第112話「接触」
稲光がユーグの腹部を貫く。
―――クソッ!!こんなところで…!!
腹部を抉る様に黄竺の聖騎士がユーグを強襲した。
ユーグは膝から落ち、気絶&硬直CCがユーグの身体を駆け巡る!!
「ユーグゥゥゥッッッ!!!」
セイメイの叫びが更に森をザワつかせる。
「手こずらせやがって!!死ねぇぇぇぇいッッッ!!!!」
振り上げた剣は稲妻がほとばしる!
―――動け!動け!動け!俺の…!!膝ぁぁぁぁああああ!!!俺は…!まだ!!!こんなんじゃマスターと肩を並べることなんか出来ないんだぁぁぁぁ!!!!!!
「これで終いだぁぁぁぁああああ!!!」
神技:雷鳴剣!!!
今にも振り下ろそうした瞬間、紅蓮の炎が森を紅く染める。
「そう、うまくいかないんだなぁ!!これがぁぁああ!!!!!」
ドラゴンフレイムッッ!!!!!
黄竺の聖騎士の背中を蹴り倒す
そして、白金の鎧がユーグの目の前に聳え立つ。
「HEY!You were a good boy!!haha!!」(訳:よう、いい子にしてたね!ハハ!)
ユーグを見下ろしながらニヤリと笑う。
黄竺の聖騎士は、すぐに起き上がり激昂する。
「なんだ…!てめぇは!!」
「あぁん?貴様に名乗る名など、持ち合わせていないんでなぁ。」
「んじゃあ!!!てめーからしねぇやぁぁぁあああ!!!!!」
「雑魚のセリフを吐いた時点でお前の負けなんだよ!!」
雷鳴衝撃!!
横一線に輝く閃光を交わすと、アイオリアは腰を落とす。
「なん、だと!?」
「Let's go beddy-bye!」(訳:おねんねしようね!)
拳が黄金に煌めく。一瞬、時が止まったように戦場全体が凍り付いた。
ライトニングバースト!!
盾をすかさず構えたが、アイオリアはお構いなしに打ち抜く
Guard break!!!
「馬鹿め!!貴様のオーラアタックはこれで無効化だぜ!!聖騎士様を舐めるなよ!!」
「なめちゃいねーさ!!」
左手を添えて二段階目に入り、エネルギー波を更に打ち抜く!
「kiss my ass!!」(訳:くたばれ!!)
ガードブレイクした胸元に二段目のエネルギー波が突き刺さる!
ドゴォン!!
黄竺の聖騎士は吹っ飛び、近くの木に叩きつけられ戦闘不能になっていた。それをみた周りの黄竺メンバーは、怯え声を出しながら逃げ惑っていた。
その場に遅れてセイメイが到着すると、全てが終わっていた。
「おおう、アイオリアか。助かったぞ。」
「我が陛下の思うがままに。」
「フン、やっと役に立ったな。問題児が。」
「ええ??」
「そりゃそうだろ?今まで活躍した場面あったか??」
と、セイメイはユーグへ顔を向くと、ユーグはうーんと思い返しながら頭の中にクエスションマークがいっぱい浮かんだ。
「ヘイボーイ!頼むぜ!!四聖剣だろぅ??」
「だから、俺、闇なんだけど…。」
「What a party pooper!」
「え?あ、わっ?…ぱーりー…ピーポー?」
「ちげーよ!!のりわりぃー!って言ってんだ!!」
アイオリアは、ユーグに向かって両手を開いてボディーランゲージで表現していた。
「うん。我がギルメンは致命的に英語力がない!!これだけはわかった!!」
セイメイは自信をもって頷いた。
セイメイが頷いていると、息を切らしながらスカルドがようやく合流する。
「はぁ…はぁ…。そこの体力馬鹿のせいで…。走らされて…、最悪ですわ…。」
「遅いぞ!エロフ!身軽な格好しているにも関わらず、なんだその持久力の無さは!情けない!!ただ、エロいだけのエロメスが!!」
「はぁ??エロでメスって…!!ムッカ!!あんたみたいなネジが二、三本ぶっ飛んでるバカに言われたくないわ!!このファッキンクレイジー!!」
「はぁ~~?やんのか??このメス豚クソビッチが!!」
二人がもめ合っているところに重要な場面に出くわす。
黄竺のギルメンらが援軍を呼んでいたのだった。
そこには死に戻りした聖騎士と、ファウストと交戦した格闘家がいた。
セイメイは全体を見渡すとふーとため息混じりにいった。
「全面降伏にしちゃあ、人が足らねーな。オイ!」
「おめーがセイメイだな!!!占領戦前にしかけてきやがって!!てめーの進行可能エリアじゃねーのにちょっかい出してくんな!」
「ちっ!ガタガタうるせぇぞ!!俺はお前らのような三下と話す舌は持ち合わせてねーんだ!上を出せ!雑魚共!!」
「この野郎~~!!ぶっ殺したるわぁ!!!」
黄竺のギルメンらが一気に攻めかかろうとした時に、後ろから飛んでもない魔法砲が飛んできた。
雷風が巨大なビームのように飛んできた。
稲妻の嵐
―――この魔法を横に放てるのは…!あいつしかいないッ!
