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第108話「侵入」

  マノは城門に近づく。


 通常のプレイヤーはギルドに所属し、街を通行する手形を買い、街を行き来するのだがとりわけ買わないプレイヤーははじかれる仕組みだ。スムーズに入れば問題ないのだが、つっかかると一時的にフリーズがかかる。

 状態異常の硬直CCが入る。ダメージは入らない。しかし、NPCの衛兵がプレイヤー視点ではCPUに変わりENEMY(敵)表示に切り替わる。そうなると、第一章で起きたアイオリアのような状態に陥り、犯罪者・お尋ね者になってしまう。


 そのすり抜けができるのはアサシンや忍び、いわゆる暗殺職はこれをクリアすることが間接的に出来るのである。


 マノはアサシンという上級職ではあるが、くノ一上がりの一般上級者というランクぐらいに当たる。

 弱くもないし、強くもない。そんな彼女だが本格的な潜入調査はこれが初の()()となる。マノはドキドキしながら、スキルで体を消す。


 ―――んもぅッッ!!なんで私がこんな事しなきゃいけないのよぉ!!うまくいったら、報酬ふんだくってやるんだからねッッ!!


 マノは文句を言いながら、城門横に着いた。


 ―――門番は?あそこか…。ここまできたらやるしかない!


 胸の高鳴りを押し殺すように息を止めて一気に門をくぐる。難なく中に入り後ろを振り向くと、門番のNPCは動くことなくただ立っているだけであった。


 あっけにとられたマノは、YES!!とB級映画に出てきそうな喜び方をしたが、ふと我に返り急いで目的の城壁の塀へと向かった。


 ―――簡単に侵入出来たけど、罠じゃないわよね?!一人じゃ心細いなぁ…。早くあの三人と合流させよう!


 マノは急いで、城壁を登る階段を探すのであった。




 ~ローレムス城・大通り~


 セイメイ達はベルスに別れを告げると東の森へと歩を進める事にし、厩舎に向かった。


「マスター、このままいくのか?」

「そうだ。といいたいところだが、お前と俺がいたら敵も身構えてしまうだろ?もう少し危険を冒そうかと思っている。」

「な!!??ダメです!いくらおちゃらけキャラの私でも異を唱えます。」

「おうおうwツッコミどころ満載なセリフ吐いてて、突っ込まずはいられない俺がいるんだが…。それはおいとこうw話を戻すと、俺が先行する。それに伴ってお前さんとスカルドのバックアップをお願いしたい。」

