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第105話「星空ラプソディ」

~アーモロト・城門~


 セイメイとクリスが一緒に歩いて向かう。馬小屋に向かい、馬を引くと「それじゃ向かうぞ?」と一言だけいうと、コクリと頷き歩き始めた。その間に交わした言葉は一言もない。ただ、コツコツと足音だけがなり、セイメイが歩調を合わせて歩く程度だった。


門の前にはスカルドとユーグ、そしてアイオリアがいた。


「我が妹よ!!兄の見送りとは感激するぞッッ!!」

「いえ、今回はセイメイさんの見送りです。あしからず。」

「おいおい、クリスさんwいくらなんでも、兄妹きょうだいなんだからさ、そんなギシギシしなくてもwwww」

「そうですわよ!?もしかして、私がそばにいるのがご不満??」


スカルドは狡猾にもほどがあるが、クリスは意外な言葉を発した。


「いえ、スカルドさん。マスターをよろしくお願いします。」

「…え?」

「兄さん、マスターは熱くなる節が兄さんと同じくらいあります。ですので、くれぐれも兄さんが熱くならないようにお願いします。」

「なんだなんだ??どうしたんだ??」


ユーグは戸惑っていた。ふとセイメイを見ると我関せずのような涼しい顔をして、馬に跨り始めた。


「クリス、ソロモン達にはよろしくいってくれ。」

「わかりました。くれぐれも御身を大事にしてください。」


セイメイは軽く頷くと馬を足でたたき、3人を置いていってしまった。

慌てて三人は馬に跨ると、先をいくセイメイを追いかけて馬脚を早めるのであった。


―――セイメイさん、どうかご無事で。一緒に、焼肉食べましょうね。




――――――――――――――――――――――


~関所町パスガ~


セイメイ達はコンスタンを越えて、一気にパスガまで飛ばしてきた。

夜道にはモンスターがうようよしているのだが、馬の早さには追い付けない。また、道端にいようものなら、踏みつけて倒していく。

セイメイの手綱のクセを知っているユーグは辛うじてセイメイに追いつく。


「ちょwwマスター!!飛ばしすぎです。」

「ん??そうか?」

「気持ちはわかりますけど、ここは一つ、足並みならぬ、()()()を揃えてください。」

「ああ、そうだな。」


遅れて二人が合流する。


馬を休ませるようにメディオラムの方角へ向けて歩き出させる。


「マスター。やる気満々ですな!いいですぞ!」

「なんて早い馬なの?」


スカルドの馬は少し息を上げていた。


「ああ…そうか。俺の馬は黒馬だ。通常の馬とは違うんだわ。」

「でしょうね。こちらの馬がヒイヒイ言っていますからね。」

「白馬・黒馬・赤馬の御三家の一角ですからね。早いのは当然だ。さすが、我が主!」

「馬はたまたまだ。セリ市でキズモノだったのを俺が買い上げたにすぎん。」

「キズモノ?」

「ああ、コイツは凶馬らしい。」

「え?」

「なんでも、こいつの額に傷がある。ほら、ここだ。どうも元持ち主はそれを嫌っていた。そこで、俺が買い叩いたという馬だ。」

「そんだけで?」

「生活コンテンツ重視のやつらは、少しでもきれいな馬に跨っていたいんだろ?俺はそんなことより、機能を重視する。足が速い以外興味がない。」

「たしかに…馬は足が速い方がいいですからね。」

「ユーグも暗黒騎士になったんだから、黒馬はほしいんじゃないのか?」

「ああ、たしかにほしいですね。でもお高いんでしょ?」

「まぁ、相場より安めで買わしてもらったからそこまでじゃないぞ?今回のロームレス防衛が叶えば、買えるんじゃないか?」

「買い物リストにメモしとこ…。」


ユーグはこっそりとシステムを開き、ペンを走らせていた。


「それより、あるじよ。ファウストとの連絡は取れておるのか?」

「いや、まだだ。彼らはロームレスに寄らずに、周辺を迂回して山をこえていくそうだ。」

「え?あそこのルートを取ったのですか?」

「ふむ。ファウストの考え方にしては、ものすごいルートだな。山越えか…。」

「主よ、ファウストは保守・穏健派ではないぞ?」

「ん?どういうことだ?」

「彼ほどの奇想天外な考え方ができるからこそ、安定を重要視するのだよ。」

「んん??」

「奇策を好むほど、凡策を愛するのだといえばよいか?」

「ほほう。普段なら、アンパイを俺に献策するのにはそういった裏があるのだな?」

「ご明察。彼が奇策を取るという事は森が一番危ないと踏んでいるのであろう。」

「ふむ。では罠は森に潜んでいると?」

「そういうことですな!なはははwww」


アイオリアが高らかに笑っていた。


「セイメイ様、すると我々はその罠にまんまとかかるのではないでしょうか?」

「ああ、そうだな。」

「そうだなって…!!危険です!!」

「危険だからこんだけ身を固めたPTで望んでいるんだろ?ファウストはそれを先に見抜いていたということになる。」

「あ、わかった!!マスター!俺ら、囮だわwwww」

「お、ユーグ。ファウストと旅をして何か掴んだんじゃないのか?」

「これは仮説なのですが、言ってもいいですか?」

「お、ここらでお前の成長を見させてもらおうかな?w」


セイメイはニヤニヤしながら、ユーグの仮説を聞くことにした。


「おそらく、ファウストさんは黄竺に入る際に、マスターが東の森で発見されることを踏んでいます。

というのは、そのルートをマスターにやってほしいんですよ。

 なぜなら、マスターを発見すれば、討伐しようと城の中のギルメン達は我先にと向かうでしょう。その間、警備が薄くなりその隙をついて侵入、現地の中堅ギルドたちのプレイヤーに紛れて、黄竺の敷地内に潜伏・調査という行動になる。