「おい!あんた!!仲間ごと打ったら意味ねーだろうが!」
黄竺のギルメンが後ろからくる魔法使いに文句を言っていた。
魔法使いは、紛れも無くあのルカであった。そのルカをみるなり、セイメイは声をあげた。
「ルカ!!」
「消え去れ。下郎。」
セイメイの声を無視するかのように杖を前に出すと、空が黒く染る。
「お、おい!まじかよ!?」
「みんな!!!俺の後ろに隠れて!!まともに喰らうとあの世ゆきだ!!」
「なんですって?」
ユーグはみんなに声をかけ、近くにある比較的に幹の太い木に誘導し、レーヴァテインを防御体勢で構える。
「こんな防御があるか!!サイドがガラ空きじゃあないか!!」
「いいから!!くるぞ!!」
アイオリアが声を上げるが、セイメイがその声を遮る。
ルカは木に隠れたユーグの方向へ杖を傾け魔法を唱えた。
燃盛厄災世界の終焉!!!!
辺りは一瞬で明るくなり、真っ白になった。
次の瞬間、轟音と暴風と雷鳴のけたたましい爆音がセイメイ一行を包む。
黄竺の聖騎士が近づいて、攻撃を仕掛けてきた。
「木の裏でビクビクしやがって!!死ねy…。」
次の瞬間、黄竺のギルメン達は光に包まれて消えてしまった。
辺りはまだ眩い光の中で嵐や暴風域の激しいエリアにいるような突風が続いていた。
「な、なんだ!!この威力は!!??」
「前に一度だけみたことあるんです。この魔法はたしか禁忌の魔法です。ファウストさんが、長時間かけて詠唱していた大魔法です!!あの魔法のおかげで、自分は暗黒騎士のクエストを完了でしたようなモンです!!」
「アイツ…ルカは即出しだぞ??」
「そんな馬鹿な!!」
「なんなんですか?あの子!?」
「ああ、アイツはちと、変わってるんだよ。」
「変わってるですって?どう見てもプレイヤーという次元を超えていますわ!」
「あれが…AIの力か…。」
風が止むと、黄竺のギルメンはいなくなっていた。
代わりにルカだけが佇んでいた。
木の陰から身を出し、ルカに近づく。
「マスター!危険だ!危ない!!」
「セイメイ様!!」
2人の言葉に耳を傾けることなくセイメイはルカの前に出る。
「おい、ルカ!俺だ!!セイメイだ!!!わからんのか!!?」
「セイメイ…?」
「ああ!そうだ!アイブラハーン地方でソロモンの指輪探しを一緒にしたじゃないか!!思い出せないのか?」
「知らない…記憶にない…。」
「お前に何度も助けられた!そして、仲間という概念を教えたのは俺だ!!そして…お前の…最初の友達だ!!」
「トモ…ダチ??」
ルカは改めて聞きなれない言葉にきょとんとしている。
セイメイは今だと思い、前に預かった宝玉を取り出そうとすると、あの魔女が現れた。
「無駄よ。この子は私のモノ。あなたの声なんて耳を貸すと思って??」
「黙れ!妲己ッッ!!俺はルカと話をしているんだ!!」
「はいそうですかと黙る方がいらっしゃるのなら、人間社会ではうまくいくんですの?オホホホホホ!!!!」
妲己はセイメイを見下すように高らかに笑っていた。
「・・さねぇ…。」
「はい?独り言にしては小さすぎて聞こえないわ~ん?もっとも、負け犬の遠吠えであれば大きな声でお願いしたいですねぇ?それでも、この子には聞こえないですわよ?フフフ…。」
「許さねーって言ってんだよ!ポンコツ野郎!!!」
にやけていた顔が一気に豹変する。
「ククク…!!たかが人間風情が思い上がるのも大概にしろ!!愚か者めがッッ!!」
手にしていた扇子をセイメイに投げると、扇子は骨組みがバラけてセイメイを襲う。
シュパパパパーン
セイメイは扇子の骨組みをなんとか躱した。
「フン!所詮は人間。やれる事なんて限られている。抗うのであれば戦場で受けようぞ?」
手をセイメイの方にかざす。そして、ビームのようなものを打ってくると、足元に打ち、線を引くように打ち込んでいた。
「この線を超えたらなんかあるのか?」
セイメイは不敵な笑みを浮かべると、妲己は蔑むように微笑む。
「今のお前に何も出来やしない。超えたところで何も救えない。ただ、この子のアカウントを削除するだけさっ!」
「コイツ…!」
―――コノヤロー、俺に脅しをかけやがって!!