「セイメイ様!この件に関しては私も反対です。ここの通常時のMOBは、セイメイ様でも数が増えていくと対処できません。了承しかねます。」

「そうやって心配してくれるお前らがいるから俺は前に出れる。後ろで指揮するのも悪くはないが、たまには先頭切らせてくれよな?」

「せめてこの私がッッ!!」

「だーれが一人でいくって?」

「では誰が?」


「そこにいるだろ?無名の剣士がよぉ??」


 セイメイの目線の先にいたのはユーグだった。


「え?俺?」


「そうだ。無駄にクラスアップしたわけではなかろうよ?さぁこい。」


 厩舎につくと自分の馬に跨り、手を出している。


()()()でいくんですか?」

「ああ、そうだ。森の手前に馬を置いていくけどな。」

「あ、はい。わかりました!」


 ユーグは言われるがまま、馬の後ろに乗る。


「おまえら二人は後からこい。どうせ、ついて来れんのだろうからな。」


 というと、馬を走らせて城門前の坂を下り走り抜けていった。


「ちょ!セイメイ様!!」

「我々も行くぞ!エロフ!!」

「エロフ…?エロくないです!!こんの厨2病患者がッッッ!!」

「なんとでもいえ。先にいくぞ!」


 アイオリアは自分の馬を出すとセイメイの後を追った。


 ~東の森~


 英霊が眠る森、入口はさほどではあるが、奥に進めば進むほど空を覆いつくさんとする樹木が、セイメイ達を暗闇に誘うように、光を遮って進むのを躊躇わせるようだった。


 セイメイは常に左手を帯刀に手を当てており、常に刀を抜けるようにしていた。


「マスター、警戒した方がいいですよ?」


 ユーグは、暗黒騎士の代名詞となっているレーヴァティンを肩に担いで廻りを見渡している。


「警戒?んなもんするだけ無駄さ。一歩一歩…歩くたびに抜けるようにしているから今更警戒も何もねーよ。」

「それ…警戒しているというんですよ…!」

「ん?じゃあそれだ。先にやってて悪かったな。」

「いえいえ!そうじゃなくて…まぁ心配するだけ損でした。」

「フン、まあなんかあったら背中は頼んだぞ?」

「え、あ、はい!」


 二人は、先の見えぬ道を歩き続けた。すると目の前にぼーっと浮かび上がる魔導士がいた。


「ま、ま、ま、マ、マスター!で、でた!!」

「お前が俺よりビビッてどうすんだよ!?おらぁいくぞ!!」


 抜刀して駆け寄り、刀を振り抜くと空を斬った。


「やっぱダメか…。」


 チンッと刀を鞘に戻すと青龍偃月刀を出した。


「やっぱ、コイツ頼みってのもなんだかな!!」


 刃を構え、大車輪を放つと亡霊は消えてしまった。


「やはりな。」


 そういうとユーグに話しかける。


「おい、ユーグ!!こいつ属性攻撃なら入るぞ?」

「そうなんですか?」

「ああ、今のみたろ?大車輪は炎を纏った攻撃だ。これが当たれば倒せるんだが、手応えがねー。追い払う感じでやってみろ!自動的にシルバーが入金している。」

「まじっすか?」

「ああ、まだ初心者だった頃は、ここを迂回してメディオラムに入ったのだが、今はここのエリアを攻略できそうだ。」

「たしかに…。ここはきたことがないですからね。」

「ああ、そうだろうな。ていうか、見てみろ。わしゃわしゃと湧いてきやがった!」

「うはぁ…。めっちゃ湧いてきているじゃないですか!!」


 周りを見渡すと亡霊・骸骨騎士などが地中からや木の枝などから、わさわさと二人を囲むように現れた。


「早速で悪いんだが、背中を預けるぞ?やばくなったら声をあげろよ?」

「子供扱いしないでください。属性攻撃ならマスターより、俺の方が一枚上手うわてですよ?」

「ほほうw頼もしい事いってくれるじゃないの!」


 そういい終わると、二人は手短なMOBを倒し始めた。


 二人の攻撃は一振りで倒せるほどの攻撃力を有すことになってはいるが、たまに瀕死で生き残っているMOBも数多く残る。しかし、取り分け大事に至るわけではなく、範囲内に巻き込んでなぎ倒すという手法を取り、討伐という処理に追われていた。

 一刻ほどの時間を戦いに費やしていると、巡回している黄竺の連中に戦っている姿を見られてしまう。


「あ!マスター!あ、あ、あいつら!!いますよ!?」


 ユーグは骸骨騎士と鍔迫り合いをしながら、視界に入った黄竺のギルメンを数名見つけてセイメイに告げると、セイメイは骸骨騎士や亡霊をなぎ倒しながら、不敵にニヤリと笑っていた。


「…ああ、ここからどれぐらい釣れるか楽しみだな…。」


 黄竺の連中はというと、額のこめかみをトンと叩き、こちらを凝視しながら観察をしていた。


 ※こめかみを叩く行為は、ギルド回線・一般回線などのいくつかの回線に接続している。また、距離も限られており、特に個人同士のもの以外は範囲通信が出来ず、一定の範囲でのやりとりのみとなっている。


