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第113話「怒りの導線の行く末」

~東の森・入口~


セイメイが置いていった馬は、静かに主人の帰りを待っていた。

ただ寡黙にじっとしている。


セイメイは下馬したところに歩いていった。その間、一言も口を開かなかった。

無論、同行したメンバーもただ帰り道を沈黙したまま歩いていた。


陽気なキャラを装っているアイオリアも黙っている。


馬の位置までくると、セイメイは口を開いた。


「ロームレスに戻ったら、俺は今日は落ちる。各自解散。」

「経費はどうするんですか?セイメイさん?」


ファウストがホルス達ををチラ見していう。


「ああ、かかった分はそのままギルド資金から引いてもらって構わない。」

「わかりました。セイメイさん、あまり…」


そこに割って入ってきたのはスカルドだった。


「セイメイ様!あまり、落ち込まないでください!士気に関わってきます。」

「お前に言われんでもわかっている…!」

「では、普段通りに…!」

「普段通り口の悪いプレイヤーだよ。なんら変わり映えしとらんよ。」

「しかし…!!」

「スカルドさん、あんま追い込まないで?我がマスターも人間だってことなんだからさ、少なからずAIではないのだからね。」

「ユーグ君…。」

「ユーグ、礼はいわんぞもっと強くなれ。じゃあな。」

「ヘイヘイ。」


セイメイは馬を走らせていった。


「ふう…。マスターも浮かばれないやね。」


ホルスが小さくなっていくセイメイを見つめながらいった。


「は?なんで?」

「そりゃそうだろ?あの人の運命はギルドマスターという役職を選んだ時点で、信頼と裏切りの狭間で生きる運命さだめを背負っているんだ。だから人一倍、プレイヤーを大事にしなきゃいけないし、それも過度ではいけないし、無関心もいけない。難しい立場を選んだことだ。

 俺らも人の事を言えないけど、あのマスターを近くでも遠くでも見れる俺らはある意味、重要なポジションなんじゃねーのかって思う時があるんだよねぇ~。」

「あーわかるわぁ~w」

「だよな?俺らいつも三人でつるんでプレイしているけど、あの人が笑うところって見たことないよな?」

「俺らは一度、噂を鵜呑みにして裏切ってしまっている。だからといって、服従しなければならないわけでもないが、人として理解者の一人になってあげられるんじゃないかなって思うんだよね。」


「君達がそういうことをしなくても、彼が拒否するんじゃないかな?」


「せんせー…。」


「ああ、割って入ってゴメン…。実はさ、ボクはあんまり彼を知らないんだよ。ただ、プレイヤーを第一に考えていて、自分と関わる人は絶対守りたいっていう気持ちだけはあの人の原動力みたいなもんだというのは、わかっている。君達が戻ってくるときも、彼は一切怒られていないはずだよ?」

「ええ、怒られるどころか頼まれ事されましたね…。」

「そこだよ。普通、自分を裏切った・離れたプレイヤーを底なしに信用するかね?」

「自分はできないですね…。」

「そう、彼はそこの根拠がないんだよ。角度を変えればただの馬鹿正直だし、無警戒すぎる。けれど、彼の中の信用云々の判断基準は、該当するプレイヤーが楽しめてないのなら守って仲良く楽しみたいという概念が存在しているように思えるね。」

「ああ、なるほど!」

「今回はその概念をぶち壊されたから酷く打ちのめされているのだと、推測されるね。」

「マスターは…立ち直れるのでしょうか?」

「さぁそれがわかれば、苦労しないんだよwまぁ、これでダメなら全エリア統一なんて夢のまた夢だよ。」


ファウストは夜が更けていく空を見上げながら、一足早い流れ星をみていた。




―――次の日


~ロームレス城~


ベルスに会うためにセイメイは城に入り、ログインを待っていた。

すると、置いてけぼりを喰らっていたカルディアとピピンがセイメイに近づいていた。


「こんの!!バカマスター!!」


セイメイはいきなり怒鳴りつけられて机をドンと叩く音に驚いたのつかの間、カルディアの大きな胸が付きつけられた。次の瞬間には胸倉を掴み上げて怒鳴りつける。


「テメー!!!仲間を信じろだ?!なんだ偉そうなこと抜かしておいて!!テメーが一番信用してないじゃねーか!!どういうこったこの野郎!!!テメー!!それでも男か!?〇んこついてんだろ??」

「んだとこの男女おとこおんな!!テメーこそ!文句言うためだけに俺らのあと追ってきたのか!?アーモロトはどうする!?アーモロトも安全じゃないんだぞ!!」

「うるせーー!!んなもんテメーをぶっ飛ばしてから決めるわ!!」


「やめろって!カルディア!!こんなことで揉めている場合じゃないのはお前が一番わかっているだろ!?」


「だまってろ!ksチビ!!大体なぁ!俺はお前についてきてくれなんて頼んだ覚えはないぞ!?」

「こうなることがわかっていたから、ついてきて正解だったんだよ!!やめろよ!!」

「俺は…信じていたんだぞ…それを…!!クソがぁぁぁぁあああああ!!!」


「はーい!そこまでだよ。カルディア。」

「!!」


そこには手をパンパンと叩きながら、歩み寄ってくるファウストがいた。


「お前までこのバカマスタ-の肩を持つのか!?」

「そうだね。結果だけを見れば、カルディアの言い分はわからなくもない。だが、僕も作戦に参加した身としては全員がベストを尽くしたし、カルディアを温存しておくのは、まぁ間違った判断をしていないでもない。」