 そこで調査活動を迅速に行い、可能な限り情報を集めたら、出国、挟み撃ちをしマスターの陣営に帰還する。その後、我々はロームレスの城へ戻り、情報をマスターに渡すといった算段ではないでしょうか?」



挿絵(By みてみん)


「流石、四聖剣のユーグ!感服致した!!」

「だから、四“聖”剣じゃないでしょw」

「いい読みだな。しかし、後半の合流はちと難しいぞ?」

「え?なんでですか?」

「もしも、敵が反転し攻撃を受ければ、全滅は免れないよな?」

「はい。」

「そんな危険を彼が冒すとは思えない。一部修正を加えるのであれば、森を迂回し南側に廻り、俺らと対峙している敵を横から攻撃、もしくは合流を図るだろうね。」

「なるほど!!」

「まぁこれも仮説だから実際に対峙してみないとわからないのが戦場だね。」

「そこまで読んでいるのですか?ギルドチャットやVCで確認とるのもありかもしれませんよ?」

「いや、いい。俺が変に聞くと彼らの行動を潜在的に制限をかけることになる。こういうときは任せる方がいい。」

「わかりました。念のため、城を出てロームレスに向かっている事のみDMで送信しときます。」

「ああ、すまない!頼むわ。」


すると、セイメイ達はパスガを出て一路、ロームレスへ向かうのであった。


――――――――――――――


 ~グレイアン山脈・雪原~



「くぅう!!この吹雪ッッ!!懐かしいね~!!」


ファウストは笑いながら山越えをしている。


「ファウストさんとはここで出会いましたからねッ!くそっ前がみえねー!!!」

ホルスはグラニ、マノに声をかけて一緒に旅することになっていた。


「なぁんであたしまで一緒に行かなきゃならないのよ!!」

「まぁいいじゃねーか!?恩人の頼みだ!手伝ってあげてもバチは当たらんぞ?」


吹雪の中、歩を進める一行はグレイアン山脈の南東にある黄竺を目指していた。



すると、スノーマン一行が目の前を立ち塞ぐ。


「だぁー!!もうこういうときに大勢で歓迎しにくんじゃあねーよ!!」


ホルスが叫ぶ


「マノ!!」


デッドリーポイズンフラッシュ!!


毒のダガーがスノーマン達に突き刺さる。


「残念だったな…!俺はもう騎士に上がったんだよ…。」


グランドスマッシュエクスプロードッッ!!!


地面に剣を叩きつけ相手の足を止め、さらに地面から爆砕効果が発生する。


数体のスノーマンが消えていく。


「ヒュー!つよくなっているんじゃないの?君達~!」


ファウストは驚きながらも、ファイヤーストームを唱えながら走っていた。


「いや、ファウストさんの方が倒すスピード早いんですけど??」

「ははは。君たちも僕と同じステータス上昇が施されている。まさか、僕より遅いなんてことないから、一気に殲滅してしまうか!?」


「っしゃあ!!んじゃ本気でいくぜ!??」


ホルスが左手と右手にオーラを貯める。




精霊よ。我に力を!



グランドオーバーフェニックス!!!


放ったオーラが地面を駆け抜けるように不死鳥に変化しスノーマンを焼き尽くした。


「焼き尽くすというよりは溶かしただな?w」


グラニはフンと笑いながら、ホルスに近づいた。


「いやいや、君達を侮っていたというと失礼だね。むしろ、君たちの成長が僕の作戦をさらに質のいいものにしてくれることを確信させてもらったよ。」


「そんなこというとてれますぜ?ダンナ!」

「ちげーね!!ぎゃははは!!」

「あたしは…そんなつもりないんだけど…。」

「なぁにいってんだよ!楽しく旅しようぜ!?暇なんだしよ!」


グラニが、マノの背中を叩いた。


「痛いじゃない!!」

「そうか?強くなっちゃったかもな?」

『ぎゃはははは!!!』

マノをしり目に二人は楽しそうに大笑いをしていた。

「ほんと、男ってバカなんだから…。」

「まぁマノさんが今回はキーパーソンだから、僕は大いに期待しているよ??」


ファウストはマノの肩を優しく触り、微笑みながら顔を覗き込んだ。

赤らめるマノは下を向いて、ファウストを突き飛ばした。


「参ったな~。女性は大切に扱っている方なんだがな~。」

「ファウストさん、女にふられてやんの!ダサッ!!」

「コラ、君達?女性は大切に扱うもんだよ?」

「はいはい!!んじゃ、そろそろ吹雪が止むタイミングでしょうから、先に行きますよ?()()??」


ファウストは、ふぅーとため息をつくとPT全体に凍傷ダメージのCCを無効化する魔法を唱える。


エナジーヒーティング!


「うお??少しずつ削られていたHPが減らない??」

「かけ忘れちゃった!」


と、いうとグラニはファウストとホルスを肩を組んで前に進んでいった。


山の吹雪は収まり、綺麗な月が、雪景色を照らしていた。

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