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第104話「夜空に輝く蕾」

 ソロモンはいがみ合っている二人の下へいく。


「嬢ちゃん達?その戦いを繰り広げていくのと、マスターを助けるのはどちらが優先かね?」

『決まってるじゃないですか!マスターを助けることです!』


 二人は声を揃えていった。


「息はピッタリじゃな。それじゃあ聞くが、今回の旅でマシな回復ができるのは誰じゃ?」

「私じゃないですよ…。スカルドさんです…。」


 クリスは俯きながら口を尖らせてスカルドを睨む。


「嬢ちゃん、自分だと言わないところが偉いぞ?その点、スカルドのクラスがハイエルフで精霊使い、おまけに経歴的にも実戦経験の豊富なスカルドに軍配が上がる。」


 スカルドは耳をピクピクさせると、こちらを見るなり満面の笑みで近寄ってくる。


「ねっねっ!!そうでしょう!!?ソロモンさぁん!わかっているじゃなぁい!!」


 と、いつも口調じゃないことに気づきつつも頭を悩ませた。


「嬢ちゃん、ワシとお留守番をしよう。」

「えええ??なんでですかぁ!!???」

()()というのは、戦場に行かず殿()の帰りを待つのが仕事なんじゃよ??」

「私は戦場でもセイメイさんの隣で護りたいんですっ!!!」


 それも一理ある。が、職の相性を考えるとヴァルキリーよりは、ハイエルフの独特の精霊魔法の方がバックアップ職としては適しているわけだから、それを再度、やんわりと説明する。


「フン!!まぁセイメイさんが、ハイエルフなんかにうつつ抜かすなんて思ってませんし!!お兄ちゃんもいるから大丈夫だと思いますっ!!!」


 色々と語弊と意味不明な回答だが、納得したようなのでほっと胸をなでおろすセイメイであった。


 ―――さすが、経営者。人を扱うのはお手の物か…。


 セイメイはスカルドにこれからの流れを伝える。


「スカルド、わかっていると思うが、今回はルカの調査だ。奪還はあまり考えていない。俺らも好戦的な職であるから、後ろから既にヤバイと思ったら下がる判断を下してくれ。俺らは戦いにいくわけではないのだからな。」


