路地裏のアーチ
ふと、裏路地の景色が頭に浮かんだので物語が始まるかのような文章を書いてみました。
完結しませんのでそういう物が嫌な方はお読みしない方がいいかと思います。
夏の熱い日差しが届かない薄暗い民家の裏路地。
子供が走れる程には広く大人が歩いて通るには丁度いい道幅に、黒ずんだエアコンの室外機や底が抜けて汚れたバケツが鎮座し、欠けた植木鉢には植えられていたであろう植物の面影は無く苔が生え、受け皿には水が溜まっている。水の入った猫避けのペットボトルが並べられたり雨風にさらされて汚れた軍手などが落ちている。新しい物やキレイな物はなく、どれも薄汚れて古いものばかりが通路の左右に並んでいる。石やレンガの影では虫がのそりのそりと散歩していたり、蜘蛛が作った巨大な巣により進めなくなっているさらに奥へと繋がる脇道も見られる。夏の昼間なのに所々に深い闇がありえも知れぬ不気味さをはらんでいる。そして、どこかで鳴いている猫の声や蝉の声に混じって聞こえる窓にでも吊るされているのであろう風鈴の涼しげな音がまるで場違いの様に感じられる。
そんな混沌としている印象を与えながら心踊らせる何かを秘めた家と家のあいだの通り道。転んで怪我をする危険もあるこの通りをリュックを背負って駆けて行くと途中、ブロックを積み重ねてできた塀が目の前を立ち塞ぐ。塀は古く、ところどころブロックが欠けている。その隅に目の前に積み重ねられているそれと同じブロックが、塀はどこも崩れていないのに不自然に落ちている。そのブロックを手に取り塀へと3度ぶつけてそれを塀の向こうへと投げ入れる。
すると、目の前の塀からコツコツコツと3度、今しがた鳴らした音が山彦のように帰ってくる。
一歩下がると同時に目の前の塀は姿を変え石のアーチが現れた。アーチには青々とした葉を繁せた蔓が巻き付いている。その間はブラックホールの如くすべてを飲み込まんばかりの深い闇があった。目を凝らしても何も見えず、ただただ静かに暗闇が目の前にある。
恐る恐るその闇に手を伸ばして触れてみるが吸い込まれることもなく、抵抗を感じる訳でもなくスルリと闇の向こうへと進んでいく。
怖くなり手を引っ込めたが特に変わった様子もない。
意を決して目を固く瞑り闇に向かって体当たりをするかのように飛び込んだ。あっけなく通り過ぎてしまい足がもつれて転んでしまった。急な転倒による痛みと驚きに目を開くとさっきまで踏みしめていたくすんだ色の土とは違い丁寧に敷き詰められた石だたみが目に飛び込んできた。顔を上げ、周りを見るとさっきまでの家とは違う作りの建物の間で四つん這いになっていた。建物と建物の間を出ると眩しい光が目に入り思わず顔を背け目を細めた。少しして目が光に慣れると顔を前に向けゆっくり目を開いた。
そこには想像したことも無い世界が……。
あったかもしれないし無かったかもしれない。
続きは読んでくださった皆様が想像してみてください。
何だそれ、書くなら最後まで書けよ。と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身、稚拙ではありますが上の作品の様なワンシーンだけの物語が好きなのもありますが、作者が完成させるのではなく、読んだ人が作っていく作品を書きたかったんです。
せっかく読んで下さった方の期待を裏切ってしまうかも知れません。もし、そのようなことがあれば申し訳ございませんでした。この場を借りて心よりお詫び申し上げます。本当にごめんなさい。
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