僕は勇者組のおまけ01
「フハハおれのターンドロー!! きたぁーー」
「私の嫁が最強すぐるんだがwww」
「また負けたというのかぁー」
「がはははは」
そこは天界庭園の一角。
上質なテーブルクロスがひかれた木製の一人用テーブルに二人ずつ対面しあい老若男女の神々が『カードゲーム』を行っている。
周りにはギャラリーがクリスタル製のジョッキを片手にゲームの行方を見届けている。
楽しげで愉快な声が行き交う場に騒がしい声が響く。
「ぬぅーあぁぁー」
椅子の上で手足を振り回している幼女に周りの神たちが(また、あいつ負けたんだな)と囁きあう。
「これで君の城力は0で私の勝ちだね、ルール通り負けた君には勇者組の案内役をやってもらう」
勇者組の案内役は今負けた女神を合わせ7人。負けた方がというのは神々がめんどくさがりだからだろう。
「なぜなのじゃ~完璧な編成だったのに~」
話を聞いていないのか、自分のデッキとにらめっこしながら、独り言を口にする。
「聞いてるのルミナト‼ ルールは絶対だよ。いいね!」
「わ分かっておるわい! うるさい奴よの~」
驚きのあまりデッキを四散させ椅子から転げ落ちそうになる。
「もー本当に分かってる? 久々の聖戦だし、こっちの箱庭に来る子の見繕いは出来てるの?」
椅子にかけ直すし腕を組む。
「ウェッ!? え~となんじゃ最近のふりーたあ? なる者たちの中から、適当にぱっぱっと選ぶわい」
「て適当? 駄目だよ、それで前回は大事になったじゃないか‼」
テキトウと聞き、カードを片付ける手を止め、ルミナトに顔を向ける。
「大事? なんの事じゃ?」
「なんの事じゃないよ‼ 君が前回案内した、谷口 優が造った銃のせいでダフトの武器バランスが崩壊して、剣時代から銃時代にと世界記憶が変換されたでしょう? それで主神様から雷が落ちたの、もう忘れたの?」
エルミスは椅子から立ち上がり、ルミナトの顔に迫り指を突き立てる。
「そそんなこともあったかのう〜」
顔を青くし汗を流しながら明後日の方を向く。
「ルミナト今回は普通に案内して、おかしなことはしないようにね」
エルミスは顔と顔の距離をどんどんと詰めながら言い含める。
「分かったのだエルミス、普通にするのじゃ! そんなに心配だったら案内役エルミスに変わってやってもいいのじゃぞ」
ルミナトはエルミスの肩を掴み距離を取り、事無しげに問う。
「そうはいかないよ、この案内役の選定方法は主神様の決定だから」
「ああそうじゃったの…あのじじい無駄に権力持ってるからのー」
そう口にした時後ろの人影が来たことにルミナトは気付かない。
「ル…ルミナトもうやめといたほうが………」
「そうは思わんか? あの爺め、いつかギャフンと言わせてやるのじゃ!!」
「誰をギャフンだって?」
そう言って白髪白髭の上背の男神はルミナトの頭に、大きな手を置く。
何を隠そう、この白髪白髭の男神こそが神々の長、主神その人である。
「あひゃー」
突然主神の声がしたと思ったら、頭に手を置かれ女神にあるまじき奇声をあげる。
「誰が爺だってルミナトやぁ?」
そう言うと、主神は手に力を込める、ルミナトの頭を鷲掴みにし小柄なルミナトを持ち上げたのだ。
「ひゃー! 痛いのじゃー!! なんでここに爺がいるんじゃー? エルミスなんで止めなかったのじゃー!!」
椅子から持ち上げられ宙ぶらりんな状態になりながらも、空いた口が塞がらないのか喚き散らす。
「私は止めたわよー」
いつの間に移動したのか、エルミスは主神とルミナトから離れ、周りの野次馬たちに紛れながらルミナトに答える。
「ルミナト答えるのじゃ、誰が爺で、ギャフンと言わせるって?」
鷲掴みしている手に更に力を込めながら怒気を孕み怒り心頭の様子。
「謝るのじゃーだから頭を離してほしいのじゃー」
ルミナトの声が神々の庭園中に轟く。
僕は、間 希伊斗19歳、アパートで一人暮らしをしている。
中学を卒業後、アパートの近くのスーパーでバイトをし、生活費を稼ぎ残りのお金をゲームに使うという生活を続けている。
就職をしようと思っていても、なかなか行動に移せないまま1年が過ぎようとしていた。
「200円のお釣りとレシートになります、ありがとうございました。またお越しくださいませ。」
平日の夕方ということもあって客足は緩やかだ。
あと1時間とちょっとか…早く家帰ってアルファしたいな…
店内にお客がいないことを確認してから、考えに耽る。
アルファとは、今圧倒的人気を誇るMMORPGアルティメットファンタジーの略だ。
そのアルファの中堅ギルドに所属しており、ギルド内では、脳筋の火力要員として活躍しており、ギルドメンバーとも良好な人間関係を築けている。
とても充実したゲームライフを満喫している僕は今日も仕事終わりに、仲間たちと冒険を楽しもうとウキウキしていた。
そして来客を知らせるスライドドアの音がして、目を向けると………
「まじでここでバイトしてたんだ……中学卒業して以来だから4年ぶりかな? ケイト久しぶり!」
などと言って苦笑しながら顔をかしげるその女性は、幼稚園からの幼馴染で中学時代のいじめの主犯グループメンバーである、水城 渚であった。