「わかりました。調査優先ですね。劣勢になりそうになったら、すぐに声をかけます。」

「おう頼んだぞ?」



 すると、先ほど部屋を出て行ったホルス・ファウスト組はアーモロトを発ったとの情報が入った。


「今回は俺らはロームレスに向かう。そこでの情報を待ちつつ、黄竺へいつでもいけるようにする。

 また、今回のロームレス防衛が叶った暁には、特別報酬をギルド資金より出す。選抜メンバーは傭兵扱いだ。今回は問題なく防衛できると踏んでいる。

 だが、油断はするな。相手は普通のやつじゃないと思って戦いに備えてくれ。今後の運営の情報を確認しつつ、各自戦略の準備をお願いしたい。以上だ。」


 流れミーティングになってしまっていたのだが、ギルド掲示板には同じ内容を記載し、セイメイは準備にかかった。


 ―――まぁ、ソロで行くことが出来なくなったが、まぁいいか…。


 セイメイは城内にある自分の部屋に戻り旅支度を整えるのであった。



 ―――――――――――――――――――



 ~アーモロト・セイメイの部屋~


 通常プレイヤーは、好みの町の部屋を借りることができる。セイメイはアーモロトに拠点を置いてある。

 城主や占領ギルドのメンバーは城の部屋とリンクができて元の部屋と行き来ができやすくなっている。


 セイメイは倉庫を見ながら、残りすくないエリクサーを計算し取引所に買い出しにいくなど、忙しなかった。

 一段落すると、ドアを叩く音が聞こえる。


 コンコン


「はい~?どなた~?」


「クリスです。」


 ドア越しにいたのは、クリスだった。


 ガチャ


「おお、どうした?なにかあったのか?」

「いえ、その…。入っても良いですか?」

「あ?ああ、特にハウジングをしているわけでもないが、どうぞ?」

「はい!失礼します。」


 セイメイの部屋には、駆け出しの頃に使用した刀が飾ってあったり、愛着の鎧などが飾られており、和風テイストの部屋のデザインで固められていた。


「適当にかけてくれ。おもしれーだろ?中世ヨーロッパの外壁の中は日本でした!なんてなw」

「いえ、なんだか落ち着きますね。」

「お、嬉しいことをいってくれるじゃんかw現実リアルで金持ってりゃ、こういう古風な家作りのお家に住みたいもんだなww」

「うらやましいな~。」

「なにいってんだよ。見慣れた部屋だろ?こんなの。」

「うちは、ロココ調だったりしたので結構、和風の家に憧れていましたね。」

「ああ…。そうか、クリスんちは外交官の父と、貿易商の母親の間に生まれたんだっけか?」

「ええ、そうです。よく覚えていますね。」

「雑談とかで色々話してプライベートの話をたまたまするときのことを思い出しただけだよw」

「そうですか。…あのセイメイさん?」

「ん?どうした?」


 クリスは俯いて黙ってしまった。


「あん?なんかあのアホに怒られたりしたんか?」

「いえ、そうじゃないんです。今回のルカちゃんのことで…。」

「ああ、あいつは俺が取り戻す。」

「それです。どうやってやるんですか?」

「それを聞きたかったのか?じゃあ教えてやるよ。」

「あいつの宝玉が俺の手元にあってな。これ自体なんの意味も無いアイテムなんだけどな。この宝玉は俺らの旅のデータが入っている。これをあいつに流し込んでやるんだ。」

「そんなことできるんですか??」

「できるような口ぶりをしたのはルカだぜ?俺はそれに賭けたいだけさ。だから、みんなを巻き込みたくなかったんだよwww」

「あ~そういうことだったんですね。」

「ああ、それとルカがAIなのは、一部の幹部にしか伝えていない。変に口走るなよ?w」


 セイメイはクリスににやっと笑い、唇に人差し指を当ててウィンクをしていた。


 クリスは顔を赤らめてまた俯いてしまった。


「せ、セイメイさんは…、ユーグ君の企画したオフ会に、い、いきますか??」


 ルカは勇気を振り絞って聞いた。


「ああ~あれはいくしかない流れだろw本当は、二人でしんみりラーメンでも食って、寒空を暖かくして帰って寝ようと思っていたんだがなwどうにもパーティーになっちまうんだもんな~。実質的に、忘年会みたいなもんだよなぁww」

「そ、そうですよね!わ、わたしもいこうかなぁ??」

「なんだ?てっきりくるもんだと思っていたんだが、都合が悪いのか??」

「いえいえ!!その…女性が少ないし、変な人いたら嫌だなぁって…。」

「おう。じゃあ俺と同じテーブルで焼肉焼こうぜ?好き嫌いはねーよな?」

「ああ、ホルモンだけは…。」

「ん?大丈夫だよ。俺もあれは苦手だwうまいんだろうけどなw」

「そ、そうですよね!!あはは…」

「まぁ、日取りも防衛戦後だし、決起集会みたいなもんだよ!?腹いっぱい食おうな?」

「はい!」

「よし!これを入れて…うわ!」


 セイメイが持っていたエリクサーが手元からすべり、クリスの方に転がってしまった。

 セイメイは足元に転ぶエリクサーを拾いに向かう。


「わりぃわりぃ。自分の部屋だとどうも操作が適当になる。」

 頭をかきながら苦笑いしつつ、腰を曲げる。

 クリスはさっとエリクサーを拾い上げるとセイメイの顔に急接近してしまう。


『あ…。』


 二人は顔を接近させると、しばし黙ってしまった。

 次の瞬間、お互いそっぽを向き動揺をする。


 ―――やべー!!!クリスのキャラを間近にみたけど、ありゃ反則だわ!!なんであんな可愛くデザインしてんだよ!!ドキドキさせやがって!!


 ―――うそでしょ!!あんな間近にセイメイさんの顔があるなんて!!


「お、おい。ありがと…なw」

「いえいえいえ!!」


 二人は視線をあわせることなくぎこちない会話をした。


「あ、あの…よう、よかったら、また一緒に旅に出ような?」

「あ!はい!!そうですね!!」

「な、懐かしいな。そんなに経っていないのになw」

「ええ。死んでいる私に聖水を飲ませてくれたのが、最初の出会いでしたからね。」


 ―――出会いだと!?そんなワードを使ってくるな!この状況だと意識しちまうだろうがッッ!!


「あ、あの時は…なんだ?びっくりしてさ。思わず行動が先になったんだよ。」


 セイメイは声が上ずってしまっていた。


「そ、そうなんですね!あの時、助けてくれなければ、こうやってお話もできなかったですもんね!?」


 ―――だから、そういう表現やめろって!!俺はリアルで若い子と会話するのもう難しい年頃なの!

 お願いだからわかってよ!この子!!!


「お、おう!そうだよな!人と出会うのって運命みたいなもんだよな??」


 ―――おーい!!俺!なに意識してんだッッ!!???運命ってそれディティニー!!!!


 ―――セイメイさんが運命の出会いを俺達はしてるってことを言っているんですよね!??

 これもう告白じゃないの??キャー!!!


「は、はい!私もそういうのわかります!」


 ―――わ~か~り~ま~す~だ~!??私何を理解しているの?告白?運命??あああああーー!!!!


「ま、あれだ。ルカを取り戻してくるから。お前のアニキの金で焼肉パーティーは楽しみにしているさ。だから、お前もこいよ??」


 ―――お~ま~え~も~こいよ~だぁ??なぁに意識してんの??ねー!?年齢考えろ!年齢!!


「はい!そうします!!楽しみですね!!」

「お、そうだな。」


 ―――なぁにクールに決めちゃってんの??俺!!!



「もうそろそろ、出発だ。」

「お見送りいたします。門まで一緒にいきましょう!」


 淡い恋の始まりは蕾となって、まだ咲くことはなかった。


 既にアーモロトの空には、平家星が輝いていた。



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