ルカは相変わらず死んだ魚の目をしている。
「フフフ…では、引かせてもらうわ。あなた達、次に戦場でお会いしたら…次は容赦なくいきますからね。では、ごきげんよう!あははははーーー!!!」
妲己はルカを連れてこの場を去ろうとしていた。
ファイヤーボール!!
エレメンタル魔法 極:天変地異
「なにぃ?」
振り向いた身体をこちらに戻すと、カラミティの魔法が妲己達を襲う。
「小癪なマネを!!」
胸元から新たに扇子を出すと、初弾のファイヤーボールを跳ね返した。妲己はセイメイ達を見たが、魔法職がいるわけではない。気配を感じ取った方へ目を向けると、そこにはファウスト達の姿があった。
「地響きによる地割れ、天よりの落雷、そして燃え盛る炎!極めつけの怒り狂う親父が入れば、諺の通りなんだけどね。」
「アンタ、いつまでグラニの背中で語ってんだよ!」
「フッ…。手負いの魔導士が上位魔法を打って駆けつけた胸アツなシーンを君は無駄にするのかい?」
「だって、おんぶされてカッコつけるってどんな感じ??ねー!!!」
マノがすかさずツッコミを入れていた。
「そんなことより、目的のアレ!!」
ホルスがルカを指さして叫んだ。
「ふむ。どうやら、陽動作戦は継続のようだね。なんとか城内での雪辱を晴らすことが出来そうだ。」
グラニの背中から降りると魔法の詠唱を開始していた。
「揃いも揃って奪還作戦という事かい?あはははは!」
「何が可笑しい!!」
「これを笑わずにいられない方が理解に苦しむ!とはいえ、形勢が不利だ。早々に引かせてもらうわよ。」
「そうはいくか!!」
暗黒物質!!
ユーグは妲己めがけて打ち放ったが、当たる事なく通り過ぎてしまった。妲己は異次元空間を開き、そこに入り消えていたのだった。
セイメイは膝から落ち、絶望にうち打ちひしがれる。
「クソがぁぁ!!!」
ドン!!
「クソが!クソが!クソが!…クソッタレがぁぁぁぁ!!!」
為す術もなく、徒労に終わった事をわからされたセイメイは地面を何度も殴っていた。
「マスター、次回の占領戦まで待ちましょう。」
見かねたユーグは地面を殴っていたセイメイの腕を掴んで、悔しさで落ち込むセイメイを立たせた。すると、ファウストは近寄って話しかけた。
「セイメイさん、こういう結果は見えていたはず。割り切るしかありません。今回は皆、ベストは尽くしたはずです。」
「わかってるよぉ…そんなこたぁ…。自分の力のなさに、ムカついてムカついてしょうがないんだよッ!!」
「セイメイ様…。」
「…帰るぞ。ここにいてもしょうがない。」
セイメイは刀をしまうと、馬の止めてある方向へ戻る為に歩き始めた。
「マノ、警戒を。スキルか何かで索敵をしてほしい。グラニは先頭を歩いてくれ。殿はマノとボクが歩こう。」
手早く指示を出したファウストは、アイオリアと目を合わせると軽く頷き他のメンバーを誘導し、歩き始めた。
静けさを取り戻した森は何事も無かったように風に身を任せていた。





