第100話「王都炎上」
第三章完結!!
第四章に向けての執筆は始まっている!
ではどうぞw
セイメイはしばらく動けずにいると、セイメイの戻りが遅いと心配して見にきたクリスが、倒れたセイメイを発見し抱き起こす。
「セイメイさん!!!大丈夫ですか!!??」
「よぉクリス、HPがあんま減ってねーのに動けないんだよなぁwあははは…w」
「それより、ルカちゃんは見つかったのですか??」
「見つかったんだが、連れ去られた…。」
「俺が無力なばっかりにな…。」
腕で目を隠した。
セイメイは泣いている顔を隠しているのか参っていている顔を隠したのか、近くにいるクリスにしかわからなかった。しばらくして、ようやく起き上がることの出来たセイメイは、他のメンバーと合流し事情を話した。
「マスター、妲己といえば、中国の悪い妖怪のような存在じゃぞ?」
「そうだよな…。その名前が出てくるゲームをやったことあるけど、あんな感じではなかったぞ?」
「それより、どこのギルドですの?その妖怪の所属は?」
「ああ、俺が見たことがあるものではなかったな…。」
「女で魔法使い、厄介ごとが増えるもんじゃな?占領ギルドは…。」
「まぁ、退屈しなくていいけどな、だが、今回は…ひさびさに頭に来たぞ!!」
「なぁにをいっておる!!??毎回じゃろうが!!??」
「うっ…。それをいうなって!ソロモン…。」
気まずそうなセイメイはソロモンを横目でみていう。
「がははは!!まぁ、そんなマスターだからわしゃついてってるんでのぉ!!」
「ったく、冗談きついぜ…。」
「まずは、捜索ですわね?といっても、見当つかないプレイヤーでは手探り状態ですわね…。」
「すごく冷たい対応かもしれんが、今は占領戦が近い。会議も開きたい部分も正直ある…。今は心を鬼にしてアーモロトへの帰還を果たすべきだと思っている。」
「むう…。冷静に状況とこれからの展開を考えると、その選択が最良に見えてしまうの。」
「ルカを見つけたらすぐ教えてくれ。俺が直接対話する。」
「しかし、記憶はもうないのでしょ?どう対応されるんですか?」
「まぁそれは…再会したときに、開けるワインのように乾杯する感じだなw」
セイメイは悔しさを噛み締めながら、後ろ髪を引かれるようにロンバルドの街を後にした。
セイメイ達はなんなく帰り道を進んでいったが、セイメイの心は晴れなかったと後のセイメイはソロモンに吐露していた。
ようやく、パスガに入り、アーモロト方面を見ると夜空を赤く染めていた。
「おいおいおい!!俺に更なる苦難の道を、俺に歩めと神様か何かがいっているのか?」
頭を書きながら、ソロモンの顔を見ると、ソロモンは何かを調べているようだった。
「おい、せめて慰めの言葉くらいかけてくれてもいいんじゃねーか?つれねーな!」
「そうじゃないんじゃよ!なにかのアップデートが起きとるんじゃないかと思って調べとるんじゃ。」
「ったく、俺は試練を受けるためにこのゲームをやっているじゃないんだよなー。くそっ…。」
「まぁマスターは、それくらいがお似合いじゃて。あんまりうまくいきすぎても、ハリがないと思うぞ?」
セイメイは気難しい表情をしているが、ソロモンはあっけらかんとした状態でセイメイに話しかける。
「まぁ人生、山あり谷ありじゃよ。全ては運命に委ね、気に入らなければ、切り開けばいいだけじゃ!」
「まぁいい。向かおう。クリス、スカルド!俺に続け!」
『はい!!』
コンスタンの湖に映る赤い夜空は間違いなく、アーモロトが燃えている様子を映し出していた。
走りながら、セイメイはソロモンに話しかけた。
「ソロモン!何かわかったか!?」
「わかったような~わからんような~感じ…じゃな…」
「んだよ、歯切れがわりぃーな!」
「“占領ギルド主催で所属するギルドと共闘して一攫千金!”というイベントが行えるんじゃが、そんなことマスターがいないとできないんはずなんじゃがのぉ…。」
「いや、そんな許可を出せるのが、一人うちのギルメンにいるだろ…。」
「あ、おったわw」
「まさか!?」
「お兄ちゃんの…ばか…。」
馬を走らせている中、セイメイは苛立ちをおぼえた。
領地内に入ると、ドラゴンに対して怒涛の攻撃スキルが絶え間なく入っている。それは、アーモロトに所属するギルドが、今回のUPデートイベントによる情報を嗅ぎつけて応戦していた。城の外からも、他ギルドのプレイヤーが攻撃を行っている。
~アーモロト城・城門~
中に入ると、旅から戻っているユーグ達は襲来したドラゴンと戦っている。
馬を降りたセイメイは動揺しつつも、冷静に現状把握に務めた。
「どういうことだ!?」
漆黒の鎧に身を包み、目をバイザーで隠したユーグが、バイザーをあげて笑顔で近寄ってきた。
「マスタァー!!見てみて!俺、暗黒騎士になったよぉ!!」
