだ…。異論はない。」
「じゃあ決まりじゃ…。我が傘下に入れ。」
「お、おい!!」
―なぁにワシの閃きを信じろぃ。
―今日はソロモンに従いぱなしなのが癪だが…わかった。信じるぞ?
―任せろぃ♪
ウィスを終えるとセイメイは刀を収めてギルド加入の手続きを整えた。
亜人のウィッチは素直にオケアノスのギルメンとなった。
「フッ…。相変わらず斜め上の結果を生むのが好きなギルドなぁ?オイ」
「知るか!好きでやっているんじゃない!」
「まぁいい。占領戦での配置はどうなっている?」
「まだ決まっていない。おって連絡する。」
「おいおい、決戦間近でノープランかよ。大丈夫か?メディオラムを守れるのか?そんなんで!」
「まぁやるだけの事はするさ。それより、あとで話がしたい。時間は空いているか?」
「ああ、1時間ぐらいなら待てる。それ以上はまてんぞ?」
「それで構わない。あとで城で話をしよう。」
「いいだろう。ではまたな。」
そういうと、セルはギルメンを連れて裏通りの影に消えていった。
三人は市場通りに戻りながら、物色しながら会話を始めた。
「さてと、名前を聞こうか?」
「蓬華だ。…なぜ東洋名なのかはわからない。」
「わかった。では蓬華。妹を助けにいこう。」
「…。」
「なんか調子狂うなぁ~。」
「妹はもう妹の概念がない。あれは、入れ物に過ぎない傀儡だ。」
「おまえ…。」
「仕方ないのだ。あのような攻撃に対抗処置をするコトを行わなかった妹が悪い…。」
「あのなぁ…。」
セイメイは頭をかきながら歩く。
「まぁ俺が救って見せる…。と言いたいのだが、戦いの中でどう救うのかわからん。やるだけの事はやってみようと思う。」
「破壊者が救世主をやるのか?人間なのに面白い事をいうな?」
「そうか?神様ぶってなんでも思うようになると思い上がるAIよりはだいぶマシだがな?」
「人の傲慢さもここに極まるというのは、お前の事をいうんだろうな?」
「そんな減らず口なら、お前は我がギルドの破壊担当をお願いするよ。最前線で暴れてもらおうかね?」
「構わん。その代わり手加減は出来んぞ?」
「おーっと但し、この世界存在するモノで頼むぜ?どこから引っ張て来たかわかんねー魔法はやめてくれよ??」
「フン、そんな条件でいいのか?」
「ああ、それだけだ。付け加えるのなら俺の邪魔だけはするなよ?」
「いいだろう…。」
二人はバチバチと火花を散らしていた。
「お、おい。仲間になったんじゃから険悪なのはよし子さんじゃぞ??」
「よし子??」
「気にすんな。オヤジギャグだ。」
「…。戯言を抜かすおいぼれだな。」
―――こぉいつらぁ~~~!!!
ソロモンは拳をぎゅうと握ったが、年長者として堪えていた。
ふと、目を売り場の棚を見ると、セイメイの持つ上位武器がおいてあった。
「お、おいマスター。これはどうじゃ??」
「あん?どれどれ?」
「こりゃ童子切安綱じゃねーか!!!」
「童子切安綱??」
「しらねーで勧めたの??」
「童子切安綱は鬼切丸とか髭切とか色々名前が変わってきているんだが、こいつぁ天下五剣に数えられるほどの名刀だ。なんでこんなところにある!!??」
「闇市じゃからのw」
「いくらするんだ???」
セイメイは値段を見るととんでもない金額が記載されていた。
「に、200Mだと!!?」
「ふざけんな!!いくら名刀だからってこんなバカみたいな値段つけやがって!!!」
「落ち着け。落ち着くんじゃ。マスター。」
「俺の資産と同等だぞ??どうかしてやがる!!」
「まぁ…、それで強くなれるのならアリなんじゃないのか?」
「くっ…。足元見やがって…。」
「買うのか?」
「こんなニンジンぶら下げられて走っても走っても追いつけない馬みたいな事を俺にさせているこの状況を俺は1分でも1秒でも短くしたいね!!」
「まぁグラマスの給料はそこそこ貰えているからいいんじゃないのかのぉ?」
「クッソ!!!」
一瞬したを向いたセイメイは次の瞬間には鬼気迫る顔で露天商のNPCに睨みつける。
「買うからさっさと会計を済ませろ…。クソ野郎…。」
≪お買い上げありがとうさん。ヒヒヒ…。≫
イライラしている男の背中に追い打ちをかけるようにソロモンが茶化す。
「名刀を手にした男は違うな~。」
「黙れ!!今日は厄日だ!!」
「名刀を手に入れたんだ。吉日の間違いじゃないのか?」
「うるせー!!」
―――どこでも買える九八式軍刀、ナマクラだとか言われてこんなに下げられた評価だが、俺には十分なほど業物だったぜ。爺さんありがとうな、ここでお別れだ。
武器から熟練度になるオーブを抽出し、童子切安綱に錬成を促す。
【童子切安綱を装備した。】
九八式軍刀は綺麗な粒子の輝きと共に天へ帰っていった。
セイメイは少し寂しい顔をしながら天を仰いでいた。