「あいつらをPKしますか?」

 ユーグはバイザーを瞬時に降ろす。目を見られると行動を読まれる可能性が高いため、ユーグはとっさの判断で隠した。


「おまえ、そんな余裕あるんか?」

「まぁ、これくらいなら余裕の一つや二つ出来ますよ!一応、暗黒騎士ですからね。」

「まーったく、強くなると過信したくなるのはわかるんだけど…、まぁいい。距離は…詰めれるのか?」

「ええ、その代わりといっちゃあれですけど、マスターの背中はガラ空きになりますけどね。」

「んじゃいってこい。これくらいなら…!オラァ!!俺一人で今までやっていた狩りとあんま変わりはない。いってこい!!」

「いきます!!」


 セイメイは骸骨騎士を蹴り飛ばしながらユーグはMOB達を一瞬で倒すと、

 黒い霧を使い、一気に駆け寄り黄竺のギルメンにPKを仕掛けことにした。


 ヴォン!!!


 効果音と共にユーグのレーヴァティンは黄竺のギルメンの一人を致命傷にまで追い込んでいた。


「簡単にPKするわけには、いかねーんだよ。」

 倒れ込んだ相手の顔面を掴み、手には暗黒のオーラは灯されていた。


「悪いが、これも任務なんでな。俺の血肉となれッッィィ!!」


 ドレイン・吸収オブ・ザ・ダイ!!!!


 こめかみから吸収されたエナジーは文字通りユーグの魔力とHPへ転換され吸収していった。

 その場に倒れる黄竺のプレイヤーを見ると、仲間のプレイヤー達は一斉に攻撃をする。

 斬りかかったり、魔法を打ってきているが、暗黒騎士のユーグはひらりひらりと攻撃を躱して一人、また一人と倒していった。


「俺はオケアノス!暗黒騎士のユーグだ!!いつでもかかってきやがれ!!!」


 セイメイはMOB狩りをしながら、顔を赤らめていた。


「…おいおい…恥ずかしいからそういうのやめてくれよぉ…。」


 ボソッといいながら恥ずかしさを殺す様にMOBと戦っていた。


 ―――――――――――――――――――――――


 後方からセイメイ達に追いつくべく、アイオリアとスカルドが先を急いでいた。


 アイオリアが走る足を止める。スカルドがヒィヒィいいながら、アイオリアに必死に食い下がるようにおいかけていた。


「ちょっと…アンタ!!私は…レディー…なのよ?少しは…ハァハァ…気を使ってくれても…はぁはぁ…いいのではなくて?」

「フン、俺は男女なんて括りなぞ関係ない。私かセイメイ様か、妹かそれ以外か!ただそれだけなのだッッ!!」

「馬鹿なの?バカだよね?なんでそんな自信もって自論を展開できるわけ?!」

「自論?違うなこれは既に世の理が導き出した答えなのだッッ!!」

「あら、そう…。アンタとこの会話…やめるわ。」

「シッー!!静かに!」

「今度は何よ?私に黙れとでもいいたいんですの??」


 アイオリアがスカルドの口を塞ぐと、風のざわめきを聞き入っていた。


「先を急ぐぞ!エロフ!!四聖剣が…咆哮しているッッ!!」

「はぁ???ていうか、エロフ!エロフ!いうな!!!」

「んじゃあ、その露出を抑えるんだな。」

「これはデザインなんですぅ!あんたもそうでしょ?キラキラしちゃってさ!って!聞いてるの??」


 さっさと先に進んでしまっているアイオリアは遠くにいた。


「あんたァ!!自分の話をしたら満足なの?!」


「そんな無駄話をしている暇ない!!先にいくぞ!!」

「くぅ…。絶対あんたと旅なんか…!ぜぇったい出てやるかぁ!!!」


 渋々、アイオリアの背中を追いかける様にスカルドは走り始めた。


 樹木が覆う暗闇の道は、銀色の輝く光に導かれるように奥へ奥へと進んでいった。


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