鎧と大剣を構えて一丁前にポーズを決めていた。
頭をかきながらもどかしい気持ちで返事をする。
「バーカ…。まずは、おめでとうって言いたいんだが、その…なんだ、この状況はどういうことなんだ??」
とセイメイは、整理できていない状況のもどかしさをユーグにぶつけていた。
「あー、やっぱマスターは知らなかったんですね。というか、知るわけないんだよなぁ…。」
ユーグはあちゃーというバツが悪いという表情をする。
セイメイはやはりというかそうだろうなって表情をしながら、辺りを見渡す。
「あの、ヘンタイバァァカはどこにいやがる!!??」
「ああ、もしかして…、アイオリアさんですか?」
「それ以外に該当するヤツが、うちのギルドにいるなら教えてほしいものだな。」
「ああ、はい…。」
ユーグは、きまづそうにあそこですと指さすと、ドラゴンの喉に飛び蹴りを入れ、続けざまに回転蹴りをお見舞いする銀色の格闘家を指していた。
ドラゴンが転倒すると、攻撃をしているプレイヤー達からオオーッ!と歓声が上がり、総攻撃をしかけていた。
セイメイは馬に跨り走り込んでいき、文句をいいに馬を飛ばした。
セイメイは、アイオリアの肩を掴むなり、罵詈雑言、お説教の嵐をアイオリアにぶちかましていた。その様をみた各ギルドのプレイヤー達は、恐れおののき、ドン引きしていた。ふと、周りに配慮したセイメイは「さっさと終わらせろ!」と叫び、その言葉に後押しされるように、ドラゴンへの攻撃が行われた。
そして、セイメイはアイオリアに対する説教再び開始し、アイオリアは白目を向きながら聞いていた。
一部始終を遠くから見守るソロモンとクリスは、穏やかな目でその光景をみていた。
クリスはソロモンの横に立つと話しかけた。
「ソロモンさん。」
「おう、どうしたんじゃ?そんな、改まった態度で?」
「セイメイさんのことなんですが…。」
「おおう。」
「セイメイさん…。ルカちゃんが誘拐されたとき、悔しくて泣いていたんですよ。」
「ほほう。ディアナ離脱の時や、マリアの反逆にも耐えた男がな。」
「それは…、マスターの中である程度の予測は出来ていたんだと思うのですが…。今回はまったく予想だにしない圧倒的な力でねじ伏せられているのもあって、無力な自分を憎んでいるのではないかなって…。」
「まぁマスターは喜怒哀楽が激しいようで心のうちは、すごく打たれ弱いヤツなんじゃよ。」
「…。」
クリスは黙って聞いていた。
ソロモンが言う言葉に黙って聞いているうちに、今後、ルカをどうやったら取り戻せるのか手の打ちようがないのをクリスは知っていた。しかし、気丈に振る舞い、いつものセイメイを他のギルメンらと接触しているのを見ると、もっと胸が締め付けられる思いをしていた。
クリスの頬に涙が伝う。
それをみるソロモンは、また別の考えをしていた。
ソロモンはあの時のルカの言葉を思い出さずにはいられなかった。
東の森へいったルカが、自分の娘のビジュアルデータの産物であるのを、ソロモンは初めて知った。
ルカの知っていたその情報は、過去にソロモンの娘が、父と同じIT業界を目指しプログラマーという職業に向けて勉強をし、イーリアスの運営会社、リンク・オッデセイ社の公募によるAIビジュアルとそのプログラミングをNAに提出していたのだ。娘の居場所は、別れた妻から聞き出そうと思ったが、素直に教えてくれるだろうか。
懐かしい思い出と苦い思い出が交差する気持ちであった。
そして、その最終選考の最優秀賞にノミネートされていたのだが、くしくも受賞には至らなかった。その他の提出された情報は、いくつかのAIのプロトタイプに導入され、グスタフは最優秀賞のAIであることがルカの口から伝わり判明した。グスタフの製作者は軍事機密情報部出身MI6の元諜報部員、スタンフォード大学AI研究の出身の新進気鋭の天才による産物であることも知った。しかし、今は行方をくらましてしている。
それらをセイメイに伝えたことで諦めてしまうかもしれない。
それは、何も知らない方が彼の為であり、人間の可能性を信じているセイメイの動向と成長、全ての成り行きを見守りたいということで、ソロモンはルカとの約束において、他言無用にしている。
かくいうソロモンも、セイメイの若き成長を見守るべく年配者の務めであろうと自問自答に納得し、これらのことは伏せられているのだ。
二人の思いは、セイメイに帰順し、何も知らないセイメイは過酷な旅へと誘われる
ロームレス防衛戦、謎の女とルカの救出、そして、グスタフの暗躍の先にあるもの。
全てはセイメイの言葉と行動、一挙手一投足にかかってくることを、彼はまだ何もしらない。
第三章 ―完―
深い闇を落とした第三章、第四章へつながっていく。
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