「はっきりしねー言い分だな。テメーは!!」

「いや、ハッキリいうのであれば、今回はマスターの独りよがりの作戦だ。それを十分わかっていての慣行、それを失敗したからといって同意していた以上、文句をいうのは筋違いだろ?っていいたいのさ。」

「くっ…。」

「何度もいうが、信頼を裏切ったというのは表現がよくないな。おそらくセイメイさんは、切り込み隊長の君がでれば、先手のカードを敵に見せる事になる。それではロームレス防衛戦で貴重なカードをわざわざ手の内を見せる事はないだろうということだよ。」

「それはファウスト!お前もアイオリアも同じだろうが!!」

「違うね。それは()2()でない以上、僕らが動くのは当然のことだ。」

「№2だと…??」

「我がオケアノスの№2はソロモンさんだ。苦楽を共にした仲間が待ってくれている。そこに持ち帰る結果が失敗となると、彼に申し訳ないだろうし、何よりも我儘をいって強行したわけだから、それを誰よりも辛い立場においている彼が負う責務であるのは、力任せの君でもわかるはずだ。」

「この野郎…。てめーもバカにすんのか?」

「まぁそれは別の話だからあとで聞くとして、今はマスターを責める役は君じゃないということだけはハッキリと言える。その文句が言えるのは留守預かるソロモンさんの役回りだよ?」


ファウストがカルディアを正論で抑え込んでしまった。

ピピンもふぅーと胸を撫でおろした。


「おいおいおい、ファウスト!お前はいつから俺を分析するアナリストにジョブチェンジしたんだ?」

「マスター、あなたがボクに見透かされているのが気に入らないのであれば、どうぞ解雇して頂いて結構です。しかし、それは今じゃない。ここで空中分解をしたいのであれば、どうぞお好きに。あなたはこんなところで、そこにいる奴と同様に感情的に行動して、自分を偽って僕らをガッカリさせないでいただきたい。」

「てんめー…。」

「カルディア抑えて…!!」

「カルディア、いつでもボクは君と戦ってもいいんだぞ?振り回されていた昔の仲間の件もあるしな。」

「あぁん?あんなタマナシ根性なしのヤツの事を根に持っているのか?」

「そうじゃない。君はそうやってギルド内の雰囲気を壊す事にかけて天才的だといっているんだよ。」

「コーイーツー!!」

「表にでろや!!クソ魔導士が!!」

「いいだろう!君を一度屈服させてやりたかったもんでな!!」


「ちゃちゃらちゃら~ちゃ~らちゃ~♪ここにきて真打登場~!」


陽気な鼻歌に一斉に振り向くとキラキラとした鎧が一見場違いにも思える輝きを放ちながらアイオリアが立っていた。そして、コツコツと靴音を鳴らして寄ってくる。


「Hey guys!do wanna be disturb to my dream??han?」

「日本語でいえ!アイオリア!」

「俺の夢をぶち壊すなのかって聞いてんだよ!この低脳共が!!」


「ったく…なんでぶちぎれてるのが伝染すんだよ…。」


ピピンがそういうと、セイメイの腹をツンツンとつつくと話しかけた。


「おい、マスター。アンタが冷静にならんと収まるもんも収まらんぞ?」

「ったく…。お前の言う通りなのが、むかつくが実際そうだから仕方ない…。」

「あとで、耳を触らせてやるから場を納めてくれ。」

「え?いいの?誰にも触らせていなかったのに??」

「しかたあるまい。このピピン様の出血大サービスだ////」


ピピンは少し顔を赤らめながらいった。


「いぇ?意味わかんないけど、それで手打ちにするか…。」


変な取引をすることに同意したセイメイは一呼吸をおいて頭をかきながら口を開いた。


「カルディア、俺が悪かったよ。みんなとりあえず俺の言葉を聞いてくれ。」

「では、拝聴致しましょう。」


待ってましたと言わんばかりの表情をアイオリアはした。


「カルディアをおいていったのは時間もあわなかったしユーグの面倒をみてくれたこともあり、連続して重要な役回りをさせるのは酷だなと思って配置しなかった。置いていくつもりは毛頭ない。

また、今回の事でベストを尽くしたことに感謝している。まぁ俺を分析することでコミュニケーションを円滑するのは構わないが、本人目の前にしていうタイミングは最悪なタイミングだったという事だけは言っておく。それと、そこのピッカピカの一年生は、あえて力でねじ伏せようという事は俺がもっとも嫌いなやり方だってわかっててやっているのが手に取る様にわかった。そんなことしなくても、俺は動くよ。」


「ピカピカの一年生って…www」


「ぷっははははは!!アイオリアをそんなコケおろすのが出来るのはアンタしかできねーワザだわ。」

「私はセイメイ様に何を言われても凹みはしません!」

「んじゃあ、クビ。」

「それは聞けないお願いであります!!」

「何を言われてもっていったじゃんか!」

「それは…」


「おうおう、すごいメンツの集まりだな。セイメイ殿!」

「いえ、身内の争いを他人の敷地で争うなんて醜態を晒してしまっていたので…。」

「そうなんですか?私は見ていませんよ。遅刻も悪いものじゃないですね?w」

「そういって頂けると幸いです。」

「場が和んでいるのであれば、このまま占領戦の話をしましょうか。()()もいらっしゃるのですからね♪」


昼下がりの熱い日差しが窓辺に差し込んでいた。

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